学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
強がりだった。
虚勢にも見えただろう。
実際そうだ。
だけど。此処で弱気になれない理由がある。
どんなに絶望的だったとしても。引き下がれない理由がある。
この状況をひっくり返せる可能性は一握りだ、と。
それが、余計に胸を焦がす。
『マスター……何で……そこまで……!』
そんな泣きそうな声するんじゃねえよ。
絶望的な、こんな盤面に陥るのは覚悟の上だった。
だから――絶対にひっくり返してやる。此処で!! 絶対に!!
「……成程。余程死に急ぎたいのですねぇ!!」
神の鉄槌が振り下ろされる。
最初の一撃。
「《ゼンアク》は攻撃時に相手のクリーチャー、《ヤッタレマン》を破壊! さらに、リンクしている時、Q・ブレイカーだ!! シールドを、Q・ブレイク!!」
その時、俺は何があったのか覚えていない。
一瞬で意識が頭から離れかけた。
花梨が。紫月が。ブランが。桑原先輩が。黒鳥さんが。火廣金が――俺の方を振り向いた所で、我に返った。
「皆、大丈夫……だっ……!!」
何かが流れ落ちるのも気にせず、俺は立ち上がる。
手にべっとりついたものを、顔でぬぐい取り、落ちたカードを拾う。
離れられるわけがなかった。今まで出会ってきた人達の事を思い出せば――
『マスター!! もう危ないでありますよ!! マスターの身体は、さっきの攻撃と今のデュエルの間に急速に消耗しているであります!!』
「チョートッQ。お前と初めて会った時も……俺、もうちょいで死ぬ所だったっけ」
『マスター……』
「花梨を助けて、ブランが首突っ込んできて、紫月を巻き込んで、桑原先輩が加わって、火廣金にぶちのめされて、黒鳥さんに助けられて……俺、本当に色んな人に出会ってきたんだな、エリアフォースカードを通じて」
だから、敗けられねえんだ。
俺の命は、魂は、皆に繋げられたようなものだから。
「ノゾム兄の強さを目の当たりにして――デカすぎる敵に絶望もしたけど、俺……それでもやってこれたのはお前らのおかげなんだ。俺は鉄人じゃねえ。スーパーマンじゃねえ。皆から色々貰って此処まで来たんだ」
目の前を見据える。
そうだ。まだ、光はあるじゃねえか。
「だから俺も、その分――最後まで、燃え尽きるまで、戦うんだ!!」
この手で、左胸を掴む。
何だ。まだ、どくどくと鳴ってるじゃねえか。
こんなにも、熱い血潮を、俺の身体に滾らせてるじゃねえか!!
掴める。まだ、撃ち抜ける!!
未来を――!!
「S・トリガー、《バイナラドア》!! 効果で、《ワイルド・マックス》を山札の下に!! そして、1枚ドローだ!」
……!
今引いたこのカード。
これなら――!
「ですが……まだ神の攻撃は残っていますよ!! もう1つの《ゼンアク》でシールドをブレイク!! その時、《パーリ騎士》を破壊します!」
このシールド次第だ。
これで、全てが決まる。
最後に割られたシールド。
それが降り注ごうとした時。
脳裏に――皆の顔が浮かんだ。
「――白銀先輩!!」
「――耀!!」
「――アカル!!」
「――白銀ェェェ!!」
「――白銀耀ッ!!」
「――白銀!!」
声が、聞こえてくる。
皆が、俺の名前を呼んでる――!?
いや、違う。
デッキケースの
お前が――みんなの声を、届けてくれたのか……?
「……ああ。皆!! 頼むぜ!!」
シールドを見た時。
「……来た」
俺は、迷いなく――最後の逆転札を突き付けた。
「S・トリガー、《爆殺!
これは――花梨がくれた逆転札!!
今度は俺が、一寸でもいい、僅かな光明を風穴に変える!!
「チィッ……!! ですが、まだこの私が残っていますよ――!!」
「それはどうかな!!」
現れた巨大な粉砕機。
それが狙うのは――
「スーパーボーナスで、俺は山札の上から5枚を見て、その中から火のクリーチャーを1体選んで場に出せる!! そして、お前のクリーチャー1体とバトルさせる! 俺が場に出すのは――《ドクター
「っ……!! 何かと思えば、パワー3000の脆弱なクリーチャー!! その程度で、何が出来ると言うのですか!」
「バトルは強制。《アルカクラウン》と強制バトルで破壊される。だけど――場に出た時の効果も、勿論使えるんだ。《Dr.》の効果で、相手のコストが奇数のクリーチャーは、もう攻撃できない!!」
そうだ。あいつの場には、もう攻撃出来るのは《アルカクラウン》しかいない。
よって――これで、このターンは終わりだ!!
「っ……馬鹿な。そんなことが――!! ですが、こちらのシールドは残り4枚。貴方は虫の息!! 更に――ターンの終わりに、《ゼンアク》はアンタップしますよ!!」
2つの神の壁。
不完全と不完全で完全になったそれらが、俺達の最期の壁となって攻撃を阻む。
だけど――貫いて見せる。
今引いた、このチャンスをモノにしてやる!
「これで終わりじゃねえよ。お前はこのターン、クリーチャーを3体召喚した」
「? それが一体――」
戦場に駆ける一筋の弾丸。
そこから、地面を駆ける黒銀の銃馬が姿を現した。
「《バレット・ザ・シルバー》の効果発動! 相手のターンの終わりに、場に出てくるんだ!!」
こいつの効果で、さらにジョーカーズが呼び出せる。
援軍だ!! あの壁を貫くために!!
「そして、登場時に俺の山札の上から1枚を見て、それがジョーカーズなら――場に出す!! 《ゴールデン・ザ・ジョニー》、《シルバー》に飛び乗れ!!」
西の風が吹いた時。
孤高のガンマンが、相棒の馬に飛び乗った。
「おのれ……だが、だが!! 私の場にはシールドを全てS・トリガー化する《パーフェクト・アース》が居る!! しかも、《ゼンアク》はブロッカーだ!! 突破は不可能だ!!」
「いや、可能に変えてやる!!」
切札は。
いつも俺の手の中にある。
ひっくり返す。俺の
カードを引いた。これが、ラストターンだ!!
「っ……」
カードを見る。
これだ。この時を待っていた。
”戻ってきてくれた”か――!
「三度目は無い!! 二度目の正直だ!! 《メラビート・ザ・ジョニー》を召喚!!」
「っ……おのれ、引いていたのか!!」
「ああ。此処で、このターンで、こいつを引く事が出来た!! 召喚した時。マスター・W・メラビートを使う!! J・O・Eを持つクリーチャーを2体まで、バトルゾーンへ!」
轟!! と炎が吹きあがる。
「頼むぞ!! 《ドッカン! ゴートッQ》!」
『……マスター。我は、最高のマスターに出会えて、幸せ者でありますよ!! 必ず、勝利を……その手札にある切札で撃ち抜くであります!!』
飛び出した俺の突撃玉。
そして、俺はもう1つの弾丸を装填する。
燃え上がる、炎の弾丸を!!
「これが俺の
飛び出したのは、巨大な装甲に身を包んだ重機のクリーチャー。
巨大なショベルカーのような装備にミサイルを搭載した、まさに超絶級の兵器だった。
「さあ行くぜ。まず、場にジョーカーズが5体以上いるので、相手のクリーチャーを全て破壊する!!」
「くっ……《ゼンアク》2柱のリンクを解除! ブロッカーの《ゼン》を2体、場に残す! 《サガ》は場に留まる!」
「だけど、他のクリーチャーは全て破壊だ!!」
ジョニーの放つ炎の弾丸。
それが戦場を一瞬で焦土と化した。
そして、その炎さえも突っ切って、鋼の重機が飛び上がり――地面へダイブした。
「そして《ゲキシンオー》の効果発動!! 登場時に、場のジョーカーズの数だけ、お前のシールドをブレイクだ!!」
一瞬でアルカクラウンの残るシールドは吹き飛んだ。
ヒステリックな絶叫が響き渡った。
「む、無茶苦茶だ……私の最高の演目が……台無し、だァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
S・トリガーが2つ、作動する。
「《炎乱と水幻の裁き》でパワー3000以下のお前のクリーチャーを全て破壊し、《カーネル》で《バレット・ザ・シルバー》を止める!! よくも、よくも私の完全なる神々の演劇を、よくもォォォォ!!」
「《ドクターDr.》と《バイナラドア》……! 《シルバー》が……! でも、これで終わりだ!!」
俺はカードに手を掛ける。
一気に決める!!
「神さえも撃ち抜いてみせる!! 《ゴールデン・ザ・ジョニー》で攻撃……するとき、マスター・ブラスター発動!! 相手のカードを1枚、山札の下に送る!」
《ゴールデン・ザ・ジョニー》の掲げる巨大なブラスターが、《ゼン》の身体を打ち砕く。
「《カーネル》でブロック!!」
「そして――《ゴートッQ》で攻撃!! 《ブロッカー》の《ゼン》を破壊だ!! ダイレクトアタック!!」
「通すかァァァァ!! 不完全な人間がァ!! 完全な神々の降臨を邪魔するかァァァ!! ニンジャ・ストライク7、《怒流牙サイゾウミスト》を召喚し、墓地と山札をシャッフルしてシールドを1枚増やす!!」
追加されるシールドが、ゴートッQの突撃を阻む。
「こ、これで……S・トリガーが来れば……トリガーが……来れば……!!」
割れる最後のシールド。
それを手に取った時。
彼の手札から、それは零れ落ちた。
《闇鎧亜キング・アルカディアス》。彼が嗤い、利用し続けた者が見せた最後の抵抗だったのか、それとも――
「このっ、この……役立たずの人形共がァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
「誰かを踏み躙って達成する理想郷……んなモンはクソくらえだ!! 俺は……皆と一緒に、日常に帰る。いつもの、あの変わらない日々に――取り戻す。お前の手から!!」
最後の一撃。
何度も防がれた。
何度も弾かれた。
でも、ボロボロになっても立ち上がってきたんだ!!
皆と一緒に!!
通れ。通れ!! 通れ!!
「《メラビート・ザ・ジョニー》で――ダイレクトアタック!!」
放たれた炎の弾丸が。
道化の化身を焼き払う。
「通れェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!」
最早、それを阻むものは誰もいない。
皆の思いを乗せ、弾丸は真っ直線に進んでいく。
偽りの理想郷も、神々の世界も、全て打ち砕くために――
「消えていく――私の美しい、神々の劇場が――消えていく……」