予定では沖田VSトライくんにするつもりだったんだけどこっちの話の方が早くできたのでこっちを先に。沖田VSトライくんは次回にまわしますぜ。
現四大魔のが一人にして『超越者』にその一人に名を刻むアスタロトの末裔アジュカ・ベルゼブブは人間界にいた。
彼は人間界にて、とある『ゲーム』を運営している。勿論、ただのゲームなどではない。彼はこのゲームを利用して未発見の2つの神滅具「蒼き革新の箱庭」と「究極の羯磨」を捕捉している。
それを操る『バグ』こと神崎光也とアジュカは対立関係にあるとされているが、それはここで語るべき物語ではない。
とにかく、人界にいた筈の彼は不意に冥界へと飛ばされた。誰に?『絶霧』に包まれた冥界へ『超越者』を気取られぬ様に転移させるほどの芸当を持つ存在は誰か?
「これで契約は完全に、完璧に履行した。
あとは君次第だよ、ベリアルの末裔」
その存在は当の古い昔に蘇っていた。
即ち、古代列王記に記された者。
即ち、72の悪魔を支配下に置いた者。
即ち、世界の破滅を願う者。
そう、それは言うまでもなくあの男だ。
「しかしまぁ極東も随分と発展した。叶うならあの
ソロモン王。彼以外にあり得ない。
「さて、そろそろ着くかな、駒王町」
「ごめんねそこのコスプレしているお兄さん。ちょっと時間いいかな?」
「あっはい」
それはそれとして、この現代社会において古代の服装を着た人はやはり不審な眼で見られるし、警察のご厄介になるのも当然のことである。このあと彼は魔術で警察署から脱走するのだが、それはまた別のお話。
■ ■
「…あ、……?」
放心。緑の髪が特徴的な青年、アジュカ・ベルゼブブの現状態を語るにはそれが一番相応しいものだろう。
彼はしっかりと冥界の土に二本の足を立て、体の重心を固定している筈だ。
それでも、眼前に広がる凄惨にしてあり得がたい。或いは、あり得てはならない悪夢の様な事実には目眩と立ちくらみを覚えた。
「…いったい、何が…」
地獄に広がる地獄。その言葉が表現に最も相応しい。冥界の空を見たことも無い龍が舞い、地に向けて光を幾千条も落とす。浮遊する都市アグアレスには火の手が上がる。首都リリスがあるであろう方角には数多の炎の柱と爆発が起こっていた。
ファルビウムは? セラフォルーは?
サーゼクスは、何をしている?
彼は友であり、同じ超越者であるサーゼクス・グレモリーを信じていた。信頼していた。だからこそ、この事実が噛み砕けず、飲み込めなかった。
そんな彼の前に、一人男が立つ。
「遅かったですね」
「ッ、ディハウザー、いったい何があっ…⁉︎」
「本当に本当に遅かった」
灰色の眼に灰色の髪。そして整った顔立ち。
その男の容姿は間違い無く「
「何だ…その白い羽は?」
「そしてこれからも、貴方達魔王は遅い。…すでに大王派の化石どもは死んだよ。ゼクラム・バアルは最後まで世迷言をほざいていた。ともなれば、次はお前達だ」
その背からは天使の象徴たる白い羽が広がっており、その手には天使のみが用いる光の槍が握られていたのだ。
目を殺意に染め上げて魔王を睨むその悪魔。否、悪魔だった存在は現在の蝿の王の質問には答えない。
「これは、八つ当たりでもあり逆恨みだ。きっとそうだ。だが、これだけは言わせてもらうぞ、
「貴様は、王になってはいけなかったんだ。
私達は、貴方を選ぶべきでは無かったんだ」
アジュカはその言葉に目を細める。そして距離を取る。どういうことだ?、と魔王は悪魔に向けて問いを投げかけた。それに対して悪魔は冷ややかな眼差しで魔王を見る。
ベリアルは懐から一つの悪魔の駒を取り出した。それも『王の駒』。
ベリアルはそれを地面に落とし、踏みにじる。
「起源は従妹の死とその理由だ。『王の駒』、いやそれ以前に『王の駒』が生まれる理由である『悪魔の駒』なぞ無ければクレーリアが死ぬ可能性はまだ低かったのかもしれない。……これが彼女の死を確定的なものとした。それは確かだ」
始まる。取り返しのつかない反動が始まる。棚上げにしていた問題が、重さを増してのしかかる。
初代より失われていた白翼を取り戻したベリアルの血を継ぐ者は、その手に握る光の槍の切っ先を王へと向けた。
「そもそも、悪魔の駒は全てにおいてふざけている。材料から何から何までな。根幹からして、今頃同胞が襲撃しているアグアレスが破壊ないし転移されたらこの再興策は破綻する。…何故、私は、こんな簡単なことに気づいていなかった?」
止まらない。止まる道理も理屈も無い。とうに限界は過ぎている。誤魔化せないところまで来てしまったのだから。
「そして何故悪魔に悪魔の駒が使える様になっている?貴方が種の再興として開発した希望は最早ただの『隷属を生む玩具』だ。 混血に使えるのであれば飲み込めた。だが、何故純血の悪魔に使える?明らかに種の復興に無関係だろう。 答えろよ、アジュカ・アスタロト。貴様はまさか『レーティング・ゲームを実用化する為にこれを作ったんです。種の再興はついでです』とでも言いたかったのか⁉︎」
ベリアルの口調が崩れ、荒れていく。憤怒に飲まれていく精神。それに逆らうことなく悪魔は、魔王に対する憤りを示すかの様に王の駒を足で踏み砕いた。
「…『王の駒』の件については謝罪する。アレは全面的に此方側の問題だ。だが『悪魔の駒』についてだが、手段はそれしかなかったからだ。知らないわけじゃ無いだろう。悪魔という種は子が出来にくい事実を。だからこそ、多種族を悪魔へと変えることのできる悪魔の駒だ」
魔王の諭す様な声色と目。それがディハウザーの神経を逆なでする。
「………ああ、そうか。何故こんな手段を私達は受け入れたのだろうな、不思議でならないよ。 子が出来にくい?だからなんだ。 ああ!ああ!そんな事がなんだというのだ!それは『三大勢力の存続自体を危うい物とする問題を生む手段』を取る理由にはならないだろう!愛で子供を成した方が確実で安全かつ最優なのは自明の理だ!」
「その手段は現実的では無い」
「それを現実的にするのが研究者じゃないのか⁉︎」
至極真っ当すぎる言葉が誰もいない荒地に響き渡る。肩を怒らせ息を荒げ、悪魔は憤怒を撒き散らし続ける。
「もういい、言葉など既に意味を成さない」
間違いを認めないのであれば語るべき言葉は放棄しよう。どうせもう貴方に何を言っても無駄なのだから。
であればこそ、私は私の償いを今ここに。
私は気付くのが遅すぎた。私には止めることができなかった。ああ、クレーリア、そして八重垣という顔も声も知れぬ人間よ。
許してくれとは言わない。攻めは其方で聞こう。でも、どうか、このひと時の間だけは。
「───沈め、詐欺師が」
私の身勝手な復讐を、見過ごしてくれないか?
「……残念だよ、ディハウザー・ベリアル」
冥界にて莫大な力が衝突する。
白き鳥の翼と黒き蝙蝠の翼。
それは、決められていた対立だった。
■ ■
「はぁー…ダメ?」
『ダメです』
コキュートス。それは地の最下層に位置する氷獄。最も重い罪と裏切りを行った者を永遠に縛り付ける場所。地獄の中でも極めて過酷な最果て。ここには「龍喰者」サマエルやコカビエルが投獄されている。
『理解しかねます。どうしてそこまで今の人類に
サマエルとは『毒ありし光輝なる者』という背反の意味の名を持つ、謎多き天使。 その昔は『エデンの蛇』として、原初の人間であるアダムとイブに知恵の実を口にさせた存在。
「否定的だねぇ。今もこうして逆境に立ち向かう人間もいるっていうのにさぁ。もう少し見解を変えてもいいんじゃない?それとも何?まだモーセに
『どうせそれも変わらないもの。いずれ遠くない未来、『停滞』に揺蕩うであろう彼等には、それが妥当な評価です。あとモーセは関係ありません。許せないのは確かですが』
その行為は神の怒りに触れ、結果として蛇とドラゴンに対する本来存在しないはずの神の悪意・毒・呪いを一身に受けることとなり、強力な「
「サマエルさぁ、本当は人間なんて見てないんじゃない?」
『……それはどういう意味です、サタナエル?』
かの者は「聖書の神」が死んでからも原初の罪を生み出した科により十字架に磔にされ、太い釘を身体中に打ち付けられ拘束具で全身を封じられている…筈だった。
「歴史を見ていないんだよ。多分お前、その時代はその時代の人間で断定して終わらせてるじゃない?だから紡がれる意図が見えてないって事。要するにさ、頭固いだろ、サマエル」
舌に油を注したのかと思うほどに饒舌な『告発者』サタナエル。それを耳にするのは何重もの拘束具に身を繋がれ、猿轡を嵌められた長い赤髪と光ない瞳を持つの女。そう、この存在こそ『サマエル』。
そしてそんな二人を幾人もの死神が取り囲んでいた。
『この話は無かったことに』
「ありゃりゃ、もしかして怒っちゃった?」
『怒ってません。怒ってませんよ』
本当に今更だが、現在彼女は猿轡を嵌められている為、念話でサタナエルに話をしている。
『…どうしてもというならば、証明を求めます。
貴方が言う、人間の可能性。
興味深い物ですが、仮説にしか過ぎません』
「へぇ、サマりんがこうもあっさりとは珍しいねぇ。もっと粘るかと思ってたんだけどなぁ?…ま、いずれ嫌でも見る様になる。その時が今生の別れなのが惜しいけど…」
告発者はその場からゆっくりと離れていく。
『それは… どういう意味です?』
「いずれ分かる」
そう言って、彼は冥界へと消えた。
それと同時に、サマエルの頭に拘束具が取り付けられ、死神に再び氷の牢獄。その最奥部へと運ばれていく。
『……困った方』
最後の思念は、誰にも届かない。
■ ■
さて、結論から語ろう。ディハウザー・ベリアルは敗北した。いかに魔王へ届き得る資質の持ち主と言えども『超越者』を相手には不足では無かった。だがそれでも、届かなかったのだ。
だが、しかし、だ。
地に倒れ、天井を見上げる白翼を持つ悪魔はそれでも笑っていた。確かに笑っていたのだ。それは達成感故に浮かべた笑みでは無い。そう、例えるというのならば───。
それに背を震わせながらも片腕と左目を捥がれた勝者、アジュカ・ベルゼブブは腹と胸を穿たれた敗北者ディハウザー・ベリアルへ沈痛な面持ちで語りかけた。
「…何故、こんな手段に訴えた?何故、裏切った?言葉ならまだやり直せた筈だ「黙れ」───…」
中断。敗北者の浮かべる顔は憎悪と憤怒に染まりきった物。
ぐちゃぐちゃと水音を立てながらも立ち上がり、ベリアルは最後の最後に怨嗟にまみれた声色で呪詛を残す。
「認めない…この世界の生存など、私は認めない。私の家族を、クレーリアを奪ったこの汚れた世界を、許す事などない…!」
最後の決意表明。『私は冥界を許さない』。それはどこまでもシンプルで、まっすぐだからこそ、誰にもそれを止めることができなかったし、元に戻す事も出来なかった。
そして、復讐者は、最後に爆弾を落とす。
「……既にソロモンは蘇った。私達三大勢力にとって最悪の存在は、この世に再び命の根を下ろしている。…私がここで消えても、止まることはない。王は、全ての破滅まで進む…!」
『ソロモン』過去に実在した王の名が出た途端、アジュカの顔色は衝撃と驚愕に一転してすり替わり、勝者だというのに余裕のない顔色を見せ、ディハウザーへ問い詰めた。
「どういう事だディハウザー・ベリアル!」
帰って来たのは諦観に満ちた笑みだった。
「どうもこうも最初からだ」
初代と王の契約。
ベリアルはソロモン王の復活に手を貸す。
ベリアルは再び王の名の下に隷属する。
ソロモンは代償としてベリアルの願いを先に二つ叶えるものとする。
子孫は初代の契約を果たすつもりなぞ無かった。あの男の再臨は即ち冥界と天界の終わり。三大勢力の『終了』に直結してしまうからだ。
だから、誰もその契約に手を出さなかった。そう、そう決めた筈だった。
「『お前達がしっかりしていれば』初代ベリアルとソロモンの契約が履行することはなかった。
この為に初代が隠した指輪だった。この為にバビロンへ落とした指輪だった。この為に果たした契約だった。覚悟していろ、アジュカ。───お前達の自業が、自らに帰ってくる時は来た」
さぁ、指輪はバビロンの穴へと落とされた。
かくして玉座は王による冒涜で満たされる。
ここに万来の喝采を。███の時は今来たれり。
信じられないかもしれませんがサマエルがモーセさんに目を潰された話はマジであります(真顔)
というかモーセさんその上サマエルの事杖で殴ってるんですよね。……サマエルが何をした。
( ※寿命が来たからお迎えに来ただけです)
因みに、モーセは死の天使カマエルを天界に入る際に殺害していると云う伝承もあります。
……カマエルが何をした。
( ※重ねて言いますがお迎えに来ただけです)
ハーデス「傍観に徹する」(サマエルをコキュートスから解放しながら)
サマエル
神により生み出された███。それ故に█████の外に在る。過去に████。現人類の価値を一切認めていない。なんならこのまま理不尽に滅べばいいと思ってる。サタナエルがなぜ今の人類に味方するのかわからない。杖が密やかなトラウマ。
カマエル
コキュートスにいるサマエルが暇潰しに作った天使。『原材料と役割はサマエルの眼』モーセに殺されたのでサマエルは一時期だけだが失明した。これ以降サマエルは横着せず自らの眼で世界を見る様になる。
ベリアル(初代)
存在、理念、思考、その全てが漏れなくペテン。主張が十秒後に180度変わる事などザラである。だが王の前では誠実であり続けた。彼はソロモン72柱の中で唯一最後に封印されず、地上へと残された魔神である。