学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第67話:力(ストレングス)の暴動─旋風の刃

 

 俺は戦いた。

 何だ、これは……!?

 この辺り一帯を覆いこむ程に巨大な恐竜だ!!

 咆哮が俺を揺さぶり、嵐のような風を巻き起こす。

 

 

「覚悟しロ。こいつは俺の切札ダ……もう、貴様はクリーチャーを場に出した時の能力は、使えなイ」

「なっ……!!」

「更に、《サモハン》で貴様は俺の他のクリーチャーは選べなイ。《サモハン》を選べば2枚、俺がドローすル」

「厄介なっ……!」

 

 俺は歯噛みした。

 このままじゃ……!!

 

『力が……欲しいか?』

「!!」

『この状況、我の力をもってすればあの魔導司如き吹き飛ばすのは容易い……なあ?』

「……!!」

 

 こいつ……あいつを、目の前のティンダロスを直接攻撃してゲームを終わらせるつもりか。

 確かに、それなら確実に勝てる。

 

「やめろ!! (ストレングス)の罠だ!!」

『考えてみろ? お前は此処で負けたら死ぬんだぞ? 俺ほどの膨大な魔力、今なら使わせてやるよ、なぁ? そしたら、お前の姉貴の病気だって治してやるよ』

 

 火廣金の声は耳に入らない。

 その間、《ドルゲユキムラ》が飛び掛かり、3枚のシールドを叩き割った。

 だが、それさえも無視し、震える声で、俺は返した。

 

「本当にか?」

『ああ、やってやるよ、勿論だ』

「そうか――」

 

 俺の答えは、1つだ。

 

 

 

 

「なら、死んだ方がマシだ、この馬鹿野郎!!」

 

 

 

 

 吐き出すような俺の言葉に、(ストレングス)の声は狼狽えたようだった。

 

「そんなイカサマ染みたやり方で勝つ? テメェ、勝負ってもんが何なのか分かってねぇみてえだな?」

『な、なに!?』

「デュエマってのはなあ、それはヒリヒリとした時間の中で、俺の中の全てを引き出し、キャンバスの上に絵具をぶちまけて塗りたくれるかという戦い。いわば芸術。それは、相手も同じだ。テメェ如きが、横槍入れてんじゃねえ!!」

『如き、だとォ!?』

「俺は、そういう卑怯なやり方をする奴が、一番大ッッッ嫌いなんだ!! 義に背く事、それは美しくない事、きたねぇ事だ!! 俺は、テメェみてぇなきたねぇ奴は要らねえ!!」

『何!? 貴様、姉を治したくないのか!? 姉貴を治そうとしても、今此処で貴様が死んだら意味が無いんだぞ!? 我と契約をしろ!!』

「へーえ。やっぱりテメェ。目当ては俺の契約か」

『ぎっ……』

「テメェ、2度も俺に姉貴をダシにして従わせようとしたな? 虫唾が走るとはこの事だ。テメェの嘘にはもう、付き合ってられねぇよバーカ」

 

 今度は、静かに語り掛けた。

 

「無いモンねだりしても、やっぱり何も手に入れられねぇんだ。俺に元からねぇもんを簡単に手に入れる事なんか出来ねえんだ。だから――(ストレングス)。テメェの誘いには乗らねぇ。テメェの間違った力なんざ要らねぇ。テメェが間違った歪んだモノなら、テメェなんざハナから要らねえんだよ!」

 

 俺はデッキケースから(ストレングス)を乱暴に引っ張り出す。

 

『我を拒絶するのか!? もう1度乗っ取ってやるぞ!!』

「俺の中の信念を曲げるくらいなら――テメェなんざ、こうだ!!」

 

 

 ――ビリビリビリッ!!

 

 思いっきりカードを掴み、上下に引っ張り上げた。

 思いの外、簡単にそれは悲鳴を上げて真っ二つに裂ける。

 

 

 

『オエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 

 

 断末魔の叫びが、空間の中に鳴り響いた。

 大体、主を乗っ取ろうとするような奴の言う事なんざ信用できるか。

 俺が死んだらエリアフォースカードである自分も危ない。だから保身に走ったみてぇだが。

 

「桑原……先輩」

「これで、良いんだろ。こんなもん、無い方がよっぽどマシだ」

「……いや、そうじゃなくて」

 

 分かってるぜ、火廣金。

 これで、良い。

 これで良いんだ。

 ……”いや、そうじゃなくて”? ちょっと待て、こいつ何を言いかけた?

 叫びが鳴りやみ、真っ二つになったカードを、俺は足元に放り捨てようとしたが――次の瞬間、カードの裂け目から黒い煙が吹き出て行く。

 

「っ!?」

「邪気が……エリアフォースカードの邪気が抜けていく」

「邪気!?」

 

 次の瞬間、真っ二つになっていたカードが俺の手元を離れ、再び1つのカードになる。

 今度は真っ白。再び何も無いエリアフォースカードとなって。

 

 

 

『君を待っていたよ。桑原甲』

 

 

 

 穏やかな、声が聞こえてきた。

 

「テメェ……!」

『君は力の真の意味を知り、己の手でこのカードに宿った闇に引導を渡した。礼を言いたい』

「いや、俺は単に……てか、テメェは何だ?」

『迷わず、勝負を続けるんだ! そして、”ボクを引け”!』

 

 説明は無し、か。

 だけどごたごたと誘いの言葉を持ちかけられるよりは、よっぽど――

 

 

 

「へっ、良いぜ……やってやらァ!!」

 

 

 

 俺は信用、出来る!

 正面の魔導司に投げかける。

 

「待たせたな」

「話は終わったカ? だが、これで終わりダ!!」

 

 2体目の《ドルゲユキムラ》の攻撃。

 シールドが2枚。薙ぎ払われる。しかし。

 そのシールドは光となって集約される。

 

「残り全てのシールドをブレイクダ!」

「S・トリガー! 《ゼノゼミツ》! 効果は使えねえがな」

「それだけカ?」

「誰がトリガーが1枚だけ、って言った?」

 

 俺は口角を釣り上げた。

 

 

 

「S・トリガー、《Dの牢閣 メメント守神宮》! 効果で俺のクリーチャーは全員ブロッカー化する!」

 

 

 

 封じるなら、D2フィールドまで封じるんだったな、ティンダロス。

 3度目の《ドルゲユキムラ》の攻撃は、《タルタホル》でブロックして防ぐ!

 

「ッ……ターンエンド。だが、それでどうやって勝つつもりダ。盤面を並べるマナも無いだろウ。殴れば、シノビが待っているゾ」

「分からねえよ。分からねえが――」

 

 このドローに、賭けるっきゃねえだろ!

 俺は山札に手を置く。そして――引いた。

 賭けるぜ。この1枚に!!

 

『引いてくれたな。このボクを!』

「――ああ。テメェで、この大勝負に勝つ!!」

 

 今の俺の場のクリーチャーは、《コレンココ・タンク》と《デスマッチ・ビートル》、《ゼノゼミツ》の3枚。

 そして、マナのカードはこれで9枚だ。

 もう、迷う必要はねぇ!!

 

「俺の場にパワー12000以上のクリーチャーは3体。よって、コストを合計6軽減し、4マナをタップ――」

 

 風が吹いてきた。

 俺を守るかのように包み込む。

 

 

 

「天に描け、俺の芸術!! 一世一代の大作だ――《天風のゲイル・ヴェスパー》!!」

 

 

 

 それはカードを叩きつけた途端、飛び出し、天を飛び回る。

 一陣の風と共に、戦場へ姿を現した。

 真紅のマフラーを身に着けた、ヒロイックな姿をした蜂の戦士。

 それは、俺の方に向き直ると、口を開く。

 

『やっと……出会えたようだな。マスター』

「テメェのエリアフォースカードには散々苦労させられたよ」

『……それは、(ストレングス)が外界の空気で汚染されていたからだ。巧な言葉で主を騙し、魔力を奪い取る魔物が住み着いてしまったんだ。本当は、この中にある膨大な魔力は、人間どころか魔導司にも扱えないのにね』

「いや、それで安心したぜ。やっぱり、そんな都合の良いモン、世の中にはねぇってな」

『力とは、元々その者に備わっているもの。後は、周囲がどうやって引き出すか否か。僕の力は、まさしくそれだ。君のクリーチャーの力を、最大限に活かす!』

「ああ。頼むぜ。テメェの力、存分に俺が使いこなしてやるからよ!!」

『勿論だよ』

 

 彼は、マフラーをなびかせると言った。

 

 

 

『何故なら、ヒーローは遅れて来るものだからね! もう大丈夫だ!』

 

 

 

 ……本当に大丈夫かコイツ。

 まあいい。《天風のゲイル・ヴェスパー》……コスト10、パワー12000のT・ブレイカーのグランセクトだ。

 W・シンパシー:パワー12000以上のクリーチャーで、コストを大幅に軽減できるが、こいつの本領は第二の能力にある。

 

「行くぞ! 早速テメェの出番だ!」

『ああ。ボクの効果で、マスターの手札のパワー12000以上のクリーチャーも、W・シンパシー:パワー12000以上のクリーチャーを得るんだ!』

「何……!? W・シンパシーだト!?」

「まず、1マナで《デスマッチ・ビートル》召喚。そして、俺の場のパワー12000以上のクリーチャーは4体により、コストを7軽減!」

 

 1枚のマナをタップし、俺は力の限り叫ぶ。

 

 

 

 

「――ぶち壊しやがれ(デペイズマン)、《メガロ・カミキュロス》!!」

 

 

 

 

 まだだ!! もう1マナタップ!! 今度は9コスト軽減!

 

 

 

「――吼えろ、野獣のように(フォービズム)、《ハイパー・マスティン》!!」

 

 

 

 巨大な蟷螂が、戦場に降り立つ。

 NEO進化の必要は――無い!

 

「更に、今度は9コスト軽減。1マナで《古代楽園 モアイランド》召喚!」

「何ダ? そんなに並べても攻撃できなければ意味が無いゾ!!」

「意味があるんだよ!! 全ての芸術に、必要じゃねえ色はねぇ!!」

 

 最後にダメ押しの1マナ! これで終わりだ!

 合計、11コスト軽減だ!

 

 

 

「――1マナで、《超絶奇跡(グレイトミラクル) 鬼羅丸》、召喚!!」

 

 

 

 今度こそ、ティンダロスは目を見開いた。

 確かにこいつの、召喚時にガチンコ・ジャッジを3回して、勝った数だけ捲ったクリーチャーを場に出し、呪文を唱えるって効果は《ワルド・ブラッキオ》で使えねえ。

 だがな……。

 

「こいつの効果で、俺のクリーチャーは問答無用で全員スピード・アタッカーなんだよ!!」

「何ィ……!?」

「さあ、呪文は使えねえぞ!! お得意のニンジャ・ストライク、後何度使える?」

「おのれ……白銀耀と言い、貴様と言い……ウオオオオオオオアアア!!」

 

 咆哮。

 ティンダロスの瞳が不気味に赤く光る。

 あれは――あの嫌な感じ、見た事があるぞ!?

 

「《ハイパー・マスティン》で攻撃――するとき、山札の上から3枚を表向きにし、それがパワー12000以上のクリーチャーならば場に出す! まず、《ルツパーフェ・パンツァー》を場に出すぜ!」

 

 そして、だ。

 こっから更に仕掛けるぞ!

 

 

 

「――叫べ野生よ(プリミティヴィティ)、《グレート・グラスパー》!!」

 

 

 

 降り立つ蝗の皇。

 これで揃い立つ、昆虫戦士たち。

 それが一斉にティンダロスへ噛みついた。

 

「例え巨人が相手だって――一寸の虫にも五分の魂なら、一丈の虫にゃ五間の魂だぜ!! これがグランセクトの巨大昆虫騎士団だ!!」

「ファ、ファウスト様ァァァァァ!! こいつは、この俺が倒す!! ニンジャ・ストライク5、《佐助の超人》を召喚し、カードを1枚引いて《バイケン》を捨て、《鬼羅丸》をバウンス!! 《バイケン》の効果で1枚ドローダ!」」

 

 これで奴のシールドは残り2枚。

 SA付与がなくなった今、俺の場の攻撃出来るクリーチャーは、《メガロ・カミキュロス》と《グラスパー》しかいない――とでも思ったのか?

 

「《メガロ・カミキュロス》で攻撃――する時!! 手札から《ハイパー・マスティン》を出す。勿論、進化元は《コレンココ・タンク》だ!!」

「なあっ!? ぐっ……ニンジャ・ストライク4、《ハヤブサマル》でブロック!! 《バイケン》の効果で1枚ドローダ!」

「まだ連鎖は続くぞ? 《グレート・グラスパー》でシールドをT・ブレイク!! その時、マナから《カミキュロス》を《デスマッチ》から進化! SA付与に気を取られたみてぇだが……この展開力の前では意味を成さねえよ!!」

 

 使えるニンジャ・ストライクが無いのか、彼はそのまま通すしかない。

 全てのシールドが割られた。

 

「《怒流牙 サイゾウミスト》がせめて使えれば――ファウスト様ァァァァ……!!」

「こいつでシメェだ!!」

 

 俺は叩き込む。

 これで全部終わらせる!!

 

 

 

「《ハイパー・マスティン》で、ダイレクトアタックだ!!」

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 空間が崩落する。

 それと共に、俺は倒れ伏せたティンダロスの前に立っている事に気付いた。

 

「勝った……のか?」

「ああ。どうやらそうらしい」

 

 火廣金が息を切らせて近づいてくる。

 

『死ぬような攻撃は加えていない。だが、ボクとしてはこの男に魔術が掛けられていた事の方が気になるね』

「何の魔術だ?」

 

 俺が首を傾げていると、黒鳥さんも後ろから阿修羅ムカデを引き連れてきた。

 

「こちらも全て終わった」

「あ、ありがとうございました」

「礼には及ばん。しかし……この男から感じた嫌なモノ……何だ?」

 

 倒れているティンダロスの顔色や、脈を調べながら、黒鳥さんは怪訝な顔を浮かべた。

 いや、ティンダロスだけじゃない。先程から出会う魔導司から感じる嫌な気配。

 それが何なのか、やはり分からない。

 

 

 

「恐らく……精神汚染(マギア・ポリーシャオ)、あるいはそれに類する魔法だろう」

 

 

 

 言ったのは火廣金だ。

 精神汚染(マギア・ポリーシャオ)……!?

 待てよ。薄々そんな気はしていたが、それってアルカナ研究会のトリス・メギスが使っていた奴じゃねえか。

 何で、味方に味方がそんな魔法を使うんだよ!?

 

「そう言えば、さっき病院で会った男達も妙な様子だったな。行動にキレが無かった。僕達を襲えるなら、もっと迅速に襲えたはずだ。それが、まるで人形のような覇気の無さだった」

「確かに……」

「ならば、此処に送られてきた魔導司……その中には精神汚染(マギア・ポリーシャオ)を仕掛けられたものもいる。それも多数が」

「何のために? それも誰が?」

「恐らく――ファウスト様に同調しない者へ、トリス・メギスが仕掛けたのだろうな。魔導司は無暗に外の世界に被害が及ぶことを嫌う。だが、今回の彼らの行動はそれを顧みないものだ」

 

 だとすれば……魔法で無理矢理従わせたってことか!?

 ……許せねえ。自分の仲間に!!

 

「行こう!! この目で、何が起こってんのか、確かめてやるぜ!!」

「ああ。白銀達も心配だからな」

「そうですね。では、早くここから抜けましょう」

 

 火廣金は、そう言うとティンダロスに向かって小さく「後で必ず、助けてやる」と呟き、駆け出した。

 俺達も街を目指して駆け出す。

 やっと、やっと真実をこの目で見つける手段が手に入った。

 きっと、俺が力の使い方を間違えなければ良い相棒になるだろう。

 

「貴様も、手にしたな。資格を」

「……はいっ」

 

 俺はデッキケースに呼びかける。

 頼むぞ。相棒。

 

『マスター。君がボクの舞台、大きく描いてくれよ。約束だ』

「任せろよ」

 

 何故なら――

 

 

 

「俺は――芸術家だからな!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 画して。

 事態は更に動き出す事になる。

 既に、激突の時は迫っていた。

 アルカナ研究会、そして運命に抗う決闘者達の激突の時が、刻一刻と──迫っていた。

 

 

 

「アルカクラウン」

 

 

 

 手を伸ばす大魔導司。

 強大な力を蓄積させている道化の化身はその瞳を怪しく輝かせる。

 

「……全ては我々の思い通り──フフフ」

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