学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第35話:体育大会の罠─隻眼の王

 カカカカカカカ、とファルクスの不気味な鳴き声――いや、違う。

 何重にもカラスの鳴き声が重なっており、不協和音を奏でていマス。

 それを中心にして死霊を糧にする暗黒の化身が姿を現しましタ。赤黒(しゃっこく)の不死鳥は甲高く、全ての生きとして生けるものを呪うのデス。

 

『カカカカ! 《デス・フェニックス》で《フェイウォン》を攻撃――するとき、革命チェンジ発動! 《第3種 ベロリンガM》に! 効果で山札の上から3枚を墓地に!』

「え!? 折角進化して出したのに、デスか!?」

「或瀬! 《デス・フェニックス》の効果が来るぞ!」

 

 次の瞬間、私の手札が轟! と燃え上がり、全て墓地へ叩き落されマシタ。

 

『カカカカカ! 《デス・フェニックス》が場を離れた時、相手の手札を全て墓地へ叩き落すわ! どう? 今の気分! 地獄に叩き落された気分ってのは、こういうのを言うのよねぇ!』

「う、うう……! デモ、まだデス! こっちにはたくさんの軍勢が居マス!」

『ワシは墓地に落ちたがのう……』

「あっ」

 

 まずいデス……。

 今の手札の中には《ワンダータートル》も居たのに……どうしマショウ……。

 

「わ、私のターン! と、とにかく、攻撃デス! 《タスリク》でシールドをブレイク!」

『S・トリガー! 《爆殺! 覇惡怒楽苦》! カカカ! 骸ごと焼けて死ね!!』

 

 次の瞬間、《クリスタ》に《フェイウォン》2体が破壊されマシタ。

 うう、ここで地雷を踏むなんて……!

 

「ターンエンドデス!」

『弱いのねぇ! 期待外れだわ! 《デス・フェニックス》を墓地の《ポッポ・ジュヴィラ》と《ダーク・ルピア》から進化! そのままシールドに攻撃よ!』

 

 と、とにかく、ここはS・トリガーに頼るしかねぇのかブランは。

 そう思っていたが、次の瞬間、ブランのシールドが2枚焼け落ちた。

 

「なっ……!」

『ごめんあそばせ!! この子が破壊したシールドは、問答無用で墓地送りよ! カカカ! あと、《タスリク》も《ベロリンガM》で攻撃し、破壊!』

 

 何てことだ。変にどかせば全体ハンデス。

 かと言って放っておけばシールドは一方的に焼かれ、トリガーも発動しない上に手札も増えない。

 事前に全体ハンデスを打ったのは、相手の行動を完全に制限する為……!

 

「……私のターン、《クリスタ》を召喚して1枚ドローデス。そして、ターンエンド……デス」

『カカカ! その程度で何が出来るというの? 腕も足ももいでやるわ!』

 

 言ったファルクスのマナが4枚、タップされた。

 

『4マナで、《黒神龍 アバヨ・シャバヨ》召喚! カカカカカカ! 効果で自身を破壊し――墓地から、《黒神龍 グールジェネレイド》を2体、場に出すわよ!』

「うええ!? ふ、増えたデス!?」

『そして、そっちもクリーチャーを選んで破壊してもらうわよ!』

「……《クリスタ》を破壊デス」

『カカカカ! 《デス・フェニックス》でW・ブレイク! 大人しく、エリアフォースカードを寄越しなさぁい!』

 

 私のシールドは残り1枚。

 このままでは、逆転する可能性も無く負けてしまいマス。

 

「おいっ!? ブラン、大丈夫か!?」

「何とか……デス!」

「ですが、このままでは次のターンに確実にトドメを差されてしまいます。ファルクスの方が、一枚上手です」

「手札破壊、クリーチャー破壊、復活、なんでもありかよ……!」

 

 確かに、相手は何でもありみたいデスね……。

 でも――耀や紫月のデュエルを見ていて、私、このままじゃダメだって思いマシタ。

 もっと、もっと強くならないといけないのデス!

 

「私のターン! ふふん、《ワンダータートル》が墓地に落ちたからって負けたわけじゃないデス! これで札は全て揃いマシタ!」

 

 場には《バーナイン》だけ……でも、ここから大逆転デス!

 

「6マナをタップ。《バーナイン》をNEO進化(Evolution)! 《星の輝き 翔天》に!」

 

 飛び出すのは結晶のゴーレム。

 手札は後1枚。これに、希望を託しマス!

 

「シールドをブレイクデス!」

『カカカカカ! その程度かしらぁ?』

「ターン終了デス! そして、貴方のターンが始まる時、《翔天》の効果発動デス! コスト8以下の光のクリーチャーをタップして場に出しマス!」

 

 ぎょっ、とファルクスは驚いたようデシタ。

 これに全てを賭けマス!

 

 

 

 

「この瞳は、遍くAnswerを見通す! 漆黒にして絶対の正義(Justice)

降臨(Advent)、《オヴ・シディア》!」

 

 

 

 これがブランちゃんの新しい切札デス!

 巨大な瞳を持つ、光文明のマスターカード!

 浮かび上がるMASTERの紋章、そして11番、正義を意味する数字!

 さあ、反撃デス!

 

「《オヴ・シディア》の登場時効果発動デス! 相手の場のクリーチャーの数だけ、山札の上から1枚を表向きにし、その中からコスト6以下のメタリカを全てタップして場に出しマス!」

『まさに、ワシらの最終兵器にしてマスターカード!』

『何ですって!?』

「出てきてくだサイ! 私のメタリカ達!」

 

 山札の上から捲られるのは4枚。

 1枚目、《陰陽の果て 白夜》。効果でシールドを1枚追加デス。

 2枚目、《緑知銀 サモハン》。私の他のクリーチャーは選ばれないデス。

 3枚目、《正義の煌き オーリリア》。攻撃誘導持ちデス!

 4枚目、《緑知銀 フェイウォン》。こっちも攻撃誘導持ちデス!

 

『なっ……攻撃誘導持ちが2体も……!』

 

 これで守りは盤石。

 肝心の《デス・フェニックス》の攻撃さえ通さなければ、十分に勝ち目はありマス!

 そして、パワーはこっちが上なので返り討ちデス!

 

「しかも、《サモハン》の効果で私の他のクリーチャーは選ばれまセンよ!」

『カカカ、呪文《デーモン・ハンド》! 効果で《サモハン》だけでも破壊!』

「選ばれたので、2枚ドローしマス」

 

 よし、このターンは耐えきりマシタ。

 

『探偵、今じゃ! 一気に攻め込むぞ!』

「ハイ! 私のターン、デスね!」

 

 カードをドローデス。

 そして、6枚のマナをタップしマス!

 

「6マナで、召喚(summon,this)《正義の煌き シーディアス》!」

 

 《オヴ・シディア》と同じく、一つ目を持つゴーレム。

 それが《シーディアス》デスよ!

 

「さあ行きマスよ! 《オヴ・シディア》でシールドをT・ブレイク!」

 

 これでシールド差は完全に逆転デス。

 さらに、《シーディアス》と《オーリリア》の迷宮構築(ラビリンス)発動デス!

 

「《オーリリア》はラビリンスで、相手にコスト5以下の呪文を唱えられなくさせマス! そして、《シーディアス》の効果で、私の他のメタリカは選ばれまセン!」

『そんなっ……! 《インフェルノ・サイン》がっ……! くっ、追い詰めたと思ったのに、軍勢を逆利用されるなんて!』

「次に、《オーリリア》で最後のシールドをブレイクデス!」

 

 割られるシールド。

 これでもう、相手を守るものはありませんネ!

 トロフィーは返してもらいマス!

 

 

 

 

「《星の輝き 翔天》でダイレクトアタック、デース!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「アホォー、アホォー!」

 

 

 かくして──ファルクスは撃破され、逃げていった。

 

「やれやれ、なかなか厄介な相手でしたネ……」

「にしても、あんな切り札デッキに入れてたんだなお前」

「当然デス! 探偵である以上、常に時代の最先端を行くデッキを使わなきゃ、デスね!」

 

 ともかくチョートッQがしくじったからとはいえ、ブランにはまた助けられてしまった。

 

「ったく、本当すまなかったな皆。今日は俺のごたごただったのに」

「何言ってるんですか、先輩。先輩が人を助けるなら、それと同じ分だけ先輩も助けられて当然です」

「情けは人の為ならず、だぜ。白銀。テメェに返ってくるってことだ」

 

 俺に返ってくる、か……。そういうのは余り意識したことが無かった。

 

「現に、私達が先輩の無茶に付き合ってるのも、それが大きいですね。先輩は人を助けたくなってしまうのでしょうが」

「私たちも、耀を見ると応援したり、助けたくなっちゃうんデスよ。でも、無茶はNo! デスからネ!」

 

 お前ら……やれやれ。ワイルドカードの事件も、今日のことも元はと言えば俺の事なのに……。

 だけど、こいつらが満足気だから良いのかな。

 とはいえ、そのトロフィーはどうにかして返さなきゃいけない。

 仕方ねぇ。カラスが運んだとか誰も信じねえだろうし……。まだ軍法会議をやってると思われる会議室に行くか。

 

「……さて、俺も帰るか……」

 

 腕を組んだ火廣金が立ち去ろうとする。

 今日は結局こいつ敵じゃなかったな。

 

「なあ火廣金」

「何だ? 非番の日に呼び出されたんだ、エリアフォースカードを奪うのはまた今度に……」

「……ブランが勝って良い感じに終わった感出してるけど、お前あのカラスを回収しないといけないんじゃねーの?」

「……あ」

 

 火廣金は全速力でダッシュしていった。

 ……あいつも大変だなあ。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「先輩はお人好しが過ぎますよ」

 

 後日。体育祭が無事終わった次の日のこと。部室に帰ってから紫月は言った。

 

「どうやら、トロフィーは代理の配置ミスということになったと聞きました。これ先輩が嘘をついたんですよね?」

「だってよぉ、カラスが取っただなんて誰が信じるんだよ……」

「本当にはた迷惑でしたネー」

「それに今回の事件。ファルクスを倒したのはブランだし、俺何にもやってねぇぞ? 問題運び込んだ張本人だし」

「はぁ。自己犠牲も程々にしてくださいよ、先輩。先輩は普段から頑張り過ぎだというのが、今回の件でよく分かりました」

 

 頑張りすぎ、か。

 大丈夫だ。その辺りはちゃんと考えて行動するつもりだ。

 まあ、心配されてる辺り、やっぱり他人には俺が無茶してるように見えてるんだろうな。

 

「今回の事件、うちの学校には加害者はいなかったんだよ。俺はそれだけで十分なんだ。俺だけがお叱り食らうだけなら訳ないさ」

「……そう、ですか」

「それに、俺は困ってる人を見たら放っておけねぇめんどくせぇ性分なだけ。礼を言われるようなことをしてるつもりはねぇんだよ」

「先輩。ブラック企業には就職しないでくださいよ? 死にますよ確実に」

「気を付ける」

 

 俺は、夢も特に希望もない。

 だけど、誰かの夢や希望、誰かの力になることなら出来る。

 俺は、そうやって真っ白な人生を必死に埋めている。

 ただ、これが一番俺らしい生き方ってだけだ。

 

「私は先輩の方が心配です。まあ、それが原因で死ぬのは完全に先輩の自己責任ですが」

「ははは……」

「でも、それが耀らしいってことデスよね!」

「ああ。人の力になれるのが俺の――」

 

 

 

「おーい、白銀! いるかぁ!?」

 

 

 

 声が聞こえてくる。

 すぐさま部室の扉が開いた。

 見れば、そこにはたくさんの3年生の先輩。

 

「すまない、白銀!! お前、また今度の試合の助っ人頼めるか!?」

「いや、こっちが先だ! 次の委員会の代理を頼む!」

「駄目よ! こっちが先!」

 

 は、ははは、は……まあ、ちょっといろんなところに顔を出し過ぎちまったみてーだが。

 

「先輩。どれだけ便利屋やったら気が済むんですか。これどうするんですか」

「そういえば、1年の頃から色々やってましたよネ、耀……」

「1年の頃から……って、本当に生粋の便利屋じゃないですか!」

「いやあ、断れなくて、つい……」

 

 いや、本当反省している。 

 こいつは余り知らなかったみたいだし、俺も今日気付いたが、どうも俺はあちこちで頑張り過ぎたらしい。

 そのしわ寄せが頼られ過ぎるという形で返ってくるなんて!

 

「ハ、ハハ……どうしマスカ?」

『マスター過労死不可避でありますなぁ』

 

 今回学んだことがあるならば。

 やっぱり、人間は時にNoと言う勇気も大事らしいということだ。

 身をもってそれを味わってからでは……遅いってことだな。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 やれやれ……思った以上の強さらしいな。白銀耀、或瀬ブラン、暗野紫月。

 まあ、良い。今度はこの私が自ら出向くとしよう。

 最早、事は一刻を急ぐ。時間は無い。

 只の人間か。

 それとも魔法使いか。

 エリアフォースカードが彼らにとって一体何なのか。

 彼らが何のために戦っているのか。

 今一度、確かめてやるとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――最も、人間が我々に逆らうなど、言語道断だ。

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