学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
俺は戦いた。
何だ、これは……!?
この辺り一帯を覆いこむ程に巨大な恐竜だ!!
咆哮が俺を揺さぶり、嵐のような風を巻き起こす。
「覚悟しロ。こいつは俺の切札ダ……もう、貴様はクリーチャーを場に出した時の能力は、使えなイ」
「なっ……!!」
「更に、《サモハン》で貴様は俺の他のクリーチャーは選べなイ。《サモハン》を選べば2枚、俺がドローすル」
「厄介なっ……!」
俺は歯噛みした。
このままじゃ……!!
『力が……欲しいか?』
「!!」
『この状況、我の力をもってすればあの魔導司如き吹き飛ばすのは容易い……なあ?』
「……!!」
こいつ……あいつを、目の前のティンダロスを直接攻撃してゲームを終わらせるつもりか。
確かに、それなら確実に勝てる。
「やめろ!!
『考えてみろ? お前は此処で負けたら死ぬんだぞ? 俺ほどの膨大な魔力、今なら使わせてやるよ、なぁ? そしたら、お前の姉貴の病気だって治してやるよ』
火廣金の声は耳に入らない。
その間、《ドルゲユキムラ》が飛び掛かり、3枚のシールドを叩き割った。
だが、それさえも無視し、震える声で、俺は返した。
「本当にか?」
『ああ、やってやるよ、勿論だ』
「そうか――」
俺の答えは、1つだ。
「なら、死んだ方がマシだ、この馬鹿野郎!!」
吐き出すような俺の言葉に、
「そんなイカサマ染みたやり方で勝つ? テメェ、勝負ってもんが何なのか分かってねぇみてえだな?」
『な、なに!?』
「デュエマってのはなあ、それはヒリヒリとした時間の中で、俺の中の全てを引き出し、キャンバスの上に絵具をぶちまけて塗りたくれるかという戦い。いわば芸術。それは、相手も同じだ。テメェ如きが、横槍入れてんじゃねえ!!」
『如き、だとォ!?』
「俺は、そういう卑怯なやり方をする奴が、一番大ッッッ嫌いなんだ!! 義に背く事、それは美しくない事、きたねぇ事だ!! 俺は、テメェみてぇなきたねぇ奴は要らねえ!!」
『何!? 貴様、姉を治したくないのか!? 姉貴を治そうとしても、今此処で貴様が死んだら意味が無いんだぞ!? 我と契約をしろ!!』
「へーえ。やっぱりテメェ。目当ては俺の契約か」
『ぎっ……』
「テメェ、2度も俺に姉貴をダシにして従わせようとしたな? 虫唾が走るとはこの事だ。テメェの嘘にはもう、付き合ってられねぇよバーカ」
今度は、静かに語り掛けた。
「無いモンねだりしても、やっぱり何も手に入れられねぇんだ。俺に元からねぇもんを簡単に手に入れる事なんか出来ねえんだ。だから――
俺はデッキケースから
『我を拒絶するのか!? もう1度乗っ取ってやるぞ!!』
「俺の中の信念を曲げるくらいなら――テメェなんざ、こうだ!!」
――ビリビリビリッ!!
思いっきりカードを掴み、上下に引っ張り上げた。
思いの外、簡単にそれは悲鳴を上げて真っ二つに裂ける。
『オエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
断末魔の叫びが、空間の中に鳴り響いた。
大体、主を乗っ取ろうとするような奴の言う事なんざ信用できるか。
俺が死んだらエリアフォースカードである自分も危ない。だから保身に走ったみてぇだが。
「桑原……先輩」
「これで、良いんだろ。こんなもん、無い方がよっぽどマシだ」
「……いや、そうじゃなくて」
分かってるぜ、火廣金。
これで、良い。
これで良いんだ。
……”いや、そうじゃなくて”? ちょっと待て、こいつ何を言いかけた?
叫びが鳴りやみ、真っ二つになったカードを、俺は足元に放り捨てようとしたが――次の瞬間、カードの裂け目から黒い煙が吹き出て行く。
「っ!?」
「邪気が……エリアフォースカードの邪気が抜けていく」
「邪気!?」
次の瞬間、真っ二つになっていたカードが俺の手元を離れ、再び1つのカードになる。
今度は真っ白。再び何も無いエリアフォースカードとなって。
『君を待っていたよ。桑原甲』
穏やかな、声が聞こえてきた。
「テメェ……!」
『君は力の真の意味を知り、己の手でこのカードに宿った闇に引導を渡した。礼を言いたい』
「いや、俺は単に……てか、テメェは何だ?」
『迷わず、勝負を続けるんだ! そして、”ボクを引け”!』
説明は無し、か。
だけどごたごたと誘いの言葉を持ちかけられるよりは、よっぽど――
「へっ、良いぜ……やってやらァ!!」
俺は信用、出来る!
正面の魔導司に投げかける。
「待たせたな」
「話は終わったカ? だが、これで終わりダ!!」
2体目の《ドルゲユキムラ》の攻撃。
シールドが2枚。薙ぎ払われる。しかし。
そのシールドは光となって集約される。
「残り全てのシールドをブレイクダ!」
「S・トリガー! 《ゼノゼミツ》! 効果は使えねえがな」
「それだけカ?」
「誰がトリガーが1枚だけ、って言った?」
俺は口角を釣り上げた。
「S・トリガー、《Dの牢閣 メメント守神宮》! 効果で俺のクリーチャーは全員ブロッカー化する!」
封じるなら、D2フィールドまで封じるんだったな、ティンダロス。
3度目の《ドルゲユキムラ》の攻撃は、《タルタホル》でブロックして防ぐ!
「ッ……ターンエンド。だが、それでどうやって勝つつもりダ。盤面を並べるマナも無いだろウ。殴れば、シノビが待っているゾ」
「分からねえよ。分からねえが――」
このドローに、賭けるっきゃねえだろ!
俺は山札に手を置く。そして――引いた。
賭けるぜ。この1枚に!!
『引いてくれたな。このボクを!』
「――ああ。テメェで、この大勝負に勝つ!!」
今の俺の場のクリーチャーは、《コレンココ・タンク》と《デスマッチ・ビートル》、《ゼノゼミツ》の3枚。
そして、マナのカードはこれで9枚だ。
もう、迷う必要はねぇ!!
「俺の場にパワー12000以上のクリーチャーは3体。よって、コストを合計6軽減し、4マナをタップ――」
風が吹いてきた。
俺を守るかのように包み込む。
「天に描け、俺の芸術!! 一世一代の大作だ――《天風のゲイル・ヴェスパー》!!」
それはカードを叩きつけた途端、飛び出し、天を飛び回る。
一陣の風と共に、戦場へ姿を現した。
真紅のマフラーを身に着けた、ヒロイックな姿をした蜂の戦士。
それは、俺の方に向き直ると、口を開く。
『やっと……出会えたようだな。マスター』
「テメェのエリアフォースカードには散々苦労させられたよ」
『……それは、
「いや、それで安心したぜ。やっぱり、そんな都合の良いモン、世の中にはねぇってな」
『力とは、元々その者に備わっているもの。後は、周囲がどうやって引き出すか否か。僕の力は、まさしくそれだ。君のクリーチャーの力を、最大限に活かす!』
「ああ。頼むぜ。テメェの力、存分に俺が使いこなしてやるからよ!!」
『勿論だよ』
彼は、マフラーをなびかせると言った。
『何故なら、ヒーローは遅れて来るものだからね! もう大丈夫だ!』
……本当に大丈夫かコイツ。
まあいい。《天風のゲイル・ヴェスパー》……コスト10、パワー12000のT・ブレイカーのグランセクトだ。
W・シンパシー:パワー12000以上のクリーチャーで、コストを大幅に軽減できるが、こいつの本領は第二の能力にある。
「行くぞ! 早速テメェの出番だ!」
『ああ。ボクの効果で、マスターの手札のパワー12000以上のクリーチャーも、W・シンパシー:パワー12000以上のクリーチャーを得るんだ!』
「何……!? W・シンパシーだト!?」
「まず、1マナで《デスマッチ・ビートル》召喚。そして、俺の場のパワー12000以上のクリーチャーは4体により、コストを7軽減!」
1枚のマナをタップし、俺は力の限り叫ぶ。
「――
まだだ!! もう1マナタップ!! 今度は9コスト軽減!
「――
巨大な蟷螂が、戦場に降り立つ。
NEO進化の必要は――無い!
「更に、今度は9コスト軽減。1マナで《古代楽園 モアイランド》召喚!」
「何ダ? そんなに並べても攻撃できなければ意味が無いゾ!!」
「意味があるんだよ!! 全ての芸術に、必要じゃねえ色はねぇ!!」
最後にダメ押しの1マナ! これで終わりだ!
合計、11コスト軽減だ!
「――1マナで、《
今度こそ、ティンダロスは目を見開いた。
確かにこいつの、召喚時にガチンコ・ジャッジを3回して、勝った数だけ捲ったクリーチャーを場に出し、呪文を唱えるって効果は《ワルド・ブラッキオ》で使えねえ。
だがな……。
「こいつの効果で、俺のクリーチャーは問答無用で全員スピード・アタッカーなんだよ!!」
「何ィ……!?」
「さあ、呪文は使えねえぞ!! お得意のニンジャ・ストライク、後何度使える?」
「おのれ……白銀耀と言い、貴様と言い……ウオオオオオオオアアア!!」
咆哮。
ティンダロスの瞳が不気味に赤く光る。
あれは――あの嫌な感じ、見た事があるぞ!?
「《ハイパー・マスティン》で攻撃――するとき、山札の上から3枚を表向きにし、それがパワー12000以上のクリーチャーならば場に出す! まず、《ルツパーフェ・パンツァー》を場に出すぜ!」
そして、だ。
こっから更に仕掛けるぞ!
「――
降り立つ蝗の皇。
これで揃い立つ、昆虫戦士たち。
それが一斉にティンダロスへ噛みついた。
「例え巨人が相手だって――一寸の虫にも五分の魂なら、一丈の虫にゃ五間の魂だぜ!! これがグランセクトの巨大昆虫騎士団だ!!」
「ファ、ファウスト様ァァァァァ!! こいつは、この俺が倒す!! ニンジャ・ストライク5、《佐助の超人》を召喚し、カードを1枚引いて《バイケン》を捨て、《鬼羅丸》をバウンス!! 《バイケン》の効果で1枚ドローダ!」」
これで奴のシールドは残り2枚。
SA付与がなくなった今、俺の場の攻撃出来るクリーチャーは、《メガロ・カミキュロス》と《グラスパー》しかいない――とでも思ったのか?
「《メガロ・カミキュロス》で攻撃――する時!! 手札から《ハイパー・マスティン》を出す。勿論、進化元は《コレンココ・タンク》だ!!」
「なあっ!? ぐっ……ニンジャ・ストライク4、《ハヤブサマル》でブロック!! 《バイケン》の効果で1枚ドローダ!」
「まだ連鎖は続くぞ? 《グレート・グラスパー》でシールドをT・ブレイク!! その時、マナから《カミキュロス》を《デスマッチ》から進化! SA付与に気を取られたみてぇだが……この展開力の前では意味を成さねえよ!!」
使えるニンジャ・ストライクが無いのか、彼はそのまま通すしかない。
全てのシールドが割られた。
「《怒流牙 サイゾウミスト》がせめて使えれば――ファウスト様ァァァァ……!!」
「こいつでシメェだ!!」
俺は叩き込む。
これで全部終わらせる!!
「《ハイパー・マスティン》で、ダイレクトアタックだ!!」
※※※
空間が崩落する。
それと共に、俺は倒れ伏せたティンダロスの前に立っている事に気付いた。
「勝った……のか?」
「ああ。どうやらそうらしい」
火廣金が息を切らせて近づいてくる。
『死ぬような攻撃は加えていない。だが、ボクとしてはこの男に魔術が掛けられていた事の方が気になるね』
「何の魔術だ?」
俺が首を傾げていると、黒鳥さんも後ろから阿修羅ムカデを引き連れてきた。
「こちらも全て終わった」
「あ、ありがとうございました」
「礼には及ばん。しかし……この男から感じた嫌なモノ……何だ?」
倒れているティンダロスの顔色や、脈を調べながら、黒鳥さんは怪訝な顔を浮かべた。
いや、ティンダロスだけじゃない。先程から出会う魔導司から感じる嫌な気配。
それが何なのか、やはり分からない。
「恐らく……
言ったのは火廣金だ。
待てよ。薄々そんな気はしていたが、それってアルカナ研究会のトリス・メギスが使っていた奴じゃねえか。
何で、味方に味方がそんな魔法を使うんだよ!?
「そう言えば、さっき病院で会った男達も妙な様子だったな。行動にキレが無かった。僕達を襲えるなら、もっと迅速に襲えたはずだ。それが、まるで人形のような覇気の無さだった」
「確かに……」
「ならば、此処に送られてきた魔導司……その中には
「何のために? それも誰が?」
「恐らく――ファウスト様に同調しない者へ、トリス・メギスが仕掛けたのだろうな。魔導司は無暗に外の世界に被害が及ぶことを嫌う。だが、今回の彼らの行動はそれを顧みないものだ」
だとすれば……魔法で無理矢理従わせたってことか!?
……許せねえ。自分の仲間に!!
「行こう!! この目で、何が起こってんのか、確かめてやるぜ!!」
「ああ。白銀達も心配だからな」
「そうですね。では、早くここから抜けましょう」
火廣金は、そう言うとティンダロスに向かって小さく「後で必ず、助けてやる」と呟き、駆け出した。
俺達も街を目指して駆け出す。
やっと、やっと真実をこの目で見つける手段が手に入った。
きっと、俺が力の使い方を間違えなければ良い相棒になるだろう。
「貴様も、手にしたな。資格を」
「……はいっ」
俺はデッキケースに呼びかける。
頼むぞ。相棒。
『マスター。君がボクの舞台、大きく描いてくれよ。約束だ』
「任せろよ」
何故なら――
「俺は――芸術家だからな!!」
※※※
画して。
事態は更に動き出す事になる。
既に、激突の時は迫っていた。
アルカナ研究会、そして運命に抗う決闘者達の激突の時が、刻一刻と──迫っていた。
「アルカクラウン」
手を伸ばす大魔導司。
強大な力を蓄積させている道化の化身はその瞳を怪しく輝かせる。
「……全ては我々の思い通り──フフフ」