退屈な授業も終わりやっと学校と言う物から解放される放課後。僕は友人に捕まっていた。
「なぁ、彩希。今日はバイトか?」
「いや、今日は休みだけど?」
「マジで?ならさ、これから駅前に行かないか??」
「なんだ樹、またナンパか??」
「また、とは人聞きが悪いじゃないか。俺は女性を褒めているだけだぞ?」
「<美人に限る>だろ?くだらない・・・。なんにせよ、断る。」
「因みに今回はコスプレ喫茶だ!!そこに可愛い子がいてさぁ♪」
「どこだろうが、なんだろうが、絶対にい・や・だっ!!」
僕に声をかけてきたのは『北条 樹(ほうじょう いつき)』という。僕の数少ない友人の一人で、こいつとは高校に入学した時に知り合った。できれば知り合いたくはなかったけど・・・。まぁ、そのあたりの細かい事は追々話すとして・・・。
こいつは常日頃『全ての美しい女性は誉め讃えられて然るべき』『美女を口説くのは男としての最低限の義務だ』と豪語しており、事あるごとに街に出ては女性を口説いている。こいつ自信中身は女たらしだが、容姿端麗、頭脳明晰と、お前どこのドラマの中の住人なんだ?と言いたくなるようなやつで、世の中と言うのは不公平に出来ていると、周りの男どもから良く言われている。唯一、樹のいいところを上げるとするならば、頭が悪かろうが残念な容姿だろうが、男女問わず見下す事がない、と言うくらいだろうか?まぁそのいいところも、本人の自信満々な態度で帳消し、と言うかマイナスになっているから、基本的に男子には煙たがられているし、本性を知る女子は避けてるんだけど・・・。
そんな樹は事あるごとに俺をナンパに付き合わせようとする。樹曰く『お前がいると成功率が飛躍的上がる』とのこと。一度樹に騙されてナンパに付き合わされた時(その時俺は横でふてくされていただけ)、人生初の成功率90%台だったそうだ。たまたまだと思うんだけど、困ったことにそれ以降、あの手この手で俺を連れ出そうとしてくる。
「まぁ、そう言うなって♪今日は奢るからさ♪」
「嫌だっ!」
「そう言わずにさぁ~」
「しつこいなぁ!!」
普段も絶対に嫌だが、今日は絶対に付き合うものか。
なんせ今日は姉さん命日だ。墓参りには行けなくても、実家を掃除したり仏壇にお供えしたりと忙しいんだ。・・・と言えたらどれほど楽なんだろう・・・。用事があるっていっても、根掘り葉掘り聞き出そうとしてくるしめんどくさい・・・。
俺はあの事件の事に触れられるのが嫌で、曜達のアパートに引っ越した時に、いい機会だからと中学の同級生が絶対に来ない様な距離にある高校に進学したのだ。だから樹を含めこの学校の生徒は誰も俺の過去を知らない。俺からは絶対に言いたくないし、言わない。
「い~つ~き~!!」
「げっ!!椿!!」
俺がしつこい樹をどうやって黙らせようかと悩んでいると、教室の入り口からズカズカと女子生徒が歩いてきた。
「樹!!あんたはまた下らないことに伊波君を巻き込もうとしてるんでしょ?」
「いでででででっ!!!」
「この馬鹿が本当にごめんね、伊波君。」
こちらに歩いて来た女子生徒は樹の耳を引っ張ると、俺の方に向き直り謝ってきた。
「気にすんな椿。お前が来なかったら、そろそろ星になってもらってたところだっただけだ。」
「あら、なら来なかった方が良かったのかしら?」
「かもしれないな。」
「それは残念。」
俺に謝り、軽口に付き合ってくれるこの女子生徒は『北条 椿(ほうじょう つばき)』だ。名字から分かる通り樹の親族で、樹とは双子で椿の方が姉になる。因みにクラスは隣だ。
樹同様頭が良く、とても整った顔をしているが、性格は正反対で、The・委員長!と言った真面目な性格だが、軽口に付き合ってくれるくらいの柔軟さも持っているので、同級生のみならず先生達の信頼も厚い。
樹の暴走を唯一止められる存在で、僕も何度となく椿の世話になっている内に親しくなり今に至る。
「なぁ、お前ら本人を前に酷くないか?」
「あんたが毎回馬鹿なことしてるからでしょ!!」
「大体なんで椿がここに居るんだよ!!」
「先生があんたの事探してたのよ。またどうせ知らない女の人に迷惑でも掛けたんでしょ!!」
「迷惑だなんて失敬な!俺はただ・・・て、いだだだ!!話の途中で耳を引っ張るな!」
「ほら、くだらないこと言ってないで行くわよ!!それじゃ伊波君またね。」
「おう。」
樹は椿に首根っこを掴まれ引きずられるように教室を後にした。ふむ、毎度のことながら嵐のような姉弟だ。
俺は帰り支度をすませ、先ほどまで嵐が来ていた教室を後にし、僕は予定通り実家に向かい掃除やらを終わらせた事には19時を回っていた。
少し間が空いてしまった為実家には結構な埃がたまってしまい、掃除をするのに結構苦労した。僕はヘトヘトになりながらマンションに帰ってくるとそこには見なれない靴があった。
「誰か客でも来てるのか?」
僕がそう思いリビングへ向かうと電気はついてるものの、そこには誰もいなかった。曜達の部屋も確認したけど誰もいなくて不思議に思いながらも、埃まみれで気持ち悪かった僕はとりあえずシャワーを浴びようと脱衣所へ向かったのだがそこで事件は起きた。
ガチャ
「え!?」
「は!?」
僕が脱衣所のドアを開けるとそこには見知らぬ女が風呂から出て来たのであろうか、産まれたままの姿で立っていたのだ。
「きゃーーーーーーーーーーっ!!!」
「ご・ごめん!!」
僕は慌てて部屋から出ると、部屋の番号を確認した。疲れて間違えたのかとも思ったけど、間違えてはいなかった。
「うん、間違ってないよな。そもそも、ちゃんと鍵を使って開けたんだから間違ってるわけないか・・・。」
となると、脱衣所に居たのは誰なんだ?・・・新手の泥棒か何かか?
僕はすぐさま部屋に戻りまた脱衣所を開けると、先ほど僕がいきなり開けた事に驚いて腰でもぬかしたのか、女がへたり込んでいた。
「てか、お前は誰なんだよ!!」
「なんでまた開けるのよ~~~!!!!!」
しかし、また僕が開けた事に更に驚いた女は近くにあった洗剤のボトルを僕めがけて投げつけてきた。そのボトルは僕の顔面に見事にヒットし、僕は鼻を押さえながら慌てて脱衣所のドアを閉めた。
「わ、悪い。でも本当にあんた誰なんだよ?」
「そっちこそ誰よ!!ヨハネの裸を覗くなんてリトルデーモンが黙ってないわよ!!」
「僕はここの住人だ!!後、なんだリトルデーモンって!!」
「ただいまぁ♪って、そんなところで何してるの彩希君??」
僕が脱衣所に居る女とドア越しにもめていると千歌がのんきに鼻歌を歌いながら帰ってきた。
「おぉ、千歌か。実は脱衣所に変な奴がいてさぁ。」
「変な奴??どれどれ?」
「あ、バカ千歌危ないぞ!!」
「あれ?善子ちゃんどうしたのそんなところに裸でへたり込んで!!」
「は?」
「千歌~~!!」
僕が制止するのを無視して中を覗いた千歌は思いもよらない言葉を口にした。
「し・知り合いなのか??」
「うん。高校の頃の後輩だよ♪」
「はぁ、そうなんですか・・・」
「「ただいまぁ。」」
「って、これはどういう状況!?」
千歌の発言に僕は茫然として立ち尽くし、ぼけーっとしていると曜と梨子も帰ってきた。そして2人はこのよくわからない状況に驚きを隠せないでいた。
そりゃそうだ。なんせ千歌曰く千歌の後輩が裸で泣きながら千歌に抱きつき、俺はそれを茫然と見ているんだから・・・。
「って、善子ちゃんなんて恰好してるの!!早く部屋に入って服を着なさい!!それと、彩希君も裸の女性をそんなに凝視しない!!」
「・・・は・はいっ!!」
茫然としていた僕は梨子の一喝で我に帰り慌てて目を逸らした。
それから、善子と呼ばれていた女に服を着せたり、落ち着くまで宥めたりとドタバタして、落ち着いて話ができるようになるまで1時間ほどかかった。
その間、僕はなぜか梨子に正座で待機を命じられた。曜が庇ってくれたんだけど、梨子の『理由はどうあれ、女の子の裸を見た事には変わりないのだから反省しなさい』の一言に僕と曜は何も言えず、曜がそれならばと僕の横で一緒に正座で待機してくれていた。
「それで、彩希君は何で覗きなんかしたの?」
「まぁまぁ梨子ちゃん。彩希君にも事情があるんだろうし、彩希君の話を聞いてからでも・・・」
「曜ちゃんはすぐに彩希君を甘やかすから黙ってて。」
「・・・はい。」
「おぉ、久し振りに梨子ちゃんが怖いかも・・・。」
と言うわけで、曜が庇ってくれようとしたが、梨子にばっさりと切り捨てられた。千歌は一歩引いて見てるだけで助けてくれようとはしなかった。
そして梨子を議長に取り調べが始まったが、梨子の奴僕が覗きをした事を確定で話し始めた。しかも、未だに正座を崩すのを許してくれないし・・・。
「だから誤解だって!!僕は帰って来たら知らない靴があって明かりはついてるのに誰もいないのは不思議に思ったけど、とりあえず疲れていたからシャワーでも浴びようとしたら、脱衣所にそいつがいたんだって!!」
「嘘よ!だってその男2回もヨハネの裸を覗きに来たのよ!!まぁ、ヨハネのあまりの美しさに、もう一度見たいと思ってしまう気持ちは分からなくもないけど♪」
「・・・・・」
さっきまで裸を見られたと泣いていたやつのセリフとは思えないほど自信満々なことに僕は言葉を失った。てか、あまりの美しさにって・・・自分で言うか普通?
「だいたいこの男はなんなのよ!!」
「さっきも言ったけど、ここの住人だ!しかも、1度目は本当に事故だったし、2回目は不審者がいると思ったからそんなの気にしてられなかったんだ!!」
「それこそ信じられないわ!!」
「なんだと!!」
「2人とも静粛に!!まずは善子ちゃん。彩希君が言ってる通り、彩希君はここに住んでる男の子よ。それは善子ちゃんも知っているはずだけど??」
「え!?本当なのリリー!!・・・もしかして、こいつ2年前のあのチビガキ!?あの小さかったのが、こんな無駄にでかくなるの!?」
悪かったな無駄にでかくて!!てか、2年前に僕はこいつにあったことあるのか??
「まぁ、分からないのも無理ないか。2年前は140cm無かったのに今じゃ170cm越えてるもんね♪男の子ってこんな急激に伸びるなんて知らなかったから、あれよあれよと言う間に大きくなって千歌もびっくりしたもん。」
「いや、千歌ちゃん。それは個人差があるんじゃないかな?」
曜の言う通りだ。千歌の奴人を化け物みたいに言いやがって!僕はたまたま成長期に良く伸びたってだけだ!!とりあえず後でお仕置きとしてコーヒー飲ませてやる!!
「と・に・か・く!そう言う事よ善子ちゃん。わかった?」
「まぁ、リリーが言うなら・・・。」
「それと、彩希君。」
「はい。」
「事情はどうあれ女の子の裸を見た事には変わりないんだから、何か言うことあるわよね??」
「なんで僕が・・・不可抗力なんだけど・・・(ボソッ)」
「ん?何かな??」
僕は不満を呟いたが、梨子の笑顔なのに笑っていない表情の迫力に負け、大変遺憾ではあるが謝っておくことにした。
「・・・ごめんなさい。」
「ということで、善子ちゃんもこれで許してもらえるかしら?」
「フッ、まぁリトルデモーモンリリーが言うのなら許してやろう。」
「はいはい、ありがとう。彩希君もこれでいいわね?」
「・・・・」
「い・い・わ・ね?」
いやいや、これで手討ちみたいな空気出されても困るんだけど!?現状把握が全くできてないんだけど!?
「いいわかないだろ!!まぁ、裸を見たのは謝るにしても、これじゃ、僕が犯罪者みたいじゃないか。」
「そうは言っても、善子ちゃんの裸を見たのは事実だし・・・。ねぇ梨子ちゃん議長?」
「そうね。」
「だって♪」
だって♪、じゃなねぇ!!一番大事なところが抜けてるだろうが!!
「バカ千歌は黙ってろ!!」
「あ、またバカ千歌って言った!!」
「まぁまぁ千歌ちゃん。」
「第一、俺が帰って来た時には、風呂に居たこいつ以外誰もいなかったんだぞ??何でこいつ一人で風呂に入ってるんだよ??そこからまずおかしいだろ??」
「あ、それはわたしが、善子ちゃんにお風呂を勧めた後、調味料の買い忘れがあったから買い物に出ちゃったからなんだけど・・・。」
ふむ、それなら1人でいた理由はわかった。でも・・・
「それに、梨子は端から僕が悪い体で話し始めたけど、そもそも僕はこいつが来ること知らなかったんだけど?それでも僕が悪いと??」
「「「え?」」」
ん?何で3人とも驚いた顔をしてるんだ??
「彩希君、わたしメール送ったんだけど、見てない?」
「メール??」
僕はスマホを取り出し画面を確認したが、画面は真っ暗だった。
「あれ?落ちてる??・・・あ!!電源落としたの忘れてた!!」
「「「「えぇ~~!?」」」」
僕は実家の掃除中に、椿から解放された樹からの電話の嵐が凄かったので電源を切っていたのをすっかり忘れていた。そのせいで曜からのメールに気付く事が出来なかったらしい。その証拠に、スマホの電源を入れると曜からメールが入ってきた。そこには、この善子と言われる女を泊めることになったと確かに書かれていた。
「えっと・・・、つまり、これは僕が悪いってことなのか?」
「あ、でも、わたしが彩希君にちゃんと確認取らなかったのが悪いんだし、彩希君は悪くないよ!!」
「曜・・・」
「甘いわよ曜!!こいつはこのヨハネの裸を見ておいて、自分は悪くないと主張したのよ?こんなやつ天界条例により極刑よ極刑!!」
「確かに・・・。これは許されない事ですね。どうします梨子ちゃん議長?」
「千歌は黙ってろ!変な風に引っ掻き回すな!!」
「むぅ~!!」
膨れてるんじゃない!本当にお前が何かしゃべると何故か俺の分がどんどん悪くなって行く気しかしないんだから!!
「とりあえず、彩希君、曜ちゃんはちゃんと連絡していたんだし悪くないわよね?」
「・・・はい」
「理由はどうあれ、スマホの電源を切っていたのはだれ?」
「僕です・・・」
「私が決めつけて話していたのが悪いみたいなこと言っていたけど、結果悪かったのは?」
「僕です・・・」
「だよね??」
「はい・・・」
「と言うわけで、お仕置きです。」
「え!?」
「チェリーナイトメアブロッサム!!」
「だーーーーーー!!!」
こうして俺は梨子にお仕置きをされて意識を失ったのだった。
たまには明るい話を入れないと疲れちゃいますよねw