プロローグ
今でも思う時がある。
本当にあの時の選択は間違っていなかったのかと。
私は仲間を理由にして自分の夢や、生きがいから逃げてしまったのではないのかと。
もっと仲間を信頼しても良かったのではないかと。
私が上級魔法を覚えたあの日、爆裂魔法を教えてくれたお姉さんに爆裂魔法を極めて立派になった自分を見て貰うという目的からは遠ざかり、爆裂道を極めるという生きがいすら失った。
それでも……
「──『ライト・オブ・セイバー』ッッッッ!」
私の放った魔法が真っ直ぐ飛んでいき目の前のグリフォンを真っ二つに切り裂いた。
「……何ていうか何度見てもやっぱすげぇな」
カズマが私の上級魔法に感嘆の声を漏らす中。
「『インフェルノ』ッッ!」
今度は2匹目のグリフォンに私の上級魔法が飛んでいく。
それがグリフォンに直撃し、その大きく屈強な身体を灼熱の業火で焼き尽くしていく。
「あの、カズマ?私の上級魔法に感動するのは分かりますが出来ればちゃんと指示を出して欲しいのですが……」
「いや……それこそ何度目になるか分からんが、もうお前1人でいいんじゃね?」
私が何故上級魔法を覚えたのか知っているはずなのに彼はそんな意地悪な事を言ってくる。
「そんな事を言わずにお願いします!私はカズマの事を世界で一番信用しているんですから!」
「お前はまたそういう事を!……分かったよ出せばいいんだろ指示を!」
私の甘い言葉に彼はそんな事を言いながら指示を出していく。
「アクアはダクネスに支援魔法を!ダクネスは最後のグリフォンの足止めを頼む!めぐみんは足止めされてるグリフォンを1発で倒してくれ!」
「「「了解!」」」
彼から指示が入り私達のパーティーは一気に動き出す。
アクアの支援魔法を受けたダクネスがグリフォンへと特攻し、スキルの『デコイ』を使ってグリフォンを引きつける。
「『ライト・オブ・セイバー』ッッッッ!」
そして私から放たれた魔法がグリフォンを真っ二つに切り裂いて……!
「──ふぅ…やっと終わった……」
「何を言っているのですかあなたは!最後に少し指示を出しただけでしょう!何を疲れる事があるんですか!」
今回のクエストはグリフォン3体の討伐、彼は私が2体のグリフォンを倒すまでぼーっと眺めていただけだった癖にそんな事を言っている。
「だってそうだろ……お前はともかく俺はグリフォンなんかに出来ることなんて無いんだし……」
「そんな事はありませんよ、今回だって最後はちゃんと作戦を立ててくれたではありませんか」
「はいはい分かったよ……とりあえずアクセルに帰るか!」
彼は私から目を逸らし帰る準備を始める。
「カズマさん!今日は私のお陰でグリフォンを倒せたんだし分け前は9︰1で良いわよね!」
「アホか!どう考えても今日のMVPはめぐみんだろ!毎回!毎回!いい加減にしろよ!」
「だって!もうお小遣いも残って無いし酒場に20万近いツケまであるのよ!お願いよカズマさん!」
「お前ふざんなよ!一週間前に小遣いやったばっかじゃねえか!何でもう酒場に借金なんてしてやがんだ!」
そんなカズマとアクアの二人の会話を聞きながら私はダクネスと2人で笑い合う。
「ダクネス、やっぱり私はこんな馬鹿な暮らしがずっと続けば良いと、そう思ってしまいます」
「ああ、私もそう思う」
ダクネスが本当に幸せそうな優しい顔でそう言う。
そう……私の選択は間違ってなんかいない、あの時から私がカズマを……このパーティーを守ると決めたのだ。
もう足でまといになんかならない。
私が今のこの幸せな時間を守るのだと。
そんな事を思いながらカズマの下へ駆け出した!