学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
巨大な機械の龍。
これが、三日月仮面のエースクリーチャー。
こうしてデュエルの時にはっきり見るのは初めてだ。
「テック団最強のクリーチャー、《オーパーツ》! その効果は、登場時にカードを2枚引く。そして、手札かバトルゾーンからカードを二枚選んで、山札に戻してもらおうか!」
「くそっ……たれ! 手札のカードと《アクロアイト》を山札の下に!」
「そして、シールドをW・ブレイク!」
相手の場数が減った上に、手札も消えた。
だけど、結局相手の優勢はそのままだ。しかも――
「S・トリガー、《ドラゴンズ・サイン》! 《指揮の精霊龍 コマンデュオ》をバトルゾーンに! 効果でカードを1枚ドローして、《太陽の精霊龍 ルルフェンズ》も場に出す! 効果で出せるクリーチャーはいない!」
「ふむ、ターンエンドだ」
「そして、これでゲームエンドだ! ドロー!」
カードを引いたトリス・メギスは、狂喜に満ちた表情でカードを《レッドローズ》の頂きに叩きつけた。
「来たぜ……本当に、あたしの切札は、あたしが一番来て欲しいと思った時に来てくれるよなあ!」
「ほう?」
「場に、エンジェル・コマンドが5体以上いるため、G・ゼロ発動!」
エンジェル・コマンド――そうか。エンジェル・コマンド・ドラゴンもエンジェル・コマンドに含むのか。
そして、こんな条件をG・ゼロ条件にするようなクリーチャーはあいつしかいない。
浮かび上がったのは、
「審判の日は訪れた! 我が主より戴きし
《レッドローズ》進化、《聖霊王アルファリオン》!」
天空から雷が何本も降り注いだ。
同時に、叢雲の切れ間から、純白の天使王が降り立つ。
裁きの剣を両手に掲げ、天使の軍勢を従え、全てを正義の下に裁く。
「《アルファリオン》が居る限り、もうお前は呪文を唱えられず、クリーチャーを召喚しようとしてもそのコストは+5され、もう場に出せない。その手のデッキに《クロック》が居るのは分かっているが……こいつはどうだ? 仮にこのターン耐え凌げても、次のターン何も出来ないだろ!」
マジかよ……!
つまり、クリーチャーも出せないし、呪文も唱えられないってことか!?
しかも、相手のクリーチャーは全員ブロッカー化してるから、生半可な攻撃は通らない。
三日月仮面の場には、それこそ3体しかクリーチャーが居ないのに!
「……」
「フッ、言葉も出ないか。なら、このまま決める。我が同志から享け賜わったこの切札で、お前の罪を裁く!」
天使が飛翔し、剣を交差すると共に雷撃を放つ。
稲妻が三日月仮面のシールドを薙ぎ払おうとしたその時。
「ニンジャ・ストライク4、《光牙忍ハヤブサマル》召喚!」
「何だ? 1体防いだだけじゃ、何にもならないぞ!」
飛んできたのは、鉄壁を誇る守護者。
しかし、それだけでは止められきれない。
「ああ。ただし、ブロッカー化させるのは、《【問2】 ノロン》だ」
「……何?」
「《ノロン》でチャンプブロック」
その機体を犠牲にして、《ノロン》が攻撃を防いだ。
「そして、クリスタル・ドラゴンである《ノロン》が破壊されたので、墓地の《グールジェネレイド》2体を復活させる!!」
そうか。
ドラゴンが破壊される、ということが重要だったのか。
墓地から《グールジェネレイド》が腐り落ちた肉を滴らせてはいずり出る。
「だ、だけど、まだ終わってない! 《コマンデュオ》でシールドをW・ブレイク!」
砕け散るシールドが三日月仮面に降りかかる。
しかし、彼はそれに全く動じる様子が無い。
「後に続け! 《ジェネラローズ》でシールドをW・ブレイク!」
今度は赤薔薇の杖がシールドを突き刺した。
しかし。そこから、光が漏れ出でる。
「S・トリガー、《終末の時計 ザ・クロック》。君のターンは終了だ」
「くぅっ……!!」
悔しそうに彼女は歯噛みした。
三日月仮面のシールドは残り1枚というとこで、攻撃が止められてしまったからだろう。
もう、こうなれば彼の反撃を避ける手段はどこにも無かった。
「私のターン。クリーチャーの召喚も呪文の詠唱も出来ないので、このまま攻撃させて貰う。まず《オーパーツ》で《アルファリオン》を攻撃――するとき、革命チェンジ発動! トリガーは、自分の闇か水のドラゴンの攻撃だ!」
次の瞬間、身体が組み変わるようにして、水晶の龍がその場に降り立つ。
まるで、三角形を積み上げたようなそれが吠えると、周囲の空間が分解されていく。
「正義の公式を見つけ出せ! 《秘革の求答士 クエスチョン》!」
次の瞬間、巨大な電子龍の狙いは《アルファリオン》に向けられる。
そして、2つの選択肢が再び突き付けられた。
YESかNOというアイコンが現れる。
「では、君に選択してもらおう! 何、簡単な事だ。《アルファリオン》を君は破壊するか、しないかだ。ただし、破壊しなければその瞬間、君のクリーチャーを全てバウンスするがね!」
さらに、そのNOのアイコンに爆弾のマークが浮かび上がる。
どちらを選んでも、確実にトリス・メギスが不利になることは変わりないことを意味するように。
「く、くそっ……! 《アルファリオン》を破壊だ! 手札に《オーパーツ》はいるが、クリーチャーが2体残っていれば問題は無い! あたしにはまだ4体もクリーチャーが居るんだからな!!」
「そうか。それでは、1体目の《グールジェネレイド》で《コマンデュオ》に攻撃! その時、《オーパーツ》に革命チェンジ! 効果でカードを2枚引き、そちらは場のカードと手札から2枚を山札の下に送ってもらう!」
「くそっ、手札はもう無い……! 《ジェネラローズ》と《コマンデュオ》を山札の下に!」
攻撃先のクリーチャーが居なくなったので、攻撃は中断された。
しかし。まだ、三日月仮面の攻勢は終わって等いなかった。
「《グールジェネレイド》で相手を攻撃――するとき、革命チェンジ! 2体目の《オーパーツ》をバトルゾーンに!」
「嘘だろオイ……!」
「さあ、カードを2枚、山札の下へ送れ!」
「くっ、《パラス・ルーソワ》と《ルルフェンズ》を送る……!」
当然、トリス・メギスの手札は無く、場にはもうクリーチャー2体を残すのみ。
それらも電磁波によって容赦なく量子分解されていく。
彼女の場も、手札も、完全に消えてしまったのであった。
「シールドをW・ブレイク!」
「S・トリガー、《Dの牢閣 メメント守神宮》……ダメだ、クリーチャーが居ないから、もうブロッカー化しても意味がない……!」
「トリガーはもう無いな? ならば、これで終わりだ」
悔しさと。憎悪と。無力感でわなわなと震えるトリス・メギス。
魔導司の前には、もうシールドも、クリーチャーも存在はしなかった。
「《ザ・クロック》でダイレクトアタック!」
※※※
俺達は驚きで言葉が出なかった。
あの強敵、トリス・メギスが屠られた。
やはりこの三日月仮面、強い――!
「く、くそっ、何で、だよっ……!! あたしの、あたしの
地面に這いつくばり、殺意のこもった視線を恨めし気に向けるトリス・メギス。
「その様子ではもう、何も出来ないだろう」
「っぐぅ、この野郎……」
血反吐が床にばら撒かれた。
かなりの負担が掛かっているように思えた。
今まで彼女に相当なヘイトを溜めていた紫月でさえ、彼女に近づこうとはしなかったほどに、弱っていた。
「だ、めだ、あたしは……ここで負けるわけには……」
「何でそこまで」
俺の口から、思わず言葉が漏れた。
それははっきりと聞き取れたのか、トリス・メギスは口角を釣り上げて、精一杯に笑ってみせる。
それも、狂喜を孕んだ笑みで。
「はっ、決まっているだろ! 命令だ。あの方の命令が、あたしに力を与える……! あたしは、あたしはあの方の裁きの道具に過ぎない。だが、道具として使われ、使い捨てられることにこの身体は、この心は悦びを感じる! あの方に死ねと言われれば、あたしは喜んで首を自ら撥ねるだろう! だが、今はまだその時じゃない……! この命令、遂行するまで死ねるもんか!」
「っ……!」
狂いに狂った忠誠心。
それも、沼に打たれた杭の如く深いものが根底にはある。
それを前に、俺達は茫然と立ち尽くすしかなかった。
「ところで、君達は一体何を企んでいる? 魔導司の社会の事など知らないが、君たちの組織に何か異変が起こっているのは確かだ。特に、ワイルドカードが現れてからね」
「教えるわけねぇだろ? あたしは、同志に忠誠を誓っている! 同志を裏切るわけには……いかねぇのよ!」
次の瞬間、彼女は1枚のカードを掲げた。
それが、暗い廃倉庫の中を一瞬で真っ白に染め上げる。
俺達も思わず目を手で、腕で覆った。
あまりにも眩い光であった。下手をすれば、俺達の目が潰れてしまうのではないかと思わんばかりの光だった。
しばらく、それは続いたのは瞼越しからでも分かった。
そして、それが完全に消えた時。
もう、その場から魔導司の姿も、そして三日月仮面の姿も完全になくなっていた。
※※※
「で、お兄ったらその後2時間くらいした後にトイレから出てきたんだよ? 有り得なくない? トイレで寝落ちてたんだって!」
次の日。昨日は結局何も出来なかったので、埋め合わせではないが放課後に俺達は商店街のカードショップに集まっていた。と言っても、ブランは先に帰ってしまったので、俺と紫月、花梨の3人だけだが。
花梨がノゾム兄への不満をぶちまけながら紫月とデュエマする中、俺は昨日の事件について考えていた。
暴走したエリアフォースカード。
理由は何故だ?
正々堂々と決闘を挑むジョニー。
思惑は何処だ?
そして、俺達を助けに来てくれる三日月仮面。
正体は誰だ? 目的は?
考えれば考えるほど、ドツボに嵌ってしまうこの感覚。見えない迷宮を進んでいるようだった。
「ね、耀? そう言えば、お兄が耀と今度はデュエマしたい、って」
「そうか」
「……何か上の空だね、耀」
「い、いや、そうでもねぇぞ!?」
こいつには全部ばれてるか。
紫月の視線が痛々しい。隠せてないじゃないですか、と言わんばかりに。
「ノゾム兄ともデュエマしてないからなあ、しばらく」
「うんうん、それが良いよ。時間があるうちに。でも、あたしも耀とデュエマしたいなー、って」
「駄目ですよ。せめて私を倒してからにしてください」
「にゃー、ケチー……」
俺は透明なデッキケースの外から、エリアフォースカードを覗く。
それは未だに仄かに輝いていた。何かに共鳴するようにして。
『マスター。いずれ、あのジョニーと決着を付ける時が来るでありますよ』
「……ああ」
それが間違いなく、この事件の、俺達の関わってきた事件のカギを握っていることは間違いない。
魔導司よりも先に、それを手に入れなきゃいけない。
もう、俺は巻き込まれただけじゃない。立派な当事者だ。
俺達から日常を奪ったものの正体を――突き止めてやるんだ。
※※※
「見つけたデース!」
或瀬ブランは1人、ノートパソコンと睨めっこしていた。
が、ようやくそのデータを見つけ出す。
それは、疑惑の人物の核心に間違いなく迫る者であった。
「鎧龍決闘学園で1年生の時に、学校代表チームに選抜された天才デュエリスト……随分と手間がかかりましたネ……」
ブランはそのページをクリックした。
そこには、求めていた人物の名があった。
そして顔写真も、現在よりだいぶ幼いが、一致している。
「――伝説の正体、此処に見たり、デス……!」