学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第69話:魔術師(マジシャン)の逆襲─因縁の再戦

※※※

 

 

 

 火廣金が予め組んでいたらしいワープ呪文により、俺達は鬱蒼とした森林の中へ飛ばされていた。

 此処は何処だ? 富士の樹海じゃあるめーな?

 まあ、迷ってもワンダータートルが居るから問題無い訳だけど。

 とはいっても、その山なのか森なのかよく分からん地帯は、特に深いわけでも高いわけでもなく、問題の建物はすぐに見つかった。

 

「何ですかアレ」

「……すっごいボロっちいっていうか、本当にアレなの? 火廣金」

「間違いない」

 

 ……と言っても、彼が指差したのはまごう事なきボロ小屋であったのだが。パッと見、倉庫にさえ見えるそれはアルカナ研究会の根拠地にはとても見えない。正確に言えば日本における活動拠点であるのだが。

 

『何て大きな建物じゃ……』

「そりゃ、ワンダータートルから見たらそうかもしれないけどよ」

「違うデス! あの小屋はフェイクデスよ!」

「フェイク?」

 

 俺が首を傾げた。その時。

 ぴょーん、ぴょーん、と何か小さなものがこちらへ跳ねてくる。

 そして、火廣金の頭の上に飛び乗った。

 

『ヒイロのアニキィ!!』

「ホップか。偵察ご苦労」

 

 ホップ・チュリス。

 火廣金の相棒のクリーチャーじゃないか。

 こんなところで何やってるんだ?

 

『や、やばかったッスよ……中にいるのは、精神汚染を受けた魔導司が十人程……』

「十人!? そんなにいんのか!? あの小屋ン中に!?」

「だからフェイクだって言ってるだろう。拠点内部の守りはやはり薄くなっている。とはいえ、既に悟られているかもしれんな」

「つまるところ、あのボロ小屋は唯のまやかしって事ですね」

「ああ」

 

 彼は着いて来い、と言いながら蜘蛛の巣のかかった枝を掻い潜る。

 周辺に敵は居ないらしく、そのまま俺達は彼を見失わないように着いていったのだが……。

 

「この先だ。消えるぞ」

「え?」

 

 そう言った彼の姿が――すっ、と消えた。

 俺はしばらく、目をぱちぱちと瞬かせていたが、彼は再び、半身だけこちらへ覗かせる。

 

「特殊な結界で、此処から先は外から見えなくなっている。他にも、一般人を通れなくする結界が掛かっているが、エリアフォースカードがあれば容易に突破出来るだろう」

「……成程。そうやって見せかけていたのか」

「随分とまた……凝ったものですね」

「と、とにかく、仕掛けは解ったんだから早くいってみよーよ!」

「あの中には何人も魔導司がいるんデスけどね……」

 

 そう言って、火廣金に続くようにして俺達は結界の中へ足を踏み入れていく。

 まるで、門の扉を潜り抜けるように。

 その先には――

 

「――!!」

 

 それは、一言で言うならば洋館だった。

 英国調のもので、煉瓦造りのそれは俺達に威圧感をひしひしと与えていた。

 階層はおおよそ3階建て。バルコニーまでついている本格仕様。

 こんなものが日本にあったのか。

 

「何これ……こんなのが建ってたの!? 一体いつの間に!? 誰が!?」

「大昔。この街に移り住んだ魔導司が日本の拠点として築いたものだ。現在は、3つ存在するアルカナ研究会の日本支部の拠点の1つとなっている」

「ここはそもそもどこですか。私達の街からどれくらい離れているのか……」

「隣の県だ。大分遠くまでテレポートしたからな」

「……マジかよ。結構近場なようで遠かったんだな」

 

 ともあれ、ようやく目的地に辿り着いたんだ。

 この先に、ファウストがいる事も間違いないだろう。

 意を決して、重い扉を開いた。

 

「皆、行くぞ」

 

 全員、頷いた。押すと、ゆっくりとそれは開いていく。

 真っ先に目に入ったのはシャンデリアがぶら下がった豪華な天井に、バルコニーへ続く階段。

 血のように紅いカーペット。

 そして――そこに待ち構えていた魔導司による、魔法の応酬であった。

 

『!!』

 

 が、それらは全てシャークウガが瞬時に展開した水の膜で弾かれる。

 クリーチャーに魔導司の魔法は通用しない。

 それが役に立った瞬間だったが、俺達は瞬時に身構えて敵の戦力の把握をしなければならなくなった。

 

「……お前ンとこのクラブ、随分と歓迎が手厚いんだな!」

「クラブ呼ばわりするんじゃない。だが、少し礼節を欠いているようだ」

『ったくよォ、不意打ちってのもなかなか酷な話だぜ!!』

 

 玄関へ躍り出た俺達は、既に包囲されている事を悟る。

 

「のこのこト来やがったか、人間共がァ!!」

「大人しくエリアフォースカードを渡せェ!!」

 

 見た限り、魔導司達の目は赤く光っており、言動の粗っぽさ、挙動の不審さから見るにやはり精神汚染の影響がみられた。本当に、仲間全員にあの魔術を掛けたのか、トリス・メギスの奴……!

 あいつはファウストを妄信しているから、無理矢理従わせたんだな。

 

「仕方ないデスね! その他大勢は私に任せるデース! 後方から、この洋館を迷宮化してサポートもしマス!」

「ま、待てよ!? ブラン、お前だけでやれる数じゃねえぞ!?」

「あたしも……残るよ」

 

 言ったのは花梨だった。

 彼女は、竹刀を抜くかのようにデッキケースを抜き取ると、エリアフォースカードを掲げた。

 

「花梨……!」

「ねえ、耀。頼んで……良いかな?」

「!」

「お兄が成し遂げる事が出来なかったこと……それは、耀なら出来るって信じてる。耀の積み上げてきたものは、絶対に小さくなんかない。だからっ、嘘なんか、偽りなんか、叩っ斬ってきちゃって!!」

「……ああ」

 

 他でもない。

 幼馴染のお前の頼み。無下には出来ない。

 そしてこれは、ノゾム兄の魂を受け継ぐ戦いだ。

 俺が、決着を付けるんだ!

 

「だから、これ渡すよ」

「!」

 

 彼女は、1枚のカードを俺に手渡す。

 ……1枚だけだけど、役に立つかもしれない。

 

「ありがとう、花梨」

「絶対に、負けたらダメだからね!」

「勿論だ!」

 

 胸を叩いて答えた。

 ブランも、得意気に言ってのける。

 

「こっちは大丈夫デスよ、アカル。私達を侮らないでほしいデス」

「……ああ、頼んだ!」

「ブラン先輩。……絶対、無事で居て下さいよ。約束ですよ。破ったら、スイーツいっぱい奢ってもらいますから」

 

 紫月が不安を隠せない表情で言った。

 おいおい、そもそも約束を破るような状況に陥ったらスイーツどころの話じゃないだろ、と言いたかったけど、こいつなりのユーモアのつもりか。

 彼女もそれは理解していたのか、サムズアップが返ってきた。

 

「勿論デス! 探偵は、嘘をつかないデスから!」

 

 ああ。約束だぜ、ブラン。此処からはもう振り向くものか。

 俺達は、階段へ向かって駆け出した。

 魔導司のヤジが、後ろから飛んでくる。

 

「何だァ!? 小娘だケで、俺達に勝てる訳が――

 

 

 

「ゥーッ……破ァッ!!」

 

 

 

 玄関中に響き渡る気勢。

 そう。こいつらは知らない。

 武道家、剣道家としての花梨を。

 彼女の本気の咆哮は、武道家ならともかく並みの人間ならば立てなくなる程。

 その殺気は、尋常なものではない。

 中学時代、同級生に、全国の強豪に、鬼と言わしめた彼女は、戦いに於いては間違いなく修羅と化す。

 

「何だぁ? この小娘……!」

「小娘と侮ると、痛い目を見るよ」

 

 そこに、気合を入れてやると言わんばかりに竹刀を抜いた彼女が獲物目掛けて睨みつけた。

 

「……斬られたい奴から掛かってきなッ!!」

「相変わらず、凄い殺気デスね、カリン……! でも、私も負けないデスから!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 階段を塞いでいた魔導司を、火廣金が強引に魔術で気絶させて突破し、俺達は二階へ辿り着く。

 その先はがらんどうの大広間。

 だが、しかし。その最奥には確かに少女の姿があった。

 白衣を纏った金髪の少女。凶悪な笑みを浮かべ、俺達を待ち構えていたようだ。

 

「……トリス」

 

 その名を、同胞である火廣金が呼ぶ。

 彼女は、にたにたと笑うと、歩み寄ってきた。

 

「本当に、本当にお前も馬鹿だぜ。さっさと精神汚染をしときゃよかった」

「……お前は、何を考えているんだ。同胞に、精神汚染を施す等、正気か」

「正気だよ。あたしは最初っから、同志――ファウストの傀儡。そうなるって誓ったんだ。お前が離反して姿を消すとは思わなかったけどよ……エリアフォースカードをお前らに集めさせるために泳がせておいた甲斐があった」

「どういうことだ?」

 

 彼女は目を怒らせると叫んだ。

 

「だってよォ!! 馬鹿なテメェらが、刀堂ノゾムの弔い合戦に、こうして来てくれたんだからなぁ!! 好都合ってもんだろうが、えぇ? だって、どっかの出来損ないが捕まった時、わざわざ助けに来たような馬鹿だもんなぁ!! お人好しだもんなぁ!!」

 

 こいつ……! 

 本当に、こうしてみると吐き気を催すド外道だ。 

 俺達がこうして殴り込みに来るのも全部計算通りだったっていうのか。

 それに、出来損ないって――

 

「――先輩」

 

 殴り掛かろうとした俺を制したのは、紫月だった。

 彼女の眼は真っ直ぐで、迷いが無い。

 今度はもう、何にも囚われはしない。

 そんな意思が見て取れた。

 

「……トリス・メギスは……私が倒します」

「紫月……お前」

「だから、先に行ってて下さい」

 

 ぎゅうっ、と彼女は俺の手を握る。

 上目遣いで瞳を真っ直ぐ見つめる彼女に、胸が揺らいだ。

 ゆっくりと、口が言葉を紡いでいく。

 

「……私、信じてますから」

 

 ゆっくりと、彼女の手の温もりが離れていく。

 そして、彼女は再び宿敵――トリス・メギスと向き合った。

 

「……また会ったな。暗野紫月。今度こそ完膚なきまでに叩き潰してやる」

「それはこちらの台詞。屈辱とは、晴らすためにあるものですから」

 

 それに、と彼女は続ける。

 

「――仲間を、駒のように操るあなた方のやり方、気に食わないので」

『マスター。俺も久々にプッツンしちまったよ。なぁ? こいつ、喰って良いよなァ?』

「喰う? このあたしをか?」

 

 トリス・メギスの背後から、巨大な影が現れた。

 

「ハッ、本当に威勢だけは良いよなぁ!!」

「……試してみますか? 威勢だけかどうか」

 

 彼女の手にエリアフォースカードが握られた。

 俺の肩に、火廣金の手が置かれる。

 俺は頷いた。此処は紫月に任せよう。俺達は――ファウストのいる場所を目指さねえと!!

 

 

 

「デュエルエリアフォース――!」

 

 

 

 その言葉と共に、決闘が始まった。

 大丈夫だ。紫月。お前なら――勝てる!!

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