学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第54話:regret─荒療治

※※※

 

 

 

 唐突に始まった俺と紫月のデュエル。仕方ないので、場所は近所の公園。

 俺の場には、《ヤッタレマン》。対する彼女の場には、《戦略のDH アツト》が居る。

 互いに滑り出しは順調。しかし。早速彼女は攻め込みにかかってきた。

 

「では、3マナをタップして《アツト》から進化。《プラチナ・ワルスラS》」

「墓地ソースか!?」

「さあ、何でしょう。そのまま攻撃し、カードを3枚引きます。手札から、《S級不死 デッドゾーン》を捨てます。W・ブレイク」

 

 早速叩き割られるシールド。流石、紫月のフェイバリットカード、《プラチナ・ワルスラS》。

 だけど、こちらもやられっぱなしは面白くない。

 S・トリガーが発動した。

 

「トリガーで《フェアリー・ライフ》を唱える。効果でマナを1枚、山札の上から増やす!」

「ふむ。ターンエンドです」

「なあ、紫月……お前何で急にデュエマしようとか言い出したんだ? 俺がデッキ持ってたから良かったものの」

「以前先輩は私をデュエマで倒して正気に戻したですよね? お返しです」

「俺別に何にも憑りつかれてねぇぞ」

 

 憤慨しながら俺はカードを引く。

 また、いつものようにはぐらかされたような気がするが……。

 よし。とにかく、継続的にアドを稼ぎまくるあのクリーチャーは厄介だ。

 早めに除去しないと……。

 

「3マナで《ドツキ万次郎》召喚! 効果で《プラチナ・ワルスラS》を山札の下に置く」

「流石に手が早いですね」

「何回もやられてるからな」

「……ですが、こちらも成す術無くやられるとでも?」

 

 紫月のターン。

 4マナをタップした彼女。そこから現れたのは――

 

「《奇天烈 シャッフ》召喚。効果で、指定した数字と同じコストの呪文を先輩は唱えられず、クリーチャーは攻撃できません」

「うわ、面倒なのが出てきた……!」

「効果で指定するのは3。ターンエンドです」

 

 うわ、これで《フェアリー・クリスタル》が唱えられなくなっちまった。

 おまけに今回、《ダンガンテイオー》が1枚抜けてるからな……大丈夫か俺。一応、入れ替えのカードは入れてるけど。

 

「俺のターン……じゃあ3マナで《ニヤリー》召喚だ。効果で、山札の上から3枚を表向きにする!」

 

 捲られたのは《ジョリー・ザ・ジョニー》と《デットソード》、《ピクシー・ライフ》。

 その中から無色の2枚を手に取る。よし、これで次のターン。俺は《ジョリー・ザ・ジョニー》を召喚できる。

 手札も補充できたし、準備は万端だ!

 

「……やはり、先輩とのデュエマはヒリヒリしますね。でも、負けませんから。先輩に甘く見られたくは無いので」

「甘く……見てる?」

「はい。見くびられては困りますから。まず、5マナをタップ」

 

 彼女は5枚のマナをタップすると、言った。

 ちょっと待て。こいつの超次元ゾーン、確か――

 

「――《超次元 リバイヴ・ホール》。その効果で、《デッドゾーン》を回収して超次元ゾーンからコスト7以下の闇のサイキックを出します。《勝利のガイアール・カイザー》をバトルゾーンに」

「生姜……! やべぇぞコレは」

「そして、《勝利のガイアール・カイザー》はアンタップしているクリーチャーを攻撃できます。《ヤッタレマン》に攻撃するとき、S級侵略不死(ゾンビ)発動です」

「げっ……!」

 

 重ねられるのは不死身の侵略者。

 墓地から、手札から、闇のコマンドさえいれば何度でも蘇る不屈の兵士。

 

「《S級不死(ゾンビ) デッドゾーン》侵略進化。登場時効果で《ドツキ万次郎》をパワー-9000して破壊。さらに、バトルで《ヤッタレマン》を破壊」

「全滅した……! 俺のクリーチャーが!?」

「ターンエンドです」

 

 幸い、殴っては来なかったか。

 だけど、コスト軽減元を倒されたことで俺はこのターンに《ジョニー》を出せない。

 かといって、あのデカブツを放置しておくことも出来ないし……。

 

「俺のターン……《ドツキ万次郎》召喚! 効果で《デッドゾーン》も山札送りだ!」

「むぅ……その除去は厄介です。墓地が利用できませんからね」

「良いか。俺はもう誰にも傷ついてほしくねえんだ。分かるだろ? 紫月」

「ええ、分かりますよ。私も同じです」

「じゃあ何で──」

 

 彼女は首を横に振った。

 

「傷ついてでも守りたい物がある。先輩は、いつもそうだったはずです。そして私達も皆同じです」

「っ……だけど、俺は……」

 

 だからです、と彼女は反駁する。

 

「皆、もっと強くなりたいのです」

「……俺が、皆を巻き込んだようなものなのに」

「どっち道こうなっていましたよ。私が思うにね。さて……この勝負。一気に攻め込むとしましょう」

「え?」

「では、私のターン」

 

 カードを引いた彼女は、6枚のマナをタップした。

 

「――《シャッフ》NEO進化です。《魔法特区 クジルマギカ》」

「なっ!? そいつかよ!?」

「はい。先輩から戴いた切札。使わせてもらいます。《クジルマギカ》はNEOクリーチャーが攻撃するとき、墓地からコスト5以下の呪文を唱えることが出来ます。唱えるのは当然、《リバイヴ・ホール》。現れなさい、《勝利のガイアール・カイザー》」

 

 マジか。本当に不死身かよ!?

 何回倒しても蘇るんじゃねえか、コレ。

 本当に、紫月の心を体現しているようだ。

 

「そして、シールドをW・ブレイク」

「っ……S・トリガー! 《バイナラドア》で《ガイアール》を超次元に送ってカードを1枚引く!」

「……ターンエンドですよ」

 

 よし、今度こそマナが7枚溜まった。

 ここから反撃、行かせて貰うぜ!

 

「俺のターン。7マナをタップ! 《ジョリー・ザ・ジョニー》を召喚! そして、こいつでシールドをブレイクする時、マスター・W・ブレイク発動! シールド諸共、《クジルマギカ》をぶち抜かせて貰うぜ!」

「っ……トリガーは無し、です」

「ターンエンドだ!」

 

 よし。これでクリーチャーは全滅させた。

 後は一気に攻め込むだけだ。手札には《デットソード》もいるし、圧倒していけばいい。

 

「……先輩、少しいつもの調子が戻ってきましたね」

「え?」

「やはり、デュエルしてる時の先輩は、輝いています。でも――」

 

 私も敗けませんよ。

 そんな言葉が後に続いた。

 2マナで場に出るのは《アツト》だ。

 そして、彼女は――

 

「さっき、《クジルマギカ》を破壊したのはプレミでしたね。5マナで呪文、《狂気と凶器の墓場(ウェポスグレイブ)》。効果で山札の上から2枚を墓地に置き、墓地からコスト6以下のクリーチャーを場に出します。勿論、NEOクリーチャーも進化させて出せるのですよ」

「えっ……ってことは」

「《アツト》進化、《クジルマギカ》」

 

 や、やべえぞ。今度は本当にまずい。

 今の《狂気と凶器の墓場》で墓地に《リバイヴ・ホール》が落ちた。

 だけど、S・トリガーが出れば、まだ返せる……はず。だけど、相当厳しい状況には違いない。

 

「《クジルマギカ》で攻撃。NEOクリーチャーが攻撃したので、コスト5以下の呪文・《リバイヴ・ホール》を墓地から唱えて、《勝利のガイアール》を場に出します。そして――革命チェンジ」

「革命チェンジ!?」

「はい。水のクリーチャーが攻撃したので、手札から《音精ラフルル》に革命チェンジします。これで先輩はもう、呪文を唱えることは出来ません」

 

 割られる最後のシールドを確認した。

 よりによって、《父なる大地》……!

 駄目だ。効果で唱えることが出来ない。逆転はもう不可能だ。

 

 

 

「では、終わりです。《勝利のガイアール・カイザー》でダイレクトアタック」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「結局の所、勝つか負けるかなんてその時次第です」

 

 デュエルの後、ベンチに座った彼女は言った。

 紫月も強くなっていた。

 俺が立ち止まっている間にも、彼女は歩みを止めていなかった。

 

「……そうかなあ」

「あの時負けたのは、三日月仮面だった。それだけの話。ファウストも全力で挑めば、勝てない相手ではないはずです。それに、前に言ったじゃないですか。どんな強敵でも、1人じゃ倒せないかもしれない。でも、私達が補い合えば勝てるはずです。私達には、それぞれ違った個性が、強みがあるのですから。デッキが切り札で構成されてるなら、私達も1人1人が切り札(ワイルドカード)です」

 

 それはそうだ。

 確かに、今まで俺1人の力で解決した事件なんて1つも無い。

 いつも、何かの力を頼ってきた。

 

「だから……私達は、簡単にはやられはしません」

「……紫月」

 

 なのに、俺は――それを信じることが出来なくなっていたのか。

 

「私が先輩を信じたように、先輩も、私を信じてくれませんか?」

「……」

 

 ばちん、と両頬を両手で叩いた。

 気合が入り直った気がした。そうだ。

 こいつが俺を信じてくれているのに、俺がこいつを信じないでどうするんだ。

 俺が、あいつらを、仲間を信じないでどうするんだよ。

 

「なあ、皆を守ってみせるだなんて無責任な事は言えないけど――一緒に戦ってくれるか? こんな俺と一緒でも」

「先輩以外、誰が居るって言うんですか。あなたのようなお人好し、放っておいたら壊れそうですし、私達が居ないとダメでしょう」

「……」

「……最も、私だって怖いです。恐ろしいですよ。また、みづ姉をあんな目に遭わせないか……それを考えるだけで震えそうです」

「そっか……お前も、怖いんだな」

 

 初めて、安心できた。

 紫月も怖かったんだ。

 そうだ。俺は心の何処かで恐怖への拠り所を探していたのか。

 彼女は俺の恐怖を受け入れた。やっと、認めてくれた。

 

「私も大事な人がいますから……先輩の大事な人が傷つくのが怖いって気持ちは……痛い程分かります」

 

 二度と焼き付いて離れないノゾム兄の姿。

 だけど、もう繰り返したりなんかしない。

 どうも俺の仲間は、怖い物知らずってわけじゃないけどそれでも――後に退けない理由があるみたいで。

 

「でも、やられてばかりでは――面白くないでしょう?」

「……それも、そうだな」

 

 最後に彼女が言ったのは、負けず嫌いな彼女らしい理由であった。

 

「同時に、守られてばかりではつまらないって言ったじゃないですか。怖いなら、私が先輩を守ってあげますよ」

「……頼もしいなあ」

「だから、先輩も苦しくなったら私を頼ってください。今回みたいに」

 

 少し、彼女は得意気だった。

 俺は頬が赤くなる。本当に頼りになる後輩だ。生意気だけど。

 巻き込むとか、もう後ろめたいことを考える必要は無いんだ。

 吹っ切らせてくれた彼女に感謝しないと。

 そうか。うじうじしてても、仕方がない。

 エリアフォースカードを持っている以上、向こうから俺達の方にやってくるのは間違いないし、手放したとしても関係ない人を巻き込む可能性がある。

 ならば、道は一つ。最初っから勝てないって諦めてる場合じゃない。

 負けてたまるもんか。ノゾム兄は言った。

 「俺達なら違う道に行ける」と。

 それなら、俺はやってやる。ノゾム兄に、出来なかったことをやる。

 そして――絶対に皆を守ってみせる。

 だけど、どうすればいい? 今のままじゃ、絶対にファウストには勝てない。

 例え勝ったのが時の運の果てだったとしても、あいつが強いのは間違いないんだ。

 どうやって、100%を120%にするか。

 ……いや、出来るはずだ。仲間の力を借りれば、必ず!

 

『そういやチョートッQが居なかったな。どうした? 喧嘩したのか?』

「……」

 

 しまった。今の今まで目をそらしていた事実にシャークウガが気付いてしまったか。

 

「珍しいですね。どうしたのですか?」

「いや、俺が悪いんだけどよ……」

 

 そうだ。あいつ何処に行ったんだ。どうにかして探さないと……。

 

 

「白銀耀」

 

 

 

 鶴の一声。

 未だにうじうじと悩む俺に、声が飛んできた。

 いつからそこに居たのかは分からない。

 そこに居たのは、灼髪の少年――火廣金だった。

 

「お前、どうしたんだ? 火廣金」

「早く来い。君にも関係することだ」

 

 彼の表情は緊迫が迫ったものだった。

 

 

 

 

「――エリアフォースカード、戦車(チャリオッツ)が再び活動を開始した」

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