学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第55話:剣VS弾丸─争奪戦

「――神々の従者、ロスト・クルセイダー」

 

 大魔導司――ファウストは徐に呟いた。

 自らの切札、アルカクラウンを手にし、紫色の水晶に覆われたそれを眺めていた。

 封印されているのは、炭化してボロボロのカードであった。

 

「アルカクラウン。お前の力が最大限に高まれば――これを解放するのは造作も無い事だろう」

「ええ、ええ、仰る通りです。創造して差し上げましょう、全てを超絶した究極の神々の世界を」

「流石、エリアフォースカードの守護獣……造られしものでありながら、その力の本質はオリジナル、原典と何ら遜色がない」

「0番――道化(クラウン)の名の通り。貴方の切札としてなんなりとお使いください」

 

 怪しく、道化の瞳が光った。

 吸い込まれそうな輝きに、危うくファウスト自身も感覚を狂わされる。

 一度は粉砕されたものの、再度復活したそれの力は、やはり魔性のものであった。

 しかし。全てのエリアフォースカードを集めるにはさらなる力が必要。そう信じ、彼女は迷わず自らの更なる切札の復活に手を掛ける。

 

 

「すべては我らの思い通りですから――フフフ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

戦車(チャリオッツ)が目覚めた」

 

 戦車(チャリオッツ)。それは、主が居ないまま目覚めてしまったエリアフォースカードの1枚。

 それが現れたと火廣金は告げた。つまり。再び街中に火のジョーカーズが現れるということをも意味していた。

 そうなるとまたあの時のような被害が出る可能性がある。今度はもう、三日月仮面、いやノゾム兄も居ない。

 やるべきことは決まっている。何が何でもあのカードを止めないといけない。ジョニーは――あのカードを抑えるのに必死になっていた。だから俺に呼びかけていた。

 俺がやらないといけないんだ。

 

「目が、変わったな」

「!」

「暗野紫月に襟元を正されたか? 俺に再び立ち向かってきたあの時のように、君の眼は再び炎を取り戻している」

「ああ。ちょっとな」

「別に私は何も」

「まあ良い。君がどうなっているのか見ておきたかったが……心配はいらなかったな、白銀耀」

 

 対立する気は、なさそうだ。

 どうもこの様子だと俺達の邪魔をしに来たというわけでもないらしい。

 今の火廣金はもう、アルカナ研究会の命令で動いているようには見えなかった。

 

「火廣金。俺の力だけじゃ、この事態は解決できない。お前は花梨を助けてくれたし、卑怯な事を良しとはしなかった。ここは俺達と協力して、街に出たクリーチャーを倒してくれないか?」

「……協力、か」

 

 彼は物憂げな溜息をついた。

 

「いや、君達とはあくまでも別行動を取らせて貰うよ。エリアフォースカードを先に手に入れるのは俺だ」

「おい、どういうことだよ!?」

 

 思わず、俺は問い返す。

 俺達の目的は一致しているはずだ。

 ワイルドカードを作り出すエリアフォースカードを止めるならば、協力するに越したことは無いのに。

 

「確かに、君達はエリアフォースカードを回収せねばならず、俺もまた同じだ。利害は一見、一致しているように見えるが、その後はどうする? エリアフォースカードが真に危険なモノだと分かれば、俺は君達と再び対立することになる。魔導司として、人間の世界に害を成すものを渡しておくわけにはいかない」

「仮定の話でモノを決めてんじゃねえよ」

「もしものことがあってはいけない」

「だとしても、俺にはやらなきゃいけない理由がある! だから頼む! 此処は協力してくれないか!? 信じるとか信じねえとか二の次だ、今はやらなきゃいけないことがあるだろ!?」

「そうです。ここでいがみ合っている意味は無いように思えますが。はっきり言って貴方、面倒ですよ」

「おいぃ!?」

 

 俺は顔を両手で覆った。紫月……お前ってやつは本当に口が悪い。

 あああ。この子は何でまた、こんなこと言っちまうのかなあ!?

 お前からいがみ合いに行ってどうするんだよ!?

 

「所詮、そこに信用と信頼が無ければ、瓦解するだけの関係だよ。かといって、今”この場で”君達を相手取るのは俺としても非常に面倒だが」

「……本当に、手を取り合えねえのか? だって俺達、人間と魔導司って言ったって、考えてることは同じじゃねえか。誰かの”普通”を守りたいって気持ちは、お前も俺達も同じはずなのに」

 

 俺には理解が出来なかった。

 だから、魔導司になったんだろ。

 だから、花梨を助けたんだろ。

 だから、ノゾム兄を庇ったんだろ。

 なのに、此処まで来てどうして意地を張るんだよ。

 そう思って、絞り出した。しかし。

 

「……それに、勘違いするな。これは俺自身の利害も関係していている。俺は君と違って聖人君主ではないんでね」

「え?」

戦車(チャリオッツ)は俺としても回収しておきたいカード。お前のエリアフォースカードを奪った時は、まだアレが白紙だったからか何も無かったが、今は感じる。俺と同じアルカナ属性を持つ戦車(チャリオッツ)の力を」

「お前と……同じ?」

「良い事を教えてやる。俺達魔導司は、22枚のタロットカードになぞらえた属性を持ち、それに応じた召喚獣を召喚し、力を行使できる。俺の属性は戦車(チャリオッツ)。戦の炎を司る属性だ。そして、魔導司は自分と同じ属性を持つ魔法道具に対して強く感知することが出来る。逆に言えば、そうでないものを感知するのは難しいのだが」

「ってことは、エリアフォースカードは、魔法道具というものなのですか」

 

 魔法道具。

 俺達が手にしていたものが只のものではないことは分かっている。

 だけど、こうしてはっきりと言われても実感が沸かなかった。

 改めて火廣金が言う危険、の意味が重くのしかかってくる。だけど、俺だって後に退けないんだ。退いて、たまるもんか。

 

「分かっているのは、いや俺達に教えられているのはそれだけだ。だから、あからさまに知らない素振りして何かを隠しているんだよ。あの方はね」

「好奇心の塊ですね。魔導司というのは」

「突き止めなければならないものは、あるんだよ。クリーチャーは何故、この世界にやってくるのか、あるいはやってこれるのか。俺達が直接異世界から召喚するクリーチャーと、この世界のカードが実体化するクリーチャーが著しく似ている、いや全く同一の存在である理由も、いずれは知らねばならないことさ」

「!」

 

 魔導司の召喚するクリーチャーは、異世界から召喚されたもの。

 本当にそんな世界が存在するのか。にわかに信じ難いが……。

 

「ただ、エリアフォースカードに関しては、ファウスト様のみが知らない振りをしていると考えているよ。あの必死さ、なりふり構わず正気を失う程この作戦に打ち込んでいる以上、考えられるのはそれしかない」

「っ……」

「さっさと終わらせたいんだろうな。何かを俺達に悟られる前に。いろんな意味で人間臭いからな、あの人も。人の心は解せないが」

「……」

 

 人の心が解せない人の姿をしたモノ。

 ノゾム兄もそう言っていた。

 花梨を躊躇なく殺そうとしたり、学校の皆を巻き込んだり……だけど、俺にはイマイチ切り捨てることが出来ない。

 

「……本当に、そうなのかな」

「どういうことだ」

「焦ってるってことは……少なくとも、情も全部捨てて非道に手を染めるだけの何かがやっぱりあるんじゃねーかって。それに、元はお前らみたいな強い奴等を束ねるトップなんだろ? 人望が全くないってわけでもないみたいだし……現にトリス・メギスもファウストに恩義を感じてた。やったことは許せねえよ。だけど……だからこそ、ただ戦うだけじゃ、ダメな気がするんだ」

「君はお人好しだな。この期に及んで。刀堂花梨が、お前の大事な仲間が殺されていても同じことが言えたか?」

「っ……」

 

 言葉に詰まった。

 確かに花梨が死ななかったのは、結果的にノゾム兄が身体を張って命懸けで助けたからだ。

 俺がやった訳じゃない。

 

「……多分、言えなかった、と思う。だとしても、やっぱり……”何でこんなことをするんだ?”って疑問はやっぱり……潰えないと思うんだ」

「……世間とは遍く理不尽なモノ。惨劇、悲劇に大した理由が無いことなんてしょっちゅうだよ。だから、戦わなければいけないこともある」

 

 俺は頭を垂れた。

 

「良いか。不条理、理不尽を受け止めるだけの力は付けておけ。心、身体、何だっていい。1度受け止めてから、何が正しいか、どうするべきか考えるだけの力だ。前進するか、後退するか、後は君次第だ」

「何が正しいか……」

 

 彼は頷いた。

 

「俺は――ファウスト様に立ち向かうためにも、戦車(チャリオッツ)の力が欲しい」

「俺は……」

 

 言いかけた言葉は、結局出てこなかった。

 頭の中は結局ごちゃごちゃだ。どうすればいいか、分からない。

 その時。

 デッキケースが再び熱くなった。

 取り出すと、皇帝(エンペラー)のカードに再び熱が現れていた。

 

皇帝(エンペラー)……!」

「ほう。君にも反応を示しているのか。戦車(チャリオッツ)は」

「でも、何で……? 俺は既にこのカードを手にしているのに……」

「戦車とは、元々武を以て覇を成す皇帝の従えるものだからね。だから、君にも呼応しているのかもしれない。つまり、戦車(チャリオッツ)が何かしらの形で君に影響を及ぼす可能性があるという事」

 

 そう言うと、彼は踵を返す。

 

 

 

「だからこそ、どちらかが手に入れるかの競争だ。合理的だろう?」

 

 

 

※※※

 

 

 

「畜生!! 何でこんな事に……!!」

「落ち着いてくだサイ!」

 

 慌てた様子で病院を飛び出した桑原先輩。それを窘めるブラン。

 火廣金が立ち去った後、ワンダータートルがエリアフォースカードに感付いたからか、二人が病院から出てくるのに俺と紫月はバッタリ会った。

 これで、4人組が揃ったことになる。少し安堵したような表情をブランは浮かべていた。

 

「ブラン、桑原先輩」

「アカル……少し、元気になったみたいデス」

「憑き物が落ちたような顔じゃねぇか」

「はい。俺がやらないといけないことは、変わりませんから」

「そうか。くくっ、とにかく今はやるっきゃねぇな」

「だけど、それどころじゃないデス!」

 

 ブランが街の向こうを指差した。

 

「ワンダータートルによると、クリーチャーが再び街に大量に現れてるとのことデス! このままだと、すぐにこっちに来るかもしれないデス。ま、花梨は病院の中に居てって言っておいたので、大丈夫だと思いマスけど」

「なら、こっちも手分けだ! といっても、1人ずつだと危険だから、二人と二人に別れよう。火廣金も別方向に出向いてるしな」

「と言っても、チーム分けとかどうするのですか」

「決めてる時間はねぇ。今の組み合わせで問題ねぇだろ……」

「……クリーチャーは今の所、病院内には来ていないみたいデスから、とにかく敵がSpreadする前に止めるデス!」

『む、待て! クリーチャーの気配じゃ!』

 

 ワンダータートルが叫び、俺達は辺りを見回す。

 おいブラン、いるんじゃねえかよクリーチャー!!

 でも、どこにも見当たらない。それらしき影はシャークウガも見つけたとは言わない。

 

「何だ、きっと間違いデ……」

 

 そう彼女が言いかけた時だった。

 急に空が暗くなる。

 何だ? 夕暮れ時とは言え、暗くなるのが唐突すぎやしないか、と俺は夕暮れの空を見上げた。

 

 

 

「ウ、ウ、ウウウウウウウウウウウ……」

 

 

 

 思わず、愕然とした。

 山ほどあろうかという巨大なクリーチャーが、俺達を見下ろしている。

 いや、文字通り山だ。筋骨隆々の身体に、富士山を模した山岳の頭。

 あのクリーチャーは確か――

 

「《仏斬(ブチギレ)!富士山ッスル》だぁ!?」

「Oh,my god!! あんなに巨大なクリーチャー、聞いてないデスよ!?」

『巨大さを生かして、すぐに距離を詰めてきおったか!! 此処はワシらが止めるしかあるまい!!』

 

 巨大なクリーチャーは、俺達を見ると山岳の頭をどんどん赤く染めていく。

 そのてっぺんからは、ぼこぼこと何かが湯だっているのが聞こえた。

 嫌な予感がする。あれってもしかしなくても……。

 

『でけぇ熱反応!! ありゃ間違いなく溶岩だァ!! 煮魚になっちまう!!』

「言ってる場合ですか、フカヒレにしますよ」

「お前も言ってる場合か!! くそっ、一番デカい奴が出てきやがるなんて!!」

 

 俺達は今度こそ慌てだした。

 こんな場所で噴火なんかされたら大惨事だ。 

 流石巨大クリーチャーは被害もコスト相応ってことか。身の毛がよだつなんてもんじゃねえ。

 

『しかもこれに触発されて他のクリーチャーが……』

「仕方ねえ! 此処は俺達に任せろ! テメェらは先に行け!」

 

 桑原先輩、そしてブランが富士山ッスルの方へ飛び出す。

 

「仕方ありません先輩。行きましょう。戦車(チャリオッツ)を仮にも魔導司の火廣金にとられるわけにはいきません」

「そ、そうだな……つか、大丈夫なんだよな、富士山ッスル(アレ)!? 2人は大丈夫なんだよな!?」

「そして、あんなこと言ってますけど、桑原先輩死にませんよね。ぶっちゃけ死亡フラ――」

「何てこというんだ!!」

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