学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

56 / 316
第41話:舞う三日月─完全なる証明

 巨大な機械の龍。

 これが、三日月仮面のエースクリーチャー。

 こうしてデュエルの時にはっきり見るのは初めてだ。

 

「テック団最強のクリーチャー、《オーパーツ》! その効果は、登場時にカードを2枚引く。そして、手札かバトルゾーンからカードを二枚選んで、山札に戻してもらおうか!」

「くそっ……たれ! 手札のカードと《アクロアイト》を山札の下に!」

「そして、シールドをW・ブレイク!」

 

 相手の場数が減った上に、手札も消えた。

 だけど、結局相手の優勢はそのままだ。しかも――

 

「S・トリガー、《ドラゴンズ・サイン》! 《指揮の精霊龍 コマンデュオ》をバトルゾーンに! 効果でカードを1枚ドローして、《太陽の精霊龍 ルルフェンズ》も場に出す! 効果で出せるクリーチャーはいない!」

「ふむ、ターンエンドだ」

「そして、これでゲームエンドだ! ドロー!」

 

 カードを引いたトリス・メギスは、狂喜に満ちた表情でカードを《レッドローズ》の頂きに叩きつけた。

 

「来たぜ……本当に、あたしの切札は、あたしが一番来て欲しいと思った時に来てくれるよなあ!」

「ほう?」

「場に、エンジェル・コマンドが5体以上いるため、G・ゼロ発動!」

 

 エンジェル・コマンド――そうか。エンジェル・コマンド・ドラゴンもエンジェル・コマンドに含むのか。

 そして、こんな条件をG・ゼロ条件にするようなクリーチャーはあいつしかいない。

 浮かび上がったのは、審判(ジャッジメント)を意味する数字、20番。

 

 

 

「審判の日は訪れた! 我が主より戴きしα(アルファ)の文字を重ねる時!

《レッドローズ》進化、《聖霊王アルファリオン》!」

 

 

 

 天空から雷が何本も降り注いだ。

 同時に、叢雲の切れ間から、純白の天使王が降り立つ。

 裁きの剣を両手に掲げ、天使の軍勢を従え、全てを正義の下に裁く。

 

「《アルファリオン》が居る限り、もうお前は呪文を唱えられず、クリーチャーを召喚しようとしてもそのコストは+5され、もう場に出せない。その手のデッキに《クロック》が居るのは分かっているが……こいつはどうだ? 仮にこのターン耐え凌げても、次のターン何も出来ないだろ!」

 

 マジかよ……!

 つまり、クリーチャーも出せないし、呪文も唱えられないってことか!?

 しかも、相手のクリーチャーは全員ブロッカー化してるから、生半可な攻撃は通らない。

 三日月仮面の場には、それこそ3体しかクリーチャーが居ないのに!

 

「……」

「フッ、言葉も出ないか。なら、このまま決める。我が同志から享け賜わったこの切札で、お前の罪を裁く!」

 

 天使が飛翔し、剣を交差すると共に雷撃を放つ。

 稲妻が三日月仮面のシールドを薙ぎ払おうとしたその時。

 

「ニンジャ・ストライク4、《光牙忍ハヤブサマル》召喚!」

「何だ? 1体防いだだけじゃ、何にもならないぞ!」

 

 飛んできたのは、鉄壁を誇る守護者。

 しかし、それだけでは止められきれない。

 

「ああ。ただし、ブロッカー化させるのは、《【問2】 ノロン》だ」

「……何?」

「《ノロン》でチャンプブロック」

 

 その機体を犠牲にして、《ノロン》が攻撃を防いだ。

 

「そして、クリスタル・ドラゴンである《ノロン》が破壊されたので、墓地の《グールジェネレイド》2体を復活させる!!」

 

 そうか。

 ドラゴンが破壊される、ということが重要だったのか。

 墓地から《グールジェネレイド》が腐り落ちた肉を滴らせてはいずり出る。

 

「だ、だけど、まだ終わってない! 《コマンデュオ》でシールドをW・ブレイク!」

 

 砕け散るシールドが三日月仮面に降りかかる。

 しかし、彼はそれに全く動じる様子が無い。

 

「後に続け! 《ジェネラローズ》でシールドをW・ブレイク!」

 

 今度は赤薔薇の杖がシールドを突き刺した。

 しかし。そこから、光が漏れ出でる。

 

「S・トリガー、《終末の時計 ザ・クロック》。君のターンは終了だ」

「くぅっ……!!」

 

 悔しそうに彼女は歯噛みした。

 三日月仮面のシールドは残り1枚というとこで、攻撃が止められてしまったからだろう。

 もう、こうなれば彼の反撃を避ける手段はどこにも無かった。

 

「私のターン。クリーチャーの召喚も呪文の詠唱も出来ないので、このまま攻撃させて貰う。まず《オーパーツ》で《アルファリオン》を攻撃――するとき、革命チェンジ発動! トリガーは、自分の闇か水のドラゴンの攻撃だ!」

 

 次の瞬間、身体が組み変わるようにして、水晶の龍がその場に降り立つ。

 まるで、三角形を積み上げたようなそれが吠えると、周囲の空間が分解されていく。

 

 

 

「正義の公式を見つけ出せ! 《秘革の求答士 クエスチョン》!」

 

 

 

 次の瞬間、巨大な電子龍の狙いは《アルファリオン》に向けられる。

 そして、2つの選択肢が再び突き付けられた。

 YESかNOというアイコンが現れる。

 

「では、君に選択してもらおう! 何、簡単な事だ。《アルファリオン》を君は破壊するか、しないかだ。ただし、破壊しなければその瞬間、君のクリーチャーを全てバウンスするがね!」

 

 さらに、そのNOのアイコンに爆弾のマークが浮かび上がる。

 どちらを選んでも、確実にトリス・メギスが不利になることは変わりないことを意味するように。

 

「く、くそっ……! 《アルファリオン》を破壊だ! 手札に《オーパーツ》はいるが、クリーチャーが2体残っていれば問題は無い! あたしにはまだ4体もクリーチャーが居るんだからな!!」

「そうか。それでは、1体目の《グールジェネレイド》で《コマンデュオ》に攻撃! その時、《オーパーツ》に革命チェンジ! 効果でカードを2枚引き、そちらは場のカードと手札から2枚を山札の下に送ってもらう!」

「くそっ、手札はもう無い……! 《ジェネラローズ》と《コマンデュオ》を山札の下に!」

 

 攻撃先のクリーチャーが居なくなったので、攻撃は中断された。

 しかし。まだ、三日月仮面の攻勢は終わって等いなかった。

 

「《グールジェネレイド》で相手を攻撃――するとき、革命チェンジ! 2体目の《オーパーツ》をバトルゾーンに!」

「嘘だろオイ……!」

「さあ、カードを2枚、山札の下へ送れ!」

「くっ、《パラス・ルーソワ》と《ルルフェンズ》を送る……!」

 

 当然、トリス・メギスの手札は無く、場にはもうクリーチャー2体を残すのみ。

 それらも電磁波によって容赦なく量子分解されていく。

 彼女の場も、手札も、完全に消えてしまったのであった。

 

「シールドをW・ブレイク!」

「S・トリガー、《Dの牢閣 メメント守神宮》……ダメだ、クリーチャーが居ないから、もうブロッカー化しても意味がない……!」

「トリガーはもう無いな? ならば、これで終わりだ」

 

 悔しさと。憎悪と。無力感でわなわなと震えるトリス・メギス。

 魔導司の前には、もうシールドも、クリーチャーも存在はしなかった。

 

 

 

「《ザ・クロック》でダイレクトアタック!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 俺達は驚きで言葉が出なかった。

 あの強敵、トリス・メギスが屠られた。

 やはりこの三日月仮面、強い――!

 

「く、くそっ、何で、だよっ……!! あたしの、あたしのα(アルファ)が、お前如きに、敗れるなんて、あり得ない……!」

 

 地面に這いつくばり、殺意のこもった視線を恨めし気に向けるトリス・メギス。

 

「その様子ではもう、何も出来ないだろう」

「っぐぅ、この野郎……」

 

 血反吐が床にばら撒かれた。

 かなりの負担が掛かっているように思えた。

 今まで彼女に相当なヘイトを溜めていた紫月でさえ、彼女に近づこうとはしなかったほどに、弱っていた。

 

「だ、めだ、あたしは……ここで負けるわけには……」

「何でそこまで」

 

 俺の口から、思わず言葉が漏れた。

 それははっきりと聞き取れたのか、トリス・メギスは口角を釣り上げて、精一杯に笑ってみせる。

 それも、狂喜を孕んだ笑みで。

 

「はっ、決まっているだろ! 命令だ。あの方の命令が、あたしに力を与える……! あたしは、あたしはあの方の裁きの道具に過ぎない。だが、道具として使われ、使い捨てられることにこの身体は、この心は悦びを感じる! あの方に死ねと言われれば、あたしは喜んで首を自ら撥ねるだろう! だが、今はまだその時じゃない……! この命令、遂行するまで死ねるもんか!」

「っ……!」

 

 狂いに狂った忠誠心。

 それも、沼に打たれた杭の如く深いものが根底にはある。

 それを前に、俺達は茫然と立ち尽くすしかなかった。

 

「ところで、君達は一体何を企んでいる? 魔導司の社会の事など知らないが、君たちの組織に何か異変が起こっているのは確かだ。特に、ワイルドカードが現れてからね」

「教えるわけねぇだろ? あたしは、同志に忠誠を誓っている! 同志を裏切るわけには……いかねぇのよ!」

 

 次の瞬間、彼女は1枚のカードを掲げた。

 それが、暗い廃倉庫の中を一瞬で真っ白に染め上げる。

 俺達も思わず目を手で、腕で覆った。

 あまりにも眩い光であった。下手をすれば、俺達の目が潰れてしまうのではないかと思わんばかりの光だった。

 しばらく、それは続いたのは瞼越しからでも分かった。

 そして、それが完全に消えた時。

 もう、その場から魔導司の姿も、そして三日月仮面の姿も完全になくなっていた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「で、お兄ったらその後2時間くらいした後にトイレから出てきたんだよ? 有り得なくない? トイレで寝落ちてたんだって!」

 

 次の日。昨日は結局何も出来なかったので、埋め合わせではないが放課後に俺達は商店街のカードショップに集まっていた。と言っても、ブランは先に帰ってしまったので、俺と紫月、花梨の3人だけだが。

 花梨がノゾム兄への不満をぶちまけながら紫月とデュエマする中、俺は昨日の事件について考えていた。

 暴走したエリアフォースカード。

 理由は何故だ?

 正々堂々と決闘を挑むジョニー。

 思惑は何処だ?

 そして、俺達を助けに来てくれる三日月仮面。

 正体は誰だ? 目的は?

 考えれば考えるほど、ドツボに嵌ってしまうこの感覚。見えない迷宮を進んでいるようだった。

 

「ね、耀? そう言えば、お兄が耀と今度はデュエマしたい、って」

「そうか」

「……何か上の空だね、耀」

「い、いや、そうでもねぇぞ!?」

 

 こいつには全部ばれてるか。

 紫月の視線が痛々しい。隠せてないじゃないですか、と言わんばかりに。

 

「ノゾム兄ともデュエマしてないからなあ、しばらく」

「うんうん、それが良いよ。時間があるうちに。でも、あたしも耀とデュエマしたいなー、って」

「駄目ですよ。せめて私を倒してからにしてください」

「にゃー、ケチー……」

 

 俺は透明なデッキケースの外から、エリアフォースカードを覗く。

 それは未だに仄かに輝いていた。何かに共鳴するようにして。

 

『マスター。いずれ、あのジョニーと決着を付ける時が来るでありますよ』

「……ああ」

 

 それが間違いなく、この事件の、俺達の関わってきた事件のカギを握っていることは間違いない。

 魔導司よりも先に、それを手に入れなきゃいけない。

 もう、俺は巻き込まれただけじゃない。立派な当事者だ。

 俺達から日常を奪ったものの正体を――突き止めてやるんだ。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「見つけたデース!」

 

 或瀬ブランは1人、ノートパソコンと睨めっこしていた。

 が、ようやくそのデータを見つけ出す。

 それは、疑惑の人物の核心に間違いなく迫る者であった。

 

「鎧龍決闘学園で1年生の時に、学校代表チームに選抜された天才デュエリスト……随分と手間がかかりましたネ……」

 

 ブランはそのページをクリックした。

 そこには、求めていた人物の名があった。

 そして顔写真も、現在よりだいぶ幼いが、一致している。

 

 

 

「――伝説の正体、此処に見たり、デス……!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。