学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
飛び出した触手が、皆に届く事は無かった。
1本は一瞬で細切れになってしまい、1本は巨大な腕で握り潰され、1本は何かが巻きついて紫電が流し込まれ、消滅する。
アルカクラウンは振り返るが、その表情は驚愕に満ちていただろう。
その姿を認めた俺も、目を見開いていた。
「桑原先輩……黒鳥さん……それに……ティンダロスまで!?」
「周りに色々沸いてるじゃねえか。テメェが集中できるように、しっかりと掃除してやったからな」
『ああ。ボクらはヒーローだからね! 助けにきてやったというわけだよ!』
「此処は任せろ。状況は把握しかねるが……周りのクリーチャーは邪魔だろう」
『如何にも。さあ、殺しましょうか!!』
「ちょ、ちょ、ティンダロスは……!?」
「白銀耀。この場は、全員目的は同じダ。ファウスト様を、助け出すという事でナ」
そう言うと、桑原先輩と黒鳥さんはエリアフォースカードを掲げる。
そして、ティンダロスも空間を開いていく。
これで――戦力は拮抗した!
「先輩は、1人ではありません。私達が、最後まで支えます!」
「――良いでしょう!! ギャラリーも増えた事です!!」
次の瞬間、空間の空気が塗り潰された。
アルカクラウンは、苛立ちを隠せない声色で叫んだ。
「舞台は最高の[[rb:山場 >カタストロフィ]]を迎える。6マナをタップ。《大革命のD ワイルド・サファリチャンネル》を展開!!」
「っ……!」
あれは確か、多色カードのコストを2にするD2フィールド!?
しかも、D・スイッチで次のターンにクリーチャーをマナから召喚できるようにする効果を持ってたはず――!?
「では、残る3マナで《カーネル》を召喚し、《ヤッタレマン》をロック。そして――」
アルカクラウンが手を広げた。
そこから魔法陣が浮かび上がる。
何だろう、この嫌な空気は――
「《
光が迸る。
現れたのは、強大な光の神。
純白の鎧に身を包んだ聖なる神であった。
「っ……何デスか!? God!?」
「なんか、すっごい強そうだよ!?」
「ゴッド……2体で1つのクリーチャーとなる、ゴッド・リンクを持つクリーチャーだ」
「それも、厄介なものが現れましたね……」
空間でクリーチャーを相手にしている皆からも見えているのか。
そんな声が聞こえてくる。
それほどに、巨大な存在だった。最早、室内の空間は歪められ、まるで宇宙のように吸い込まれそうな無限の天井が広がっていた。
「ゴッド。我らがロスト・クルセイダーの仕える真なる支配階級。しかし、その姿が忘れ去られてからは、ロスト・クルセイダーは誰に支配されていたかも忘れてしまい、遂には自らを王と名乗る者まで現れる始末。嘆かわしい!!」
彼は大袈裟に手を振るうといった。
背後に現れた巨神を見せつけるように。
「私は――再び神が支配する世界を作り上げてみせるぞ!! それが、それこそが、神が私に与えた使命なのだ――アッハハハハハハハハハ!!」
「そのためには……何を犠牲にしてもかまわないってか」
「構わない! この私でさえも! だから、他の何を傀儡にしたとして、贄に捧げたとして、痛む良心等とうの昔に捨てたわ!! ターンエンド!!」
巨大な壁――!!
攻撃できるクリーチャーが今の時点でも1体しかいない以上、ここで殴り勝つ事は出来ない。
「俺のターン……! 《ヤッタレマン》のコスト軽減から4マナで、《キャタピラ親方》を召喚!!」
『これで、アルカクラウンの能力で場に出たクリーチャーは墓地に置かれるでありますよ!』
「ターンエンド……!」
これで、一応牽制は出来るはず。
だけど未だに手札に逆転札は来ない。更に――
「そんなものを出しても無駄ですよ!!」
奴のターンが返ってくる。
劇場がひっくり返る時。
場面は一気に終焉へと加速する。
「さあ、もうお終いですよ――《大革命のD ワイルド・サファリ・チャンネル》の
世界が反転した。
そこは、荒れ果てたサバンナ。
更に、浮かび上がる大量の魔法陣。
遂に、道化の五色の曲芸が始まろうとしていた。
「お見せしよう!
虚構の白。
破滅の黒。
傲慢の緑。
全てが合わさり、遂に最終演目が始まろうとしていた。
「悪徳に堕ちろ、世界よ――これで
大地が吼えた。
光が降り注ぎ、破滅の刻を刻んでいく。
黄金の鎧に、漆黒の仮面を覆った顔無き道化、《アルカクラウン》が姿を露わにした。
最後のショーを、披露するために。
「五色の曲芸をお見せしよう――少々刺激的ですが、すぐに楽になりますよ」
踊る5つの魂。
そこから、1つずつ、舞台へ現れた。
「《無頼聖者 スカイソード》、《飛散する斧 プロメテウス》、《闇鎧亜キング・アルカディアス》、そして――《
降り立った3体のクリーチャー。
しかし、それは全て《キャタピラ親方》に引き潰されるしかない。
「コストを支払わずに場に出したクリーチャーは、《親方》の効果で破壊される!」
「だが、能力は発動する! 《スカイソード》の効果でマナとシールドを1枚ずつ増やし、《プロメテウス》の効果でマナを2枚タップして置き、カードを1枚手札に加える。……チッ、一応《プロメテウス》から進化させますが、《キング》は無駄死にか。相変わらずの役立たずめ」
こいつ……!
自分のカードに向かって……!
「まあ、良い。まだ終わってはいませんよ。当たりは引けたのですから」
だが、それだけではまだ終わっていない。
神さえも、彼の操り人形に過ぎないのだから。
破壊されていくクリーチャーだったが、1つだけ。破壊出来なかった。
「最後に《アク》の効果――ゴッドが破壊される時、代わりに手札へ」
「なあっ……!?」
「さあ。終わりにしましょう。4マナをタップ」
舞い降りる。
再び、漆黒の神が。
俺は、圧倒的すぎるそれを前に立ち尽くしていた。
「《
※※※
揃ってしまった。
白と黒。
善と悪。
超絶と究極。
相反する存在でありながら、対となる二つの柱。
そう、デュエル・マスターズに於ける神という存在は、2つが揃い、初めて完全な存在となる。
「神と神。相対す不完全は、1つの柱となって完全となる――
紫電が迸り、2つの柱が1つの柱となっていく。
《ゼン》と《アク》は今、1つの存在となったのだ。
「崇めよ!! 讃えよ!! これが、王政を否定し、神世へと現世を作り替える、創造と破壊の神の姿だ!!」
大きい。
あまりにも大きすぎる。
こいつが――神。
「さあ、更に3マナで《トップ・オブ・ロマネスク》を召喚! これで守りは盤石……ターンエンド!!」
リンクしたゴッドは、召喚酔いしない。
だけど攻撃してこなかったってことは――まだ、何か俺を追い詰める手立てが残ってるってことか?
なら、お望み通り――こっちも、徹底抗戦だ!
皆が後ろで、前で、戦ってくれてるんだ!! 俺が負けるわけにはいかないんだ!!
「俺のターン!! 4マナで、《バーバーパパ》をJ・O・E2を使って召喚!! そのまま攻撃するとき、《ロマネスク》を破壊だ!!」
「無駄な事。《ゼンアク》でブロック」
巨大な神の手が迫り、《バーバーパパ》を粉砕する。
だけど――勝つには、攻撃するしかない!!
「《パーリ騎士》で攻撃!!」
「その攻撃は通しましょう」
「なっ……!?」
最後のシールドが割れる。
しかし。それは燃え上がると、そのまま墓地へ置かれてしまう。
これってまさか――
「
「《デッドブラッキオ》……!!」
大地を蝕む5色の龍。
現れると、すぐさまに《キャタピラ親方》に食らいついて破壊する。
が、自身も《キャタピラ親方》の効果で破壊された。
「さあ。これでもまだ攻撃しますか?」
「……ターンエンドだ」
どうする?
どうすれば攻め勝てる?
此処までの削りが、次のターン――が来ればの話だが――での決着にどう響くか。
「仲間達が戦っている……まあ、良い事です。しかし。それも徒労で終わることでしょう」
「……何だと」
「すべて無駄ですよ。このターンで、全て終わりですから!! まずは、4マナで《轟改速 ワイルド・マックス》を召喚! 私のクリーチャーは全て、スピードアタッカーを得ますよ! さらに、5マナで2体目の《アルカクラウン》もバトルゾーンへ!!」
「やばっ……!!」
「一度見せた技をもう1度見せるのは興醒めですが……最早こんな事をしている場合ではない。貴方を早く倒し、この世に神を降臨させる準備をせねばならないのです」
現れたのは、《怒流牙 サイゾウミスト》、《赤攻銀 アサラーム》、《星龍パーフェクト・アース》だった。
確か、あいつらは――
「《サイゾウミスト》の効果発動! 墓地と山札を混ぜてシャッフルし、シールドを1枚追加します。そして、《アサラーム》の効果で私のシールドの数だけ山札からシールドを追加。これで、シールドは合計4枚!!」
「っ……!!」
「残念でしたねえ!! 貴方のシールド削りは、無駄になってしまいました!! アハハハハハハハ! そして、これでお終いです!!」
浮かび上がる幻惑の青、そして傲慢の緑。
それが――創造の神の礎となった。
「破壊の後に創造あり――《
《ゼン》、そして《アク》の中央に聳え立つ第三の神。
それが巨大な手を振るうと共に神の伝説が紡がれる。
何だよあいつ。
こんなにデカいの――呑まれちまいそうだ。
「《サガ》がバトルゾーンを離れる時、バトルゾーンに自分のゴッドがあれば、このクリーチャーはバトルゾーンを離れるかわりにとどまる。更に……登場時に、バトルゾーンにある自分の、名前に《ゼン》と《アク》とあるゴッド1体のリンクを外してもよい」
「外すのか……!? わざわざゴッドのリンクを!?」
「ええ。そうした場合、自分の山札を見て、その中から《バイオレンス・ヘヴン》または《ゴッド・ブリンガー》または《ゴッド・サーガ》のいずれか1枚を選び、その呪文をコストを支払わずに唱えます!! 私が唱えるのは、13マナのこの呪文、《ゴッド・サーガ》!!」
じゅ、13マナ……!?
次の瞬間、2柱の神が再び姿を現す。
待てよ。まだ神が増えるってのか!?
「マナゾーンからゴッドを2体まで場に出す。出すのは、《超絶神ゼン》と《究極神アク》!!」
「2体目……!?」
「そして、今リンクを外した2柱とそれぞれゴッド・リンクさせますよ!! 究極の超絶神、《ゼンアク》が2柱――今、まさに降臨したのです!!」
俺はその時、もう放心状態だった。
神々しい程に眩しい2柱の神。
それが2体。
最早、それは止める事が出来ない程だった。
夥しい程の十字軍の軍勢が、俺の前に広がっている。
全員、俺を攻撃出来る。
「……言葉も出ねえな。これが神の力かよ」
『マスター!!』
「……我ながら、やべーモンを相手にしちまったみたいだ。チョートッQ……俺がこんな状況で勝てると思うか?」
『そ、そんな、この状況は……マ、マスターは……絶対に我がお守りするでありますよ!!』
「……そうか。わりーな、チョートッQ。確かに絶望的だ。俺のクリーチャーは満身創痍。シールドは5枚揃っているけど、相手の打点はほぼオーバーキル同然。おまけに、全員スピードアタッカーだ。だからかなあ」
駄目だ。
止まらない。
頭の中でリピートする度に。
体中のゾクゾクが、俺を震わせる。
全身の血管に、血がどくどくと送り込まれていく。
だって、今俺は――
「――俺は、全然ッ負ける気がしねえんだ……!!」