-----------------
「まいったなぁ・・・。完全に迷っちゃたよ・・・。」
東京のイベントに呼ばれたわたし達Aqoursは、イベントの前日に東京に来ていた。
しかし来たのはいいんだけど、めったに来る事の出来ない東京と言う事もあり、テンションが上がったわたし達は、誰が言った訳でもなく自然と自由行動の時間となってしまっていた。
そして東京の、しかも秋葉原と言う事もありコスプレ・・・もとい、各種様々な制服がいろいろなお店に沢山あり、あちこち見て回っている内に私は今どこにいて、皆がどこにいるか分からなくなっていた。いわゆる迷子と言うやつだ。しかも、こんな時に限ってスマホのバッテリーが切れるという悲劇。
「はぁ・・・。とりあえず誰かに駅までの道を聞こう。駅まで戻ればなんとかなると思うし・・・。」
「お姉さん、どうかしたの?」
「え?」
わたしが通行人に道を尋ねようとした時、誰かにいきなり声をかけられた。ビックリして声のした方を向くと、そこには小学3・4年生くらいの男の子がいた。
「・・・」
(うわぁ、なにこの子。凄く可愛い♪)
「あの、大丈夫?」
男の子に見とれて惚けているわたしを見て、男の子は心配そうな顔をしてわたしの事を覗きこんできた。
「あ、えっと、その・・・大丈夫!・・じゃなくて、道に迷っちゃって・・・。」
「そうなんだ。大変だね。う~ん・・・」
「彩希っ!」
「あ、姉ちゃん♪」
わたしの返答を来た男の子は小さいながらも、どうにかわたしを助けようとしてくれているのか、真剣に悩んでいる様な顔をしていた。すると、今度はこの男の子の名前?を呼びながらこちらに近ずいてくる1人の女の子の姿が見えた。
歳はわたしと同じくらいかな?女の子は男の子に駆け寄ると男の子と目線を合わせてお説教を始めた。
「『あ、姉ちゃん♪』じゃないわよ!!急に走り出したら危ないでしょ!!しかもこんな人混みで!はぐれたらどおするの!?」
「ごめんなさい・・・。でも、このお姉さんが何か困っているみたいだったから・・・。」
「え?・・あぁ!うちの弟がいきなりすみません。」
「あ、えっと・・・。」
男の子はわたしの事を指差すと、女の子は初めてわたしの存在に気付いたらしい。
「困ってる人を助けようとしたのは偉いけど、そうならそうとちゃんと言いなね?」
「は~い。」
「それで、あなたはどうしたの?この子の勘違いじゃなくて本当に何か困っているのなら、手伝えることがあったら手伝うけど?」
女の子は立ちあがると真直ぐわたしの事を見ながら聞いてきた。それにしてもこの男の子のお姉さんなだけあって、この子も凄く綺麗・・・って、そんなこと考えてる場合じゃないよね。
「あ、うん。実は道に迷っちゃって・・・。」
「そうなんだ。それでどこに行きたいの?」
「うん、秋葉原駅なんだけど・・・。」
「そこなら僕分かるよ♪連れてってあげるよ♪」
わたしの目的地を聞くと男の子が元気に道案内を買って出てくれた。
「そうね。ここからそんなに遠くないし、よかったら駅まで送るよ?」
そんな弟の反応を見てお姉さんの方も道案内を買って出てくれた。
「え、いいの?・・・いいのかなぁ?」
「もちろん。そんなに遠くないと言ってもとそれなりに距離はあるし、大通りに出るまでの裏路地なんかは迷いやすいから遠慮しないで♪」
「それじゃぁ、お言葉に甘えさせてもらおうかな?」
「任せてよ♪」
元気いっぱい返事をする弟君が凄く可愛くてお姉さんと目を見合わせて笑ってしまった。
そして駅まで案内してもらいながら、まだ名前も聞いていない事に気付いたわたし達はここで初めて自己紹介をして、お姉さんの名前は『伊波 未希』わたしと同じ年で、そして弟君は『彩希』と言う事が分かった。ビックリなことに小学6年生だという。そしてまだ出会って少ししか経ってないけど、少し話してわたしは未希ちゃんとはいい友達になれるような気がしていた。
「それで、曜ちゃんは何でこんな所で迷ってたの?」
「いやぁ、お恥ずかしい話なんだけど、買い物とかに夢中になってたらどこをどう来たのか分からなくなっちゃって・・・。しかもスマホのバッテリーが切れちゃってマップも見れなくて・・・。」
「それはそれは・・・。でも、一体何をそんなに夢中になって買っていたの?」
「これなんだけど・・・。」
わたしはさっきまで買い物をしていた制服の数々を未希ちゃんに見せた。
「わぉ。これまたずいぶんと凄い物をたくさん買ったねぇ。」
「あ、勘違いしないで欲しいんだけど、わたしは制服が好きなんであって、別にこれを着て変な事をしたりとかはしないよ!!」
「大丈夫、分かってるって♪」
「本当に?」
「うん。まだ会って少ししか経ってないけど、曜ちゃんがそんな子じゃないってなんとなくだけど分かるよ。」
「そう?」
「うん♪」
わたしと未希ちゃんのやり取りを彩希君は不思議そうに見ていた。というか、未希ちゃんの事を珍しい物でも見たような顔をしていたけど、何かあったのかな?
「それよりも、曜ちゃんって地元じゃないよね?」
「うん。でもなんで?」
「いや、いくら買い物に夢中になったからって、地元の人ならそうそう迷ったりなんかしないじゃない?」
「そうだね///・・・私は静岡の沼津から来たんだ。」
「静岡!?またずいぶん遠いとこから来たね。学校行事か家の用か何かなの?」
まぁ、普通は静岡から来たって聞いたらそう思うよね。
それにしても、自惚れていた訳じゃないど、東京のイベントに呼ばたのにこうも知名度がないのかと思うと少しショックだなぁ。
「ううん。わたしこう見えて恥ずかしながらスクールアイドルをやっておりまして、それで明日行われるイベントに呼ばれて・・・それで東京に///」
「えっ、スクールアイドル!?凄いね!!」
「いやぁ、それほどでもないんだけどね。始めたのだってこの春からだし。」
「それでも凄いよ!!私全然詳しくないけど、スクールアイドルって凄い人気なんでしょ?」
「うん。」
「そっかぁ。いいね、青春って感じで♪」
「わたしと同じ年なのに何言ってるの・・・。興味があるなら未希ちゃんもやってみたらいいのに。」
「私、高校行ってないから無理かなぁ。」
あれ、もしかしてわたしまずいこと言っちゃったかも・・・。
「な・なんかゴメンね?」
「あぁ、いいのいいの。気にしないで。私の方こそ変な空気にしてごめんね。」
未希ちゃんはああ言ってくれたけど、触れられたくない事に触れてしまったかと思って、わたしは俯いてしまった。
「・・・実はね、私達両親がいないの。親戚も居るんだかどうかもわからなくて・・・。だから彩希を育てるために高校を辞めたんだ。」
「え!?それって・・・」
「あぁ、捨てられたとかそいうのじゃないよ?・・・事故でね。一年前に2人とも死んじゃったんだ。」
俯くわたしを見て逆に気を遣わせてしまったのか、未希ちゃんが自分の事を話し始めてくれた。とはいえ、話してくれた内容はとてもじゃないけど笑って聞けるような内容ではなかったけど。
「そう・・なんだ・・・。」
「そんな顔しなくて大丈夫だよ。2人が居ないのにも慣れたし、なにより今のわたしには彩希が居てくれるから。だから大丈夫。」
未希ちゃんはわたし達の少し前を頼もしく歩く彩希君の背中をやさしく見つめていた。
「今こうして笑えているのはね、彩希のおかげなの。」
「彩希君の?」
「お父さんとお母さんが亡くなってから私はたくさん泣いたの。それこそ一生分の涙を流したんじゃないかってくらい。私達のお父さん達って、今時珍しく駆け落ちして結婚したらしくてさ、親戚はおろかおじいちゃん達のことも知らないの。でも、そんなこと気にならないくらい、お父さんもお母さんも私達にたくさん愛情を注いでくれたし、すごく幸せだったから、急にその幸せが崩れてどうしていかわからなかったんだと思う。」
「・・・」
わたしはなんて言えばいいのかわからず、ただ黙って聞くことしかできなかった。
「ご近所の人たちおかげで何とかお父さんたちの葬儀を終えた私は、それから暫く無気力に生活していたと思う。そんなあるとき、何となく外を歩いていた時にふと思ったの・・・。このまま道路に飛び出せば私もお父さんたちのところに行けるのかなって・・・。」
「そんな事したらダメだよ!!」
「落ち着いて曜ちゃん。そんなことしてないから。だから今私がここにいるんでしょ?」
「そ・そうでした///」
思わず必死に止めようとするわたしを見て、未希ちゃんはクスクスと笑いながら視線をまた彩希君に戻して話を続けた。
「そう思ったんだけどね。その時後ろから小さな姉弟の声がしたの。お使いの途中だったのか分からないけど、疲れた弟君がもう歩きたくないって我が儘を言って泣いてたんだけど、お姉ちゃんが弟君の手をに握って励ましながら歩いて行ったの。」
「それで思い止まれたの?」
「うん。その姿を見たらね、彩気が小さい時の事を思い出したんだ。昔からお姉ちゃんっ子で凄く泣き虫でね。よくあぁやって手を引いて歩いたなぁって。」
未希ちゃんは凄く懐かしそうな顔をしていた。一人っ子のわたしにはよく分からないけど、やっぱり兄弟姉妹って、それだけで特別な存在なんだろうなぁ。
「そしたら、お父さん達が死んでからまともに彩希と話していない事に気付いたんだ。ご近所さんが気にかけてくれて、頻繁に様子を見に来てくれていた気がするんだけど、彩希がどうしていたかなんて全然思いだせなかったの。」
「それで、どうなった?」
「慌てて家に帰ったら、リビングのソファーで寝ている彩希がいたの。」
「寝てたの?」
「うん。それはもうぐっすりと♪」
「それはある意味大物だねぇ。未希ちゃんの事が心配じゃなかったのかな?」
わたしの疑問に未希ちゃんはクスクス笑いながら首を振った。
「ううん。逆だよ、逆。」
「逆?」
「うん。私の事凄く心配してくれていたの。」
「そうなの?」
「テーブルの上にね、歪な形のおにぎりと手紙が置いてあったの。」
「手紙?」
「うん。そこにはね『ゆっくりでいいからいつもの元気なお姉ちゃんに戻ってね』って書いてあったの。今まで私に甘えてばかりで、私がいないと何もできないと思っていたのにびっくりだよね。」
「そんな事があったんだ・・・。」
「おかげで気付く事が出来たんだ。『私は何を寂しいと思っていたんだろう?確かにお父さん達が居なくなったのは悲しいけど、一人ぼっちになった訳じゃない・・・。私には彩希が居るじゃない。』って。」
わたしは一人っ子だから兄弟がいるってどんな感じか分からないけど、産まれたときから傍にいるんだから、そういった絆って言えばいいのかな?その絆はわたしが想像できないくらい凄く強いんだろうなぁ。
「だから決めたの。何があっても彩希だけは私が立派に育てて見せるって。」
そう言った未希ちゃんの目にはとても強い光が宿っているように見えた。
私と同じ年なのに、守る人がいるって言うだけでこんなにも違うんだ。
「強いね、未希ちゃんは・・・。」
「そんなことないよ。ただ毎日精一杯なだけだよ。」
「そんなことないよ。・・・それに比べてダメだなぁわたしは。逢ったばかりの人に気を遣わせて、つらいこと話させちゃってさぁ・・・。」
「気にしないで。それに曜ちゃんには聞いてほしくなったから話したんだし。」
「なんで?」
「ん~・・・。なんとなく?」
「なにそれ?」
「あはは。でも、おかしな話かもしれないけど、曜ちゃんとはいい友達になれそうな気がしたんだよねぇ。だから私のこと知ってほしくなったんだ♪」
びっくりだ。ついさっきわたしが感じていたことを未希ちゃんも感じてくれていたんだ。なんか凄くうれしい♪
「わたしも!わたしもそれ思った!なんか未希ちゃんとはいい友達になれそうって!!」
「本当に!?うれしいなぁ♪」
未希ちゃんとわたしはお互いを見ながら笑顔になっていると、彩希君が嬉しそうに「着いたよ♪」と言ってきた。
話に夢中になって気が付かなかったけど、間違いなく皆とはぐれる前にいた秋葉原駅だった。
「あ、もう着いちゃったんだ・・・。もう少し話していたかったんだけどなぁ・・・。」
「だね・・・。とりあえずここでお別れだけど、連絡先交換しようよ♪」
「そうだね♪ 今度ゆっくり時間が作れる時にいっぱいお話ししようね♪」
未希ちゃんは自分のスマホを取り出して、自分の連絡先とSNSのIDを教えてくれたた。わたしはメモをとって、間違えてない事を確認してから、今夜落ち着いたら連絡する約束をした。
「未希ちゃん、今日はありがとうね♪」
「うん♪」
「彩希君もありがとう♪凄く助かったよ♪」
「うん♪でも、お姉ちゃんも気をつけなきゃダメだよ?」
「はい、そうですね・・・。」
「もぉ、この子は、また生意気言って・・・。」
「あはは・・・。と・とにかく、2人ともありがとう♪」
「うん♪」
「それじゃ、またね曜ちゃん。明日頑張ってね♪」
「うん、ありがとう♪またね♪」
こうして2人に助けられたわたしは、無事皆と合流で来た。
次の日のイベントは悲惨なものだったけど、今回の東京のイベントに来たおかげで、Aqoursは今まで以上に結束が固くなり明確な目標を持つ事が出来た。わたし個人としても未希ちゃんと言う友達に出会えたから、結果として東京に来れてよかったと、この時のわたしは思っていた。
-----------------