学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第76話:WILDCARDS(6)

飛び出した触手が、皆に届く事は無かった。

 1本は一瞬で細切れになってしまい、1本は巨大な腕で握り潰され、1本は何かが巻きついて紫電が流し込まれ、消滅する。

 アルカクラウンは振り返るが、その表情は驚愕に満ちていただろう。

 その姿を認めた俺も、目を見開いていた。

 

「桑原先輩……黒鳥さん……それに……ティンダロスまで!?」

「周りに色々沸いてるじゃねえか。テメェが集中できるように、しっかりと掃除してやったからな」

『ああ。ボクらはヒーローだからね! 助けにきてやったというわけだよ!』

「此処は任せろ。状況は把握しかねるが……周りのクリーチャーは邪魔だろう」

『如何にも。さあ、殺しましょうか!!』

「ちょ、ちょ、ティンダロスは……!?」

「白銀耀。この場は、全員目的は同じダ。ファウスト様を、助け出すという事でナ」

 

 そう言うと、桑原先輩と黒鳥さんはエリアフォースカードを掲げる。

 そして、ティンダロスも空間を開いていく。

 これで――戦力は拮抗した!

 

「先輩は、1人ではありません。私達が、最後まで支えます!」

 

 

 

「――良いでしょう!! ギャラリーも増えた事です!!」

 

 

 

 次の瞬間、空間の空気が塗り潰された。

 アルカクラウンは、苛立ちを隠せない声色で叫んだ。

 

「舞台は最高の[[rb:山場 >カタストロフィ]]を迎える。6マナをタップ。《大革命のD ワイルド・サファリチャンネル》を展開!!」

「っ……!」

 

 あれは確か、多色カードのコストを2にするD2フィールド!?

 しかも、D・スイッチで次のターンにクリーチャーをマナから召喚できるようにする効果を持ってたはず――!?

 

「では、残る3マナで《カーネル》を召喚し、《ヤッタレマン》をロック。そして――」

 

 アルカクラウンが手を広げた。

 そこから魔法陣が浮かび上がる。

 何だろう、この嫌な空気は――

 

 

 

「《超絶神(ちょうぜつしん)ゼン》――召喚!!」

 

 

 

 光が迸る。

 現れたのは、強大な光の神。

 純白の鎧に身を包んだ聖なる神であった。

 

「っ……何デスか!? God!?」

「なんか、すっごい強そうだよ!?」

「ゴッド……2体で1つのクリーチャーとなる、ゴッド・リンクを持つクリーチャーだ」

「それも、厄介なものが現れましたね……」

 

 空間でクリーチャーを相手にしている皆からも見えているのか。

 そんな声が聞こえてくる。

 それほどに、巨大な存在だった。最早、室内の空間は歪められ、まるで宇宙のように吸い込まれそうな無限の天井が広がっていた。

 

「ゴッド。我らがロスト・クルセイダーの仕える真なる支配階級。しかし、その姿が忘れ去られてからは、ロスト・クルセイダーは誰に支配されていたかも忘れてしまい、遂には自らを王と名乗る者まで現れる始末。嘆かわしい!!」

 

 彼は大袈裟に手を振るうといった。

 背後に現れた巨神を見せつけるように。

 

「私は――再び神が支配する世界を作り上げてみせるぞ!! それが、それこそが、神が私に与えた使命なのだ――アッハハハハハハハハハ!!」

「そのためには……何を犠牲にしてもかまわないってか」

「構わない! この私でさえも! だから、他の何を傀儡にしたとして、贄に捧げたとして、痛む良心等とうの昔に捨てたわ!! ターンエンド!!」

 

 巨大な壁――!!

 攻撃できるクリーチャーが今の時点でも1体しかいない以上、ここで殴り勝つ事は出来ない。

 

「俺のターン……! 《ヤッタレマン》のコスト軽減から4マナで、《キャタピラ親方》を召喚!!」

『これで、アルカクラウンの能力で場に出たクリーチャーは墓地に置かれるでありますよ!』

「ターンエンド……!」

 

 これで、一応牽制は出来るはず。

 だけど未だに手札に逆転札は来ない。更に――

 

「そんなものを出しても無駄ですよ!!」

 

 奴のターンが返ってくる。

 劇場がひっくり返る時。

 場面は一気に終焉へと加速する。

 

 

 

「さあ、もうお終いですよ――《大革命のD ワイルド・サファリ・チャンネル》の(デンジャラ)スイッチ発動! 効果で、マナからクリーチャーを召喚出来ます!!」

 

 

 

 世界が反転した。

 そこは、荒れ果てたサバンナ。

 更に、浮かび上がる大量の魔法陣。

 遂に、道化の五色の曲芸が始まろうとしていた。

 

「お見せしよう! 物語を終わらせる神(デウス・エクス・マキナ)の姿を!」

 

 虚構の白。

 破滅の黒。

 傲慢の緑。

 全てが合わさり、遂に最終演目が始まろうとしていた。

 

 

 

 

「悪徳に堕ちろ、世界よ――これで終演(フィナーレ)だ、《天罪堕将(てんざいだしょう)アルカクラウン》!!」

 

 

 

 大地が吼えた。

 光が降り注ぎ、破滅の刻を刻んでいく。

 黄金の鎧に、漆黒の仮面を覆った顔無き道化、《アルカクラウン》が姿を露わにした。

 最後のショーを、披露するために。

 

「五色の曲芸をお見せしよう――少々刺激的ですが、すぐに楽になりますよ」

 

 踊る5つの魂。

 そこから、1つずつ、舞台へ現れた。

 

「《無頼聖者 スカイソード》、《飛散する斧 プロメテウス》、《闇鎧亜キング・アルカディアス》、そして――《究極神(きゅうきょくしん)アク》をバトルゾーンへ!」

 

 降り立った3体のクリーチャー。

 しかし、それは全て《キャタピラ親方》に引き潰されるしかない。

 

「コストを支払わずに場に出したクリーチャーは、《親方》の効果で破壊される!」

「だが、能力は発動する! 《スカイソード》の効果でマナとシールドを1枚ずつ増やし、《プロメテウス》の効果でマナを2枚タップして置き、カードを1枚手札に加える。……チッ、一応《プロメテウス》から進化させますが、《キング》は無駄死にか。相変わらずの役立たずめ」

 

 こいつ……!

 自分のカードに向かって……!

 

「まあ、良い。まだ終わってはいませんよ。当たりは引けたのですから」

 

 だが、それだけではまだ終わっていない。

 神さえも、彼の操り人形に過ぎないのだから。

 破壊されていくクリーチャーだったが、1つだけ。破壊出来なかった。

 

「最後に《アク》の効果――ゴッドが破壊される時、代わりに手札へ」

「なあっ……!?」

「さあ。終わりにしましょう。4マナをタップ」

 

 舞い降りる。

 再び、漆黒の神が。

 俺は、圧倒的すぎるそれを前に立ち尽くしていた。

 

 

 

「《究極神(きゅうきょくしん)アク》召喚!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 揃ってしまった。

 白と黒。

 善と悪。

 超絶と究極。

 相反する存在でありながら、対となる二つの柱。

 そう、デュエル・マスターズに於ける神という存在は、2つが揃い、初めて完全な存在となる。

 

「神と神。相対す不完全は、1つの柱となって完全となる――(ゴッド)・リンク」

 

 紫電が迸り、2つの柱が1つの柱となっていく。

 《ゼン》と《アク》は今、1つの存在となったのだ。

 

「崇めよ!! 讃えよ!! これが、王政を否定し、神世へと現世を作り替える、創造と破壊の神の姿だ!!」

 

 大きい。

 あまりにも大きすぎる。

 こいつが――神。

 

「さあ、更に3マナで《トップ・オブ・ロマネスク》を召喚! これで守りは盤石……ターンエンド!!」

 

 リンクしたゴッドは、召喚酔いしない。

 だけど攻撃してこなかったってことは――まだ、何か俺を追い詰める手立てが残ってるってことか?

 なら、お望み通り――こっちも、徹底抗戦だ!

 皆が後ろで、前で、戦ってくれてるんだ!! 俺が負けるわけにはいかないんだ!!

 

「俺のターン!! 4マナで、《バーバーパパ》をJ・O・E2を使って召喚!! そのまま攻撃するとき、《ロマネスク》を破壊だ!!」

「無駄な事。《ゼンアク》でブロック」

 

 巨大な神の手が迫り、《バーバーパパ》を粉砕する。

 だけど――勝つには、攻撃するしかない!!

 

「《パーリ騎士》で攻撃!!」

「その攻撃は通しましょう」

「なっ……!?」

 

 最後のシールドが割れる。

 しかし。それは燃え上がると、そのまま墓地へ置かれてしまう。

 これってまさか――

 

多色(レインボー)マナ武装5により、マナゾーンにカードが5枚以上あり、尚且つ5色が揃っている時、《界王類邪龍目 ザ=デッドブラッキオ》はスーパー・ストライクバックを得る!! シールドを墓地に捨てて召喚!!」

「《デッドブラッキオ》……!!」

 

 大地を蝕む5色の龍。

 現れると、すぐさまに《キャタピラ親方》に食らいついて破壊する。

 が、自身も《キャタピラ親方》の効果で破壊された。

 

「さあ。これでもまだ攻撃しますか?」

「……ターンエンドだ」

 

 どうする?

 どうすれば攻め勝てる?

 此処までの削りが、次のターン――が来ればの話だが――での決着にどう響くか。

 

「仲間達が戦っている……まあ、良い事です。しかし。それも徒労で終わることでしょう」

「……何だと」

「すべて無駄ですよ。このターンで、全て終わりですから!! まずは、4マナで《轟改速 ワイルド・マックス》を召喚! 私のクリーチャーは全て、スピードアタッカーを得ますよ! さらに、5マナで2体目の《アルカクラウン》もバトルゾーンへ!!」

「やばっ……!!」

「一度見せた技をもう1度見せるのは興醒めですが……最早こんな事をしている場合ではない。貴方を早く倒し、この世に神を降臨させる準備をせねばならないのです」

 

 現れたのは、《怒流牙 サイゾウミスト》、《赤攻銀 アサラーム》、《星龍パーフェクト・アース》だった。

 確か、あいつらは――

 

「《サイゾウミスト》の効果発動! 墓地と山札を混ぜてシャッフルし、シールドを1枚追加します。そして、《アサラーム》の効果で私のシールドの数だけ山札からシールドを追加。これで、シールドは合計4枚!!」

「っ……!!」

「残念でしたねえ!! 貴方のシールド削りは、無駄になってしまいました!! アハハハハハハハ! そして、これでお終いです!!」

 

 浮かび上がる幻惑の青、そして傲慢の緑。

 それが――創造の神の礎となった。

 

 

 

「破壊の後に創造あり――《創造神(そうぞうしん)サガ》!!」

 

 

 

 《ゼン》、そして《アク》の中央に聳え立つ第三の神。

 それが巨大な手を振るうと共に神の伝説が紡がれる。

 何だよあいつ。

 こんなにデカいの――呑まれちまいそうだ。

 

「《サガ》がバトルゾーンを離れる時、バトルゾーンに自分のゴッドがあれば、このクリーチャーはバトルゾーンを離れるかわりにとどまる。更に……登場時に、バトルゾーンにある自分の、名前に《ゼン》と《アク》とあるゴッド1体のリンクを外してもよい」

「外すのか……!? わざわざゴッドのリンクを!?」

「ええ。そうした場合、自分の山札を見て、その中から《バイオレンス・ヘヴン》または《ゴッド・ブリンガー》または《ゴッド・サーガ》のいずれか1枚を選び、その呪文をコストを支払わずに唱えます!! 私が唱えるのは、13マナのこの呪文、《ゴッド・サーガ》!!」

 

 じゅ、13マナ……!?

 次の瞬間、2柱の神が再び姿を現す。

 待てよ。まだ神が増えるってのか!?

 

「マナゾーンからゴッドを2体まで場に出す。出すのは、《超絶神ゼン》と《究極神アク》!!」

「2体目……!?」

「そして、今リンクを外した2柱とそれぞれゴッド・リンクさせますよ!! 究極の超絶神、《ゼンアク》が2柱――今、まさに降臨したのです!!」

 

 俺はその時、もう放心状態だった。

 神々しい程に眩しい2柱の神。

 それが2体。

 最早、それは止める事が出来ない程だった。

 夥しい程の十字軍の軍勢が、俺の前に広がっている。

 全員、俺を攻撃出来る。

 

「……言葉も出ねえな。これが神の力かよ」

『マスター!!』

「……我ながら、やべーモンを相手にしちまったみたいだ。チョートッQ……俺がこんな状況で勝てると思うか?」

『そ、そんな、この状況は……マ、マスターは……絶対に我がお守りするでありますよ!!』

「……そうか。わりーな、チョートッQ。確かに絶望的だ。俺のクリーチャーは満身創痍。シールドは5枚揃っているけど、相手の打点はほぼオーバーキル同然。おまけに、全員スピードアタッカーだ。だからかなあ」

 

 駄目だ。

 止まらない。

 頭の中でリピートする度に。

 体中のゾクゾクが、俺を震わせる。

 全身の血管に、血がどくどくと送り込まれていく。

 だって、今俺は――

 

 

 

 

「――俺は、全然ッ負ける気がしねえんだ……!!」

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