学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第57話:剣VS弾丸─運命を決める者

俺と花梨のデュエル。場にはまだ何もない。

 後攻1ターン目。早速、彼女は動き出す。

 

「1マナ、呪文《メラメラ・ジョーカーズ》。効果で手札からジョーカーズを捨てるよ。そして、カードを2枚ドロー」

 

 何だそりゃ、実質1マナの《勇愛の天秤》じゃねえか。捨てられたカードは《バイナラドア》。ジョーカーズデッキか、間違いない。憑依しているのがジョニーだから、デッキもそれに合わせているのか。

 だけど、マナゾーンには火の《ドドンガ轟キャノン》も置かれているし、今の呪文もジョーカーズ呪文だ。

 火のジョーカーズデッキか? 前にバーバーパパと戦った時と似たような構成ということか。

 厄介だな、そうなると……予想される動きは出来るだけ潰しておかないと。

 2枚のマナをタップし、俺も此処から仕掛けにかかる。生み出されるのは自然のマナ。

 まずはセオリー通りに動き出す。

 

「呪文、《ピクシー・ライフ》! 効果でマナを増やす! ターン終了だ!」

「あたしのターン……2マナで《ヤッタレマン》召喚。ターン終了だよ」

「俺のターン! 3マナで、《フェアリー・クリスタル》! 効果でマナを2枚マナゾーンに置く! そして、残りの3マナで《洗脳センノー》を召喚だ! ターンエンド!」

「ふぅん……」

 

 こいつらなら、相手の踏み倒しを防ぐことが出来る。

 マナも一気に6枚になったし、ここから攻めたい。が、手札が生憎カツカツだ。

 花梨がどうやって動くのかがポイントだが……。

 

「甘いよ、耀。あたしだって、耀のジョーカーズデッキを見て、大体動きは解ってるんだもん。2マナで《パーリ騎士》召喚。効果で墓地から1枚をマナに置く。そして、1マナで《スチーム・ハエタタキ》を唱えるよ」

「それって……パワー4000以下を破壊する呪文じゃねえか!」

「《洗脳》を破壊。潰しちゃえ!」

 

 次の瞬間、振り下ろされたのは巨大な炎のハエタタキ。

 それが虫のように《洗脳センノー》を叩き潰す。

 炎が彼女の顔を照らした。じりじり、と滾る炎があの時の修羅とは違う、剣士を思わせる厳格な風格を漂わせている。

 

「くそっ、すまん《洗脳センノー》……!」

「あたしはこれで、ターンエンドだよ」

「参ったな……早速やられるとは」

 

 手札が少ない。次のターン、まともに出せるクリーチャーが居ないのである。

 マナを増やすしかやることは無い。

 

「《ピクシー・ライフ》を使う! 効果でマナを増やして、《ジョリー・ザ・ジョニー》を手札に加える! ターンエンドだ!」

「あたしのターン。3マナで《バッテン親父》を召喚。ターンエンドだよ」

「……マジかよ」

 

 まずい。完全に次の攻め手を封じられた。《ジョニー》のマスター・W・ブレイクは出たそのターン限りの上に、シールドに届かなければ意味が無い。

 つまり、その前に止めてしまう《バッテン親父》の前には無力。無駄弾だ。

 俺が行動する度に、そこへ後出しじゃんけんの如く花梨は対応していく。

 まるでカウンターのようだ。相手の見方を伺い、そこに叩き込んでいっている。

 実質、これはハンデスだ。俺の成す行動を俺が本格的に動く前に潰していっているのだから。

 

「俺のターン……マナにカードを置いて、《フェアリー・クリスタル》を唱える。効果でマナを1枚、置く。それが無色の《バイナラドア》だからマナに……ターンエンドだ」

「遅いよ、耀。欠伸が出ちゃうくらい」

 

 言った彼女は、4枚のマナをタップした。

 次の瞬間、彼女の目の前に戦車(チャリオッツ)のカードが浮かび上がる。 

 そして、激しくその炎をまき散らし、輪を宙に浮かべた。

 

「魂を燃やせ――J・O・E(ジョーカーズ・オーバー・エクスプロード)2」

 

 投げ込まれる1枚のカード。

 しまった、来たか! 火のジョーカーズの必殺技だ。

 火の輪を潜り、全身を真っ赤に燃やした楽器の道化が戦場に降り立つ。

 

「《絶対音カーン》のコストを2軽減して召喚! そして、そのまま攻撃! W・ブレイク!」

 

 轟!! と自らが火の弾となり、《カーン》が俺のシールドを焼き払った。

 残りシールドは、3枚。そして、トリガーも無い。

 

「そしてその効果で、攻撃後にカードを3枚引くよ」

「まずいな……このままビートダウンされたら、間に合いそうにねえ」

「だけど、このターンには決めきれない。ターンエンドだよ」

 

 燃え尽きた《カーン》が消失すると共に山札の下へ帰っていく。

 そして花梨の手札を1枚、補給していった。これで、あいつの手札は4枚。何とかして守り切らないと……!

 

「俺のターン! 6マナで《Dの爆撃 ランチャー・ゲバラベース》をバトルゾーンに出す! ターンエンドだ!」

「癪だよ耀。そんなつまらない防御札で誤魔化そうとしても無駄だから」

「はっ、それでもお前は攻撃する度に自分のアンタップしてるクリーチャーをマナに置かなきゃいけないんだ」

「関係無いよ。シールドは全部ぶっ壊すから」

 

 彼女の身体から熱があふれ出る。

 

「そうダ、よ……全部、ぶっ壊す。お兄を傷つけた奴をぶっ壊す。耀を傷つけた奴をぶっ壊す。その為には、強くならなきゃいけない。エリアフォースカードが無きゃ、いけない」

「エリアフォースカードがありゃ、良いってもんじゃねえぞ!」

「五月蠅い! 耀には分からない!」

 

 一言、突き放すように言い放つ。

 その右目は燃えている。

 戦車(チャリオッツ)によって、魂を差し押さえられたと言わんばかりに烙印が押されていた。

 

「自分の事、棚に上げて……耀の分からず屋!!」

 

 燃え上がる5枚のマナ。

 その炎に、俺の声は届かない。

 そうだ。そうだよな。お前の声も、ずっと――俺には届いてなかったんだ。

 

「1コスト軽減して5マナをタップ。燃える炎の一撃を、叩き込む」

 

 これは、俺だ。

 まるで鏡のように俺を映し出している。

 俺の今までの業を、偽善と独善を焼き尽くす煉獄だ。

 灼熱が、場を包み込んだ。

 

 

 

「これが最初で最期――《ビギニング・ザ・メラビート》」

 

 

 

 子供の落書きのようなガンマン。掲げられたのは赤い灼熱のボード。

 それに数字のⅦが浮かび上がった。

 これは、俺の知らないジョニーの姿。燃える炎に、灼炎に影響を与えられたジョニーの姿。

 

『間違いないでありますよ! 暴走の影響で、本来の能力が欠けているでありますが……エリアフォースカードの守護者、ジョニーであります!』

「ああっ……そうみてーだな!」

 

 こいつの効果は確か――

 

「行くよ。マスター・メラビート発動! 効果で、手札からJ・O・Eを持つクリーチャーを1体、場に出せる! そのクリーチャーは、ターンの終わりに燃え尽きて、山札の下に戻っちゃうけど……J・O・Eさえ持ってればどんなに大きい子でも出せるんだよ」

「それが、そのクリーチャーのマスター能力か……!」

「行くよ、耀! 《仏斬(ブチギレ)! 富士山ッスル》をバトルゾーンに!」

 

 現れたのは巨大な山のような、あのクリーチャー。

 非常にまずいことになった。パワー9000のW・ブレイカーのスピードアタッカーに加え、パワーアタッカー+100万までもつ、火ジョーカーズの巨大なフィニッシャーだ。

 

「そして、《富士山ッスル》で攻撃!」

「っ……受ける!! だけど、《ランチャー・ゲバラベース》の効果発動! お前のクリーチャーが攻撃する時、お前は自分のタップしていないクリーチャーを1体選んでマナに置かなければならない!」

「《パーリ騎士》をマナに置くよ。そして、シールドをW・ブレイクだよ!!」

 

 火山が噴火し、溶岩が溢れる。

 流星の如く降りかかる火山岩が、俺のシールドを砕いていく。

 

「熱っ……!! 炎がっ!!」

「さらに、場とマナにジョーカーズが合計4体以上あれば、《富士山ッスル》は最初の攻撃の終わりにアンタップするよ。ま、最もお楽しみは最後。先に、この子で攻撃するけど」

 

 オアアア、と咆哮と山鳴りが響き、剛腕が再び持ち上がった。

 

「そして、今度は《ビギニング・ザ・メラビート》で攻撃――その時、《ヤッタレマン》をマナに置くよ!」

 

 そうか。どのみちターン終了時に山札に送られる上に、コストとパワーが高い《富士山ッスル》はコスト指定除去やパワー指定除去に引っ掛かりにくい。先にパワーが低い《メラビート》で殴ってきたか。

 確実に、このターンで俺を倒すつもりだ!!

 

「最後のシールドをブレイク!」

 

 吹き飛ばす衝撃が俺の全身に伝わった。

 

「どわぁっ!?」

 

 そのまま、もろに全身が叩きつけられる。

 俺を守るものは、もう無い。

 しかし。割られたシールドが光となる。

 地面に倒れ伏せた俺は、僅かな光明を掴むため――それを手に取った。

 

「いっつ……S・トリガー……! 《Rev.タイマン》の革命2で相手のクリーチャーはもう攻撃出来ない!」

「ターン終了時にマスター・メラビートの効果で《富士山ッスル》を山札の下に戻すよ。ターンエンド」

 

 冷淡に花梨は言い放つ。

 

「《ジョリー・ザ・ジョニー》の攻撃は、あたしには届かないよ。耀はあたしには勝てない」

「……あー、そうかよ」

 

 俺は息も絶え絶えに立ち上がると、虫けらのような今の自分の状況を笑った。

 

「ハッ、それでも……戦わなきゃいけねぇ理由があるんだよ」

「何で。何で耀はあたしの邪魔するの」

「それで此処で死んだら、どうにもならねぇって言ってんだろ……それは、戦車(チャリオッツ)は暴走している自分を制御しようとして無理矢理お前に動かさせてるだけなんだぞ。お前が死んだら、エリアフォースカードがあっても意味ねぇんだよ」

「っ……!」

「もうやめようぜ。そうやって、自分をいじめるのは。お前はいっつも、1人で抱え込み過ぎだ」

「……耀だって、同じ癖に」

「ああ、同じだ」

 

 そうだよ。俺はずっと気付かなかった。

 こうなるまで、結局分からなかった。

 

「俺が戦おうと思ったのは……普通の日常を、皆とデュエマ出来る日常を守りたかったから……! だから、俺は非日常に出来るだけ誰も巻き込みたくねえって思ってた。お前は、非日常に足を突っ込んでいないお前は、最後まで何も気づかないまま、俺の中の帰る日常であってほしかったんだ」

「……」

「そんなの、俺のエゴだよな。その点、紫月は自分の姉ちゃんが戦いたいって言ったら、それがあの人の意思なら、最後は好きにさせてやりたいって言ってるんだぜ。勿論、あいつはギリギリまで止めるだろうけど……それでも、気付いたんだ。今回の件で皆と話してさ」

 

 俺は、よれよれになった俺はデッキに手を掛けた。

 

「皆、同じなんだ……!! 日常を守るために、俺達の普通を守るために戦いたいって気持ちは、同じだった……!! 俺は、もっと皆の覚悟を分かってやらなきゃいけなかったんだ」

「……」

 

 花梨は怒ったような目つきをしていた。

 

「勿論、ノゾム兄みたいになる可能性が無いわけじゃねぇよ。だけど……これはもう、避けられる戦いじゃねえ。魔導司が居なくても、ワイルドカードは襲ってくる。エリアフォースカードが暴走する。そうなったら誰が止める? 誰がやる?」

 

 熱風が、収まる。 

 向かい風は、追い風へ変わった。

 俺の答えは、もう出ている。

 

 

 

「俺達の運命は、俺達が決める――その時、どうするかは……俺達が決めなきゃいけないってな!!」

 

 

 

 デッキを思いっきり握りしめる。

 

「お前の気持ちはわかったよ。だけど……その上で、仲間が無謀な事や間違った事に走ろうとしてるなら――それが、俺の所為だったなら猶更、俺は止めなきゃいけない。それが、俺の答えだ!!」

 

 左腕が、左手が持ち上がった。

 震えるそれが、バトルゾーンにあるカードに重ねられる。

 

「《Dの爆撃 ランチャー・ゲバラベース》の(デンジャラ)・スイッチ、発動!! 効果で、山札から1枚をマナゾーンに置き、それが俺のマナゾーンの枚数以下のコストを持つクリーチャーだったなら、バトルゾーンに出す!!」

「えっ……!?」

「俺がバトルゾーンに出すのは――」

 

 俺は叩きつけた。

 このデュエルの最大の一手を。

 

 

 

「来たぜ! 俺の切札(ザ・ジョーカーズ・ワイルド)、《ゴールデン・ザ・ジョニー》!!」

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