学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
――俺とファウスト様のデュエル。
2ターン目。早速、俺は動き出す。
「オペレーション発動! 総員、作戦準備! 情け無用、戦闘開始!」
『
「タクティクス、第一段階。2マナをタップ。現れろ《一番隊 チュチュリス》!」
頼むぞ。
俺は攻めることしか出来ないが……ファウスト様のロックを突破出来れば、勝ち目はある!
「ターンエンドだ」
「……私のターン。2マナをチャージ。ターン終了だ」
何もしてこない。
ファウスト様のアルカクラウンデッキは、非常に立ち上がりの遅いデッキでもある。
早いうちに攻める準備をせねば。
「行きます。1マナで《ダチッコ・チュリス》。その効果で次の召喚するビートジョッキーのコストを3軽減する」
「鼠ばかりを束ねたところで……」
「更に1マナ、《バング”
《バング”BNG”ドンゴ》の効果。
それは登場時に場にあるクリーチャー1体のキズナ効果を使えるというものだ。
そして、これだけでは終わらない。
「1マナで《海底鬼面城》を設置! ターン終了だ!」
「……何? そういえば、ここで初めて水のマナをチャージしたが……いや、俗にいう――赤青ブランドと言えばそれまでだ」
「……」
「……癇に障るんだ。突撃玉の癖に、一丁前に頭を使っているのがね!」
カードを引いた彼女は叫ぶように呪文を詠唱していく。
「私のターン。3マナで《フェアリー・ミラクル》を使用。マナゾーンに5色のカードが揃っているので山札の上から2枚をマナに置く」
これでファウスト様のマナは合計5枚。
……何か来るのは、次のターンか。
「俺のターン。3マナで《
「……有象無象共がわらわらと……痛ッ!!」
急に頭を抑える上司――と呼んで良いのかは分からないが――に、俺は一抹の違和感を覚えた。
「ファウスト様……!」
「五月蠅いッ!! 私のターンだッ……!! お前など、この
おかしい。何か様子が変だ。
そもそもファウスト様は、本当にエリアフォースカードを扱えているのか?
いや、勝てば全て明らかになることだ。
「私のターン。4マナで《スペンガリィ・クロウラー》召喚。その効果で、私のクリーチャーはクリーチャーを攻撃出来ないが、相手のクリーチャーはタップされて場に出る。ターン終了だ」
タップイン持ちクリーチャー、《スペンガリィ》。
打点計算こそ狂わされたが……どのみち、このターンで終わりにしてやる!
すべての戦略は整った!!
『兄貴!!』
「ああ。行くぞ! 俺のターン、《鬼面城》の効果を使う!」
「ドローする……決めに掛かるか」
「追加で1枚ドロー。そして、1コスト軽減し、5マナをタップ――情け無用、戦車戦用意!! 」
燃え上がる戦場の炎。
それだけが俺に味方をしてくれる。
さあ出でよ、俺の切札!!
「
大地に降り立った巨大な戦車、《スパイク7K》。
しかし、それに引き連れられて更に戦車連隊が戦場へ駆けつける。
クリーチャーが次々にそれに乗り込んでいった。
「さあ、始めるとしよう。包囲殲滅戦を! 《スパイク7K》の効果で、俺のクリーチャー全員は、パワー+5000とブレイク数1追加、またはパワー+3000とアンタップキラー追加のいずれかを付与される! 《ボンゴ》にアンタップキラーを追加。他全員は我を顧みず進軍し、敵中枢を撃滅せよ!! 《ホップ》、殿を任せた!」
『任されたっス、ヒイロのアニキ! 全軍、出撃っス!!』
場には《ホップ》に《チュチュリス》、《ダチッコ》、《BNG》、《マグナム》の5体が攻撃可能。
ファウスト様のシールドを全て割り、ダイレクトアタックまで持っていける。
《ザ・デッド・ブラッキオ》は《マグナム》で封じているから、心配はない。後は――
「全員で、あのシールドを叩き割る!!」
「空理空論。無駄な事だよ」
「それは、やってみなきゃ分からないでしょうがァ!!」
砲撃戦が始まった。
《バング”BNG”ボンゴ》の乗った戦車が、巨大な異形・《スベンガリィ・クロウラー》へ砲弾を撃ち込んで沈黙させる。
そして、《チュチュリス》、《ダチッコ》の戦車がシールドを撃ち抜いていく。
「……シールドトリガーは――《獅子王の遺跡》。山札の上からマナゾーンへカードを置く。置いたのは《ボルバルザーク・エクス》だ。そして、多色マナ武装4でさらに2枚、マナを加速する」
「――このターンで決めれば、良いだけの話だ! 《ホップ》!」
『ぶち抜けェェェェェェ!!』
割られる最後のシールド。
これで、ファウスト様を守るものはもう存在しない――
「――S・トリガー、《無法のレイジクリスタル》。パワー6000以上の《マグナム》をバウンスする。そして、6000以下の《ダチッコ・チュリス》を破壊」
き、来てしまったか――!
決めるには、このターンしか無かったのに。
見回すと、俺のクリーチャーたちは全員、満身創痍の状態で地に倒れ伏せていた。
『アニキィ……!』
「お前は、お前は悪くないっ……指揮官たる、俺の責任だ」
決められなかった……!
最悪のタイミングだ。
相手のマナも、手札も、溜まってしまっている。反撃は免れないか。
「どうやら、勝利の女神は私を見捨てなかったらしい」
カードを引いた大魔導司は俺を見下すと、9枚のマナを順にタップしていく。
見るだけで邪悪な気配が彼女を包んでいった。
ファウスト様――それは、本当にあなたが信用するに足りるものなのですか!?
「火廣金。お前に教えておいてやる。道化の力というものを」
「……!!」
「貴様の場にあるクリーチャー、貴様の手札にあるあらゆる手段、全てを封じてやろう」
虚構の光。
欲望の自然。
破滅の闇。
三つが交錯し、戦乱と知略の道化が姿を現す。
浮かび上がるタロットカードの0番。
意味するのは
「天を突いて悪徳に堕とせ――《天罪堕将 アルカクラウン》」
遂に現れた悪魔にして天使の道化。
巨大なマントを翻し、鎧に身を包んだそれの周囲を5枚のカードが並んだ。
「五色の曲芸をお見せしよう――」
『さあ、始まりです。全ては、我が掌の中に! 五色のクリーチャーをバトルゾーンに出します!』
現れたのは自然のクリーチャー、《アナリス》、そしてそれに重なるようにして闇のクリーチャー、《闇鎧亜 キング・アルカディアス》。
「さらに光のクリーチャー、《聖霊王 ジャスティウス》を《アルカクラウン》から進化!」
「《ジャスティウス》……!?」
「《キング》の効果で相手の多色ではないクリーチャーのコストは5多くなり、相手がコストを支払わずに召喚したクリーチャーは破壊される。更に、《ジャスティウス》はパワー5000以下のクリーチャーの攻撃を封じる。赤単のお前には、これだけでも十分責め苦に値する。が――」
ま、まだあるというのか!?
意にも介さず、大魔導司は最後の1枚を突き付けた。
「1枚は呪文だったが……もう1枚、クリーチャーは居る。水文明、《水晶邪龍 デスティニア》だ」
「なっ……!?」
「使わせて貰うぞ。月の結晶龍の力を。その効果で手札を全て山札へ戻してシャッフルし、4枚ドロー。そして、お前が見ないでこの中からカードを1枚選ぶ。それがクリーチャーならば場に出る」
つまり、俺自身が俺の運命を決めるカード。
せめて、呪文ならば外れ。
クリーチャーだったとしてもこの場にこれ以上影響を及ばさないクリーチャーならば――
脈打つ鼓動。
目の前に展開された裏向きの4枚の手札のうち、どれかを選ばなければならない。
「このカードを――」
表向きになったカード。
それは――
「進化。《闇鎧亜 クイーン・アルカディアス》」
打ちひしがれたようだった。
揃ってしまった。鎧亜王家夫妻が――!
キング・クイーンロックの完成だ。
「苦尽甘来。お前は幸せ者だ。実に幸運だ。我が闇鎧亜王家の抱擁の元で楽になれるのだからな」
「まだ、まだ終わっちゃいない――!!」
「《スパイク7K》を《クイーン・アルカディアス》で破壊。最早、何が来てもこの私を倒す事は出来まい?」
戦車が軽々と王妃の念動力で持ち上げられ、粉砕される。
俺の切札が――!
「念には念を押すか。《チュチュリス》を《ジャスティウス》で破壊」
さて、と彼女は念を押すように、確認するように言った。
「これで、捨て身のG・ゼロの《無重力 ナイン》から《”罰怒”ブランド》が出てくることもあるまいよ。それに、B・A・Dがあるにしても、このロック下で召喚できるクリーチャーは限られている。出せたとして、《ジャスティウス》でネズミは通さないが」
彼女の言う通りだ。
《ステップ・チュリス》や《”破舞”チュリス》が出せたとしても、せいぜい次のターンに出せるのはそいつら1体だけ。
それらはスピードアタッカー持ちだが、《ジャスティウス》の前では無力。
コスト踏み倒しは《キング》によって封じられているも同然。
つまり、彼女は俺が次のターンに何も出来ない。足掻いても無駄だと言いたいのだ。
「だから――他のクリーチャーに興味は無い。お前を痛めつけてやる。火廣金」
憎悪に満ちた瞳が俺を捉えた。
《キング・アルカディアス》が俺の方を目掛けて撃ち放つ。
「――目障りだ……《キング》でシールドをW・ブレイク」
王の光弾が戦場を抉った。
狙いは《海底鬼面城》のシールド。
W・ブレイクが決まった。
「ぐあぁッ……!!」
その光は俺の身体を次々に刺し貫いていく。
流石、王の名を冠するクリーチャー。
攻撃は、シールドだけでは受けきれない。
降り注ぐシールドの破片だけではない。光は刃となって、俺の腕を、足を引き裂いた。
血が噴き出し、肉がえぐれていく。
最早、ファウスト様は俺を殺す事以外何も見えていないかのように。
「次のターンで終わりだ。何も出来ない、無駄なターン。カードを引き、そこで終わらせろ」
「……」
何も出来ない、か。
確かにそうだ。エリアフォースカード回収の任を命じられ、白銀耀に敗れ――俺は何が今まで出来たろうか。
少なくとも、アルカナ研究会には何一つ出来ていないだろう。
だけど、だ。
『ヒイロのアニキ!!』
「……ああ」
それでも、今まで出会ってきた人との出会いが、戦ってきたライバルとの激闘が、無駄だったとは思っていない。
俺は――白銀耀に出会えなければ、人間の可能性も、強さも目の当たりに出来なかった。
俺は――刀堂花梨に出会えなければ、人間の優しさも目の当たりに出来なかった。
俺は――刀堂ノゾムに、三日月仮面に出会えなければ、正義を疑う事さえ出来なかった。
俺は――隣にいつも、仲間が居なければ此処まで戦う事さえ出来なかった。
『残りの力を使って……!! あいつに、”親分”に繋げてほしいっス!!』
「……ホップ……!」
『この戦い、ビートジョッキーの力だけじゃ勝てないっス……! でも、同じ火の力なら、俺達の仲間――!』
「ああ。俺は多くの人に、背中を押され、今此処に立っている……!! この反逆は、俺だけのものじゃない。だから、諦めたくない!!」
だから、立ち上がる。
何度倒れても……俺は、
「俺のターン……!」
この手札で全てだ。
引く。必ず引く。
白銀耀。刀堂花梨。
君達に貰った全て――無駄にしないために!!
「ドロー!!」
信じ抜き、捲れたそのカード。
俺は――勝利を確信した。
「ファウスト様。魔導司の中には、錬金術を使える者も存在します」
「……まだ足掻くか」
「俺に錬金術は使えませんが――仲間の力を糧に、最後の切札へつなぐ事は出来る」
「何だと?」
俺の両手に炎が灯る。
「俺は、場の《ホップ・チュリス》と《バング”BNG”ドンゴ》、手札2枚、シールドを2つを山札の下に戻す」
「何……代価コスト……!? 馬鹿な、一体何を出すつもりだ!!」
等価交換。には、割に合わないが……これが唯一の突破口だ!
「道化の力、借り受ける――ジョーカーズ《ニクジール・ブッシャー》2体をコストを支払わずに召喚!!」
ファウスト様は初めて面食らったような表情を浮かべる。
全ての手を封じたかと思えば出てきたその2体を前に、言葉も出ないようだった。
これが、このロックをすり抜ける唯一の手段だ!
「良い気になるなよ!! 《キング》の効果で2体、諸共に破壊だ!!」
「これで、俺がこのターン召喚した火のクリーチャーは2体。更に、自分自身でコストを軽減し、合計、コストマイナス6――」
タップされるのは6枚のマナ。
これで足りた。ラストアタックだ!!
炎が迸り、俺の腕を駆け抜ける。
そこから、MASTERの焼き印が押された炎猿が飛び出す。
「――
戦場を焦がす炎。
駆け抜ける一陣の熱風。
最早、こいつを止めるクリーチャーは存在しない。
ボロボロの姿で俺の頭によじ登ったホップが、鼻を擦った。
『ほんっと、ネズミ使いが荒いっスよ、ヒイロのアニキ!』
「……すまん」
『でも、皆信じてたッス! 親分も、ステップ兄も、ダチッコも、スパイクも――!』
「……ああ。ありがとう」
そうだ。もう、此処までくれば恐れるものは何もない。
目標は、唯一つ。
アルカナ研究会の暴走、この俺が食い止める!!
「馬鹿な……火のジョーカーズから《ブランド》……! 私のロックを見越して、最初から手札を貯め込んでいたのはそういうことだったのか……! 否……否、それでも何故あそこで引ける!? そんな都合の良い奇跡等……あってたまるか!!」
「奇跡など俺は信じていない――あるとするならば」
《”罰怒”ブランド》のボードが燃え上がる。
「これが俺達が歩んできた――」
『これがアニキと俺達の――』
そのまま突貫した《”罰怒”ブランド》は、大魔導司目掛けて、剣の如くそれを振り下ろした。
『――軌跡だッ!!』
一刀両断。
振り下ろされた刃は王と妃さえも吹き飛ばし、真っ直線に大魔導司と道化へ向かう。
特大の爆音と、火焔を背景にして。
俺は思い出したかのように――この戦いの終焉を告げた。
「――《”罰怒”ブランド》で、ダイレクトアタック」