常識非情式   作:moti-

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第4話

 残酷な現実世界と言うもので、まともな人間であるほどおそろしいものだろう。そう白は思っている。どいつもこいつもイカれているくらいがちょうどいい世界だ。まともな人間など、猫をかぶったおかしなやつか、はたまた現実を知らないバカか、どちらかに限る。そう白は思っている。いや、いた。

 

 だが、どこまでも無垢だった。その少女はどこまでも無垢だった。世界なんて知らないかのようにしかし鮮烈に凄惨に世界へ自分勝手に我儘に誇っていた少女だ。白は彼女のことを白花と呼ぶ。それは、そのあり方からそう呼ぶことを決めたのだった。

 

 白は人と人の出逢いには理由があるものだと思っている。運命論、縁を意外に慮る至って普通の口先人間だ。ただちょっと壊れた、だいたいどんなところにでもいる少年の白は、因果関係がある以上縁と言うものが存在することが確実だ、と考えていた。

 

 だから、白と彼女の縁は意外にありふれた場所から始まった縁と言うことになるのかもしれない──そう白は、始まりとも呼べるあまり盛大でもないありふれた話を思い返すことにした。

 

 

 

 

 人の生涯に意味はある。

 

──人の生涯に意味はない。

 

 自分で呟いた言葉を速攻否定しつつ、白はありふれたくだらない日々を今日も生きていた。ギルドナイトと言えど実は案外暇で、人死なんてありふれた世界で、意外に殺人なんてのは滅多で、そんなわけで白はあまり多忙ではない。忙しくないので無趣味な白はやることもなく、面白みのない街を歩いて散策していた。

 

 趣味なんて意外にそこらへんに落ちているものだと思うが、白は正直何かを感じ入ることが少ない。人が死んでもそうか、で済ませられるような人間だ。まぁ、そんな人間なんて、動じない人間なんてのはほんとに、先も述べたがありふれているし、だから白が異端であると言うわけではない。

 

「……るー、逃げるが勝ちと言うが背中の傷は戦士の恥故に逃げることは恥であるー……はい、証明完了。あーあー暇暇。めちゃくちゃ暇。太字とか使うくらい暇

 

 メタ発言は許されない。

 

「なーんて、こんな風に特殊タグを使って遊ぶくらい暇だ。西尾維新のように反転文字使って遊んだりな。僕は意外にメタ発言寛容派だが物語として適切でないとか言う輩がいないとは限らないからここいらでやめておこう……ん?」

 

 と、白はちらりと、通路の端っこに座ってなにか絵を描いている少女を見つけた。なんだ、と軽く思ってすこし見ていると、少女は面白いくらいに表情をころころと変える。

 

 曇り、

    雨、

      晴れ、

         雷。

 

 表情が天気を評しているような少女だと思った。いつもあんなテンションならきっと毎日が楽しいんだろう、と思った。白はそれが若干羨ましく感じた。

 

「ふぅ……よーし! いっちょあがりぃ!」

 

 少女がそうして絵を描いていたノートブックから顔を上げると、少女を正面から見ていた白と目が合うことになる。

 

「あ」

 

「あ」

 

 互いに声を発し、そして互いに視線をそらし、互いにちらりと視線を合わせ、またそらす。なにかのコントだろうか。白は少しして何をやってるんだ、と思った。

 

「あのー……絵、見ます?」

 

 少女が声を掛けてきた。白はファーストコンタクトは大事だと思う。なので、気合いをいれて自分の出会いについての考えを述べることにした。

 

「僕は白々白って名前でこの名前の響きは白々しく吐くと言っているようで僕は正直あまり好きじゃないけどそんなことはどうでもいいとして僕はこんな名前だけど運命と言うものは存在すると思っている過去には買い物によってつながった縁から結婚までこぎつけた人たちだっているらしいんだからどれだけ些細なことでも運命と言うものは接着されるようで僕たちが今こうして出会ったこともここで切れる縁かもしれないけどそうでない可能性もあるわけで僕はだから君とのファーストコンタクトと言うのは失敗しないようにしたい第一印象と言うのはかなり重要になってくるからだけれど人間と言うのは不思議なもので脳で考える前に視認した瞬間に相手についての好悪を判別するらしいから僕としては君の僕の分類が嫌いなやつでないことをこっそり僕は思ったりするとりあえずこんにちははじめましてそして失礼します見せてもらいます」

 

「え、えーと……はじめまして?」

 

 

 失敗した。

 

 

 白はそれを悟る──完全に変なやつじゃないかマジかよーお前、と軽く思いつつ、表皮にそれを出さないようにして差し出されたノートに描かれた絵を見る。

 

 

ありえない世界の話だ。

 

 

幻想こそが誠実だ。

 

 

現実こそが醜悪だ。

 

 

世界に救済など有り得ない。

 

 

故に歌おう──私はこの世界に誇ろう。

 

 

「──……」

 

「えーと、どうですか……?」

 

「そうだね。僕に君は理解できないことがわかったよ」

 

なんて生き方をしていたのだ──こいつは。

 

 世界の見え方は人によって変わると、それが常識であることはだれもが理解している──つまり人の表現した絵を見ることは他人の視界を覗いているのど同義。故にこそ思う。

 

 こいつは。

 

 ()()()()()()()()()()()()──()()()()使()()()()()()

 

 故に恐怖する。こんな腐った世界で、こんなに汚れない人間なんて、何よりも恐怖するべき対象だ。そして同時に興味を抱く。

 

 白々白的には。

 

 その絵を見た時に抱いた感情──それが感動と呼べるものだと思う。

 

「君の名前は?」

 

「えーと、ヒューって言います……それで、感想とか、あります?」

 

「そうだね。前置きとして──()()()()()()()()()()()()()()()()。出来上がるのは人類九割の敵愾心と人類一割の狂信だろ。だから僕は、これは人にみせないほうがいいと思う」

 

「え……どういうことですか?」

 

「簡単に説明すると……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そういうことさ」

 

「……褒めてるんです?」

 

「僕としては最上級の賛美だったと思うよ。人智を超越する異常なまでの清廉。真っ白、透明。無色。空。空々しいほどに(から)だ。だから白々白こと僕は思う。──君は、龍か何かかい?」

 

「竜なんかじゃないですよ! 知ってるよ、私。それを失敬って言うんだよね」

 

「そうだね。間違ってないよ。竜と龍を間違えることは失敬だ。敬意を失している。いいかい? 竜と、龍だ。この区別はしっかりとつけるように。龍……古龍などを指して使われる略称だね。僕は君が、その類じゃないかと思ったんだけど」

 

「そんなわけないですよ。どうみても私は人間じゃないですか、もう」

 

「いいや、案外有り得ないと思うところに答えがあるかもしれないよ。僕の父親は英雄だ。最後に裏切られて死んだけど。そんな父親はしきりに僕にこう言った。『──龍は人間に化けることもある』ってね」

 

「それはおとーさんが嘘をついてるだけじゃないんでしょうか」

 

「そうだね。僕の父親は嘘つきだ。ひょっとしたら僕なんかよりも数倍嘘つきだ。僕も他人の年間使用料を超越するくらいには嘘をついてるけど、父親はひょっとしたらそんな僕より嘘をついているかもしれない。最低な父親さ。子供より先に死ねたんだから本望だろうけど」

 

 白のその言葉に、ヒューと名乗った少女はよくわからない、と首を傾げる。つまり、と言って、

 

「白さんは嘘つきってことですか?」

 

「そうだね。ただ個人的に使ってほしい呼称がある。人間人間(真正悪人)って言う、そんな呼称」

 

「白さんは嘘つきですね? わかりました」

 

「よくわかってるね。ちなみに今のも大嘘さ。僕に使ってほしい呼称なんてない。白々白で充分さ」

 

 そんなファーストコンタクトは、このあとすぐに別れて終わる。

 

──次のコンタクトは、意外に直ぐだった。




 試験的に特殊タグとか使って遊んでみたり。ニーズに沿ってないからこそできる遊び。
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