~曜~
目を覚ました瞬間、やってしまったと思った。スマホの画面を見ると時刻は9時になろうとしていた。
わたしは慌ててベットから飛び降りると、とりあえず簡単に身支度を整えてからリビングに行くと、梨子ちゃんの愛犬の『プレリュード』と戯れながら美味しそうにみかんを食べている千歌ちゃんがいた。
「おはよう千歌ちゃん!!彩希君は・・・。」
「おはよう、曜ちゃん♪彩希君ならもう学校に行ったよ??」
「だよね~・・・」
迂闊だった。昨日は遅くまで課題をやっていて寝るのが遅かったとはいえ目覚ましをかけ忘れちゃうなんて・・・。しかもこんな大事な日に限って・・・。
彩希君の面倒はわたしが見なくちゃいけないのに、朝食の手伝いはおろか、見送りすらできなかったなんて・・・。これじゃ、わたし保護者失格だよ・・・。
「まぁまぁ曜ちゃん、そんなに落ち込まないで♪彩希君の事はちゃんとわたしがお見送りしておいたから大丈夫だよ♪とりあえずみかん食べる??」
「ありがとう。」
プレリュードの頭を撫でながら、千歌ちゃんから受け取ったみかんを一房食べたら少し元気が出た気がした。やっぱり内浦のみかんは凄く美味しい♪
「それにしても今日は千歌ちゃんずいぶん早いね?」
「あはは・・・。目覚ましの時間を間違えて設定しちゃってさぁ、今日の講義は午後からだし本当はもっと寝てたかったんだけど寝れなくなっちゃってね。・・・はい。彩希君の特製の朝ごはんだよ♪」
千歌ちゃんはわたしにコーヒーと彩希君が作ってくれた朝食を温め直してくれた。ちなみに今日の朝食はフレンチトーストにサラダだった。
「おいしい。」
「だよねぇ♪あの、ぶっきらぼうで怒りん坊の意地悪な彩希君が作ったとは思えないよねぇ?」
「またそんなこと言って~。彩希君が聞いたら怒られるよ?」
「だって事実なんだもん!!今朝だってわたしが凄く食いしん坊みたいな事言って意地悪してきたんだよ!!」
「あはは。・・・でもちゃんと謝ってくれたんでしょ?」
「それは・・・そうなんだけどさ。」
千歌ちゃんと彩希君はよく口喧嘩をしているけど、お互いの事をちゃんと見ていて凄く仲がいいと思う。未希ちゃんには悪いけど本当の姉弟みたい。まぁ、喧嘩の内容は小学生みたいな内容だけど・・・。
それでも、わたしには彩希君とこんな風に喧嘩したり、一緒に笑ったりする資格はないし、出来ないから羨ましいと思う。もし、彩希君とこんな形で出会わなかったら一緒に笑えたのかな?
「それで、曜ちゃんは今日はどうするの??」
「ん~、今日は行きたいところがあるから、そこに行ってから消耗品とかの買い出しに行こうかなぁって感じかな?」
「そっか♪何かあったら連絡してね?講義が終わったら手伝うから♪」
「ありがとう、千歌ちゃん♪」
朝食を食べ終えたわたしは、後片付けをしてからある場所に出かけた。目的地に向かう途中で花を買い、バスに揺られる事30分ほどでバスを降り、少し歩くとお寺が見えてきた。ここがわたしの目的地・・・。ここに彩希君のお姉さんの未希ちゃんが眠っている。そして今日はあの忌まわしい事件から丁度2年になる。つまり今日は未希ちゃんの命日だ。
本当だったら彩希君やお父さん達と一緒に来るべきなのだけれど、両親は仕事が忙しくてどうしても来る事が出来ず、彩希君は未希ちゃんが亡くなって以来何度かここに来たのだが、その度に倒れてしまい、もう少し精神的に落ち着くまでは辛いだろうが近づかない方がいい、とお医者さんに言われてしまい、それ以来彩希君はここに来ていない。
そんな事情により、今日はわたし一人でここに来たのだが、わたしは入口を前にして足がすくんでいた。ここにはあの日以来、毎月足を運んでいるけど、未希ちゃんは私を怨んでいるんじゃないか?彩希君を1人残して逝っていまった事を、わたしと出会った事を後悔しているんじゃないか?そんな罪悪感と恐怖で、いつも入って行くことを躊躇ってしまう。だって、墓前で手を合わせて目を閉じている時に思い浮かぶ未希ちゃんの顔は、怒ったいるような、悲しんでいるようで凄くさびしそうな顔をしているから・・・。
だけど、そうも言っていられない事情がある。だってこれは、今私が出来る数少ない贖罪なのだから・・・。本当に辛いのは未希ちゃんと、だた1人この世に残されてしまった彩希君なんだ。許してもらおうとも、許されるとも思わないけど、それでも、わたしが出来る事は全部やりたい。それで、2人が少しでも笑ってくれるならわたしの全てを捧げてもいい。そんな風に2人の事を想いながら、わたしは震える足に力を込めて未希ちゃんのもとへ歩き出した。
「一か月ぶり。元気にしてた?・・・って、こんなこと聞くのもおかしいよね。あはは・・・。あ、今綺麗にするから少し待っててね?」
わたしは未希ちゃんのお墓の前で未希ちゃんに挨拶をして、墓石やお墓の周りを綺麗にした。その後買ってきたお花を飾ってお線香に火をつけて未希ちゃんの墓前に手を合わせた。やはり瞼の裏に浮かぶ未希ちゃんの顔はいつもと変わることなく、笑ってはくれなかった。
手を合わせてどれくらい経っただろう?わたしは合わせていた手を下ろし、最近の彩希君の近況を未希ちゃんに話した。例えば、今朝あったと言う彩希君と千歌ちゃんの喧嘩や、彩希君が最近何故か梨子ちゃんに頭が上がらなくなっている事とか・・・。そんな他愛も無い、ありきたりな日常をわたしが知る限り全部話した。
「最近の彩希君はこんな感じかな?・・・それじゃぁ、また来月来るね。またね・・・。」
そして全て話し終えたわたしは、また来月来る事を告げて未希ちゃんのお墓を後にした。また未希ちゃんの笑顔を見る事が出来なかった事に落ち込んだけど、彩希君を守るという約束があるからいつまでも落ち込んではいられない。わたしは自分の頬を叩いて気合を入れ、今日のもう一つの目的地のショッピングモールに向かった。洗剤などの消耗品が無くなっていたし、私物で足らなくなったものなどが結構あるからだ。
と言うわけでショッピングモールに向かう為またバスに乗り、駅前まで戻ってきたわたしはスマホのメモ機能にメモしておいた買い物リストを確認してショッピングモールへ向かおうとした時、久し振りの人に声をかけられた。
「曜??」
「え?」
「やっぱり曜だ!!」
「え!?よ・善子ちゃん!?」
「だからヨハ・・・じゃなかった・・・。も・もう言わないわよ?大学生になったんだし??」
「そう??」
駅前でわたしに声をかけてきたのは、高校時代に一緒のスクールアイドルAqoursとして活動した時の1年後輩の『津島 善子』ちゃんだった。高校の事は厨ニ病が抜けなくて痛い発言をよくしていたけど、大学生になってその辺は少し落ち着いたのかな?なんにしても善子ちゃんとは2年前のあの事件があった時にAqoursメンバーが心配して駆けつけて来てくれた以来だから、本当に久し振りだなぁ。
「そんな事よりも、あんた本当に大丈夫なの??」
「大丈夫って??」
「だって、ずいぶんやつれてるっていうか、雰囲気が変わってるって言うか・・・昔の面影がほとんどないじゃない!!」
「そうかな??」
「そうよ!!いくら久し振りに、しかも偶然会ったとはいえ、これじゃまるで別人じゃない!!誰だか分らなかったわよ!!」
そうかなぁ?わたしはあまり変わったっていう自覚は無いけど・・・。
「そんなことないって。・・・でも、もしそうなら、何でわたしだって分かったの?」
「遠目でなんとなく髪の色とか、目の色が曜に似てるなぁ、って思ってたら、すれ違った時に鞄に『うちっちー』の小物が付いてるじゃない。それでもしかしたらって思ったのよ。」
まさかわたしと認識されたのがうちっちーのおかげとは・・・。あ、因みに『うちっちー』とは、わたしの地元の水族館で『伊豆・三津シーパラダイス』のゆるキャラだ。わたしはうちっちーが大好きで、ぬいぐるみなどグッズをよく集めている。
「そうだったんだ。あ、でもなんで善子ちゃんは東京に、しかもここに居たの??」
「それは・・・」
「それは??」
「たまたま東京に方に・・・主にぶくろに用があって・・・」
「ふむふむ。」
「久し振りにこっちの方に来たし、曜の事が気になったから様子でも見に行こうかなぁって・・・。つ、ついでにリリーと千歌にも会いたいかなぁって///」
「そっか♪ありがとうね、善子ちゃん♪」
「ふ・ふんっ!」
厨ニ病は大分抜けたみたいだけど、素直じゃないのは相変わらずだなぁ♪
「そうだ。善子ちゃん、明日何か用事とかる?」
「え?特には無いけど・・・。」
「良かったら今日、家に泊って行かない??」
「いいの?」
「うん♪千歌ちゃん達も喜ぶと思うし♪」
「ならお言葉に甘えようかしら?」
「うん♪あ、そう言えば買い物の途中だったんだ。悪いけど善子ちゃん付き合ってもらっていい?」
「仕方ないわねぇ。さっさと買い物を終わらせてリリー達を驚かせましょう♪」
まずは
湯婆婆 様高評価ありがとうございます。
また、お気に入り登録して下さった方々にも感謝を♪
と言う事で、プレリュードとヨハ・・善子ちゃんの登場です。
これからもまったりと書いていくので気長によろしくお願いします♪