黙示録の時は今来たれり   作:「書庫」

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最近誤字や名前違いが多いですが大体誤変換のせいです。
僕は悪くない。(クマー感)
いや本当すみません…




『そんな事でいいのかい?』
『構わない。自ら下さねば意味が無い』
『…立派に育ったね、快楽主義者の子孫も。
 承ったよ。かつての白翼を君に。
 ベリアルは元が天使だから成立する』
『…感謝する』
『そういう契約だからね。
 じゃあ、その指輪をここに』



暁の都は墜つ

 冥界に惨劇は起きた。地の底より業火が大海の如く押し寄せ、鱗のない白龍が悠然と降り立ち、水晶の刃を地から生やし、幾千もの極光を吐き出す。数多に上がる火の手、連れ去られる転生悪魔。殺されていく純正の悪魔。

 

 もちろん冥界も黙っていない。竜が飛び立つ。タンニーン、ファーブニルを始めとする龍は事態の収束に動いた。否、動こうとした。彼等『竜種』の道はある騎士達の手によって阻まれた。

 

『何だこれは!何なのだ一体⁉︎」

「…………」

 

 その騎士の纏う黄金獅子の鎧兜は雷の力を帯び、その手に掲げられた十字槍は竜の体深く抉り穿つ。逃げ惑う悪魔などは彼方へと吹き飛ばす。その騎士の総数は十四名。それが各地に点在する竜達の行く手を阻んでいた。

 

 ある都市に降り立った竜の顎門が開く。そこに十字槍が叩き込まれる。竜の爪が振り下ろされる。鎧には傷がつくものの致命傷には至らない。そもそもこの騎士達に『命』というものが宿っているのかどうかは定かではない。

 

 彼等は作られた命だからだ。『神滅具』が一つ『魔獣創造』によって生み出された竜殺しの魔獣。レオナルドはこれを『竜狩り(オーンスタイン)』と名付けた。

 

「よし、14体稼働に問題なし。竜の足止めは成功。…ヘラクレス、飛龍からアグレアスに降下を開始して。ペルセウスとジークフリートはもう行動を開始してる」

 

 冥界の空を一線に凪ぐ黒い飛龍。これもまた、生み出された命。その背に搭乗するのは筋骨隆々な大男。その手に『聖剣創造』より作られた美麗なる大剣が一振り。それは青白く輝いている。言ってしまえば青ざめた月光とでも言おうか。

 

「いや!正面から行かせてもらうぜぇ!」

「…了解、このまま突っ込ませる。幸運を」

「ハッハー! 任しときやがれ!」

 

 兎にも角にも、その飛龍は浮遊する都市に突っ込んだ。それを見届けたレオナルドは白龍の肩に乗る。それなりの高さだ。見晴らしはいいだろう。その双眸は二人の男の戦いを写していた。

 

「っ、…危ないな」

「…なるほど、強い」

 

 轟々と燃え盛る廃墟の街並みの中、二人の男がぶつかり合っていた。そのうち一人は人間で、一人は悪魔であった。状況は人間が僅かながら優勢。普通ならば全くもってありえない事ではあるが、これは明確に事実である事を、悪魔サイラオーグ・バアルは受け入れなければならないだろう。

 

「火力と速度だけでは勝てんよ」

「な、⁉︎」

 

 『強い』のでは無い。ただひたすらに『巧い』。その腕前にサイラオーグは嘘偽りなく舌を巻く。彼の戦闘スタイルは鍛え上げた肉体に任せた無類のパワーと神速とも言えるスピードで繰り出す近接打撃格闘戦のみ。だがその威力は凄まじいの一言だ。

 

 それら全てを、人間は目を閉じたままで須らくいなしていた。馬鹿にしている訳ではない。余裕の証明というものでもない。 その証拠に彼の頬には冷や汗がいくつも浮かび上がっており、拳をかすめた事により出来た傷は身体中に形成されている。だが致命傷だけは避けている。つまりはこれが今の彼の戦闘スタイル。回避を重きに置き、時間を稼ぐことに特化させた攻め。

 

 青龍偃月刀『冷艶鋸』をその手に踊らせる人間の名は曹操。だがそれは遠い過去の名に過ぎず。故にこれは借り物である。本来の名前など、等の過去に忘れてしまった。

 

「単騎とは無謀だったな。サイラオーグ。

 ただの人間と侮ったか? 世界は俺達(にんげん)が変える」

 

 だから、その名に恥じない男になろうと思った。荒唐無稽と笑われてもいい、名を汚せまいと強く決意した。 …己は英雄などにはなれはしない。そんな事は分かっている。だから、これはただの罪滅ぼし。

 

「…惜しいな、…実に良い戦士だ」

 

 それは悪魔の送る心からの賛辞。それを述べたサイラオーグは、凄絶に笑う。そして、その賛辞に報いるべく、最後の手段。切り札をその手へ取るべく自らの戦いを遠くより見る仮面の少年の名を呼んだ。

 

「故に、だ。…全力で行かせて貰う。レグルス!」

 

 曹操は苦しげに顔を歪める。だが引かない。ここで逃げれば確実に仲間であるレオナルドが狙われ、死ぬ。彼の産み出す魔獣は確かに強力なものばかりだ。だから大丈夫。()()()()()()()()。曹操の直感が告げていた。この男を通せばレオナルドは死ぬぞ、と。

 

「…良いだろう、来い」

 

 そんな事は許されない。そんな事は許容しない。彼は貴重な戦力だがそれとともに仲間だ。明確に仲間なのだ。だから、彼は虚勢をはる。死にたく無いなどとは言わない。逃げたいなどとは言わない。人の生み出した武器を手に、純然たる人間は今『獅子』と相対する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■ ■

 

「被害にあってる街を全部洗い出して、残っている戦力を細分化したリストを送るから各地区に割り当てて、早く!」

「全速でやっておりますが駄目です!どう足掻いても間に合いません!奴らの進行が早過ぎます!ファルビウム様!」

「中央に新種の白龍かよ!?まだ増えます!なんて数だ!いかれてやがる!何なんだよこれはよ!」

「サーゼクス様、セラフォルー様、アジュカ様への連絡、いずれも繋がりません!全て例外なく通信がロストしています!訳がわかりません!」

「サーゼクス様とセラフォルー様はわかるがなぜアジュカ様は居ないんだ!あの人は会談に赴いて居ないだろう!?」

「『ゲーム』だよ『ゲーム』!何だってこんな時に…!間が悪いにも程があるぞクソッタレが!」

「アグレアスに侵入者多数!」

「リリスにて火災発生!爆発します!」

「フェニクス領が嵐で包まれました!恐らくは神器によるものかと!思われます!それも『神滅具』クラスのものが!」

「恐らくは天使と思われる光の槍がベリアル領に!」

「タンニーン様も謎の騎士に足止めを食らっています!」

「冥府に下る事も不可能です!」

 

 ■ ■

 

 

 

 冥界の首都リリス。そこには燃え盛る廃墟が広がっていた。パチパチと火が爆ぜる音。まるで巨大な爆発が起こったかの様だ。だが実際はそうではなく、そこに君臨したのは理不尽なまでの暴力であった。ただ一度の炎で辺りはこの惨事だ。もはや悪夢の域をゆうに越えており、誰もが空想に逃避する。

 

 その中で、一人の少年がいた。その少年の頭には十の角を天に叛くが如く生やし、異種の翼を六枚生やし、その触れれば折れてしまいそうな華奢な身体は白く薄く輝いている。その心臓に突き立つのは水晶の杭、足にはめられた枷と翼を縛る鎖を鳴らしながら、少年は素足を踏み出す。

 

 ぺたり、ぺたり、ぺたり。その子供らしい足音はさながら死神の行進の様に。或いは太古に語られた尋常ならざる者たちが列を成し、行進し全てに災いをもたらす『嵐の軍勢(ワイルド・ハント)』。

 

「くそ!なんだ!なんなんだアイツは!」

「サイラオーグ様はまだなのか!」

「クソが…!俺たちをゴミの様に…!」

 

 背を向け逃げ惑う悪魔達。黙示録に記された少年は、否。黙示録に()()()()()()()()破滅を体現する皇獣666(トライヘキサ)は逃げ惑う蝙蝠に向けて炎の顎門を現出させ、走らせる。それは寸分狂い無く悪魔達を飲み込み灰燼とした。…彼らが連れていた一人の転生悪魔である少女を除いて。

 

 それは余りにも痛ましい姿。靴では無く素足。そのせいか足裏は血に濡れている。ほぼ裸体に近い薄布の服の下には鬱血痕や殴打の痕。そして入り混ざる異種の匂い。恐らくはその純潔はとうの昔に食い物とされ散らかされたのだろう。少年は歯を食いしばりながらその少女の側に歩み寄る。

 

 少女の揺れる瞳から伝わるのは怯えた困惑、そして諦め。少年はその瞳から逃げず、そっと目線を合わせた。そして、次の瞬間には少年はボロボロと幼子の様に涙を流し、地に身を伏せた。ガリガリと爪を大地に突き立て、抉る。爪がめくれ肉が裂け血が垂れる。

 そして、上げたのは、

 

「───うォァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 喉を裂かんばかりの、世を呪う慟哭だった。

 

 

 バリバリバリ!と己の頭を、皮膚を血が流れるまで五指で掻き毟る。喉から血を流す程に叫ぶ。血の涙を流す。少年の身体には何処にも傷は無いのに、少年は血濡れた姿となった。

 

 愛したものの自由や尊厳そして『人』生が、何もかもが、悪魔という存在に何もかもが文字通り奪われ貪られた。その事実は、どんな魔法や武器よりも何処までも深く少年の心を抉り切り込みすり潰しぐちゃぐちゃにしたのだ。

 

「そこまでだ、暴獣」

「こいつはまた、派手な奴だな」

 

 二人の男の声。一人は終末の巨人の複製体。一人は天才の剣客。余裕の無い表情で少年はそれを眼に収める。剣客を見ながら再び滂沱する。それは今にも脆く崩れ去りそうな精神。だが───

 

「……君に聞く。君は人間か?」

 

 折れなどはしない。折れてたまるか。その気概で立ち上がる。無理をする幼子の様だ。事実その認識でも誤りはない。獣の問いにかつての人間の口は開く。

 

「俺は昔は人間だった。今は悪魔だよ。

 ルシファー眷属が騎士、沖田総司だ」

「…分かった、それで良いんだな…!

 その選択で君は良いんだな…!」

 

 では開幕と行こうか。即ち終わりの序章。

 いつだってそうだ。いつだって変わらない。

 お前達こそが、この破滅の道を選ぶのだ。

 

 逃げる事など許されない。

 お前達にその権利はない。

 お前達は、存在そのものが罪だ。

 

「なら君を悪魔と認識する。君を悪魔として扱う。

 そこに並べ、今ここで貴様を灰にしてやる…!」

 

 血の涙を流し、口端から血をこぼすその姿が、彼等にはどう写るものか。変わらずにただの獣として写るか、それとも狂った命か、或いは、泣き叫ぶ幼子か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻の別地点。血の海と骸の山の上には、端正な顔立ちに灰色の髪と瞳をした一人の男が数多の魔獣。悪魔に対するアンチ・モンスターをその背に率いて君臨していた。その顔には虚しさと、深い哀れみが内包されている。今にも脆く壊れそうなその男は、ただある男を耐えるように待っている。

 

「何故…です、か…何故、あなた、が……」

 

 骸の中、一人の悪魔がそれを問うた。掠れた声で、今もなお死に向かうその悪魔は最後に何故あなたが、と回答を知りたかった。それもそのはずだ。

 

 ディハウザー・ベリアル。それは「元72柱」ベリアル家出身の最上級悪魔であり、ベリアル家現当主の息子であり、レーティングゲームのランキングは1位の座に君臨し、「皇帝(エンペラー)」の異名まで持ち、現魔王にも匹敵する力を持つ1000年に1人の逸材の存在の事を指す。

 

 それほどの存在が、何故?

 

 それを語る上で、クレーリアという女の存在は欠かせないであろう。彼は従妹であるその女の事を実の妹のようにかわいがっていたのだから、そしてそれを理不尽にも奪われたのだから。即ち、これは彼の復讐である。ごく当然の摂理だ。何らおかしい話では無い。

 

 堕ちた『皇帝』では無い。

 ただ一人の家族を想う男は答えた。

 

「許しは請わない、恨んでくれ」

 

 断末寸前の悪魔の疑問には答えない。

 ただ、恨んでくれと、それだけを告げるベリアルの背には、()使()()()()()()()()()()()()()。そして、その手には天使と堕天使のみが持ち得る光の槍が当然かの様に握られていた。

 

 ある書物によると、ベリアルという存在は序列68番の強大にして強力な王であり、80の軍団を率いる王である。

 ルシファーに次いで創造された天使であり、天上にあってはミカエルよりも尊き位階にあったと自ら語る。

 また、ベレト、アスモダイ、ガープと並んで72人の悪魔達を率いていたとされた。その姿は燃え上がる戦車に乗り、美しい天使の姿で現れる。

 

 

『──帰還を歓迎しよう。序列第68位ベリアル。

 初代からの契約は、今ここに果たすよ』

 

 

 その出会いは偶然では無かった。クレーリアが殺されたあの日、絶望する悪魔の前に彼は密に現れた。大いなる王『ソロモン』。その残滓と言ってもいい。悪魔との契約に縛られていた破片。その存在はベリアルを受け継ぐものを待っていた。

 

 古の契約。それは再びの隷属。

 対価は叶う範囲での願望の成就を二度。

 死者の蘇生など、叶う道理は無い。

 ならば、願う事はただ一つ。

 その為に彼は生まれ変わった。

 

 彼は待つ。「悪魔の駒」開発者を。

 いつまでもいつまでも、待っている。

 




ベリアル(初代)
存在、理念、思考、その全てが漏れなくペテン。主張が十秒後に180度変わる事などザラである。ただ面白そうだからという理由で『救世主』を告発し、その傲慢故に堕天し、神の怒りに触れその身は悪魔へと変貌された。ソロモンとの契約から見るに血縁者に対する愛情はちゃんとあった模様(尚前述)


謀ったなソロモン()さて、今回は大破壊回でした。お気に入り登録をして下さった689名の皆様!評価をして下さった52名の方々に留まることのない感謝を!では今回はここまで。最近多忙で胃が死にそうな「書庫」でした。かしこ。






『じゃあ、僕もそろそろ行こうかな』



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