学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第49話:アルカナの偽証─激突

※※※

 

 

 

 正面玄関に出てみると、そこには倒れ伏せた生徒達。

 どうやら、オーパーツがルーン用紙を分解してしまったらしい。

 一見、無敵に見えるこの能力だったが、この助っ人のおかげで俺達はようやく外に出ることが出来たのだった。

 とにかく、花梨の無事が心配だが、この人のルーン分解で助けられると考えると少し安堵した。

 問題はそもそも魔法に掛かっていなかった場合なのだが、それでもエリアフォースカードを持っていない彼女には狙われる理由が無いのである。

 

「剣道場、か。私にも急ぐ理由がある」

「三日月仮面にも?」

「ああ。刀堂花梨――いや、君たちの友人に何かがあってはいけない。校舎の中を探しても居なかった。君たちのおかげで居場所が分かって良かったと思ってるよ」

「何で分かったんですか」

 

 紫月が白い目を向ける。

 

「ふっ、正義の味方は何でもお見通しだよ」

「……そう言えば、三日月仮面。その花梨の兄ちゃん、刀堂ノゾムっていうんだけど、制服が違う背の高い変な髪型の男子生徒はいなかったか!?」

「……さあ、見なかったな。少なくとも彼は今此処には居ないと思って良いだろう」

 

 居ない――!?

 ノゾム兄は本当に何処に行ったのだろう。

 居場所はいち早く見つけなきゃいけないのに……。

 

「んっ」

 

 紫月がぶるっ、と突然、身震いした。

 

「どうした?」

「い、いえ、何かとても嫌な気配がして」

 

 嫌な気配?

 そう思った次の瞬間だった。

 何だろう。凄まじい寒気が襲った。

 とても生理的な嫌悪を催すような、そんな力だ。

 次の瞬間だった。

 轟!! という音と共に、異形が姿を現す。

 どうやら、ルーン魔法で実体化したクリーチャーのようだった。

 どうしよう。これ以上、俺達は無用な戦いは避けたいのだが――そう思った矢先、

 

「……三日月仮面。あなたのその力、確かに体力を消費するようですね」

「任されっぱなしって癪に触んだよ。俺らにも、ちっとはやらせてくれや!」

 

 立ち塞がるのは桑原先輩と紫月だった。

 

「じゃあ、俺も――」

 

 俺も駆け寄ろうとするが、制止したのは紫月だった。

 

「白銀先輩。三日月仮面と一緒に居て下さい。万が一のことがあってはいけません」

「大丈夫。信じてくれや」

 

 2人の力強い言葉。

 だが、俺はまだ戸惑いを隠せない。

 俺なんかが行っても、力になれるのか?

 

「……少年。私からも頼む」

「三日月仮面……?」

「今回、何が起こるか分からんからな」

 

 空間が開いていくと同時に、三日月仮面はマントを翻した。

 その言葉がやけに静かで――俺もそれに着いて行くのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 辿り着いた剣道場。

 呻き声を上げる生徒達の姿。

 しかし、それさえもオーパーツが一気にルーンを分解し、地面に倒れ伏せていく。

 その様を見て、俺は彼との力量差を無力に感じるばかりだった。

 

「……少年!」

「は、はいっ」

 

 強い声が響いた。

 

「無力である、と考えているのではないか? そんなことは無い。私は、お前1人が背中に居るだけで頼もしいのだぞ」

「……そんなことを言っても」

 

 

 

「痛定思痛――まだ不完全とはいえ我がルーンを破るとは、つくづく恐ろしい男よ」

 

 

 

 次の瞬間、大量の紙が巻きあがり、その中央から人影が現れる。

 俺はいきなり出てきたそれを前に、足が竦んだ。

 とても小さな子供のようだった。

 黒いローブを目まで覆っており、素顔は分からない。

 だが、靴だとかの類は履いておらず、裸足で違う文明からやってきたものじゃないかと疑うほどだ。

 

「子供っ……!?」

 

 堪らず声を漏らす。

 遂に止むルーン用紙の嵐。

 そして、宙に浮かんでいる人影を俺達は認めた。

 あれは――

 

「花梨!!」

 

 思わず叫ぶ。

 意識は失っているようだが、その周囲にルーン用紙が紫電を発して取り囲んでおり、空中の檻となっている。

 俺は吼えるようにして、その子供――いや、その正体である恐ろしい魔導司に怒鳴った。

 

「お前……誰だ!!」

 

 誰か、と聞いたものの、目の前に居るのは間違いなくあの魔導司だ。

 しかし、今までのそれとは規格が違う今回の騒動。

 それを引き起こせるのは相応の力を持つ者。

 

「失礼千万――私を誰だと思っている。だが、名乗れと言われて名乗らないのも組織を統べる者としてどうかと思うのでな」

 

 誰に言うでもなく、魔導司は答えた。

 

 

 

「私はファウスト。アルカナ研究会会長にして、大魔導司(アークウィザード)の異名を冠するものよ」

 

 

 

 アルカナ研究会の会長――つまり、今まで出てきた魔導司達のトップ。

 まだ、信じられない気分だが、とうとう敵の親玉が出てきてしまったということだろう。

 これだけの事態を引き起こせたのも納得だ。

 

「さて、諸君に提案があるのだがね。此処に、諸君らの友人が囚われている」

「っ……花梨を離せ!!」

「ああ、此処で解放したら、地面数メートルからコンクリートの地面に叩き落とされることになるがね」

 

 寒気だった。

 もう1度花梨の置かれている状況を確認する。

 10mほどの高さの場所で閉じ込められているのだ。

 落とされればどうなるかは、想像に難くない。

 

「……卑怯な。人質か」

「貴様等にいきなり飛び掛かられては困るのでな」

 

 言ったファウストの口元は一切笑っていない。

 脅迫ではないことが分かる。

 

「……要件は何だ」

 

 進み出たのは三日月仮面だった。

 その声からは今までの陽気さは一切感じられない。

 

「……無関係なやつを巻き込んで、お前は何を考えてるんだ?」

「私には手段を選んでいられない理由があるのでね。要件は簡単な事だがな。エリアフォースカードを全て私に寄越せ」

「っ……!!」

 

 投げかけられたのは無条件降伏の要件。

 それが引き換えだという。

 従わなければ、花梨が殺される。絶体絶命の状況だ。

 確かに俺達は今まで、これを護るために戦ってきた。だけど、目の前の相手はとても強くて、どうしようもない。

 

「……差し出すよ。エリアフォースカード」

 

 俺は前に進み出た。

 命には、代えられないものだ。

 

『マスター!!』

「……悪い、チョートッQ。俺は、誰かの命を引き換えにモノを持ち続けることは出来ないよ」

『……悔しいでありますが、マスターはそういう人間でありましたな』

「フン。所詮は人間。脆いな。おい、仮面の。お前はどうだ?」

 

 ファウストの投げかけ。

 三日月仮面なら、きっと――

 

「耀。お前の心意気、確かに受け取った」

 

 それは、確かに三日月仮面から出た言葉だったのだろう。

 だけど、俺には酷く懐かしく聞こえた。

 

「仮面の。さあ、お前もエリアフォースカードを――」

「確かに。これを渡せば、花梨は助かるんだろ」

 

 え? 俺達が呆気に取られている間に、彼はまくしたてるように言った。

 

「――それでも、断る!!」

 

 ファウストの顔に初めて動揺が浮かんだ。

 

「正義の味方は――大変だぜ。誰かの大事なモノも、誰かの大事な命も、全部守らなきゃいけないんだからな!!」

「正気か」

「三日月仮面!?」

 

 俺も同じだ。

 この人、一体何を考えてるんだ!?

 

「ならば、この少女はこの場で殺す――痛みも感じる暇も与えん」

 

 俺は駆け出していた。

 花梨を受け止める為に。間に合わないと分かっていても――

 

「ああ、正気だ。その証拠に――」

 

 彼は空高く牢獄から落下した――”はずの”花梨を指差した。

 その身体は、消えるかのように粒子となって空中で粒子となって”分解”されていく。

 

「む」

 

 ――三日月仮面の腕に抱えられるようにして、花梨の身体が”再構成”されていった。

 もう、10秒も経たないうちに彼の手には完全に彼女の姿が戻っており、檻の中の花梨は消えていた。

 な、何が起こったんだ!?

 

「……っふぅ!! 一世一代、最初で最後の大手品!! 上手く行く見込みが無きゃ、降参だった……!! こういう時もあろうかと、”自分で”練習してきた甲斐があったもの!」

 

 え? え!?

 まさか、これも分解の力!?

 遠くにいる人間を分解して、自分の手元に再構成したのか!?

 

「吃驚仰天……お前。何処まで規格外なんだ? 仮面の」

「はっ、私は三日月仮面だぞ。正義の味方は誰も見捨てはしない。これで条件はリセットだ」

 

 押し黙るファウスト。

 何が起こったのか分からないけど、花梨は助かった。

 本当にこの人、何者なんだ。最も、当の本人にも出来るかどうか分からなかったみたいだけど。

 

「まあ、想定外ではない。それに、そこまでの力を行使すれば――」

「正義の味方に限界は無い!」

 

 言った彼は花梨を俺の肩に負ぶわせると振り返った。

 そして、大魔導司に指を突き立てる。

 

「この俺にとって、目下最大の障害。アルカナ研究会会長・ファウスト。お前を此処で倒す。花梨を人質に取った事、後悔しろ」

「……何から何まで想定通りだ」

 

 2人は相対する。

 三日月仮面の手には、エリアフォースカードが握られている。

 戦いが、始まるんだ。2人のぶつかり合いが、ついに。

 

「……ルーン魔法を使ってる間、他の魔法は使えないと聞いた。お前達魔導司が空間を開くのは魔法でやっている以上、ここでオレと戦うことはお前のバリアは解除される」

「分かっている。その上で、見敵必殺――お前を徹底的に倒す」

「小悪党の台詞にはピッタリだな。女の子を人質に取るような、小悪党には」

「これが私のやり方だ。相手を肉体、そして精神。両面から徹底的に苛め抜く。そのうえで、お前の仮面も引き剥がしてくれよう。その厚い面の皮ごとな」

 

 空気が変わった。

 三日月仮面のエリアフォースカードが光り輝いた。

 俺は、彼が負けるとは微塵も思ってはいない。あれだけ強く、あれだけ凄い力を持つ三日月仮面なんだ。

 あのトリス・メギスも倒したんだ。ファウストだって――そう思ってしまう俺と、今までの戦いとはこれは違う、ファウストと戦うのはやめてほしいと止める俺が居る。

 しかし。

 

「なあ、”耀”」

 

 今までになく、親しく慣れたノイズ交じりの声が俺に向いた。

 

「私は、楽しかったぞ。三日月仮面として、お前と共に戦うのは」

 

 もう、今更止めることは出来ない。

 これは、彼の戦いなのだ。

 俺は思えば、既に彼の正体を心の何処かで分かっていたのだろう。

 だから――止めることなど、出来やしなかった。

 

 

 

「デュエルエリアフォース――!!」

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