学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第60話:悪夢と過去─怪奇のアート

※※※

 

 

 

 

「僕のターン。2マナで《一番隊 バギン16号》召喚」

 

 先攻2ターン目。

 早速レンさんは、マナゾーンの闇のカードを2枚タップしてクリーチャーを召喚する。

 あれは、マフィ・ギャングのコストを1下げるクリーチャー、《バギン16号》。

 黒鳥さんが前に使っていたのはデーモン・コマンドが主体のデッキだから、これだけで既にデッキを大幅に変えていることが分かる。

 

「教えてやる。腐臭と血肉のアートというものをな」

「……俺のターン!」

 

 カードを引いた俺は思わずそれを見て笑みを浮かべる。

 

「よし! 《ヤッタレマン》を召喚だ! ターンエンド!」

 

 負けじと2枚のマナをタップして《ヤッタレマン》を召喚した。

 これで俺も展開力を高める準備は出来た。このまま手札が切れないうちにクリーチャーを出していきたいところだ。

 しかし。

 

「僕のターン。2マナをタップ。現れろ、《魔薬医 ヘモグロ》。こいつの効果で、手札を1枚選んで捨てろ」

「《バーバーパパ》を墓地に捨てる!」

「闇の戦術。それは、場に出たクリーチャーを破壊するだけではない。手札のカードも、破壊し破壊し、破壊し尽くす。骨の髄も残さん。ターンエンドだ」

 

 ハンデス! マナを見る限り、完全に闇単色のデッキみたいだし、俺の手札とクリーチャーを徹底的に破壊していくつもりなのだろう。

 

『とはいえ、序盤からの手札破壊はジョーカーズには辛いでありますよ』

「マフィ・ギャングの手札破壊はあくまでも《ヘモグロ》メインとはいえ、キツいな……俺は2マナで《パーリ騎士》を召喚し、墓地から《バーバーパパ》をマナに置いてターンエンドです!」

「ほう。僕のハンデスを利用し、マナを増やすか。しかし、残る貴様の手札は2枚。根こそぎ奪い取ってやる」

 

 黒鳥さんの顔は、普段の冷淡さが抜けて本当に悪魔のように歪んでいた。

 手を突き出すと、何かをかきむしるかのように折り曲げる。

 そこから、彼が何も指示を出さなくともカードが飛んで行き、クリーチャーが影から現れる。

 

「《ルドルフ・カルナック》召喚。こいつの効果で僕のクリーチャーを破壊し、カードを2枚引ける。その際、《ヘモグロ》を破壊して2枚ドロー」

『自分だけ引けるなんて、ずるいでありますよ!』

「代償は払ったぞ。ただし――悪魔の取引を真に受けると、痛い目を見るがな」

 

 一見、クリーチャーの数は2体のままに見える。

 しかし。次の瞬間、屋上は墓場となっていく。

 

「ターン終了時。《ヘモグロ》の効果発動。自分のターンに破壊されていれば、墓地から場に出てくる。もう1度、手札を捨てて貰うぞ」

 

 再び墓場から這い上がる小鬼の医師。

 それが巨大な注射器を掲げ、俺の手札を目掛けて放り投げた。

 それから庇うようにして俺は手札を投げつける。

 

「それか、捨てるのは――ん?」

 

 怪訝な顔をする黒鳥さん。

 ……掛かった。道化の罠に!

 現れたのは、巨大なストーブに手足が生えたようなクリーチャーだった。

 

「《ヴァーニング・ヒーター》の効果発動! こいつが手札から捨てられた時、相手のクリーチャーのパワーが合計6000以下になるように選んで破壊する! 《バギン》と《ルドルフ・カルナック》、《ヘモグロ》を破壊だ!」

「チィッ……!!」

 

 ハンデスの対策をしていないわけじゃない。

 これで、黒鳥さんの場のクリーチャーは居ない!

 

「俺のターン! J・O・E2により、4マナで《絶対音 カーン》を召喚! そして、そのまま攻撃だ!」

「っ……」

 

 一気に攻め込む!

 これで、黒鳥さんのシールドは残り3枚だ!

 

「……早まったな。S・トリガー、《死術医 スキン》。効果で相手のクリーチャー全員のパワーを-2000する。《ヤッタレマン》と《パーリ騎士》はパワー0で破壊だ」

「《ヤッタレマン》! 《パーリ騎士》! だけど……《カーン》の効果で、手札を全て捨てて3枚ドローだ!」

「ならば。僕も全て捨てて3枚ドローだ」

「!?」

 

 折角増えた手札を全て捨ててドローに賭けた……!?

 墓地に落としたいカードがあったのか。

 不気味だ。結局、J・O・Eの効果で《カーン》も山札の下に行ってしまい、俺の場のクリーチャーは無くなってしまう。

 

「……僕のターン。そろそろ引ける頃か?」

 

 言った彼は、カードを引く。

 そして、その無感動な瞳を俺に向けた。

 髪を掻き分けると、ガラスのように繊細な指がカードを掴む。

 

「良いだろう。血の味のする、生臭くて醜い、そして美しいアートの時間と行こうか。5マナをタップだ」

 

 悪寒が走る。

 俺はこの日、この悪魔の悪魔たる所以を垣間見た。

 仲間の屍も、骨も、所詮は彼の作り出す芸術品の、創作の材料に過ぎない。

 背徳的な呪文を紡ぐと共に、骸を喰らいし冒涜が這い寄った。

 

 

 

「――呼び覚ませ、《狂気と凶器の墓場(ウェポス・グレイブ)》」

 

 

 

 あの呪文は――紫月の使っていた呪文だ! 墓地からクリーチャーを蘇らせるつもりだ。

 彼のキャンバスは黒一色。

 そこに血塗られたアートが象られる。

 その種を探す為、彼の山札が掘り進められていく。

 

「効果発動。僕の山札の上から3枚を墓地に置く。そして、コスト6以下の進化ではないクリーチャーを場に出す」

「紫月も使ってた……何が出てくるんだ」

「ほう。流石だな、あいつは。僕のスタイルを徐々に取り込んでいっているか。褒めてやってやれよ。この勝負が終演った後でな」

 

 地獄から這いずる四つ脚。

 有象無象を無造作に組み上げた屍鬼。

 瘴気の森から、凶器が狂喜と共に吼えた。

 

 

 

「狂喜で啼け、狂気と凶器の鬼――《凶鬼03号 ガシャゴズラ》」

 

 

 

 全身を震わせる産声が俺の身の気をよだたせる。

 そして、カードイラストで目にしたことはあっても、まじまじと見た時、その悍ましさに震えた。

 幾つもの”素材”が犠牲になったか分からない、つぎはぎの身体に、機械のアームを無理矢理接合した四肢。

 カメラアイは生者を睨み、その機関銃はの垂れ死ぬことすら許さない。

 まさに、屍の芸術品。悍ましいアート。

 

「これが僕の芸術だよ、白銀耀。コイツの効果で、コスト3以下のクリーチャーを3体まで場に出す。貴様がさっき破壊してくれた、《バギン》と《ヘモグロ》。そして《ジャリ》をバトルゾーンへ出す」

「クリーチャーが、4体に……!」

「《ヘモグロ》の効果で手札を捨てろ」

「《ヘルコプ太》を捨てる……!」

「《ジャリ》の効果で山札から2枚を墓地に置いてマフィ・ギャングを回収する。ターンエンドだ」

 

 《ガシャゴズラ》……!

 3体リアニメイトは場数に圧倒的な差をつける意味で凶悪極まり無いが、それのみならず相手の場のクリーチャー全員にスレイヤーを付与する効果まで持っている、まさに厄介の塊のようなクリーチャーだ。

 

「俺のターン……!」

 

 どうにかしなければならない。とにかく、盤面で負けるわけにはいかない。

 手札にこの状況をひっくり返すクリーチャーは無い。

 ならば、やることは1つだ。

 

「2マナで《ヤッタレマン》召喚! 2マナで《パーリ騎士》召喚! 効果で墓地から1枚をマナに! 2マナで《洗脳センノー》も召喚だ!」

 

 場に出てきた3体のクリーチャー。

 俺もこれで対抗するしかない。しかも、《洗脳》まで出してるんだ。

 これでもうリアニメイトは出来ないはずだ。

 

「面倒だな。……解体するか」

「……え?」

「出番だ。食い荒らせ」

 

 タップされる6枚のマナ。

 そこから、荒々しい咆哮が轟いた。

 俺は訳が分からないまま辺りを見渡す。

 足元は毒々しい色の沼に浸されていき、そこからどばばっ、と飛沫を上げて暗闇に鋭い歯と無数の凶器が蠢いた。

 

「――ソロモン七十二柱が一、『不和侯爵(アンドラス)』の名を借りて命ず」

 

 暗い。昏い。暗闇さえも喰らい、それは悍ましい咆哮を上げた。

 無数の凶器を掲げるは、無数の脚。

 永劫に不死たらしめる無数の節。

 蛇腹のように伸びた身体が、倒れ落ちるようにして、大地を踏み荒らす。

 

 

 

「血塗られし彩色の時間、魂諸共に喰らい尽くせ――《阿修羅ムカデ》」

 

 

 

 以前に戦ったような高尚な名乗り口上は、その者に必要は無い。

 崇高な悪魔神のような存在ではない。

 地べたを這いずり回る蟲に、冠は必要ない。

 故に――酷く、貪欲であった。

 高貴でないが故にそこに礼節も作法も無い。

 ただ、貪り食うだけ。

 

『お呼びのようですね、我が主ィ!! 次は誰を殺せば良いのですかァ?』

「喋った……!?」

 

 その悍ましい声を聞いて、他のクリーチャーとは違う事を察する。

 明らかに格が違う。

 

『間違いない……エリアフォースカードの守護獣であります!? だけど、エリアフォースカードは?』

「無い。僕は、コイツのエリアフォースカードを探す為に協力してやってるのだ。色々あって、その所為でアルカナ研究会の連中に目を付けられ、この間まで下手に身動きが取れなかった」

『ええ、ええ、お恥ずかしい事に……何処の誰だか、この私のエリアフォースカードを奪った者を食い殺してやらねば気が済みませぬ。とはいえ、現在は我が主に仕える身であるのですが』

 

 黒鳥さんの身体の周囲をぐるり、と回ると阿修羅ムカデは、醜悪な外見に反して丁寧な口調で黒鳥さんに話しかける。

 が、それも表面取り繕っているものでしかないことも分かった。

 凶暴だ。こいつは、今まで見てきたどのエリアフォースカードの守護獣で一番凶悪だ。

 よくもまあ、こんなのを従えたもんだ……!

 

「まあ、良い。御託は後。まずは《洗脳センノー》を食い殺せ。貴様の効果で、相手のクリーチャー1体のパワーを-9000する」

「《センノー》!」

 

 一瞬で食い殺される《センノー》。

 命を奪うことなど容易いと、蟲の怪物は嘲り笑う。

 

「そして、僕は《スキン》、《バギン》、《ヘモグロ》、《ジャリ》の4体を破壊」

 

 一気に押し潰すようにして、カードを鷲掴みにし、墓地へ捨てる黒鳥さん。

 そして、場には黒い影の塊が現れていた。

 手が伸び、足が伸び、黒い影の住人が夜を支配していく。

 

 

 

「象れ、屍と死のアート! 死すらも生温い、地獄を見せろ――《ジョルジュ・バタイユ》!」

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