色を失った世界で見つけたもの・・・   作:ヨーソローはやて

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日常

 夢を見ていた・・・。

 激しく雨が降る中、まるでドラマや映画でも見ているかのようにスローモーションで流れる光景に、僕はいつも何も出来ず、ただ姉さんが目の前でゆっくりと倒れて行くのを見ていることしかできない。そして、僕の腕の中で熱を失って行く姉さんの体を抱きしめることしかできす、言葉にならない声をあげ、そこで決まって夢が終わる。

 

「わぁぁぁぁぁ!!!・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

 いつもこうだ。毎日この夢を見ては、やり場のない感情に胸が締め付けられ目が覚める。僕は頬を伝う涙を拭い、未だに暴れる鼓動と息を整えるため深呼吸をしてた。冬の冷たい空気が肺いっぱいに広がり、火照った体をゆっくりと冷やしてくれた。程なくして落ち着いた僕はスマホで時間を確認するとまだ明け方の4時だった。通りでまだ外は暗いはずだ。

 

コンコン

 

「・・・彩希君、大丈夫?」

 

 僕がまた妙な時間に目が覚めたなぁ、窓の外を見ていると、ノック音がしてすぐにドアが開くと一人の女性が心配そうに部屋を覗いて来た。

 

「・・・曜か?悪い、また起こしちまったな・・・」

 

「ううん、それはいいんだけど・・・」

 

 彼女の名前は渡辺曜。僕と同居している内の一人で、もともとは活発で凄く明るく人見知りしない人だったらしいが、姉さんの一件以来あまり笑顔も見せなくなり、人付き合いも少し苦手になったらしい。姉さんの事で責任を感じてか僕の事を凄く気にかけてくれるが、いつも僕にどこか遠慮をしていた。

 

「何か温かいものでも入れようか?」

 

「本当に大丈夫だから。曜こそ昨日遅くまで課題やってたんだろ?僕の事はいいから少し休みなよ。」

 

「だけど・・・」

 

「本当に大丈夫だから。」

 

「わかった。けど、何かあったら遠慮しないで、いつでも起こしてね?」

 

「わかった、わかった。」

 

 俺は曜を追い払うように掌をヒラヒラとさせ曜を自分の部屋に帰した。心配してくれるのは嬉しいが、つい冷たくあしらってしまった。

 僕が曜達と同居を始めて約2年になる。一緒に暮らすようになった当時は曜の温もりに心が救われたとは言え、トラウマが無くなるわけも無く、精神的に不安定な俺は泣いたり暴れたり、時には曜に心ない言葉をぶつけたりしていた。その為か、曜はいつも凄く心配してくれるが必要以上に僕に踏み込んでこようとせず、僕もその後ろめたさから次第に距離をとるようになっていった。

 そんな僕も高校生になり、当時よりも精神状態は落ち着いてきたけれど、僕と曜の間には今も尚埋める事の出来ない溝があった。渡辺家の人たち、特に曜は僕がこんな状態だと言うのに、本気で僕の事を心配してくれていて凄くありがたいと思っている。今こうして僕が生きているのは曜達のおかげでもあると言っても過言ではないと思う。そんな曜の優しさを貰っていても尚、心のどこかで、姉さんはこの人の代わりに殺された、という思いが今でも拭えず、どう接していいか分からないまま今に至っていた。

 

 結局この後は一睡もできず、6時を過ぎてしまったので制服に着替えてリビングへと向かい朝食の準備を始める事にした。精神的に落ち着いてからは、他の同居人に『働かざる者食うべからず!』と言われ、朝食は僕が担当することになった。僕が朝食担当になった時は曜が『私がするからやらなくていいよ』と言ってくれたが、ここに住まわせてもらっている以上、何もしないというのも居心地が悪かったし、料理自体は姉さんが教えてくれていたからそれなりに出来るので、心配してくれる曜には悪いが引き受ける事にした。

 ちなみに今日のメニューはフレンチトーストにサラダとコーヒーだ。

 

「おはよう、彩希くん。」

 

「おはよう梨子。今日はずいぶんと早いんだな?」

 

「えぇ。コンクールが近いから先生が朝練するぞって言いだしてねぇ。」

 

 彼女の名前は桜内 梨子。音大に通う大学3年生だ。大人の女性って感じで清楚な感じはあるんだけど怒らせるととても怖い。以前、部屋の前を通った時に変な笑い声と共に壁がどうの言っていたので、誤魔化そうとするところを追求したら有無を言わさぬ迫力でそれ以上追及するなと怒られた。あれはマジで怖かった・・・。普段は常識人で勉強もそこそこできるのでたまに教わったりもしているから梨子には頭が上がらない。

 

「大変だな。はい、コーヒー。」

 

「ありがとう♪」

 

 僕はテーブルに乗せた鏡の前で髪をいじっている梨子の前にコーヒーを置き、テーブルに朝食を並べていった。

 

「ん~・・・いい匂い・・・・♪」

 

「匂いにつられてきたか・・・」

 

「あ、彩希くん、梨子ちゃんおはよ♪」

 

「おはよう千歌ちゃん♪」

 

「おはよう千歌。今日は珍しく早いな?そんなに腹でも減ってたのか?」

 

 そして、パジャマのまま俺の前に現れたこの無防備なアホ毛の少女は、高海 千歌。曜や梨子と同じ年なんだが、本当に同じ年?って言いたくなるくらい落ち着きが無く言動が子供っぽい上に結構バカだ。僕に女性陣の下着を洗わせようとしたり、僕が風呂に入っているところに突撃して来たりしては、よく梨子に怒られている。普段はそんな感じなのに結構気づかいもできたり、よく周りも見ていたりするのだから大人なんだか子供なんだかよくわからない。俺に『働かざる者食うべからず』と言いだした張本人で、俺が色々な事情から3人と一線を引いていたときに、ここに居やすいように計らってくれたりもして、そのおかげでこうして千歌や梨子と気兼ねない会話ができるような関係になったのは感謝しないといけないなぁとは思っている・・・思ってはいるんだが・・・

 

「む!!そんなんじゃないもん!目覚ましの時間待ち変えただけだもん!!ああぁ。ここに来た頃の彩希くんは誰かの手を握っていないと寝れないくらい可愛かったのになぁ・・・。」

 

「なっ!?千歌お前、今その話を出すか!?そんなこと言うなら、あの頃のお前だってもっと年上らしいところあったのに、最近じゃ良く寝坊はする、買い物頼んだら余計なものも買ってくるし、それに「ストーーーーーップ!!」」

 

 僕と千歌が言いあいをしていると梨子が仲裁に入ってきた。

 

「朝から子供みたいな喧嘩しないの!!」

 

「でもでも・・・」

 

「でも、じゃありません!千歌ちゃんももういい歳なんだからもう少し大人になりなさい!」

 

「言われてやんの。」

 

「彩希くんも人の事言えません。彩希くんはもう少し年上を敬いなさい!」

 

「へいへい。」

 

 いつもこんな感じで、千歌とはよく喧嘩をしては梨子に怒られている。決して千歌と仲が悪いわけではないが、お互い遠慮が無いからか、よくこんな風に言いあいになる事が多い。

 

「ほら、みかんジュース。」

 

「わーい♪彩希くんありがとう♪大好き♪」

 

 とは言え、こうやってみかん系の物を与えておけばすぐに機嫌は直るし、本当に言ってはいけない事はお互い絶対に言わないから、なんだかんだで上手くいっている。

 そして曜、千歌、梨子の3人と俺は2年前から同居という形で一緒に暮らしている。曜と千歌は幼馴染らしいが、高校生の頃から梨子を加えた交友関係らしく、3人は、正確には9人でスクールアイドル『Aqours』として活動し、ラブライブで優勝までしたらしい。俺はラブライブと言う存在は知っていたが、あまりそう言うのは詳しくなかったし、興味も無かったのであまり凄さは知らないが、相当凄い事だと言う事は千歌の話からなんとなく分かった。

 

「さっきは悪かったな。」

 

「ううん。私こそ言い過ぎた。ごめんね?」

 

「おう。」

 

「まったく。仲がいいんだか悪いんだかわからないわね。」

 

「いやはや、いつもご迷惑をかけて申し訳ない・・・」

 

「気にしてないわよ♪」

 

 そして、千歌が席に着き朝食をニコニコしながら朝食を頬張ると、辺りをキョロキョロ見渡し始めた。

 

「千歌、どうかしたのか?」

 

「ん?いひゃ、ひょうひゃんほひゅがひゃがみへにゃいにゃと。」

 

「なに言ってんだお前?」

 

「千歌ちゃん行儀悪いわよ。ちゃんと飲み込んでから話しなさい。」

 

 千歌は本当に二十歳を超えた大人なのだろうか?そして梨子は本当に二十歳の女性なのだろうか?まるでお母さんみたいだな・・・。

 

「彩希くん?今失礼なこと考えなかった?」

 

「い・いや別に・・・。」

 

「もぐもぐ・・・ん。いやぁ、曜ちゃんの姿が見えないなぁって思って。」

 

 こいつがそれを言うか?普段姿が見えていないのはお前の方なんだが?

 

「昨日は遅くまで課題やってたみたいだし、まだ寝てるんだろ?それでなくたって普段から家の事色々やってくれてるんだ、疲れもたまってるんだろ。今日は大学無いって言ってたしゆっくりさせてやれよ?」

 

 それに毎度のことながら、俺が夜中に曜を起こしてしてしまったから余計に起きれないんだろうし・・・。

 

「そんなの分かってるよ・・・。それにしても彩希くんって素直じゃないよね~?」

 

「は?」

 

「そうね♪曜ちゃんの前だとそっけない態度なのに、私や千歌ちゃんしかいないと凄く曜ちゃんの事考えてて優しいわよね♪」

 

「ちょ?梨子までなに言ってんだよ!?」

 

「もしかして曜ちゃんこと好きだったりして~?」

 

「おい、バカ千歌。その辺にしとけよ?俺が曜を?そんな訳無いだろ?それだけは、絶対にないよ・・・」

 

 そう、そんな事があるわけがない。さっきも言ったが凄く感謝はしている。でもそれだけだ。それ以外の感情は無い。もし他にあるとすれば、それは憎しみだけだ。

 

「ごめん・・・。でも本当に何も思わないの?」

 

「今日はやけに絡むな?あるわけないだろ?」

 

「そっか・・・。えへへ♪そっかそっか♪」

 

「何笑ってるんだよ?気持ち悪い・・・。」

 

「いいの♪」

 

「ふぅ、曜ちゃんも千歌ちゃんも大変ね・・・」

 

 なんか知らないけど千歌はニヤニヤしてるし、梨子は梨子で呆れているし、一体なんだんだよ・・・。

 

「やべ、もうこんな時間だ!!」

 

「え?いっけない、私ももう出ないと!!」

 

 俺がふと壁に掛けてある時計を見るともう7時半近くになっていた。俺は慌てて朝食を胃袋に詰め込み、後片付けを千歌に頼み梨子と一緒に家を出た。




いかかだったでしょうか?

今回は曜ちゃん達3人と彩希の関係がなんとなくわかる話になっていればと思います。

さて、ここで主人公である彩希の設定を簡単に書いておきます。

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伊波 彩希(16歳)高1

姉の死のショックにより世界がモノクロにしか見えなくなってしまう。
少し性格は捻くれており、口が悪く、物怖じしないが、あまり人と関わろうとしない。
千歌と梨子には心を開いており、数少ない友人には過去の事は話さないが、それなりに心は許している。ただ曜にだけは複雑な事情ゆえにどう接していいか分からず距離をとっている。
陰がありそれなりに顔立ちも整っている為、密かにモテているが、本人は全く自覚していない。
勉強、運動ともに並みの上ほど。趣味は無く、自立した時の為にコンビニでバイトをしてお金を貯めている。
小学生の時に両親を亡くしており、それ以来姉から少しづつ家事を教えられていた為、一通りの家事は人並みに出来る。

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とこんな感じです。

では、宜しければまた次回も読んでやってください♪
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