学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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Ace2話:水晶事変─大会

「まさか、久しぶりに会えるなんて……思わなかった」

「いやあ、僕も同じだよ。こんなところでブランと会えるなんて」

「あれ? そういえば急いでたんじゃないの?」

「予定変更だ。ブランと会えた事の方が嬉しいよ。少しバスが遅れるのは構わない」

 

 ベンチで座り、語り合う2人。

 慣れないブランの口調に当惑するワンダータートルだったが、これが生のままの彼女なのだと察する。

 前はもっと引っ込み思案だった。

 今のようになったのは割と最近だ、とは耀の弁。

 それでも、やはりあの口調は、あの性格は作っていた(・・・・・)のだとワンダータートルは察する。

 魔法生物である彼の中では人間の言語等は頭の中で勝手に置き換えられるから大差無いとはいえ、普段より彼女がどこか大人しいのが見て取れる。

 それでも――屈託のない笑顔を見せていた。

 

「いやあ、もしかしたら運命だったのかもしれないね。ハイドパークで出会った僕らが、ハイドパークで再会する事になるなんて」

「運命って……相変わらず、そんな大層なものじゃないよ、きっと」

「でも、もしブランが帰ってくるなら、きっと此処に、それも湖の見える場所まで来てるんじゃないか、って思ってたよ。予想通りだ」

「そ、そうかなあ」

 

 照れるブラン。

 ワンダータートルは思わず顔を顰めた。

 あの迷探偵が……乙女の顔をしている? と意外も意外な表情で。

 

「やっぱり僕、探偵に向いてるのかも」

 

 冗談めかして言ったロードに、若干面白くなさそうにブランは言った。

 

「……でも、日本では私、探偵やってたんだから」

「本当に? ブランが探偵?」

「そう! 私が、美少女名探偵っ、或瀬ブランちゃんデースっ、って」

「何それ。日本語少しおかしくないかい?」

「むぅ……最初は作ってたのに、すっかり素になっちゃって……」

「もしかして、日本の学校でそんなキャラで過ごしてるのか?」

「……色々あったの」

 

 思い返すようにブランは目を閉じた。

 

「それで、こんな私でも受け止めてくれた仲間が居た事、それと私のホームズに負けない探偵になりたいって思いがこうしたのかなあって」

「仲間、か」

「うん。そしたら……私も変わらないと、って思っちゃってね」

「……そうか。心配だったけど……向こうで上手くやれてるようで何よりだよ」

 

 ロードが笑いかけると、ブランは顔を赤く染めた。

 

「ねえ、ロード」

「何だい?」

「明日……ウィンター・ワンダーランドに行かないかな?」

 

 ウィンター・ワンダーランド――ハイドパークに11月から1月に掛けて限定で開かれる遊園地の事だ。

 特に、クリスマスが間近に迫ったこの時期は、イルミネーションで彩られており、人々でにぎわっている。

 

「今日は私ももう帰らないといけないケド……明日なら、一緒に居れると思うから。も、もし……ロードが駄目ならそれでもいいんだけど……」

 

 しばらく、ぽかんとしていた彼だったが、すぐに微笑むと言った。

 

「良いよ。喜んで」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ホール内は、デッキケースとカードの束を持った人々の喧騒で埋まっており、細長いデュエルテーブルを挟んで向かい合っていた。

 勝利と敗北、そして何より今回はチーム間の絆の強さが色んな意味で試される戦い。

 その中に、俺達も埋もれるようにして身を置いていた。

 

「《メラビート・ザ・ジョニー》でダイレクトアタックだッ!」

「《”罰怒”ブランド》でダイレクトアタック」

 

 ほぼ、同時に相手チームの2人に炸裂したダイレクトアタック。

 3人のうち2人が勝利すれば良いので、俺達のチームは準決勝を勝ち上がったことになる。

 さて、一方の紫月はというと――

 

「……もう1回《五連の精霊 オファニス》を召喚し、《ワルスラ・プリンスS》の効果で破壊しますが、場に相手も含めて5文明が揃っているので手札に戻します。効果で《天空の精霊 インパクトリガー》を出し、その効果で《エマージェンシー・タイフーン》を唱えてゼロドロー、からの《悠久を統べる者 フォーエバー・プリンセス》を捨てて山札回復します」

「うっ、ううう……お嬢ちゃん、もう投了で良いかなあ? おじさんそろそろ目から汗が出てきちゃったよ」

「え、此処からが面白いのに」

 

 真顔で首を傾げる紫月。

 絶対分かってやってるよね?

 すぐさま横のチームメイトの2人もフォローしにかかった。

 

「やめろォ!! コイツの精神ライフはもうゼロだ!」

「この日のために大金はたいてフルプロモのデッキを組んだ所為で、サイフももうゼロだ! ワイフから逃げられたのもその所為なんだ!」

「何で韻を踏んでるんですか」

「ついでに俺の山札ももうすぐゼロだ! くっそぉ、俺は嬢ちゃんの所為でまるでダメなおっさんの烙印を押されちまった!!」

「いや、自業自得ですよね、それは」

 

 ――何アレ。

 まるでダメなおっさんについては敢えてスルーしよう。それよりも、プレイヤーとしては盤面に注目だ。

 場に5色のカードが揃ってたら、G・ゼロを得る上に破壊される代わりに手札に戻る《五連の精霊 オファニス》を、場に出したクリーチャーを破壊して山札の上を捲って同じ文明のクリーチャーなら場に出し、そうでないなら手札に加える《ワルスラ・プリンスS》の効果で出し入れしてるのか。

 

「なあ、今まで敢えてスルーしてたんだけど、何あのループデッキ。めっちゃ時間かかってるんだけど」

「細かくは省略するが……オファニスワルスラループの中で手札のS・トリガーを登場時に使える《天空の精霊 インパクトリガー》を場に出し、《アルカディア・スパーク》を何度も撃って相手の山札をゼロにする凶悪コンボだという」

 

 火廣金が感心したように言う。

 確かに紫月が好きなワルスラのカードだけど……。

 

「じゃあ、やっぱり……あれが音に聞くワルスラオファニスループか。誰だよ紫月に《オファニス》なんて古いカード渡したやつは」

「通販で買おうとしていたらしいが、どうやら偶然持っていた或瀬から貰ったらしい」

「ウッソだろ……でも回すのクソ難しいんじゃ……」

「慣れれば山札を切らさないようにループすれば良いだけだ。カードの効果が頭に入っていれば、問題ない。ただ……今回の彼女のデッキは、場の《FORBIDDEN STAR》の封印を外し、更にデッキの緑を増やすために《悠久》が投入されている。山札をシャッフルする分、ループのパターンと手順が膨大になるが、一番理には適ってると聞いた」

「は? ってことは?」

「今回の彼女はどうやら、この日のために《悠久》の山札シャッフルによって増えたループパターンを完全に暗記しているらしい。今の彼女はループを回す事しか頭に無い人間ロボットだ」

「ストップ!! もう止めろ紫月!! 俺達勝ってるから!!」

「ループ……ループ……」

「紫月ゥーッ!!」

 

 ……こうして、波乱の準決勝は幕を閉じた。

 一先ず、俺達は作戦会議に入る。

 ともあれ、勝ち上がれているのは良い事だ。

 

「今度白銀先輩にも教えますよ」

「パス、パス……俺、ループとか覚えられねえから……」

「一先ずここまでの戦績、先輩の勝率は6戦中3勝、私が6戦中5勝、火廣金先輩も6戦中5勝ですか。もうずっとオファニスループでも良いかもしれません」

「ロージアダンテには負けてるくせに……」

「む」

 

 あ、今踵で踏んづけたな。

 でも部長は負けねえぞ!

 

「それにしても、最後のチームは向こうテーブルの方で対戦しているらしいですね。試合に精一杯で、メンバーとかよく把握してませんでしたが、どんな人なんでしょう」

「取り合えず、例え部長が負けても、俺の速攻、暗野のオファニスでどうにかなるはずだ」

「火ジョーカーズは刺されば強いんだよ! 相手が白緑メタリカなら絶対負けねえ!

 

 

 

 

「何だ貴様等、そんなところに居たのか」

 

 

 

 声が聞こえた。

 あの、高圧的かつどこか達観した台詞。

 連想される人物は唯一人。

 おい、ちょっと待て。これってまさか――

 

「黒鳥さんンンン!? 何であんた、またまたこんなところに!?」

「何だ。デュエマの大会にこの僕が居たらおかしいとでも言わんばかりの様子だな白銀」

『その驚きようはずいぶんと、愉快ですねェ……』

 

 コートを羽織り、人形のような黒髪を後ろで束ねた男。

 そして、それに巻き付くようにして笑みを浮かべるのは彼のパートナー、阿修羅ムカデだった。

 いや、おかしいだろ。あんた前に、表舞台には立ちたくないとか言ってなかったっけ?

 引退したんじゃなかったっけ? 一線を引いたとか言ってなかったっけ?

 

「そうしようと思ったのだがな……」

「やっほー、耀!」

 

 黒鳥さんを遮って、快活な声が飛んでくる。

 

「花梨!? お前何で黒鳥さんと一緒なんだ!?」

「ふふふん、修行の成果ってのはさー、やっぱ試してみたくなっちゃうよね」

「修行?」

「うん。デュエマのね」

 

 驚きだ。俺達に黙って、そんなことをしていたのか。

 

「で、耀達がこの大会に参加するって聞いてさ。あたし、ふとお兄の見舞いに来てた時に黒鳥さんに頼んでみたんだ! そしたら、おっけー貰っちゃった!」

「これだから師匠はロリコンです。年下の女の子の頼みは断れないんですね」

「断じて違う。そもそもこの僕とて、己の実力を研鑽せざるを得ない状況に追い込まれているからな。おまけに、君達の力。鈍っていないか見極めたく、快く引き受けた訳だよ。それにな――」

「テメェらと勝負してえのは、刀堂だけじゃねえんだぜ!」

 

 荒々しい声が響く。

 

「桑原先輩!? 受験は!?」

「真っ先に嫌なワード出すんじゃねえ!!」

 

 オレンジのバンダナをまいた小柄な先輩に、俺は詰め寄った。

 この人、受験に追われてたんじゃなかったのか!?

 

「ああ? んなもんとっくに終わったっつーのダボ。AOで志望校に受かったんだ」

「そんなの聞いてませんよ!?」

 

 でも、考えてみればアルカナ研究会の事件が終わってから、先輩とめっきり顔を合わせてなかった気がする。

 だから、知らなかったのも当然なのか?

 

「ここ2か月、受験のための課題とその他諸々の制作で缶詰になってたから、テメェらには何も言えなかったけどな」

『ハハハハハハハ! 我がマスターの輝きっぷりは最高だったよ! まさに、あれが修羅、羅刹というものなんだねぇ!』

 

 笑い飛ばす煩いハチ――もといゲイル・ヴェスパー。

 当然のようにこいつの姿もあった。

 

「やれやれ……ということは、この場に全員集合というわけですか。エリアフォースの使い手が」

「ああ。しかし貴様等はよくやってくれたよ。まず火廣金。貴様は速攻以前に”眼光のヤバイ奴””幾つもの戦場を駆けてきてそう”とか言われてるし」

「有難い誉め言葉だ」

「褒めてねーだろ……」

「ま、火廣金の対戦相手はこのあたし。成長した姿、見せてあげるんだから!」

「……勿論だ」

「そして、最初はオタサーならぬデュエサーの姫とか言われていた紫月だったが、むしろ”デュエサーの主力””デュエサーの本体”、終いには”恐怖のルーパー”、”デュエサーの悪夢”などと言われる始末だ」

「何でそんななことになってるんですか」

「お前、自分のデッキ見直してから言えな?」

 

 あれ?

 それじゃあ俺は何て言われてるんだ?

 そう思ってたら、聞く前に黒鳥さんが口を開いた。

 

「で、真ん中の部長っぽいやつが一番普通、一番倒しやすそうとか言われてる始末だ」

「ああ。火ジョーカーズも確かに地雷っぽさを生かした強さがあるが……ぶっちゃけ、左右の2人の強さがどこか異次元染みてる所為でテメェは全く話題に上がってねえ」

「ちょっと!? 流石に傷つくんだけど!?」

「さっき自分で戦績言ってたじゃないですか」

「まあともあれ、だ。平凡さゆえに警戒されていないのが貴様の強みだったわけだ」

 

 なんか納得いかないけど、黒鳥さんはいい感じの台詞で締めくくる。

 いや、やっぱ釈然としない。

 完全に甘く見られてるんじゃないか俺。

 

「だが、僕としては貴様の強さは買っているんだがね」

「……」

 

 コートを翻すと、彼は俺達に手を振って去っていく。

 

「というわけで、貴様とは決勝で決着を付ける。配置はともに同じだからな」

「――望むところです!」

 

 勿論、甘く見られたままじゃ俺も引き下がれない。

 もう1度、この場で黒鳥さんに、そしてチーム全員で勝つ。

 そして、ブランに勝利の報告をしてやろうじゃねえか!

 

「……ブラン」

 

 あいつ、今どこに居るのかな――

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