学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第8話:桜花爛漫─超人の強襲

※※※

 

 

 

「《西南の超人(キリノ・ジャイアント)》の効果でコストを軽減し、《剛撃戦攻 ドルゲーザ》を召喚!! その効果で場のアースイーターの数だけドローするので1枚カードを引く!! そして、ジャイアントの数だけドローするので更に2枚、手札のおかわりだ!!」

 

 巨人・西南の超人(キリノ・ジャイアント)と俺のデュエル。

 ジャイアントのコストを減らす|()西()()()()()()()()()()()()()()()()》に、手札補充役の《ドルゲーザ》によって、相手の展開力はかなり強くなっている。

 対する俺は《ヤッタレマン》を引けなかったからか、3ターン目にようやく《ツタンカーネン》を場に出し、次のターンで《バッテン親父》を出せた。だけど、このままじゃジリ貧だ。

 

「くそっ、俺のターン!! 《ヤッタレマン》を召喚して、ターンエンドだ!!」

「やれやれ……今日のマスターは引きが悪いでありますなあ。コレはあのこん棒で頭をぺしゃっ☆ でジ・エンドでありますかな」

「何でお前はそんなに偉そうなの!?」

「雑魚を並べても無駄無駄無駄ァ!! すぐに叩き潰してやるわ!!」

「くそっ、この場に俺の味方はいないのか……」

 

 ようやっと引けたのにこの言われよう。

 まあ、確かに物量でもパワーでも違うけど、これは酷い。しかし――

 

「2マナで更に2枚目の《西南の超人(キリノ・ジャイアント)》を召喚!! そして、コストをマイナス4し、3マナで《別格の超人(イタリック・ジャイアント)》を召喚!! ターンエンドだ!!」

 

 巨大な影がバトルゾーンに降り立った。

 その全貌は、言うなれば機械の装甲に身を纏った巨人だ。ただし、股のパーツには”寿”の漢字、そして左手には酢飯、右手には巨大なマグロを握っている。寿司屋か何かか? そういや寿司屋をモチーフに扱ったアメコミがちょっとした話題になってたよーな。

 いや、それはともかくよく廊下に収まったな、こんなデカブツ。

 

「ま、それもこのターンでシメェだ!! 5マナで《超特Q ダンガンオー》召喚!!」

 

 まあ、向こうがデカブツで来るならこっちもデカブツで叩き込むだけなんだけどな。

 《ダンガンオー》は俺の場のジョーカーズの数だけブレイク数が増える。俺の場には3体のジョーカーズ。このターンで、奴のシールドを全部叩き割れる――そう思ったその時だった。

 

「――《別格の超人(イタリック・ジャイアント)》の効果発動!! お前さんのクリーチャーがバトルゾーンに出た時、ガチンコ・ジャッジを行う!!」

「ガチンコ・ジャッジ!?」

 

 こいつの効果はあんまり知らねえが、ガチンコ・ジャッジなら知っている。互いのトップデック(デッキの一番上)を確認して、コストが高い方が勝ちってのがざっくりとした説明だ。ただし、コストが同じときは仕掛けた側の勝ちになる。

 で、そのガチンコ・ジャッジに勝てば効果を発動するクリーチャーや呪文があるのだ。

 この《別格の超人(イタリック・ジャイアント)》もその1体だ。

 デッキの一番上のカードが展開される。

 そして、数字が虚空に現れた。

 俺は《ドツキ万次郎》の4、対して奴は――

 

「――おいどんの捲ったカードはコスト9、《罠の超人》!! 俺の勝ちだ!! その効果でバトルゾーンに出たクリーチャーをマナゾーンへ送り込む!!」

「なっ!?」

 

 次の瞬間、”酢”と書かれた瓶が虚空に現れる。

 そして、場に飛び出した《ダンガンオー》めがけて一気にドボドボと注がれた。

 嫌な音が響き渡る。見るも無残に、その鋼鉄の機体は塗装が剥がれ落ち、腕が溶け、地面に崩れた。

 恐らくこれは断じて酢の類ではない。硫酸とかその手の類だ。

 そして、どろどろに溶けて固まったクリーチャーだったものをもんずと掴み、酢飯の上に乗せる《別格の超人(イタリック・ジャイアント)》。

 

 

 

新幹線寿司、一丁上がり!!

 

 

 

 じゃねえよ!! ひでぇもんが出来上がったよ!!

 なんつーもんで寿司握ってんだ、このジャイアント。食への冒涜を感じたよ!! いや、そうじゃなくて――

 

「俺のクリーチャーが場に出る度にガチンコ・ジャッジをして、勝てばマナゾーンに送り込まれるって――」

「そうだ。お前さんの召喚は無効化されたも同然!! なんせ、おいどんのデッキはジャイアントデッキ。高コストの比率は自然に多くなるというものよ!!」

「っ……!!」

 

 対する俺のデッキは、比較的コストの小さいクリーチャーが多い。

 つまり、ガチンコ・ジャッジで奴に勝てる可能性はかなり低いという事。

 どうしよう。このターンで致命打を与えて倒すつもりだったのだが――

 

「おいどんのターン!! 《ドルゲーザ》をコスト2で3体召喚!! おいどんの効果とシンパシーで、コストは最大でマイナス6される!! 更に、その効果で大量ドローよ!!」

「げえっ……!!」

「二度と返せないようにしてくれるわ!! 《ドルゲーザ》、《別格の超人(イタリック・ジャイアント)》、そしておいどんでお前さんのシールドを全てブレイク!!」

 

 次々に割られていくシールド。

 幸い、このターンでとどめを刺される事は無いが、俺のシールドはもう無い。

 次のターンを渡せば、どう考えても俺は逆転することが出来なくなってしまう。

 まずは、逆転手をどうにかして引き寄せるしかない。

 

「俺のターン。G・ゼロにより、0コストで《ゼロの裏技 ニヤリー・ゲット》を唱えるぜ!!」

「此処で《別格の超人(イタリック・ジャイアント)》の効果発動!! 相手が呪文を唱えた時、ガチンコ・ジャッジする!!」

「なっ……!!」

「そしておいどんが勝てば、2枚ドロー!!」

 

 まさか呪文ロックかと思ったが――違ったようで俺はほっとした。

 しかし、ガチンコ・ジャッジの結果は芳しいものではなく。

 俺がコスト2の《ヤッタレマン》に対し、奴はコスト5の《大神秘イダ》――よって、

 

「おいどんの勝利!! 手札を2枚、更におかわり!!」

 

 まあ、こうなる。

 だが、俺はどうせこのターンを渡せば負ける以上、相手のドローは余り意味が無い。

 

「《ニヤリー・ゲット》の効果で、無色カードを手札に――あっ」 

 

 《ニヤリー・ゲット》の効果を処理した俺は此処で気づいた。

 ……という事は、言うまでも無く呪文の詠唱はノーリスクということじゃないか!

 そしてそれはつまり――

 

「つーことは、このターンで勝てるってことか」

 

 ――俺の勝利を意味していた。

 

「あぁ? 雑魚3匹で一体何が――」

「出来るんだよ。お前の言った雑魚3匹で、テメェをぶちのめすことが!! ジョーカーズを、無色を嘗めんじゃねーぞ!! 《ヤッタレマン》でシールドを攻撃――」

 

 飛び出した応援隊に合わせて、俺は巨人に向かってカードを突き付ける。

 

「――するとき、《破界秘伝 ナッシング・ゼロ》を使用!! その効果で、俺のクリーチャーのシールドブレイク数は、俺が山札の上から3枚捲ったカードの中にある無色カードの数だけプラスされるんだ!!」

「なっ……!!」

 

 例え、1体1体の力が弱くても、カードのシナジーを重ね合わせることでジョーカーズはデカい相手も押し切るパワーを手にすることが出来るってことを教えてやるとするか。

 展開されたカードは、《チョートッQ》、《超特Q ダンガンオー》、《ツタンカーネン》の3枚――よし、うちの殿(しんがり)の仇、此処で討ち取る!!

 

「――《ヤッタレマン》の打点はプラス3枚、お前のシールドをQ・ブレイク!!」

「ぐああっ!?」

 

 大音声で放たれた音波により、巨人の盾は一瞬で砕け散った。

 あれほどの軍勢も、小さな伏兵の突如の攻撃を前に動くことが出来ない。

 

「そんでもって、《ツタンカーネン》で最後のシールドをブレイク!!」

 

 S・トリガーは出てこない。

 最早、巨人に防ぐ術は無いようだった。

 

 

 

「《バッテン親父》でダイレクトアタック!!」 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 最後の一撃と共に消滅するクリーチャー、同時に打ち砕かれる空間。

 背後でも「《偽りの名 シャーロック》でダイレクトアタックデス!」というブランの声が聞こえた。

 どうやら、ほぼ同時に巨人を撃退出来たらしい。

 

「な、何だったのデショウカ……」

「さっぱり分かんねー……」

「アレは所謂”トークン”と呼ばれる存在でありますよ。ワイルドカードの大本が生み出した云わば尖兵のようなもの、であります」

「尖兵、か」

 

 にしてはなかなかに危なかったがな。

 尖兵が相手でも気が抜けないということか。

 ん? ちょっと待てよ。ということは――

 

「犯人とワイルドカードは、確かにこの学校にまだ居るって事か!?」

「そ、そうでありますな!」

「今なら探したら見つかるかもしれないデース!」

 

 へっ、どうやら自分の手を汚さずに俺達を始末しようとしたんだろうけど、逆効果だったな。

 完全にワイルドカードがこの事件の犯人――とまではいかなくても、存在するということは証明出来ちまったわけだし。

 今学校を隈なく探し回れば、見つかるかもしれない。

 

「オイ誰だぁ! もう最終下校時刻は過ぎてるぞ――」

 

 俺達の顔は、一瞬で真っ青になった。廊下の奥から声がする。

 やばい。あの低い声は、見回りの生徒指導の先生か。

 捕まったら説教モンだぞ。

 

「帰るぞブラン!」

「は、はひっ、そうデスネ!」

 

 結局――俺達は、この日手掛かりを何も掴むことはできなかったのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ――あと、あともう少しで描きあがるんだ。

 俺の、俺の絵の邪魔をする奴は誰だろうが、俺の切札で狩ってやる。

 白銀耀も、或瀬ブランも、やはりあの程度では止められないか。どうやら、デュエマ部というだけあってかなり強いデッキを握っているようだ。

 頼む、出来ることなら止まってくれ、時間よ――俺の至高の1枚が完成するまで。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 次の日。

 紫月が来るまで、俺達は昨日の事を思い返していた。6・7限が芸術の時間で、俺は書道、ブランは美術を選択している。芸術の時間は好きな教科を選択している上に実習ばかりなので、言わば勉強ばかりの毎日に与えられるオアシス(嫌いな奴からすれば地獄だが)。故に本来ならこの曜日はそこまで疲れないのだが……今朝もでかい虫に襲われて、デュエマで撃退したばかり。いつクリーチャーが出てくるか分からない恐怖に苛まれ、結局一日中緊張していたので疲れたのなんの。本当、本体は一体何処なんだ。

 

「ワイルドカードの居場所は何処なんだ……? このままじゃ、また何時襲われても仕方ねぇぞ」

「……やっぱりエリアフォースは私に下サイ!」

「それお前、自分が助かりたいがばっかりに!」

「私、クリーチャーも無ければエリアフォースカードも無いんデスヨ!? 実体化したクリーチャーの良い餌じゃないデスカ!」

 

 それはそうだ。

 だからと言って、俺もチョートッQが居るだけじゃ戦うことが出来ない。

 やばい。コレは軽く、エリアフォースの取り合いで戦争になりそうだ。

 

「大体、アカルが例のカードショップの場所を教えてくれないからこうなるのデス!!」

「あのなぁ!? 何で俺がわざわざ自分から隠すんだよ、さっぱりもう覚えてねーんだよ!! あの後何度も探したけど」

「ダウト、嘘臭いデース!!」

「何だとこのエセシャーロキアン、表に出やがれ!!」

 

「今日は珍しく仲良く喧嘩ですか、お二方」

 

 ぞくりぞくり、と百足が背中に走った。

 見るとそこには、部室の扉を閉めた紫月の姿が。

 俺達の顔は真っ青になる。何処から聞かれてた? 

 

「……はぁ」

 

 溜息をつく紫月。

 そんなことを気にする間もなく彼女はソファに座る。

 その顔は、普段の無表情な彼女比から見ても暗いものだった。

 

「どうかしたのか? 随分と落ち込んでいるようだが」

「表情、暗いデスヨ? シヅク、何かあったデスカ?」

「……先輩方に言ってもどうしようも無いと思うんですけど」

「そんなことは無い。部員の悩みなら何だって聞くぞ、部長としては見過ごせない」

 

 こいつが此処まで落ち込むのも珍しい。それに、小さな事でも学校で起こった事ならば聞いておきたい。

 

「――実は、姉の事なんです」

「! お姉ちゃんデスカ!?」

「お前知らなかったのかよ」

「双子ですけどね」

 

 まあ、結局昨日はブランに言いそびれてたんだが――紫月には双子の姉がいる。

 それも、本当にそっくりだった。昨日はそれで、思わず記憶の彼女と紫月の顔を見比べてしまったほどだ。

 正直、パーカーが無ければ分からない。

 

「翠月さんか」

 

 その名を俺は呼ぶ。頷く紫月。ブランは余計に驚いたようだった。自分が知らない事を俺が知っているからだろう。残念だが、今回ばっかりはお前の調査不足だぞブランよ。

 

「そのお姉ちゃんがどうしたんデスカ? 姉妹喧嘩デスカ!?」

「私がみづ姉と喧嘩? ……ハッ」

「あ、今鼻で笑ったデース!! ”また見当違いな推理を、このエセシャーロキアン”って顔デース!」

「そこまで言ってねぇだろ」

「いえ、大方合ってます白銀先輩」

「お前仮にも先輩に対して辛辣過ぎだろ!!」

 

 まあ、ブランがエセシャーロキアンなのは今に始まった事じゃねぇし気にすることでもないんだけどな。

 それはともかく、事情を聴かねば。

 

「――実は、みづ姉……というよりみづ姉の所属してる美術部の問題と言いますか」

「んー? でも美術部について、そんな悪い噂は聞いてなかったんですケドネ」

「いえ、部全体とは良い場所なんですけど……。みづ姉、体験入部の時にお世話になった先輩がいるんです。その方の様子が……ここ最近、おかしいと」

「様子が……おかしい?」

 

 そのワードに反応する俺とブラン。

 少し引いた様子の紫月だが、こほんと小さく咳ばらいをすると続けた。

 

「ええ。狂ったように、屋上である1枚の絵を描き続けているらしくて。誰かが近づくと、ヒステリックに”邪魔だ!!”と怒鳴り散らして追い払ってしまうそうなんです」

「そりゃまた……」

「桑原先輩――確か少し年の離れた、病気のお姉さんがいるって聞いた事がありマス」

「!」

 

 言い出したブランの言葉に、紫月も俺も驚いたように言った。

 

「入院、長いようデスヨ。少し小耳に挟んだんデスケド」

「……そう、ですか……」

 

 確かに病気の姉の為に必死に絵を描いているようにも見える、この異変の構図。

 しかし、俺とブランはもう1つの可能性を知っている。今此処でこいつにそれを教えてやることが出来ないのが、悔しいけど――

 

「しづ、しづ……いるわよね!?」 

 

 そんな声が部室に飛び込んで来た。

 思わず俺達はその方向を振り向く。

 

「……みづ姉……」

 

 俺もブランも目を丸くした。

 そこに現れたのは件の紫月の双子の姉、翠月だったのだ。

 

「美術室が――大変な事に……!」

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