学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
俺と花梨のデュエル。場にはまだ何もない。
後攻1ターン目。早速、彼女は動き出す。
「1マナ、呪文《メラメラ・ジョーカーズ》。効果で手札からジョーカーズを捨てるよ。そして、カードを2枚ドロー」
何だそりゃ、実質1マナの《勇愛の天秤》じゃねえか。捨てられたカードは《バイナラドア》。ジョーカーズデッキか、間違いない。憑依しているのがジョニーだから、デッキもそれに合わせているのか。
だけど、マナゾーンには火の《ドドンガ轟キャノン》も置かれているし、今の呪文もジョーカーズ呪文だ。
火のジョーカーズデッキか? 前にバーバーパパと戦った時と似たような構成ということか。
厄介だな、そうなると……予想される動きは出来るだけ潰しておかないと。
2枚のマナをタップし、俺も此処から仕掛けにかかる。生み出されるのは自然のマナ。
まずはセオリー通りに動き出す。
「呪文、《ピクシー・ライフ》! 効果でマナを増やす! ターン終了だ!」
「あたしのターン……2マナで《ヤッタレマン》召喚。ターン終了だよ」
「俺のターン! 3マナで、《フェアリー・クリスタル》! 効果でマナを2枚マナゾーンに置く! そして、残りの3マナで《洗脳センノー》を召喚だ! ターンエンド!」
「ふぅん……」
こいつらなら、相手の踏み倒しを防ぐことが出来る。
マナも一気に6枚になったし、ここから攻めたい。が、手札が生憎カツカツだ。
花梨がどうやって動くのかがポイントだが……。
「甘いよ、耀。あたしだって、耀のジョーカーズデッキを見て、大体動きは解ってるんだもん。2マナで《パーリ騎士》召喚。効果で墓地から1枚をマナに置く。そして、1マナで《スチーム・ハエタタキ》を唱えるよ」
「それって……パワー4000以下を破壊する呪文じゃねえか!」
「《洗脳》を破壊。潰しちゃえ!」
次の瞬間、振り下ろされたのは巨大な炎のハエタタキ。
それが虫のように《洗脳センノー》を叩き潰す。
炎が彼女の顔を照らした。じりじり、と滾る炎があの時の修羅とは違う、剣士を思わせる厳格な風格を漂わせている。
「くそっ、すまん《洗脳センノー》……!」
「あたしはこれで、ターンエンドだよ」
「参ったな……早速やられるとは」
手札が少ない。次のターン、まともに出せるクリーチャーが居ないのである。
マナを増やすしかやることは無い。
「《ピクシー・ライフ》を使う! 効果でマナを増やして、《ジョリー・ザ・ジョニー》を手札に加える! ターンエンドだ!」
「あたしのターン。3マナで《バッテン親父》を召喚。ターンエンドだよ」
「……マジかよ」
まずい。完全に次の攻め手を封じられた。《ジョニー》のマスター・W・ブレイクは出たそのターン限りの上に、シールドに届かなければ意味が無い。
つまり、その前に止めてしまう《バッテン親父》の前には無力。無駄弾だ。
俺が行動する度に、そこへ後出しじゃんけんの如く花梨は対応していく。
まるでカウンターのようだ。相手の見方を伺い、そこに叩き込んでいっている。
実質、これはハンデスだ。俺の成す行動を俺が本格的に動く前に潰していっているのだから。
「俺のターン……マナにカードを置いて、《フェアリー・クリスタル》を唱える。効果でマナを1枚、置く。それが無色の《バイナラドア》だからマナに……ターンエンドだ」
「遅いよ、耀。欠伸が出ちゃうくらい」
言った彼女は、4枚のマナをタップした。
次の瞬間、彼女の目の前に
そして、激しくその炎をまき散らし、輪を宙に浮かべた。
「魂を燃やせ――
投げ込まれる1枚のカード。
しまった、来たか! 火のジョーカーズの必殺技だ。
火の輪を潜り、全身を真っ赤に燃やした楽器の道化が戦場に降り立つ。
「《絶対音カーン》のコストを2軽減して召喚! そして、そのまま攻撃! W・ブレイク!」
轟!! と自らが火の弾となり、《カーン》が俺のシールドを焼き払った。
残りシールドは、3枚。そして、トリガーも無い。
「そしてその効果で、攻撃後にカードを3枚引くよ」
「まずいな……このままビートダウンされたら、間に合いそうにねえ」
「だけど、このターンには決めきれない。ターンエンドだよ」
燃え尽きた《カーン》が消失すると共に山札の下へ帰っていく。
そして花梨の手札を1枚、補給していった。これで、あいつの手札は4枚。何とかして守り切らないと……!
「俺のターン! 6マナで《Dの爆撃 ランチャー・ゲバラベース》をバトルゾーンに出す! ターンエンドだ!」
「癪だよ耀。そんなつまらない防御札で誤魔化そうとしても無駄だから」
「はっ、それでもお前は攻撃する度に自分のアンタップしてるクリーチャーをマナに置かなきゃいけないんだ」
「関係無いよ。シールドは全部ぶっ壊すから」
彼女の身体から熱があふれ出る。
「そうダ、よ……全部、ぶっ壊す。お兄を傷つけた奴をぶっ壊す。耀を傷つけた奴をぶっ壊す。その為には、強くならなきゃいけない。エリアフォースカードが無きゃ、いけない」
「エリアフォースカードがありゃ、良いってもんじゃねえぞ!」
「五月蠅い! 耀には分からない!」
一言、突き放すように言い放つ。
その右目は燃えている。
「自分の事、棚に上げて……耀の分からず屋!!」
燃え上がる5枚のマナ。
その炎に、俺の声は届かない。
そうだ。そうだよな。お前の声も、ずっと――俺には届いてなかったんだ。
「1コスト軽減して5マナをタップ。燃える炎の一撃を、叩き込む」
これは、俺だ。
まるで鏡のように俺を映し出している。
俺の今までの業を、偽善と独善を焼き尽くす煉獄だ。
灼熱が、場を包み込んだ。
「これが最初で最期――《ビギニング・ザ・メラビート》」
子供の落書きのようなガンマン。掲げられたのは赤い灼熱のボード。
それに数字のⅦが浮かび上がった。
これは、俺の知らないジョニーの姿。燃える炎に、灼炎に影響を与えられたジョニーの姿。
『間違いないでありますよ! 暴走の影響で、本来の能力が欠けているでありますが……エリアフォースカードの守護者、ジョニーであります!』
「ああっ……そうみてーだな!」
こいつの効果は確か――
「行くよ。マスター・メラビート発動! 効果で、手札からJ・O・Eを持つクリーチャーを1体、場に出せる! そのクリーチャーは、ターンの終わりに燃え尽きて、山札の下に戻っちゃうけど……J・O・Eさえ持ってればどんなに大きい子でも出せるんだよ」
「それが、そのクリーチャーのマスター能力か……!」
「行くよ、耀! 《
現れたのは巨大な山のような、あのクリーチャー。
非常にまずいことになった。パワー9000のW・ブレイカーのスピードアタッカーに加え、パワーアタッカー+100万までもつ、火ジョーカーズの巨大なフィニッシャーだ。
「そして、《富士山ッスル》で攻撃!」
「っ……受ける!! だけど、《ランチャー・ゲバラベース》の効果発動! お前のクリーチャーが攻撃する時、お前は自分のタップしていないクリーチャーを1体選んでマナに置かなければならない!」
「《パーリ騎士》をマナに置くよ。そして、シールドをW・ブレイクだよ!!」
火山が噴火し、溶岩が溢れる。
流星の如く降りかかる火山岩が、俺のシールドを砕いていく。
「熱っ……!! 炎がっ!!」
「さらに、場とマナにジョーカーズが合計4体以上あれば、《富士山ッスル》は最初の攻撃の終わりにアンタップするよ。ま、最もお楽しみは最後。先に、この子で攻撃するけど」
オアアア、と咆哮と山鳴りが響き、剛腕が再び持ち上がった。
「そして、今度は《ビギニング・ザ・メラビート》で攻撃――その時、《ヤッタレマン》をマナに置くよ!」
そうか。どのみちターン終了時に山札に送られる上に、コストとパワーが高い《富士山ッスル》はコスト指定除去やパワー指定除去に引っ掛かりにくい。先にパワーが低い《メラビート》で殴ってきたか。
確実に、このターンで俺を倒すつもりだ!!
「最後のシールドをブレイク!」
吹き飛ばす衝撃が俺の全身に伝わった。
「どわぁっ!?」
そのまま、もろに全身が叩きつけられる。
俺を守るものは、もう無い。
しかし。割られたシールドが光となる。
地面に倒れ伏せた俺は、僅かな光明を掴むため――それを手に取った。
「いっつ……S・トリガー……! 《Rev.タイマン》の革命2で相手のクリーチャーはもう攻撃出来ない!」
「ターン終了時にマスター・メラビートの効果で《富士山ッスル》を山札の下に戻すよ。ターンエンド」
冷淡に花梨は言い放つ。
「《ジョリー・ザ・ジョニー》の攻撃は、あたしには届かないよ。耀はあたしには勝てない」
「……あー、そうかよ」
俺は息も絶え絶えに立ち上がると、虫けらのような今の自分の状況を笑った。
「ハッ、それでも……戦わなきゃいけねぇ理由があるんだよ」
「何で。何で耀はあたしの邪魔するの」
「それで此処で死んだら、どうにもならねぇって言ってんだろ……それは、
「っ……!」
「もうやめようぜ。そうやって、自分をいじめるのは。お前はいっつも、1人で抱え込み過ぎだ」
「……耀だって、同じ癖に」
「ああ、同じだ」
そうだよ。俺はずっと気付かなかった。
こうなるまで、結局分からなかった。
「俺が戦おうと思ったのは……普通の日常を、皆とデュエマ出来る日常を守りたかったから……! だから、俺は非日常に出来るだけ誰も巻き込みたくねえって思ってた。お前は、非日常に足を突っ込んでいないお前は、最後まで何も気づかないまま、俺の中の帰る日常であってほしかったんだ」
「……」
「そんなの、俺のエゴだよな。その点、紫月は自分の姉ちゃんが戦いたいって言ったら、それがあの人の意思なら、最後は好きにさせてやりたいって言ってるんだぜ。勿論、あいつはギリギリまで止めるだろうけど……それでも、気付いたんだ。今回の件で皆と話してさ」
俺は、よれよれになった俺はデッキに手を掛けた。
「皆、同じなんだ……!! 日常を守るために、俺達の普通を守るために戦いたいって気持ちは、同じだった……!! 俺は、もっと皆の覚悟を分かってやらなきゃいけなかったんだ」
「……」
花梨は怒ったような目つきをしていた。
「勿論、ノゾム兄みたいになる可能性が無いわけじゃねぇよ。だけど……これはもう、避けられる戦いじゃねえ。魔導司が居なくても、ワイルドカードは襲ってくる。エリアフォースカードが暴走する。そうなったら誰が止める? 誰がやる?」
熱風が、収まる。
向かい風は、追い風へ変わった。
俺の答えは、もう出ている。
「俺達の運命は、俺達が決める――その時、どうするかは……俺達が決めなきゃいけないってな!!」
デッキを思いっきり握りしめる。
「お前の気持ちはわかったよ。だけど……その上で、仲間が無謀な事や間違った事に走ろうとしてるなら――それが、俺の所為だったなら猶更、俺は止めなきゃいけない。それが、俺の答えだ!!」
左腕が、左手が持ち上がった。
震えるそれが、バトルゾーンにあるカードに重ねられる。
「《Dの爆撃 ランチャー・ゲバラベース》の
「えっ……!?」
「俺がバトルゾーンに出すのは――」
俺は叩きつけた。
このデュエルの最大の一手を。
「来たぜ!