学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第40話:舞う三日月─トリス・メギス再び

 冷淡な声。銃弾は、確かに弾かれたようだった。

 そこに堂々と顕現していた純白の代行者によって。

 そして、それを背後に従えるのは、あの小柄な魔導司の女。それも、因縁深い相手であった。

 

『決闘の邪魔だ……何者だ?』

「トリス・メギス……何でこんなところに!?」

「何って、エリアフォースカードの回収に決まってんだろ。ここらで暴れているワイルドカードの元凶を、裁きに来たんだよ。召喚書の罪を数える者としては、見逃せないよなあ」

 

 俺達は身構えた。

 特に紫月は並々ならない憎悪の表情を浮かべて前に進み出る。

 

「私の先輩の邪魔をしないでください」

「おーう? 前に負けた癖に、威勢が良いなあ! あたしは、お前みたいな生意気なガキが嫌いなんだよ。お前のエリアフォースカードから回収してやろうか?」

 

 そう彼女が言ったその時。

 目を離した隙に、轟轟と燃え上がっていた戦車(チャリオッツ)が更に燃え上がる。

 

戦車(チャリオッツ)が、目の前の敵から危機を感じている……白銀耀。決闘は、横槍の入らない場所で行うべきだ』

「ジョニー!?」

 

 その身体が今にも消えかけていた。

 跡形も無く、その場から、始めから無かったかのように。

 

『今の俺のマスターは、このエリアフォースカードだ。それに従うしかない』

 

 次の瞬間、ジョニーの身体もエリアフォースカードも一気に燃え上がり、その場から焼け失せたかのように消えた。

 トリス・メギスは気に入らないと言わんばかりに、足踏みする。

 

「チっ……逃げられたか、クソが……まあ良い。お前らのうちの誰からでもエリアフォースカードを奪い取れれば、それで良いんだよ!」

 

 次の瞬間、魔法陣が彼女の足元から現れる。

 そこから、奇妙奇怪な異形、失われた十字軍(ロスト・クルセイダー)が姿を現した。

 

「またこのパターンですか……!」

「数が多いデス……!」

「いや、三日月仮面を含めて4人もいるんだ。相手は出来る……ん?」

 

 俺は辺りを見回す。

 あれ? 三日月仮面の姿が見当たらない?

 こんな時に何処に行ったんだあの人は!?

 

「先輩。どうしましたか」

「居ねぇ……三日月仮面が見当たらねえ!?」

「うええ!? Really!?」

 

 ブランが叫ぶ。

 その言葉を聞いてか、魔導司は眉をひそめた。

 

「あ? 三日月仮面? あのふざけた奴か? あいつが、此処にいるのか!?」

 

 

 

 

「ハハハハハハハ! そうだ、貴様の相手は私だ!」

 

 

 

 その場の空気が凍り付く。

 胡散臭い三段笑い。それと共に、天井から、トリス・メギスの正面に何かが降り立った。

 

「愛と正義を貫く代行者、三日月仮面、只今推参ッ!」

「こいつっ……どこから出てきやがった……!」

 

 トリス・メギスの言い分はごもっともだったし、俺達ももう半ば呆れ果てていた。

 まさか、わざわざ登場の演出のために隠れていたのかこの人は!

 

「おい! 何やってんだよ、マジであんたって人は!」

「ハハハハハ、ヒーローにとって演出は大事だろう? 少し、天井に隠れていた。オーパーツの力を借りてな」

「聞いてないデース! わざわざそんなことにクリーチャーの力を使ったデースか!?」

「だが、この魔導司の相手は私に任せたまえ! この間の因縁、ここで決着を付けるとしよう!」

 

 次の瞬間だった。

 天井から水柱が何本も降り注ぎ、俺達の目の前に現れていた異形の頭蓋を貫いた。

 直後、爆発音とともにその身体が跡形も無く弾け飛ぶ。

 

「これって……!」

『トラップだ……! まさかあの仮面野郎、これを自分のクリーチャーと仕掛けていたのか!?』

『やれやれ、派手好きの傾奇者め』

「全滅ゥ!? 召喚書から呼び出した精鋭共が……一瞬で蒸発した!?」

 

 トリス・メギスの語調が強くなる。

 そりゃそうだよな、自分が召喚した使い魔が一瞬で皆粉砕されたのだから。

 これもオーパーツ、そして三日月仮面の力っていうのか!?

 単にカッコつけてただけじゃねえのかよ!?

 

「ヒーローショーにはギャラリーが必要だ。君達は、私の戦いを見ていたまえ!」

 

 三日月仮面の手に握られたエリアフォースカードが光り輝く。

 トリス・メギスが怒鳴った。

 

「お前は死罪だ!! 魔導司に対する不敬は、死んで償えクソッたれ!」

「良いだろう。出来るものならな。オーパーツ!」

 

 無機質な機械龍の鳴き声。

 それが響き、廃倉庫が戦場へと塗り替えられていく。

 

 

 

「さあ、勝負だ! デュエルエリアフォース!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 三日月仮面とトリス・メギスのデュエル。

 現在、2ターン目。先攻のトリス・メギスの場には、たった今召喚された《一撃奪取 アクロアイト》が存在している。

 どうやら、前回とは打って変わって、完全に違うデッキのようだが……。

 一方の三日月仮面のマナゾーンには《戦略のDH アツト》が置かれており、少なくとも水闇入りのデッキであることは分かった。

 

「では、私のターン。2マナで、現れたまえ……我が相棒! 《【問1】 テック》召喚!」

 

 浮かび上がったのは、革命軍――それも、知略を司るテック団の紋章。

 三角系の水晶から構成されたそれから電撃が迸り、現れたのはキューブ状のクリーチャーであった。

 

『ピコピコ』

「テック。今回も頼むぞ! ターンエンド!」

 

 テック団。革命軍の中では、あまりメジャーではない団。

 神秘を追求し、謎を解き明かすことを理念とする軍勢だが……。

 

「実際は、個々のクリーチャーのスペックがそこまで高くないですからね。相手依存の効果も多いですし、扱いは難しいですが、テクニカルな能力を持つクリーチャーが強みです」

「同じ革命チェンジでも個性が違うってことデスネ! 《ノロン(アップ)》くらいしか使ったことないので、どんなクリーチャーが出てくるか楽しみデス!」

「いや、それ以前にカードの数が少ねぇから不遇と言えば不遇なんだが……」

 

 

 

「はっ、そんな玩具(オモチャ)みてーなクリーチャーで、何しようってんだよ! あたしのターン!」

 

 

 

 威勢よくカードを引くトリス・メギス。

 傍から見りゃ、子供が変な恰好した大人相手に虚勢を張っているようにさえ見えるが、実際は冷酷極まりない上に高い実力を持つ彼女の事だ。何か仕掛けてくるに違いない。

 

「2マナをタップ。さあ、《信頼の玉 ララァ》も召喚だ!」

 

 現れたのは羽根のようなものを幾つも付けた宝玉。

 確か、マナ武装3で光のコマンドと、ドラゴンのコストをそれぞれ1減らす効果を持っていたんだっけか。

 ……早いな。次のターンには、もう7コストの光のコマンド・ドラゴンが出るのか。

 

「フフ。コスト軽減か。まあ良いだろう。私も相手してやる! 3マナで、《【問2】 ノロン》を召喚! 効果でカードを1枚引き、カードを1枚捨てる」

 

 大袈裟な動きでカードを引いた三日月仮面は、更に手札から落とすように墓地へカードを捨てた。

 出てきたのも何かメカメカしい、ボールみたいなクリーチャーだし……あれ種族、クリスタル・ドラゴンなんだって? いや、もうハムカツ団という前例があるから突っ込まねえけど。

 

「そして、《【問1】 テック》で攻撃――するとき、革命チェンジ発動!」

「革命チェンジ!?」

「ああ! ヒーロータイムの始まりだ! 自分の水、または闇のクリーチャーが攻撃したので、手札から《【問3】 ジーン(アップ)》と入れ替える!」

 

 次の瞬間、《テック》の身体が粒子になって消失し、それが再構成されて三角形の水晶のクリーチャーが現れた。

 

「さらに、《テック》が場を離れたので、山札の上から1枚を墓地に置き、1枚ドロー! 更に、《ジーン⤴》の効果で、山札の上から2枚を表向きにし、その中から君に選択をしてもらおう!」

 

 そう。これがテック団の最大の特徴、相手に選択を迫る能力。

 提示された2枚のカードが浮かび上がる。

 右は《黒神龍 グールジェネレイド》。

 左は《爆撃男》だ。

 

「そして、相手はこの中から1枚を選び、私はそれを手札に加え、残りを墓地に置く!」

「クソッ、よりによってこの2択か……!」

 

 《グールジェネレイド》は自分の《グールジェネレイド》以外のドラゴンが破壊された時、墓地から場に出てくる、ドラゴン・ゾンビを地で行くクリーチャーだ。

 この2択だと、相手は当然これを墓地に落としたくないから、手札に留まらせる……しかし。

 問題はもう片方のクリーチャー、《爆撃男》だった。こいつは何処からでも墓地に行った時、相手のクリーチャー1体のパワーをそのターン-2000するという効果を持つのだ。

 

「成程、これはなかなか選択に困る2択、デスネ……」

「2択を与え、精神的に相手を苦しめる。青の情報操作と黒の心理戦が組み合わさっていると言えます」

 

 しばらく考えたようだが、トリス・メギスは苦しそうに、

 

「じゃあ、《グールジェネレイド》を墓地に置き、《爆撃男》を手札に送る!」

「フフ、その選択は、果たして正しかったのかな? 《ジーン⤴》でシールドをブレイク!」

「いちいち癪に障るやつだ……!」

 

 彼女のシールドは残り4枚。そこで三日月仮面はターンを終える。

 トリス・メギスのマナゾーンにカードが置かれ、これで4マナ。

 それらが全てタップされた。そして――

 

 

 

「コストを3軽減し、4マナで《赤薔薇の精霊龍ジェネラローズ》を召喚!」

 

 

 

 次の瞬間、甲高い咆哮と共に神々しい天使龍がその姿を現す。

 胸につけられたのは革命の紋章。そして、赤い薔薇を身に着けた戦士だ。

 そして、その猛りが更なる軍勢を呼び起こした。

 

「その効果で、カードを1枚引き、手札からコスト6以下の光のクリーチャー、《指令の精霊龍 コマンデュオ》を場に出す!」

 

 うわっ、3体もエンジェル・コマンド・ドラゴンが一気に……!?

 だけど、龍の指揮官によって連鎖はまだ終わらない。

 

「《コマンデュオ》の効果でカードを1枚引き……コスト5以下の光のクリーチャー、《寄生の精霊龍 パラス・ルーソワ》を場に出す!」

 

 な、並んだ……! 一気に、エンジェル・コマンド・ドラゴンが3体も……!

 

「しかもこれで、あたしのコマンド・ドラゴンは《パラス・ルーソワ》の効果でブロッカー化だ! ターンエンド!」

「フッ、それでは私のターンだな?」

 

 カードを引いた三日月仮面は、そのまま2枚のマナをタップした。

 おいおい、大丈夫なのかコレ……相手の場には、3体のブロッカー化したエンコマ龍と《アクロアイト》に《ララァ》がいるのに。

 

「では、私のターン! 2マナで、《【問2】 ノロン(アップ)》召喚! その効果で、カードを2枚引き、手札から2枚カードを捨てる! この時、私は《爆撃男》を捨てたので、相手のクリーチャー1体のパワーを-2000。選ぶのは、《ララァ》だ!」

「チッ……!!」

「そして、《ジーン⤴》で攻撃――するときに!」

 

 くるり、と一回転。

 マントが翻り、カードを掲げて決めポーズ。

 何がしたかったんだこの人。

 

「水か闇のコスト5以上のドラゴンの攻撃をトリガーに、革命チェンジ発動!!」

 

 次の瞬間、彼の目の前にタロットカードの19番、月を意味する数字が浮き上がる。

 そして、三角形の水晶のクリーチャーが投影したホログラムから、数字を身に纏うようにして、機械龍が姿を現した。

 

 

 

「累積されし問の答え――《完璧問題(ラストクエスチョン) オーパーツ》!」

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