学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第73話:WILDCARDS(3)

※※※

 

 

 

 ――俺とファウスト様のデュエル。

 2ターン目。早速、俺は動き出す。

 

「オペレーション発動! 総員、作戦準備! 情け無用、戦闘開始!」

了解(ヤー)!!』

「タクティクス、第一段階。2マナをタップ。現れろ《一番隊 チュチュリス》!」

 

 頼むぞ。

 俺は攻めることしか出来ないが……ファウスト様のロックを突破出来れば、勝ち目はある!

 

「ターンエンドだ」

「……私のターン。2マナをチャージ。ターン終了だ」

 

 何もしてこない。

 ファウスト様のアルカクラウンデッキは、非常に立ち上がりの遅いデッキでもある。

 早いうちに攻める準備をせねば。

 

「行きます。1マナで《ダチッコ・チュリス》。その効果で次の召喚するビートジョッキーのコストを3軽減する」

「鼠ばかりを束ねたところで……」

「更に1マナ、《バング”BNG(ボンゴ)”ドンゴ》召喚! キズナ効果で、手札から《ステップ・チュリス》を捨てて3枚ドロー!」

 

 《バング”BNG”ドンゴ》の効果。

 それは登場時に場にあるクリーチャー1体のキズナ効果を使えるというものだ。

 そして、これだけでは終わらない。

 

「1マナで《海底鬼面城》を設置! ターン終了だ!」

「……何? そういえば、ここで初めて水のマナをチャージしたが……いや、俗にいう――赤青ブランドと言えばそれまでだ」

「……」

「……癇に障るんだ。突撃玉の癖に、一丁前に頭を使っているのがね!」

 

 カードを引いた彼女は叫ぶように呪文を詠唱していく。

 

「私のターン。3マナで《フェアリー・ミラクル》を使用。マナゾーンに5色のカードが揃っているので山札の上から2枚をマナに置く」

 

 これでファウスト様のマナは合計5枚。

 ……何か来るのは、次のターンか。

 

「俺のターン。3マナで《単騎連射(ショートショット) マグナム》。そして1マナで《ホップ・チュリス》を召喚し、ターンエンドだ!」

「……有象無象共がわらわらと……痛ッ!!」

 

 急に頭を抑える上司――と呼んで良いのかは分からないが――に、俺は一抹の違和感を覚えた。

 

「ファウスト様……!」

「五月蠅いッ!! 私のターンだッ……!! お前など、この愚者(ザ・フール)のカードで……!」

 

 おかしい。何か様子が変だ。

 そもそもファウスト様は、本当にエリアフォースカードを扱えているのか?

 いや、勝てば全て明らかになることだ。

 

「私のターン。4マナで《スペンガリィ・クロウラー》召喚。その効果で、私のクリーチャーはクリーチャーを攻撃出来ないが、相手のクリーチャーはタップされて場に出る。ターン終了だ」

 

 タップイン持ちクリーチャー、《スペンガリィ》。

 打点計算こそ狂わされたが……どのみち、このターンで終わりにしてやる!

 すべての戦略は整った!!

 

『兄貴!!』

「ああ。行くぞ! 俺のターン、《鬼面城》の効果を使う!」

「ドローする……決めに掛かるか」

「追加で1枚ドロー。そして、1コスト軽減し、5マナをタップ――情け無用、戦車戦用意!! 」

 

 燃え上がる戦場の炎。 

 それだけが俺に味方をしてくれる。

 さあ出でよ、俺の切札!!

 

 

 

戦車前進(パンツァー・フォー)、《ガンザン戦車 スパイク7K》!!」

 

 

 

 大地に降り立った巨大な戦車、《スパイク7K》。

 しかし、それに引き連れられて更に戦車連隊が戦場へ駆けつける。

 クリーチャーが次々にそれに乗り込んでいった。

 

「さあ、始めるとしよう。包囲殲滅戦を! 《スパイク7K》の効果で、俺のクリーチャー全員は、パワー+5000とブレイク数1追加、またはパワー+3000とアンタップキラー追加のいずれかを付与される! 《ボンゴ》にアンタップキラーを追加。他全員は我を顧みず進軍し、敵中枢を撃滅せよ!! 《ホップ》、殿を任せた!」

『任されたっス、ヒイロのアニキ! 全軍、出撃っス!!』

 

 場には《ホップ》に《チュチュリス》、《ダチッコ》、《BNG》、《マグナム》の5体が攻撃可能。

 ファウスト様のシールドを全て割り、ダイレクトアタックまで持っていける。

 《ザ・デッド・ブラッキオ》は《マグナム》で封じているから、心配はない。後は――

 

「全員で、あのシールドを叩き割る!!」

「空理空論。無駄な事だよ」

「それは、やってみなきゃ分からないでしょうがァ!!」

 

 砲撃戦が始まった。

 《バング”BNG”ボンゴ》の乗った戦車が、巨大な異形・《スベンガリィ・クロウラー》へ砲弾を撃ち込んで沈黙させる。

 そして、《チュチュリス》、《ダチッコ》の戦車がシールドを撃ち抜いていく。

 

「……シールドトリガーは――《獅子王の遺跡》。山札の上からマナゾーンへカードを置く。置いたのは《ボルバルザーク・エクス》だ。そして、多色マナ武装4でさらに2枚、マナを加速する」

「――このターンで決めれば、良いだけの話だ! 《ホップ》!」

『ぶち抜けェェェェェェ!!』

 

 割られる最後のシールド。

 これで、ファウスト様を守るものはもう存在しない――

 

 

 

「――S・トリガー、《無法のレイジクリスタル》。パワー6000以上の《マグナム》をバウンスする。そして、6000以下の《ダチッコ・チュリス》を破壊」

 

 

 

 き、来てしまったか――!

 決めるには、このターンしか無かったのに。

 見回すと、俺のクリーチャーたちは全員、満身創痍の状態で地に倒れ伏せていた。

 

『アニキィ……!』

「お前は、お前は悪くないっ……指揮官たる、俺の責任だ」

 

 決められなかった……!

 最悪のタイミングだ。

 相手のマナも、手札も、溜まってしまっている。反撃は免れないか。

 

「どうやら、勝利の女神は私を見捨てなかったらしい」

 

 カードを引いた大魔導司は俺を見下すと、9枚のマナを順にタップしていく。

 見るだけで邪悪な気配が彼女を包んでいった。

 ファウスト様――それは、本当にあなたが信用するに足りるものなのですか!?

 

「火廣金。お前に教えておいてやる。道化の力というものを」

「……!!」

「貴様の場にあるクリーチャー、貴様の手札にあるあらゆる手段、全てを封じてやろう」

 

 虚構の光。

 欲望の自然。

 破滅の闇。

 三つが交錯し、戦乱と知略の道化が姿を現す。

 浮かび上がるタロットカードの0番。

 意味するのは愚者(ザ・フール)、そして道化師(クラウン)

 

 

「天を突いて悪徳に堕とせ――《天罪堕将 アルカクラウン》」

 

 

 

 遂に現れた悪魔にして天使の道化。

 巨大なマントを翻し、鎧に身を包んだそれの周囲を5枚のカードが並んだ。

 

「五色の曲芸をお見せしよう――」

『さあ、始まりです。全ては、我が掌の中に! 五色のクリーチャーをバトルゾーンに出します!』

 

 現れたのは自然のクリーチャー、《アナリス》、そしてそれに重なるようにして闇のクリーチャー、《闇鎧亜 キング・アルカディアス》。

 

「さらに光のクリーチャー、《聖霊王 ジャスティウス》を《アルカクラウン》から進化!」

「《ジャスティウス》……!?」

「《キング》の効果で相手の多色ではないクリーチャーのコストは5多くなり、相手がコストを支払わずに召喚したクリーチャーは破壊される。更に、《ジャスティウス》はパワー5000以下のクリーチャーの攻撃を封じる。赤単のお前には、これだけでも十分責め苦に値する。が――」

 

 ま、まだあるというのか!?

 意にも介さず、大魔導司は最後の1枚を突き付けた。

 

「1枚は呪文だったが……もう1枚、クリーチャーは居る。水文明、《水晶邪龍 デスティニア》だ」

「なっ……!?」

「使わせて貰うぞ。月の結晶龍の力を。その効果で手札を全て山札へ戻してシャッフルし、4枚ドロー。そして、お前が見ないでこの中からカードを1枚選ぶ。それがクリーチャーならば場に出る」

 

 つまり、俺自身が俺の運命を決めるカード。

 せめて、呪文ならば外れ。

 クリーチャーだったとしてもこの場にこれ以上影響を及ばさないクリーチャーならば――

 脈打つ鼓動。

 目の前に展開された裏向きの4枚の手札のうち、どれかを選ばなければならない。

 

「このカードを――」

 

 表向きになったカード。

 それは――

 

「進化。《闇鎧亜 クイーン・アルカディアス》」

 

 打ちひしがれたようだった。

 揃ってしまった。鎧亜王家夫妻が――!

 キング・クイーンロックの完成だ。

 

「苦尽甘来。お前は幸せ者だ。実に幸運だ。我が闇鎧亜王家の抱擁の元で楽になれるのだからな」

「まだ、まだ終わっちゃいない――!!」

「《スパイク7K》を《クイーン・アルカディアス》で破壊。最早、何が来てもこの私を倒す事は出来まい?」

 

 戦車が軽々と王妃の念動力で持ち上げられ、粉砕される。

 俺の切札が――!

 

「念には念を押すか。《チュチュリス》を《ジャスティウス》で破壊」

 

 さて、と彼女は念を押すように、確認するように言った。

 

「これで、捨て身のG・ゼロの《無重力 ナイン》から《”罰怒”ブランド》が出てくることもあるまいよ。それに、B・A・Dがあるにしても、このロック下で召喚できるクリーチャーは限られている。出せたとして、《ジャスティウス》でネズミは通さないが」

 

 彼女の言う通りだ。

 《ステップ・チュリス》や《”破舞”チュリス》が出せたとしても、せいぜい次のターンに出せるのはそいつら1体だけ。

 それらはスピードアタッカー持ちだが、《ジャスティウス》の前では無力。

 コスト踏み倒しは《キング》によって封じられているも同然。

 つまり、彼女は俺が次のターンに何も出来ない。足掻いても無駄だと言いたいのだ。

 

「だから――他のクリーチャーに興味は無い。お前を痛めつけてやる。火廣金」

 

 憎悪に満ちた瞳が俺を捉えた。

 《キング・アルカディアス》が俺の方を目掛けて撃ち放つ。

 

「――目障りだ……《キング》でシールドをW・ブレイク」

 

 王の光弾が戦場を抉った。

 狙いは《海底鬼面城》のシールド。

 W・ブレイクが決まった。

 

「ぐあぁッ……!!」

 

 その光は俺の身体を次々に刺し貫いていく。

 流石、王の名を冠するクリーチャー。

 攻撃は、シールドだけでは受けきれない。

 降り注ぐシールドの破片だけではない。光は刃となって、俺の腕を、足を引き裂いた。

 血が噴き出し、肉がえぐれていく。

 最早、ファウスト様は俺を殺す事以外何も見えていないかのように。

 

「次のターンで終わりだ。何も出来ない、無駄なターン。カードを引き、そこで終わらせろ」

「……」

 

 何も出来ない、か。

 確かにそうだ。エリアフォースカード回収の任を命じられ、白銀耀に敗れ――俺は何が今まで出来たろうか。

 少なくとも、アルカナ研究会には何一つ出来ていないだろう。

 だけど、だ。

 

『ヒイロのアニキ!!』

「……ああ」

 

 それでも、今まで出会ってきた人との出会いが、戦ってきたライバルとの激闘が、無駄だったとは思っていない。

 俺は――白銀耀に出会えなければ、人間の可能性も、強さも目の当たりに出来なかった。

 俺は――刀堂花梨に出会えなければ、人間の優しさも目の当たりに出来なかった。

 俺は――刀堂ノゾムに、三日月仮面に出会えなければ、正義を疑う事さえ出来なかった。

 俺は――隣にいつも、仲間が居なければ此処まで戦う事さえ出来なかった。

 

『残りの力を使って……!! あいつに、”親分”に繋げてほしいっス!!』

「……ホップ……!」

『この戦い、ビートジョッキーの力だけじゃ勝てないっス……! でも、同じ火の力なら、俺達の仲間――!』

「ああ。俺は多くの人に、背中を押され、今此処に立っている……!! この反逆は、俺だけのものじゃない。だから、諦めたくない!!」

 

 だから、立ち上がる。

 何度倒れても……俺は、灼炎将校(ジェネラル)は、火廣金緋色は――起き上がるだけだ!!

 

「俺のターン……!」

 

 この手札で全てだ。

 引く。必ず引く。 

 白銀耀。刀堂花梨。

 君達に貰った全て――無駄にしないために!!

 

 

 

「ドロー!!」

 

 

 

 信じ抜き、捲れたそのカード。

 俺は――勝利を確信した。

 

「ファウスト様。魔導司の中には、錬金術を使える者も存在します」

「……まだ足掻くか」

「俺に錬金術は使えませんが――仲間の力を糧に、最後の切札へつなぐ事は出来る」

「何だと?」

 

 俺の両手に炎が灯る。

 

「俺は、場の《ホップ・チュリス》と《バング”BNG”ドンゴ》、手札2枚、シールドを2つを山札の下に戻す」

「何……代価コスト……!? 馬鹿な、一体何を出すつもりだ!!」

 

 等価交換。には、割に合わないが……これが唯一の突破口だ!

 

 

 

「道化の力、借り受ける――ジョーカーズ《ニクジール・ブッシャー》2体をコストを支払わずに召喚!!」

 

 

 

 ファウスト様は初めて面食らったような表情を浮かべる。

 全ての手を封じたかと思えば出てきたその2体を前に、言葉も出ないようだった。

 これが、このロックをすり抜ける唯一の手段だ!

 

「良い気になるなよ!! 《キング》の効果で2体、諸共に破壊だ!!」

「これで、俺がこのターン召喚した火のクリーチャーは2体。更に、自分自身でコストを軽減し、合計、コストマイナス6――」

 

 タップされるのは6枚のマナ。

 これで足りた。ラストアタックだ!!

 炎が迸り、俺の腕を駆け抜ける。

 そこから、MASTERの焼き印が押された炎猿が飛び出す。

 

 

 

 

「――限界点突破(リミテッド・オーバー)、《”罰怒(バッド)”ブランド》!!」

 

 

 

 戦場を焦がす炎。

 駆け抜ける一陣の熱風。

 最早、こいつを止めるクリーチャーは存在しない。

 ボロボロの姿で俺の頭によじ登ったホップが、鼻を擦った。

 

『ほんっと、ネズミ使いが荒いっスよ、ヒイロのアニキ!』

「……すまん」

『でも、皆信じてたッス! 親分も、ステップ兄も、ダチッコも、スパイクも――!』

「……ああ。ありがとう」

 

 そうだ。もう、此処までくれば恐れるものは何もない。

 目標は、唯一つ。

 アルカナ研究会の暴走、この俺が食い止める!!

 

「馬鹿な……火のジョーカーズから《ブランド》……! 私のロックを見越して、最初から手札を貯め込んでいたのはそういうことだったのか……! 否……否、それでも何故あそこで引ける!? そんな都合の良い奇跡等……あってたまるか!!」

「奇跡など俺は信じていない――あるとするならば」

 

 《”罰怒”ブランド》のボードが燃え上がる。

 

「これが俺達が歩んできた――」

『これがアニキと俺達の――』

 

 そのまま突貫した《”罰怒”ブランド》は、大魔導司目掛けて、剣の如くそれを振り下ろした。

 

『――軌跡だッ!!』

 

 一刀両断。

 振り下ろされた刃は王と妃さえも吹き飛ばし、真っ直線に大魔導司と道化へ向かう。

 特大の爆音と、火焔を背景にして。

 俺は思い出したかのように――この戦いの終焉を告げた。

 

 

 

 

「――《”罰怒”ブランド》で、ダイレクトアタック」

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