黙示録の時は今来たれり   作:「書庫」

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獣狩りに行ってました(土下座)
更新ペース落ちとる…なんとかせねば…




言わなくても知ってるだろ?

「ギャハハハ! 見ーえてるかーい!

 こっちだーい! ギャハハ!」

『鬱陶しい奴だ…!』

 

 天に座す混沌の翼より降り注ぐ光が銀の蛇を焼く。焼かれた蛇の巨躯は天に昇り、その羽を毟らんと顎門が伸びる。羽は回り、踊り、それを済んでのところで躱してみせた。

 

「もしもーし?ちゃんと狙ってくださいよー?」

 

 それは踊る様に、戯れるかの様に振る舞い続ける。光と闇が夜の空に踊る。後に逃げ延びた一人の老人はこう語る。『まるで小さい時に聞いた御伽噺の世界の様だった』とまで。

 総じて三十二の光槍が蛇の銀眼へと向かう。暗黒の大蛇はそれをとぐろを巻くことでやり過ごす。蛇は鎌首をもたげ、開いた顎門からいくつもの闇の球体が吐き出される。

 

『目障りだ、落ちていろ』

 

 それは天を舞う者の行く先を阻む壁となる。直撃は必定であり、避けられない。辛うじて隙間はあるが、それでも掠りはするだろう。

 

「へぇ、…でも、さぁ!」

 

 黒と白、其処に蝙蝠の翼を携えた者。混沌たる姿であろうともある種の秩序を感じさせる者、矛盾を孕んだ者、『敵対者』であり『告発者』なる者、即ち『神の意(エル)』を持つ『叛く者(サタナ)』──サタナエル。

 

 彼は翼を折り畳み、一直線に隙間に向けて飛び込む。だがその隙間は意図して作られたものであり、罠である。

 待っていたのは顎門、その奥に潜むのは闇。

 

『捕らえたぞ』

「あらら、捕まっちゃったかぁ」

 

 竜の息吹(ドラゴン・ブレス)、という言葉がある。ファンタジー作品に触れたものならば恐らく一度は目にする単語だ。

 サタナエルの元へと吐き出されたものはまさしくそれだ。ただの息、されど空想に記された生物として頂点に立つ者の吐く息だ。

 

『悪く思うな、此方にも事情がある』

 

 かくして、その存在は暗夜の色を含むその息に飲み込まれた。空よりその光景を眺めていた者は目を見開き、信じられないという感情をその瞳に溶かし込む。

 

 しかし、

 

「いやぁ、効いたよぉ? いまのさぁ」

 

 その存在は未だ健在なり。サタナエルの前には光槍で組まれた盾があった。しかしそれもボロボロで、ほとんど盾の役割を果たしていない。だがそれは、彼の命を繋ぎ止める程度には役に立っていた。

 

『随分と見え透いた嘘をつくものだ』

 

 その気味の悪い笑顔が憎たらしい。そう言わんばかりに睨み牙を向ける蛇は原始の水より生まれ、闇と混沌を象徴し、太陽にとっての天敵であり、かつて滅んだ筈の原初なる晦冥龍(エクリプス・ドラゴン)、名はアポプス。

 

「……」

『……』

 

 衝突。その余波で空に衝撃が伝播する。

 

「ギャハハハハハハ!」

『……っ!』

 

 天使は光槍を両手に持ち、邪龍は空へ身を伸ばし、衝突し、幾度も曲がりながらも空を登りゆく。

 

『しかし生きていたか、人を愛した敵対者』

「そっちはわざわざ生き返っちゃったみたいだけどねぇ!」

 

 側から見たその戦いは最早災害と遜色ないだろう。

 

『丁度いい。一つ聞かせてもらおう。気になっていた。何故貴様はそこまで人間に与している?何故熾天使の一人でありながら、天界を裏切れた?』

「アハハハッ! さぁー? 一体何でだろうねぇ!なーんか裏切ってたんだよねぇ!気付いてたらいつの間に、考えるより先に体が動いてた。みたいな感じでさぁ!」

 

 この対立において二名の実力派は拮抗ではなく、完全にサタナエルの劣勢だった。彼の腕の骨は軋み、ひび割れて行き、衝撃をまともに食らったおかげで内臓は破け、血を吐き出していく。

 

『少しも真面目に答えないな貴様は』

「俺はもともとこういう奴さ!」

 

 自らのもつ大質量を活かした突進。それに対して巨大な廃材を投げる。廃材は勿論のこと粉砕。それは粉塵となり、蛇と天使の視界を遮り、撹乱する障害物となる。

 

『…』

 

 だが、それも、ほんの一時で、

 でも、その天使はほんの一時で充分だった。

 

「さぁ、ケリをつけようじゃないか…」

 

 払われた粉塵の中から、巨大な砲身が姿を現す。

 多薬室砲、驚異的な加速を砲弾に与えるガスタンクは、見るに十を超えて搭載されているだろう。

 そして円筒状のガスタービンジェネレータ、それは天使の背へと担がれ、それと連結する多薬室砲は天使の右手と接続された。

 

『……なんだ、その馬鹿げた武器は』

 

 ジェネレータが回り、出力が上昇する。それに伴い、熱が辺りに広がっていく。それはまるで初夏のように。冷却装置も尽力はしているが、焼け石に水程度だ。

 が、勿論アポプスも見ているだけでは終わらない。彼は万が一を考えてか小回りが効き、表面積の少ない人間体へと姿を変えて見せては闇の球体を数多に放つ。

 

「…やむを得ない…落とせッ!」

 

 空から声がする。邪龍が小さな存在と、気にも留めなかった小石の号令。

 そして空より降るのは『魔獣創造』より産み出された竜殺しの魔物。黄金獅子の鎧『竜狩り(オーンスタイン)』。

 落とされた二つの鎧がアポプスとサタナエルを遮るように降り立ち、その手にもつ十字の槍を振るい、闇を払わんとする。その身を穿たんとす。

 

『邪魔だ』

 

 だが無意味。処理にかかって一、二秒程度。さしたる問題にもなっていない。言って仕舞えば塵芥。しかし、その僅かな時間が後の命運を明確に分けた。

 人影が目に捉えようとする事自体がおこがましいと、そう思えるほどの速さで疾走する。

 

「…俺は見たいんだ、人間(こいつら)の、本当の生きる(ちから)が」

 

 砲口が向けられる。

 手の平が突き出される。

 

 爆音。衝撃。爆発。

 

 空にいてもその余波を受け取る。

 無人の瓦礫の山が更に崩落する。

 

『───ならば自動人形よ、早急に金星を穿つがいい』

 

 その地に残ったのは、

 何処へと去っていく朧げな闇であった。

 

 『此処』での撃退には成功した。

 だが、災禍に見舞われる地はあと一つ。

 彼等はそれに気づけなかった。

 

 

 

 

 ■ ■

 

 

 

「…来てくださり、感謝致します」

 

 魔王ルシファー、堕天使総督アザゼル、天使長ミカエル、これら三大勢力の頂点はとある教会にて再び顔を合わせていた。誰もが深刻、或いは剣呑たる面持ちであり、余裕は感じられない。

 

「前置きはいい、知ってんだろ? ミカエル。俺達が出くわしたあの化物の正体がよ」

 

 切羽の詰まった声色でアザゼルは急ぐ。一刻も早く、あの少年の正体を知らねばならない。そう、彼の直感は告げていた。

 

「ええ、確かに私は。否、()()()知っています。知っている筈なのです。その数字がなんたるかを、その数字が持つ本当の意味を」

「それは…一体どういう事なんだ?」

 

 ミカエルの物言いに違和感を持った魔王は怪訝な面持ちだ。だが天使長は話を意に介さず続ける。その顔は焦燥と不安の大海に沈んでいた。

 

「余りにも絶望的な実態です。私達、天界が招いた致命的な失態です。 …神の力を受けてなお、あの存在はその命を途絶える事なくこの世に在り続けた」

「おい、おい、待て。…神の力だぁ? 唯一神は先の大戦で死んじまった筈だろうが。つうことはだ」

「…神が己が死を予見しており、それ故になんらかの手立てを残した程の、危険極まりない存在だということか?」

 

 無言で頷くミカエル。張り詰めた緊張感が周辺を満たす。ほぅ、と長く長く息を吐く音がいやに鮮明にこだまする。暫くの沈黙の後、天使は重々しくその唇をやっと開いた。

 

「…ここに知恵が必要である。賢き者は、獣の数字にどのような意味があるかを考えるがよい。数字は人間を指している。そして、その数字は───666である」

 

‪ その口より詠まれたのは、恐らくは最も有名な『黙示録』である『ヨハネの黙示録』。その第十三章十八節。

 

 獣の数字『666』。

 

 この数字の意味については、古来より様々に解釈されてきた。例えるならば皇帝ネロ・クラウディウス。例えるならばローマ教皇。例えるならばニーコン総主教。例えるならばエホバの証人。例えるならば創世記。

 

「…本気に言ってんのか?」

「…彼は、自らの口でそう語りました」

 

 それは、聖書にとって最悪の存在。

 それは、赤龍神帝と並ぶかそれ以上の怪物。

 それは、存在してはいけない命。

 

「『黙示録の皇獣 (アポカリプティック・ビースト)』───トライヘキサ」

 

 世界を壊す者、存在自体が災害である者、神を殺し得る者、聖書を灰燼と化し得る者、虚なる者、正真正銘の危険生物。

 

「…世界が終わりかねない問題に、私達は向き合わなければ無くなったという事か」

「笑えねぇ、俺達でどうにかなる範囲を優に超えてんだよ。…策はあんのか、ミカエル」

「…現段階では───二つほど」

 

 二本の指を立て、語る。

 

「一つは、他神話にこの情報を公開し、トライヘキサ討伐の同盟を結ぶ事です。これがもっと堅実で容易な策ではありますが、トライヘキサを確実に討てるかどうかと問われれば間違いなく否でしょう。被害も大団円で済ませられる物でないことも明らかです」

 

 一本の指を折り畳み、語る。

 

「そして、もう一つ。この策は難解で、決して良作とは言えません。何しろ前例がないものですから…ですが、成功こそすればトライヘキサの粛清は、確固たるものとなります。

 …この策の立案者は、メタトロンです。内容は彼が神より授かった、『その手段』を実行する事となります」

 

 メタトロン。契約の天使、万物の創造主、天の宰相、天の律法学者、天の書記、神の顔、神の代理人、炎の柱、小YHWH…等の数々の異称を持つ天使。ミカエル、ガブリエルを凌ぎ得る程の力を持つ者、最も神に近い天使の内一人。

 『神の代理人』たる彼は当初困惑した。

 何しろ彼も知らぬ内に『その手段』が記憶の中にあったのだ。そして彼は、無意識の内にそれを口にしていた。

 全てを理解した天使達の中で、一つの確信が生まれる。

 

 

「それ即ち、──『神の復活』の為の手段です」

 

 

 我等が(ちち)は未だ世に健在なり、と。

 

 

 

 




サタナエルの使った兵装の弾頭は実弾なので大丈夫です。核弾頭にあらず。環境的な問題も無いし連続ブッパしてもへーきへーき(面妖な変態技術者感)(使用者への考慮は清々しい程無い)(作成者ソロモン)


さて、原作では忍者被れなメタトロンですが、書によると彼は『エノク』を前身とした天使であり、自分に背く者たちを串刺しにしたちょっとやんちゃな逸話があります。(白目)
当初、彼は地上生まれだからという理由で他の天使に蔑まれたりしましたが、神は彼を褒め、天使の名を与え、最高天にいる者を集めて彼を小YHVHであると宣言しました。

そんな彼ですが、外見すごいです。
世界の高さに匹敵する背丈
 (神様の所に頭が届く程)
背骨の無事を疑う程の量の翼
 (72または36枚)
昆虫類も引くレベルの数の目
 (数にして36万5千)

 ※元人間です。
 ※目多トロンとか言わない。


では最後に、今後に関わる重要なことを一つ。
「ソロモンの歳入は、金『666』キカルである」



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