学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
気が付けば、病院の外に出ていた。
何とか……脱出出来たようだが、一体どんな術を使ったんだ阿修羅ムカデは。
「影法師。それは、阿修羅ムカデ、否・影の者が使う技。影に、闇に、文字通り溶け込んで移動する能力だ」
「……なんつーか、ノゾムのオーパーツの分解といい、あんたの阿修羅ムカデのソレと言い、ちとズル過ぎませんかソレ……」
「尚、長時間潜り続けていると本当に闇から戻れなくなるのでご注意を、とは阿修羅ムカデの弁だ」
「すいませんでした」
「強い力には、相応の代償が付く。面倒だぞ。覚えておけ」
……肝に銘じておこう。俺に足りていなかったのは、その認識かもしれない。
覚悟。力を得る事の覚悟がどれほどのものか、分かっていなかった。
一先ず、病院が主戦場になることはなさそうだ。
奴等の反応も、病院から降りていく。どうやら、必要以上に暴れるつもりはないようだが……あの昏い目、やはり気にかかるな。
まあいい。この林を抜けて、何とか街に出て、白銀達を探さねえと。
あいつらだってじっとしているはずはない。この状況、狙われるのは真っ先にあいつらだ。
……まあ、俺らも狙われたが、メインはあくまでもエリアフォースカードのはずだしよ。
「っ……待て」
背の高い草叢をかき分けて進もうとする俺を、黒鳥さんが制す。
「……誰か、近くにいる」
「……なっ……!?」
『大きな魔力が2つ。どうやらぶつかり合っているようですが……』
「ぶつかっている!? まさかあいつら、魔導司に襲われたのか!?」
『さあ? 私、サーチに関しては盲目なので、誰かまではさっぱりですがね』
「仕方ない。確かめてみる価値は――」
「ぐおおおおおおおおおおお!!」
叫び声が聞こえた。
聞き覚えのあるものだ。
あれは恐らく――俺は、放っておけずに駆け出す。
止める黒鳥さんの声も聞かずに。
そして、思わず踏みとどまった。
「っ……!」
開けた視界の先にあったのは、闇夜に浮かび上がる巨人の姿。
月に照らされ、くっきりと輪郭が映った。
あれは――《終の怒流牙 ドルゲユキムラ》。ジャイアントのクリーチャーだ。
下半身はアースイーターで構成されているが、その無数の触手の先には人影が映っていた。
そいつの姿を見て、俺は叫ぶ。
「火廣金!?」
「……ぐっ、ぎっ……!!」
身体に触手が絡まっており、空中に吊るし上げられている火廣金。
そして、巨人の傍には、それを使役しているであろう大男の姿があった。
しかし。その瞳は、何かに中てられたかのように不気味に光っている。狂気。
一言で言ってしまえば妄執的なそれに憑かれているようだった。
「ヒ……イ……ロォ……!! 何故裏切ル。お前程の男が……なぜダァ!!」
憤怒の怒号が鳴り響く。
その姿にただただ俺は気圧されていた。
「あいつは、ティンダロス。アルカナ研究会の魔導司だ」
「同士討ち……火廣金への制裁なのか!?」
「……いや、様子が少しおかしいが」
黒鳥さんが淡々と言ってのける。
どういうことだ。
……いや、確かにそうだ。あいつからは、何か変なものを感じる。
「桑原先輩に、『
言うが早いか、殺気を感じた。
今度は林の影から、2体の巨人が姿を現す。
「抑え込め。阿修羅ムカデ」
『人遣いが荒いですねェ……!』
「桑原、こっちは何とかする。貴様は行け!」
「……はいっ!!」
だっ、と駆け出すと火廣金が必死な形相で叫んだ。
「馬鹿か!! 死にたいのかあんたはぁ……!!」
「んなこと言ってられるか!!」
「今俺は魔力が奪われて魔法が使えないッ。あんたを助けられないって言ってるんだ!!」
「助けられんのは、テメェの方だァ!!」
俺は駆け出した。
無数の触手が、俺を捉えて向かってくる。
「おい火廣金……エリアフォースカードは、持ち主を絶対諦めないんだったな?」
ならばこの状況。火廣金の魔法が解除されていて、尚且つあいつがアレを持っているのならば。
”恰好の養分”である俺を見逃すわけがねえんだよ。
なあ、そうだろ――
「なら、俺もテメェを助けるのを諦めねえ!! あいつのように、白銀のように!!」
ドルゲユキムラの触手が吹き飛ばされた。
見れば、光が軌跡を描いて火廣金の懐から飛び出してくる。
大男は、遂に興味を俺の方へ移したようだった。
虚ろな眼で俺を睨みつける。
「貴様ァ……!! ファウスト様の邪魔を……するナァ……!!」
……正常に動作するかは分からない。だが――此処で俺がやらなくて、誰がやるんだ!!
「……デュエルだ。魔導司さんよォ!!
『
※※※
「何だ貴様ハ……!! 白銀耀以下の論外に、興味は無イ……! 俺は今、それどころじゃなイ!!」
「わりーな。受けた恩はきっちり返さなきゃ気が済まねえ義理でよ。それが、
俺と魔導司――ティンダロスのデュエル。
2ターン目から、早速マナ加速合戦が始まろうとしていた。
「《タルタホル》召喚! 効果で、手札からパワー12000以上のクリーチャーを見せれば、山札の上から1枚をマナに置ける。《コレンココ・タンク》を見せてターンエンドだ!」
「俺のターン……!! 《電脳鎧虫 アナリス》を召喚シ、自爆。マナを1枚ブースト……ターンエンドだ」
成程な。《アナリス》……どうやら、それをわざわざ採用してること、そしてマナゾーンのカードを見るにテメェもマナブーストをしてマナを増やしていくタイプのデッキで間違いねえ。
加えて、召喚されていたクリーチャーはジャイアント。これだけで決め付けは早計だが、間違いなくシノビドルゲか、あのデッキは。
「俺のターン。3マナで《ルツパーフェ・パンツァー》召喚! こいつをマナゾーンに置いてターンエンドだ!」
まずいな。手札が切れてきた。やはり、《ジャンボ・ラパダイス》を引けないと辛いな。
「俺のターン……4マナで、《西南の超人》召喚!」
「そいつは……!」
あいつは、ジャイアントのコストを-2するクリーチャーだ。
どうやって処理したものかね……生憎このデッキ、除去手段は多くは無い。
だが、どうにかして早期にクリーチャーを踏み倒す事が出来れば――!
「痛ッ……!!」
俺は頭を抑えた。
畜生がァ、
まあ、そんなことは織り込み済みだ。最初っから俺はそのつもりでこの戦いを挑んだんだ!!
「無茶だ!! 貴方は、そのままだと
「だとしてもっ……!」
重くなる気分。
苦しくなっていく動悸。
吐き気が込み上げてくる。
「俺のターン……。6マナで《コレンココ・タンク》召喚! その効果で、山札の上から3枚を表向きに……!」
此処で必要なのは手札だ!!
手札さえあれば、戦える!!
「《メガロ・カミキュロス》、《デスマッチ・ビートル》を手札に、《ルツパーフェ・パンツァー》をマナに置く! ターンエンドだ!」
「愚かな……愚かだゾ、人間!! ファウスト様に、逆らうナ……!!」
大地が割れる。
そこから、風が吹き込んだ。
「1マナで《デスマッチ・ビートル》召喚……! 更に、残りの4マナでシンパシーと《西南》でコストを合計4軽減しタ、《剛撃戦攻 ドルゲーザ》をバトルゾーンへ出すゾ!!」
「っ……!!」
つむじ風と共に力士の半身と触手の怪物の半身を併せ持った異形が大地を割った。
そこから、大量の手札がティンダロスの右手に注がれた。
「その……効果デ……場のジャイアント3体分だけ3枚ドロー、更にアースイーター1体分1枚ドロー、合計4枚ドロー!!」
「そんなに引いてどうするんだ……!?」
「ターン……終了!!」
まずいな……《メガロ・カミキュロス》で手札からクリーチャーを踏み倒そうとしても、《デスマッチ・ビートル》とバトルしなきゃいけないのか。
味方で使うと機能しないことがあるのに、敵に使われると非常に嫌なカードだぜ……!
此処はどうする……!? 慎重に、進化せずに……!
「ぐぅっ……!!」
思わず、喉をかきむしった。
また、あの破壊衝動だ。
『力が……力が欲しいか?』
「ぐっぎぃぃぃ……!! テメェ……!!」
火廣金が後ろから叫ぶのが聞こえてくる。
「呑まれるな!! 今、そこで力に呑まれたら――」
「ぐっ、ああああああああ!!」
苦しい。苦しい、苦しい、苦シい!!
何だ、何なんだ、クソが!!
こんなの、こんな美しくねぇ姿、もう誰にも見せてたまるもんか!!
俺は人間なんだ……力の使い方も分からねえ畜生に堕ちるわけには……!!
「壊ス、壊ス、壊ァァァァス!!」
やめろ……やめるんだ!!
畜生がァァァァ!!
「――ウウウウ……《メガロ・カミキュロス》を《コレンココ・タンク》からNEO進化ァ!! そのまま、T・ブレイクだ!!」
「愚カな……力に呑まれて畜生道に堕ちたカ!」
駄目だ。いう事を聞かねえ。
乗っ取られてるのか!? 口も、言葉も、全部
ダメだ!! 此処で殴ったら、奴の思うツボなのに――!!
「その効果で……手札からパワー12000以上のクリーチャー、《デスマッチ・ビートル》を場に出す!!」
「《デスマッチ》の効果は使わなイ。だが、ニンジャ・ストライク5。《怒流牙
クソが!!
言わんこっちゃねえ!!
ニンジャ・ストライク、だと!?
「このクリーチャーがバトルゾーンに出タ時、カードを1枚引き、その後、自分の手札を1枚捨てル……俺は、《斬隠蒼頭龍 バイケン》を場に出す……!! 効果で《カミキュロス》をバウンス」
「っ……!!」
そこでようやく、俺の意識が戻ってくる。
どうする。どうなる!?
このまま、奴に意識の主導権を握られるのは、まずい。
俺の思った通りのプレイングが出来なくなる!
「ターン終了時に《佐助》を山札の下へ送ル」
そして、とティンダロスは言葉を紡いだ。
「お前は、このターンで終わりダ……!! 4マナで《バイケン》を進化!!」
「《バイケン》を進化、だと!?」
見上げると、雲に切れ間が現れる。
そこから巨大な影がティンダロスの背後に降り立った。
「見るが良い……これが、俺の真の切札ダ……!! 現れロ、《大宇宙 ジオ・リバース》!!」
現れたのは意外なクリーチャーだった。
何だ……あれは!? 確か、コスト6、パワー6000のジャイアントの進化クリーチャーで、破壊されたら進化元のクリーチャーを全て場に出すってクリーチャーだったはずだが、エイリアン故か水か闇のクリーチャーからしか進化が出来ねえんだっけか。
「登場時効果デ、山札の上から3枚を見て、進化ではないクリーチャーを下に置ク。更に呪文、《時空の庭園》デ、マナを加速した後にマナからカードを1枚、《ジオ・リバース》の下ニ!!」
だが幸い、こっちにはタップされているクリーチャーはいない。
あいつのマナには闇のカードと思しきクリーチャーも居ないし、今すぐ自爆特効も出来ないだろう。
むしろ、どうやって自壊するつもりだったんだ?
……いや、待てよ。
「まずハ、《西南》、《デスマッチ》、《ドルゲーザ》、《ジオ・リバース》の4体が居るのデ、《西南》を進化!!」
浮かび上がるのは、力を意味するⅧ番の数字。
それが、俺を押し潰すべく現れた。
「《
その効果が発動する。
マナゾーンからクリーチャーを手札に戻せば、その数だけ手札からカードをマナゾーンへタップして置くというものだ。
それにより、次々に忍者の巨人は次々に分身していった。
「《デスマッチ》、進化!! 《ドルゲユキムラ》!!」
「っ……!!」
「これでは終わらなイ……手札1枚、山札の一番上のカードを1枚、ソシテ……《ジオ・リバース》を破壊する事で、《暗黒鎧 ダースシスK》を召喚!!」
「なぁ!?」
嘘だろ!?
こんな方法で《ジオ・リバース》を破壊するなんて!!
「更に……その効果で、《ジオ・リバース》の下にある進化ではないクリーチャーを全て、バトルゾーンに出ス! 《バイケン》、《サモハン》そして――」
浮かび上がったのは、ローマ数字のⅩⅥ。
あれは、塔を意味する数字だ。
「忍法、口寄せの術――出でよ、世界を揺るがす災厄の龍、《界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ》!!」