学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
飛び出した黄金の騎馬。
抱え込まれたブラスターが煌く時、熱き戦いの荒野に孤高のガンマンが降り立った。
浮かび上がるのは、MASTERの紋章。
新しい力を、今こそ見せてやる時だ!
「目には目を、歯には歯を、ジョニーにはジョニーを、だ!」
「はっ、ばっかみたい。その子だけじゃ、あたしを倒すことは出来ない。それに、火にはスピードアタッカーが山ほどいるのは知ってるでしょ」
「そいつぁどうかな?」
「!?」
言った俺は、8枚のマナをタップする。
見てろ花梨。これが俺の今までの戦いの軌跡。
そして、これが俺が未来に繋ぐ一手だ!!
「さあ、出番だ! 《バレット・ザ・シルバー》!」
出てきた黒鉄の軍馬を俺は繰り出した。
こいつの効果で、俺は山札の上から1枚を捲り、それがジョーカーズなら場に出すことが出来る。
このターンで抑えつけることが出来なければ、俺の負けだ。
「ジョーカーズ……俺の切札達、出て来い!!」
山札の上を捲る。
それは――
光り輝く
「反撃だ! 出てこい!!」
引かれていく未来へのレール。
突き進むのは、無限にして夢幻の力を刀に込めた超絶特急。
「これが俺の超
《
来てくれたか。
J・O・Eでクリーチャーを出そうものならそのターンで山札送り確定、そうでなくとも1ターン休みが待っている。お前とジョニー……2体の力が合わされば、花梨の攻撃を防ぐことが出来る!
『マスター!! 我の力で、全員花梨殿を攻撃できるであります!』
「ああ! 畳みかけるぞ! 《ゴールデン・ザ・ジョニー》でシールドに攻撃!!」
巨大なブラスターを持ったジョニーと、灼炎のボードに乗ったジョニーの幻影がぶつかり合う。
だけど、愛馬・シルバーが高く高く飛び上がり、ジョニーが天高くから、向かい来る幻影に向かって――その黄金のブラスターの引き金を引いた。
「必殺技、マスター・ブラスター超動!!」
撃ち放たれる極太の一閃。
それがバトルゾーンに残っていた《バッテン親父》を一瞬で消失させ、更に花梨のシールドを2枚、吹き飛ばした。
凄まじい威力に爆風が巻き起こり、俺も、そして花梨も目を腕で覆った。
そして、しばらくして――防御札が消滅したことで、完全に虚を突かれたのか、花梨はヒステリックに叫んだ。
「……うそでしょ!? 何で!? 今のって……何であたしのクリーチャーが蒸発したの!? まだ、シールドに攻撃は届いてないのに……!?」
「マスター・W・ブレイカーじゃねえ。《ゴールデン・ザ・ジョニー》だけが持つ特殊能力、それがマスター・ブラスターだ。俺の場、またはマナにジョーカーズが合計4枚以上あるとき、お前の場にあるカードを1枚、山札の下に送るんだ」
「アタックトリガーで確定カード除去……!? うそでしょ!? シールドに攻撃さえ届かなきゃ、勝ち目はあると思ったのに! 付け焼刃の防御じゃ、防げないってわけか……!」
「そんでもって、《バレット・ザ・シルバー》で攻撃! その時、山札の上から1枚を表向きにして、それがジョーカーズならば場に出す! 《燃えるデット・ソード》、来い!」
「っ……!」
その効果で、表向きになるカード。
出てきたのは、《燃えるデット・ソード》だ。
凶悪な鋏が、花梨の手札、マナを切り刻んでいく。
「そして、W・ブレイクだ!」
「まだ、まだなのに……あたしの炎は消えてなんか……」
だけど、その声には、闘志が宿っていた。
その両目に炎が宿る。
口からも、炎が漏れた。
そして、その身体からも発火していく。
まるで、彼女自身を蝕み、焼き尽くしていくかのように。
「今度は《デット・ソード》で攻撃! 最後のシールドをブレイクだ!」
「受けるよ……!」
だが、それもやがて消えていく。
彼女自身が、何かを悟ったかのように安らかに笑う。
「いっけぇぇぇぇ!!」
両断されるシールド。
通れ……通れ、通れ!
これでS・トリガーが来なければ――俺の勝ち。
しかし。通らなければ、俺はトリガーで出た《バイナラドア》に攻撃されて負けることになる。
「……まだだよ。あたしはもう、負けないんだからぁ!!」
絶叫。
灼熱の炎の如く、その闘志はまだ消えない。
炎が再生し、シールド・トリガーとなる。
「スーパー・S・トリガー、《爆殺!!覇悪怒楽苦》!! これで相手のコスト8以下になるように相手のクリーチャー……《ダンガンテイオー》を破壊し、さらにスーパートリガーで山札の上から4枚を捲ってそこから火の進化じゃないクリーチャーを場に出してバトルさせるよ! これであたしの勝ち!」
来てしまった――巨大な粉砕機が現れて、《ダンガンテイオー》を巻き込まんとばかりに回転し始めた。
しかし。
『マスター! 第二の弾丸でありますよ!』
「ああ! 今こそ使う時だ! 《ゴールデン・ザ・ジョニー》の第二の効果! 相手は各ターン、1回しか呪文を唱えることが出来ない!」
その呪文は《ジョニー》の放ったブラスターによってかき消されてしまう。
これで、《ダンガンテイオー》は無事に攻撃が出来る。
「は、はは……そっかぁ」
「《ダンガンテイオー》で……ダイレクトアタックだ!」
俺は叫ぶ。
無抵抗な彼女に、一閃を叩きこまなきゃいけない。
吐きそうになるような、やるせなさが込み上げてくる。
ならばせめて、早く終わらせるとしよう。この、戦いを――
「一本、取られちゃったなあ――」
※※※
炎は、消えていく。
空間は消失した。
そこには崩れ落ちた花梨と、それに向き合う俺の姿だけ。
「あ、あははっ……また負けちゃったかぁ」
「花梨……」
エリアフォースカードの鼓動は消えかけていた。
だけど、花梨の顔は笑っていた。
とてもとても虚ろで、失望、後悔を内包したような空虚な笑みだった。
「……ダメだなあ。何で、あたしってこんなに弱くて臆病なんだろう……だから、止められちゃうんだね。あたしは、戦うなって。こんなんじゃ、お兄の仇なんか……取れないのに」
ダメだ。届いてない。
デュエマで勝ったとしても、それはあのエリアフォースカードを引き剥がしただけなんだ。
俺の気持ちを、あいつに伝えないと。
「すまん、花梨!!」
「っ……!」
彼女の手を掴む。
とても、冷たくて凍り付くような彼女の掌を握りしめる。
「俺が……俺が悪かったんだ」
「……耀」
「色々あって、お前がそこまで追い詰められてたのに、俺は気付かなかった。俺は俺の事ばっかりに一生懸命で、お前ばかりか、他の皆の事を考えてなかったんだ。お前は弱くなんか、無い。無理して焦って強くなろうとしなくって良いんだ」
俺達は、幼馴染だ。
いつも一緒だっただろ。もう、お前だけ除け者にしたりはしない。
「それでお前まで居なくなったら……俺は……ノゾム兄は……」
しばらくして。
ようやく、今までの事を全て回想し、正気に戻ったかのように彼女の瞳に光が戻っていく。
掴む掌が、熱くなっていった。
「……耀……う、うぇ……耀……」
花梨の眼尻に涙が浮かぶ。
俺は慌てた。また、彼女を悲しませてしまっただろうか。
「おい!? 泣くことねぇだろ!?」
「だってだって……あたし、凄い無茶苦茶なことしちゃったし、迷惑かけちゃったし……」
「おいおい、俺はもう大丈夫だ」
「大丈夫じゃないじゃん……!」
涙声と嗚咽が響く。
「耀、すっごいボロボロじゃんか……!」
頬に手が置かれる。
擦り傷。打撲。火傷。
服の一部に穴は空いてるし、髪もボサボサ。
全身が打ち付けられたから痛い。
それでも俺は――これに代えられないものを、守れた。
十分だった。
「俺は、大丈夫だ。この程度でくたばったりなんかしない。ノゾム兄程じゃないかもしんねぇけど……」
「でもっ……」
花梨が言いかけた時だった。
そして、再び元の白紙のカードへと戻ってしまった。
「え? え? どういうこと?」
「何だこれ? カードの絵が……消えた?」
『白銀耀、刀堂花梨』
声が聞こえてくる。
見ると、そこには既に光の粒子となって消えかかっているジョニーの姿があった。
「ジョニー、お前――」
『俺の役目は終わった。暴走した
「ご、ごめんっ……あたしが無茶させたから……!!」
『いや、謝るのは俺の方だ。刀堂花梨。お前を危うく危険な目に遭わせるところだった。俺は守護獣失格だ」
「そんなことない。一緒に戦ったのはちょっとだけだったけど……貴方は、とても強かったよ」
『……そうか。いずれ、そのカードに新たな守護獣が宿る。刀堂花梨。お前を仮とはいえ宿主に選んだのは、お前に確かに
「……あたしに、素質が」
花梨に、
つまり、ジョニーは、
『良いか、刀堂花梨。自らの弱さを知り、向き合うことの出来るお前は、お前にしかない強さがある。努々忘れるな。己の強さを。そして磨き続けろ。己の力を』
「あ、あたしなんかで、良いのかなっ。あたしは……」
『お前の、譲れないものを、守り抜けばいい』
「あたしの……譲れないもの」
ジョニーは頷いた。
花梨はその場に膝をつく。
何かを考えているかのように俯いていたが、再び俺の顔を見上げた。
大丈夫だ。お前なら、きっとできるよ、花梨。
『そして白銀耀。俺もお前に、残せるだけのものを残そう。お前達には迷惑をかけたからな』
彼が言うと、火文明の印が俺のエリアフォースカードに刻まれる。
「これって……!」
『白銀耀。俺の力の一部を
『マスター!! 力が、火の力が流れ込んでくるでありますよ!!』
見ると、チョートッQの身体もほのかに赤く輝いていた。
火の力……。
それをジョニーは置いていった。俺もまだ言いたい事が残っていないわけじゃない。
だけど――彼を風の彼方へ見送ろう。ずっと、1人で全てを抱え込み、抑えていた孤高のガンマンを。
『俺はいつも傍に居る。お前の切札としてあり続けるだろう。お前の《ジョニー》を存分に使ってやってくれ』
「ああ。勿論だよ、ジョニー」
西風が吹く。
それと共に、孤高のガンマンの姿は消え去った。
それを後ろ髪を引かれる思いで見つめていた。白紙のエリアフォースカードを手に取った花梨は立ち上がる。
涙をぬぐい、吹っ切れたような笑顔を浮かべた。
「あたし、大事にこれを持っておくよ。そして強くなる。このエリアフォースカードに相応しいくらい、ね」
「そうか」
言った俺は振り向く。
そこには、くたびれた様子の火廣金、そして紫月の姿があった。
「あ、あれ? 火廣金に、紫月ちゃんも居たの!? あ、あたし、二人にも迷惑かけて……」
「まだそんなこと言ってるのか君は。俺達は
「あ、あうぅ……ごめんなさい」
「もういいですよ。憑りつかれて暴走していたのですから」
紫月と火廣金だけじゃない。
今回は皆の力が無いと解決できなかった事件だ。
「エリアフォースカードについては、それでいいよな? 火廣金。競争の一番は元々花梨だったんだし」
「……そうだな。俺は構わない」
「それと――助けてくれてありがとな」
「……ふん、君にまた礼を言われるとはね」
手を振ると、彼の身体の周りが炎に包み込まれる。
「他の奴にも同じことを言われるのかと思うと辟易するよ。俺は先に帰る」
言うと、そのまま彼は消えていってしまった。素直じゃないなあ。
「やれやれ、これで一件落着ですか」
『あのスカしたヤロー、悪い奴じゃあなさそうだし、いずれ分かり合えそうな気がするんだけどなあ』
「分かり合えるよ。きっとな」
俺はそう信じてる。だって今回、俺達は目的のために対立しつつではあったが、最終的には団結出来た。
人間とか魔導司とかそんなの関係無いんだって思えたんだ。
だけど、まだ今回の件は終わってない。
俺は再び彼女に手を差しだした。
「なあ、花梨」
「ふぇ?」
今度は、皆と一緒だ。
俺が1人じゃないように、お前も1人じゃないんだ。
だから、この言葉を伝えよう。今更こうやって頼み込むのも可笑しい気がするけど。
「今まで一緒にいてくれてありがとな。だから――また、一緒に戦ってくれるか? 皆と一緒に」
「……うん!」
彼女は涙混じりではあったが、笑顔でうなずいた。
今まで抱え込んで来たもの全てが降りたような、とびっきりの笑顔だった。
※※※
まだ、何も終わってない。
ノゾム兄の意識は未だに戻らないままだ。
だけど、前には確実に進めて行っている。
火廣金とは仲良くとまではいかないけど、協力出来たしな。
「よっ、ノゾム兄」
返事は返ってこない。
あんたもあんたで無茶ばっかりしやがって。
早くまた、あの元気な姿を見せてくれ――ってのはきっと俺の我儘なんだろうな。
今まで1人で街を俺達を守ってくれたんだ。今度は俺達の番だ。
大丈夫だよノゾム兄。皆が居るんだ。負ける気はない。
だから――
「ゆっくり、休んでくれよな」
そう笑いかけてやる。
花梨の奴は部活が遅くなるから来れないかもしれないと言っていた。
紫月にブラン、桑原先輩は大勢で押しかけるのも良くないから、と言って待合室で待っている。
色々変化はあったが、皆はそれでも平常を装って日常を演じている。
いつか、いつか――本当に平穏な日々が訪れるだろうか。
分からない。だけど、そのために戦うんだ。避けられない戦いに、身を投じるしかないんだ。
大丈夫。仲間がいる。
今度はきっと――
「あれ?」
見ると、病室の棚には封筒が置かれていた。
好奇心に駆られ、思わずそれを見てみる。が、すぐに悪いと思って手放した。
「先に誰か……来てたのか?」
気になったのは、手紙に黒い羽根が添えられていた事だろうか。
何か……気になるな。
一体、誰がこんなものを――そんなふとした好奇心が、始まりだった。
俺はまだ気づいていなかった。
俺達が今まで見てきた世界が、まだ氷山の一角に過ぎなかったということを――
「――何だ? 貴様が何故此処にいる?」
低く、唸るような声で俺は振り返る。
聞いたことのある声だった。
それも、酷く畏れを抱くような。
……え?
「そんなに驚かれては心外だな。白銀耀」
え? ええ!?
その人のシルエットを認めた途端、俺は後ずさった。
「く、黒鳥さん……!?」
どうして。どうなってるんだ?
そこに居た黒鳥さん。
彼が、俺達の運命が更に大きく動くことを語るのは――そう遠い先のことではなかった。
※※※
「強くなるには……どうしたら良いんだろ」
耀はああやって言ってくれたけど……だからと言って甘えてばかりってわけにはいかないよ。
どうしよう。エリアフォースカード。
どうやったら、目覚めるんだろう。
分からない。分からないから――私は私のやり方。とことんまで自分で自分の道を究めるしかない。
そう思い、荷物を背負ってお兄の入院してる病院に駆けようとしたその時。
「何だ? やはり強くなりたいのか」
にゃぁ!?
びっくりしたよ。急に背後から声を掛けられたから……。
あたしは、不機嫌さを装って彼に返事を返す。
「ひ、火廣金……びっくりしたじゃん」
「それはそうと、やはり強さへの探求は消えないな、あれだけの目に遭っても」
「むっ……失礼するな。今度は、あたしの力だけじゃない。皆の力も借りるよ」
「しかし、君の場合また1人で突っ走って無茶をするのが目に見えている。以前のケースを見てもそうだし、君は元々そういう人間と見て良いな」
「う……」
確かに火廣金の言ってる事は合ってる。
あたしは生来、誰かの力を借りて強くなるということが苦手な人間だ。
普段ならともかく、迷った事や行き詰ったことがあると、特にそうだ。
脇目もふらず、周りに迷惑を掛けまい、または自分の弱さを悟られまいと1人で更に沼に嵌ってしまう。
「あのだな。俺は君に一応助けられている。そんな君が、また迷いに迷うのを見るのははっきり言ってみるに堪えない」
「にゃー……それじゃあどうしろっていうのさ」
「特訓だ」
「……え?」
あたしの色々疑問に満ちた返答など意にも介さず、彼は続ける。
「だから特訓だ。君の