学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
俺は白銀耀。
デュエマ部とかいう同好会紛いの部活の部長をやっているちょっと普通じゃない高校2年生……だったのだが、実体化するクリーチャー、ワイルドカードの事件に巻き込まれ、普通じゃない日常生活を送ることになった。
そんな中、エリアフォースカードを狙う魔導司達との戦いに巻き込まれ、激闘の日々を送ることに。
さて、今は後輩の紫月と一緒にノゾム兄の居る病院に向かっていたのだが――
「ふぁあ……それにしても、先輩。結局デッキは出来たのですか」
「あ?」
紫月は欠伸交じりに答える。
実は、もうほとんど完成はしているのだが、最後に肝心のS・トリガーのチョイスに迷っていた。
《バイナラドア》4枚は確定として、残りの3枚ないし4枚が決まらない。取り合えず、《SMAPON》を入れたけど、こいつだけじゃ対応できる範囲狭いんだよな……幾らスーパーボーナスが強いからと言っても。
「まあ、先輩らしい優柔不断っぷりですね」
「……それを言うな……」
「でも、大分完成してきたじゃないですか」
彼女は立ち止まる。
「私も、やはり……リベンジするならあのデッキで挑まなければ」
「?」
「先輩。今回、またデッキを変える……いえ、前のデッキと似たものに近いものを使うつもりなんです」
「どうしたんだ?」
この間まで、《クジルマギカ》のデッキを握ってたのに。
そう言おうとしたが、彼女は首を横に振った。
「……もし、あのトリス・メギスと再び相まみえる事があるならば。それは、間違いなく私の戦いであり、そして――シャークウガの戦いでもあるのです」
『後、もう少しなんだ。俺の主であるエリアフォースカードが目覚めるには……俺の記憶が目覚めるのがトリガーだ』
「そこで、ムートピアで固めたこのデッキならば、シャークウガの記憶にも少なからず干渉できるのでは? と考えたのです。この間の桑原先輩の件で、私もエリアフォースカードを意識し始めたということですよ」
「お前……」
「大丈夫、焦ってはいませんよ」
彼女は穏やかに笑みを浮かべた。
「だって、先輩が、皆が支えてくれてるのですから。私も、また一歩ずつエリアフォースカードに向き合っていかないと。それを気付かせてくれたのは、先輩ですから。感謝してますよ」
支えてくれてる?
いや、俺だってお前に何回支えられたか。
お前がいなきゃ、俺はもう1度立てなかったかもしれないのに。
「俺も、お前に感謝してるよ。本当にありがとう」
「……恥ずかしい事言わないでください。私はそんなつもりでは」
「照れるなよ」
「照れてませんから」
そう言いかけた紫月は、立ち止まった。
俺も「どうした?」と声を掛けて立ち止まる。
只ならぬ空気が路地を支配していた。
『マスター!!』
チョートッQの声が飛んでくる。
デッキケースから俺に向かって呼びかけている。
『反応多数であります、恐らくは魔導――』
「見つけタぞ、白銀耀!! 暗野紫月!!」
声。人の声だ。
俺も感じた。何人もの、異形の影を纏った人間だった。
「何だコレ……」
「何故これだけの人数が……」
住宅街の屋根の上に2人。正面から3人。
後ろから3人。
クリーチャー、その数と同数。
当然、全員――
『多数の魔導司の反応!!』
「分かってらあ!! どうしてこうなったんだ!?」
「恐らく……火廣金先輩の言っていた大攻勢とは、コレの事では」
紫月がぼそり、と呟く。
俺も大方同意だ。だけど、妙な事がある。
それは、俺達を取り囲んでいる魔導司――男から女、国籍も見たところ様々だが、皆様子がおかしい。
犬歯を剥き出しにし、目は血走っており、獣のような唸り声を上げているのだ。
しかし。間もなく、彼らは飛び掛かってくる。
その眷属であるクリーチャーと共に!
「おい、どうする!?」
「そう言われても、1人1殺しかありません。各個撃破以外、突破口は無いように思えます」
「そんなこと言われても……!!」
こんな数、エリアフォースの魔力、そして俺自身の体力が持つか分からない。
捌ききれるか? どうやって!?
「エリアフォースカードを……よこセ、人間ンンンンンッ!!」
飛び掛かってくる男。
俺は遂にエリアフォースカードを構えた。
戦わなきゃいけないか。この数を相手に!
「先輩」
「上等だ! そのために俺はこのデッキを改造したんだ! 今すぐ相手してやるぜ! 掛かって来い!」
「間違いナい……あれが白銀耀だ!!」
「皆、かかリなサい!!」
瞳が不気味に光る。
そして、次々に魔導司が飛び降りて掛かってくる。
が――
「がふっ!!」
デュエルには、ならなかった。
男は俺のすぐそばの電信柱にぶつかり、そのまま額から血を流して倒れてしまう。
見たところ、目を回しているようだった。
その後も、魔導司が飛び掛かってくるが、皆明後日の方向へ散り散りに。
ある者は別の路地へ駆け抜けていき、ある者はきょろきょろと辺りを見回し「どこニ行ったの!!」と叫んでいる。
な、何があったんだ? 魔導司ってこんなに盲目なのか?
「こ、これは……」
「どういうことでしょうか?」
「皆サン、こっちデース!!」
路地の隅から声が聞こえてくる。
俺達がその方向へ駆けていくと、案の定そこには――
「ブラン!!」
「ブラン先輩。何故ここに?」
「やっと……合流出来たデース……」
苦しそうに揺れる金髪。頭の上によじ登った宝石亀。
我らが探偵の姿があったのだった。
で、何で本当にこんなところにいるんだお前は。
だが、そこに居たのは彼女だけではなかった。おずおずとそこから、竹刀を構えた少女が姿を現す。
「あ。あたしも居るんだけどね……」
「花梨!?」
……どうやら、思ったよりも早く皆合流出来たようだ。
※※※
俺達は、早く危険地帯を抜けようと住宅街を駆け抜けていた。
既にこの一帯もワンダータートルが掌握しているため、人払いは出来ている。
安全に話を聞くことが出来るというわけだ。
「とゆーわけで、ブランちゃんがこの辺りの地形をワンダータートルに迷宮化させて、間一髪! アカル達はあの数相手に戦わずに済んだわけデスネー!」
お手柄としか言いようがない。
迷宮化は本当に便利な能力だ。にしても、何でこいつこんなところに居たんだ?
と問うてみると、
「調べてみた結果、やはり五日程前にこの辺りのホテルに外国人の団体旅行客が来ていたみたいデス」
「怪しいのは、それか」
「ハイ。ツアー旅行客に見せかけて、侵入してきたみたいデスネー」
「で、どうやって調べたんだ?」
「そのホテルを突き止め、後はワンダータートルに遠隔からサーチをしてもらいマシタ! 全員、魔導司デシタ!」
ご苦労だった、ブラン。
今回は大手柄だ。彼女は事前に今回の襲撃を察知していた。
そのおかげで、手早くこの街の迷宮化が出来たのだろう。
「で、コレで相手は簡単には私達を見つける事が出来まセン! 既にこの街の空間はワンダータートルが掌握しマシタ!」
「それで、花梨はどうしたんだよ?」
「あ、あたし? 実は……ちょっと前まで、部活に行ってたんだけど……火廣金が急にやってきて」
「火廣金が?」
こくり、と彼女は頷く。
「危ないから、出来るだけ早く白銀達に伝えろ。魔導司が来る、って言ってすぐ行っちゃって……」
「マジかよ……」
「でも、もう耀達、部室にいなかったんだよね……帰っちゃった後だから、取り合えず手近なあたしに伝えたんじゃないかな。それで、街に出てみたんだけど、電話も繋がらないし……そしたら、ブランと偶然ばったり」
「ま、ワンダータートルがサーチしてたんデスけどネ。学校からくる人を。But、耀達は家に帰る方向にいなかったので、少し手間取りましたヨ?」
「すまんすまん……病院の方へ行ってたんだ」
「申し訳ないです、ブラン先輩」
「イエ、二人が無事だったから良かったんデスヨ!」
ともあれ、これで全員集合だな。
しかしどうするか……後、此処にいないのは火廣金、桑原先輩、黒鳥さんの3人だ。
特に桑原先輩は、エリアフォースカードを持っていない。
危ない目に遭っていなければ良いんだが……。
「!!」
俺は足を止めた。それに合わせて、皆もブレーキを掛ける。
正面から現れる複数の影。
そこから、犬――のようなマズルガードを口に着けた男達が姿を現す。
こいつらも……魔導司か!?
「どうする!? 戦うか?」
「……いつまでも、逃げていられませんね」
デッキを構える紫月。
「……まずいデスねー。まさか、迷宮化を掻い潜って来られるなんて」
「ちょ、ちょっと!? どうするの、コレって!?」
「搦め手は通用しないということでしょう」
「我々の”鼻”を騙せると思ったか? ティンダロス様直属の
フゥー、フゥー、と獣のような息を荒げる魔導司達。
……どうしようもない。戦うしかねえ。今度こそ、だ。
『まさか、迷宮化を破れる魔導司がいるとはのう』
「直に、他の連中モ解除してくるサ。あまり、我々を嘗めない方がいい」
そうだ。こいつらは、仮にも魔導司なんだ。
今までクリーチャーの力で何とかアシストしてもらっていたけど……やはり、正面から戦わなきゃいけない時があるんだ。
「耀。あたしだってやるときはやるよ。だから、任せて!」
「ああ。やってやろうじゃねえか!」
デッキを構えた。
準備も、覚悟も出来ているぞ!
そう思った時。
「その勝負、待ってもらうぜ!!」
叫び声が何処からか聞こえてくる。
驚いたのは番犬部隊を名乗る彼らであった。
何故ならば。他でもない彼らの背後の影から、彼らは飛び出してきたのだから。
そこへ顕現する巨大なムカデの影。背後を取られた魔導司達は、俺達に逆に囲まれた事になる。
何故ならそこにいたのは――
「桑原先輩!! 黒鳥さん!! 火廣金!!」
「……やれやれ、待たせたな!」
「阿修羅ムカデ。ご苦労だった」
『ええ、ええ。ようやく全員これで合流ってところでしょうか』
た、頼もしいぜ!!
このタイミングで全員集合できるなんて――!
狼狽える男達。
しかし、彼らの身体がすぐに宙に浮かんだ。
「ゲイル・ヴェスパー!!」
俺は驚いた。
叫んだのは、桑原先輩だ。
彼の背後に、実体化した蜂の戦士が浮かび上がる。
「うっ、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
それが拳を突き上げると、突風が男達を天高く巻き上げてしまった。
そのまま彼らは順々に木の幹や壁に叩きつけられていく。
「デュエルは1対1でやるもんだ。大勢で戦いを挑むなんざ、きたねえぜ」
※※※
こうして魔導司達をあらかた排除した後、俺達は再び集まっていた。
そして、桑原先輩と黒鳥さん、火廣金から事の経過を聞いたのである。
「要は……桑原先輩……!? 使いこなしたんすか!? エリアフォースカードを!」
彼は笑みを浮かべた。
凄い。凄いよ、桑原先輩!!
本当に、
だけど、嬉しくない報告もあった。それは――
「魔導司全員に、精神汚染、ですか」
「……度し難いデスね」
低く唸る様にブランが言った。紫月も勿論、怒っているようだった。
だが、ブランが静かにキレている姿もなかなか見ない。
勿論、俺も同じだった。あんな魔法を、そんな大勢に。今まで出会ってきた魔導司の様子がおかしかったのは、そのためか!
「絶対にファウスト様は止めねばならない」
低く、火廣金が唸った。
俺も同意だ。だけど、どうするんだ?
そもそもファウストは何処にいる? そうじゃなくても、俺達は包囲されているも同然なのに……。
「そこで、デュエマ部。この状況を解決する策が俺にはある」
さ、策? どういうことだ? あいつに何か考えがあるのだろうか。
「今回、恐らく君達のエリアフォースカード、及び邪魔をする
「攻勢、ですか」
「だが、奴らをこうして無力化し、街に留まらせておけば――拠点の守りはある程度手薄になっているはず」
「ってことは……叩くのか。拠点ってやつを」
「ああ。そこに間違いなく、ファウスト様、そして遠距離から魔法を操るためにトリス・メギスもいる。勿論、他数名の護衛はいるだろうが」
彼は頷いた。
そうか……ってことは、やっと殴り込みってことか。
あいつらの本拠地に!
「そして、ファウスト様へ直訴をするしか方法はあるまい。非常に危険な戦いだが……最早、それしか手は残ってないのだ。その間、街に留まって魔導司と戦うチームと、拠点を叩くチームに分けていく必要がある」
そうだ。その間、この街をあいつらの好きにさせられないし、ある程度引き付ける囮役が必要だ、と彼らは言いたいのだろう。
桑原先輩が手を上げた。
「囮役は、俺は確定だ。俺の
「桑原先輩……」
「何。お前らと肩を並べられねえのは残念だが――俺ァやっと、お前らと同じステージに立てたんだ。誇りに思うぜ。向こうに行く奴ら、此処に残る奴らが出るってのは、もう火廣金と話し合って決めた事なんだ」
そうか。3人でずっと、話し合っていたんだ。
「成程、合理的な作戦です。この際、いがみ合っている暇はありません。ですが、火廣金先輩が私達と協力したいなんて、どういう心境の変化ですか?」
「それは……だな」
おいおい紫月。
こんな時に、そんな質問を投げかけるんじゃねえ。
俺が窘めようとしたが――
「紫月ちゃん!!」
言ったのは、花梨だった。
「大丈夫だよ。火廣金なら……火廣金ならきっと、大丈夫」
「刀堂……先輩?」
「あいつだって、助けたいって思いは同じなんだよ。人間と、魔導司に、違いなんか無いよ!」
「……そうですね」
彼女はフードを深く被る。
まるで決意を固めるように。
「刀堂先輩がそこまで言うなら、信じますよ。火廣金先輩」
「……ならば、同意……で良いんだな?」
「はい」
「俺は元よりそのつもりだぜ。ファウストには、真実を全部吐いてもらわなきゃ美しくねぇってもんよなぁ?」
「僕も同じだ。今、前に進むにはそれしかない」
「勿論、真実は全て白昼の下に晒さないと、デスね!」
ブランがいつものように、元気よく応える。
紫月が、控え目に頷く。
花梨が闘志を見せる。
黒鳥さんが、呆れながらも前髪を払い、桑原先輩がヘアバンドを締め直す。
各々の反応は、大きな戦いを前にして、いつも通りのものだった。
いや、いつも通りに見せようとしているのか。平静を、保ってくれてるんだな。
俺なんか既に、さっきから心臓がバクバクだって言うのに。
だけど――
「俺はもう、逃げないって決めたからな!」
決意はもう、決まっている。
行こう。それじゃあ早速残りのメンバーも決めていかないと……。
「調子に乗るな!! 数では勝っている!! その裏切り者を捕らえろ!!」
会合は、そこで中止となった。
叫んだリーダー格と思しき男の号令。
辺りを見回すと、どうやらまだ樹上や屋根の上にも魔導司が潜んでいるようだった。
くそっ、本当に数だけは多いな!!
だ、だけど、この状況で誰が残るんだ? 俺が狼狽えた一瞬の間にコキコキ、と首を鳴らしながら黒鳥さんが進み出た。
「行け」
たったの2文字。しかし、その言葉に重さを感じる。
俺達を、送りだそうとしてくれているんだ。
「貴様らが、真実を明らかにしろ」
ああ。そうだ。
応えるしかない。そして、信じるしかない。
それしか今は道が無いんだ。
「たった2人の囮――だけど、今の俺なら出来る」
そう言って、桑原先輩も前に進み出る。
更に、桑原先輩が叫んだ。
その背中は、いつも以上に大きく見えた。
「しかしまあ美しくない連中だ。そうだろう? 桑原よ」
「そうっすねぇ。ちと、掃除が必要なようだ」
「共作と行くか? 芸術家よ」
「同感ですよ、芸術家」
そう言って、桑原先輩、そして黒鳥さんがエリアフォースカードを掲げて叫んだ。
『デュエルエリアフォース!!』
次の瞬間、辺り一帯を光が包み込んむ。
同時に、火廣金の周囲に魔法陣が現れた。
「ワープするぞ!! 掴まれ!!」
俺、紫月、ブラン、花梨は同時に彼の魔法陣に飛び乗った。
次の瞬間――魔法陣が燃えて、浮かび上がる。
そのまま、俺達は戦いの光を目にしながら、空へと浮かんでいく――そして、意識が一瞬浮かぶと、そのまま景色は変わっていった。
……頼んだぞ。皆!!