友「最新話マダー?」
正気に戻る私「ブァァアアアハアハアハアハアハアハ!!!!!(高速で動く指)(部屋に鳴り響く執筆用音楽)(ドデカミン完備)(期待には答えずにはいられない)(そんな言葉に弱い)」
友「お前そのうち過労死しそうだよな」
空を滑空する飛龍に乗る男は三人。
一人はボロボロな制服を纏う曹操。
一人は大きめなパーカーを纏うレオナルド
一人はスーツを着こなしたサタナエル。
アポプスを撃退した後、彼等が向かったのは仏蘭西だった。発見時刻よりかなり経ってしまったが、それでも向かわねばならないだろう。
「…焦げ臭いな」
「ああー、これ手遅れってやつだよ」
ようやく末端へとたどり着く。龍から降りた彼等が見たのは、其処には荒廃しきった大地と、骸の様に倒れ積み上がっている焼き焦げた木々の山だ。
所々に残る血痕から、先ほどまで誰かが争っていた形跡も見て取れた。というよりもそれ以外考えられ無いのが現状だ。
「人の血では…無いか」
「…悪魔と龍が主だね」
ぽそりと神器『魔獣創造』を持つ少年、レオナルドは零す。神器の特性上理解出来るのか、理解せざるを得なかったのか、それを知るのは当人ばかりだ。
「…なかなか面白い事になってるじゃない?」
濃密な殺気とでも言おうか。ともかくそれに近い「大変よろしくない感情」を感知したのか、サタナエルの目は茂みの奥へと投げられる。
時折聞こえる殴打音、塗りつける様な水音、砕ける様な音。当然皆その方向へと向かう。
彼等が最初に見たのはゾンビの様に足元にしがみ付く赤い塊と、それを振りほどこうと何度も足を木に叩きつける銀の男。
銀の男は番外の悪魔、ユーグリット・ルキフグス。現魔王が一人サーゼクスの妻であるグレイフィアの実弟であり、魔王と遜色のない実力を持つ悪魔。
赤い塊は血と傷にまみれた吸血鬼、ギャスパー・ヴラディ。意識も薄く、命が遠のきながらも必死にしがみついている。
その惨状を目の当たりにすれば曹操は背に背負う青龍偃月刀『冷艶鋸』をその手に取り、回し構えれば流れるように悪魔の心臓を目掛け、躊躇なく突き出す。
銀髪の男は驚きもせず偃月刀の柄を取り、直撃を避けるばかりではなくそのまま投げ出し、大樹へと叩きつけようとする。
だが曹操は身を翻し、幹を蹴り付ける事で得た速度を持ってルキフグスに踊りかかり、切り倒す勢いで獲物を縦に振るう。
長い切り傷が地に刻まれる。その後で、サン、と軽く乾いた清涼な音が小さくも明確に鮮明に響き渡った。
それと同時に、無数の魔獣が周囲を囲み、ルキフグスの退路を塞ぐ。
「…まったく、今日の俺は運がない」
「日頃の行いのせいとか?」
「心当たりがありすぎるな!」
軽口を叩き会いながら向かう曹操。それを援護する少年。それに相対する銀髪の男ルキフグスは面倒だという悪感情を隠さずに、露骨なまでに顔に出した。
───それを尻目に。
「もしもーし、聞こえてますか?」
「ぅ、ぁ……っ」
サタナエルは赤黒に塗れた少年を連れて、遠くの方へと避難していた。彼はまだアポプスと争った後の傷が癒えていなかった。それに加えて、使用した兵装の反動もあり、完全なお荷物と化していた。
だから彼は今の己にできる事のみをこなしている。
「…っ、ぅ、ぁぇ…ぃーを…っ」
「………なんつー厄ネタ拾っちゃってんだあの
血の塊と言っても変わりない。だがそれでも少年は蠢いた。そんな彼を助けるかの様に、闇そのものが少年の体躯を包む。
そしてその場に居合わせた天使はその力の根幹を知っている。
其はフォモール神族の王。
彼の者の肉体は凡そ大半の武器を通さぬ盾であり、彼の最大の武器は見たものを殺す、父の儀式を見た事により獲得した邪眼である。
それがありながらも彼は光神ルーに敗北を喫する。死した神である彼は一体どこへと行くのか。
その答えがギャスパー・ヴラディだ。
彼の中に、断片化したバロールの意識がある。ソロモン王はそれをしってか知らずか、どちらにせよ引き当てた。
闇が、黒がギャスパーを覆っていく。次第にそれは巨大な狼の形をとる。だがその身体は余りにも痛々しい。
「■■■■っ…! ■■■■■■!!」
人ならざる雄叫びをあげ、その獣は確かに発った。茂みの奥へ、より深くへ、駆けて駆けて、駆けて行く。
「…これだけ見てもまだ足りないか?サマエル」
空を睨み、サタナエルはそう零す。
■
ソロモン、否『ただの人間』では『超越者』に勝つ事は難しい。不可能と言っても過言ではない。それ程にまで土台の差が大きすぎる。
五十メートル走で例えるとしよう。ただの人間のスタート地点が正当な場所だとして、『超越者』のスタート地点はゴール間近というもの。どう考えてもフェアではない。
だからこそ、ソロモンがリゼヴィムの前に敗北を喫するのは当然の帰結であり、定めだった。いかに魔術に優れた王だとて、『超越者』の前では不足だったのだ。
「…まぁ、よくやった方じゃない?お前?」
「……うるさいな……」
だがただでは終わらせないのが人間の意地という物。
彼はリゼヴィムに重傷を負わせることが出来た。腹を穿ち、腕を朽ちさせた。
だがそれでも、それはただの自己満足に過ぎないとソロモンは忌々しげに己を嘲弄する。
「なんか言っときたいことあるんじゃない?」
「…そうだねぇ」
廃墟の壁に埋まったまま王は笑う。ぴん、と人差し指を立てては悪魔の胸に向けて指す。
「お前が嫌いだ」
「奇遇だね、俺もだ」
どごん!と思い打突音と共に王の手は重力に従い、落ちた。
瓦礫から引き抜かれた悪魔の腕には濃淡な鉄の香りを伴った赤い粘液がびったりと張り付いている。
「あーあ、退屈になっちゃったなぁ…いやいや随分かき回された。おかげさまで計画は見事にジ・エンド目前ってね…け!ど!」
目先の楽しみに思考を奪われ少しどころか、かなり大っぴらに暴れ過ぎた。最初から要注意と特定される様な存在がそんなことをすれば、如何なる手段を使ってでも排除されるだろう。
ゲームに飽きたかの様な子どもの声色で。彼はそのまま手頃な大きさの石塊に腰掛ける。欠伸をしてはそのまま寝転がる。
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!十分楽しませてもらったぜソロモン。これならインドのやべー奴等に文字通り擦り潰されてもお釣りが来る!お前は俺に最高の娯楽を提供してくれた。三千年前からお前は最高だぜ!今も昔も変わらずに!!!! 」
意識を失った男へ狂気の笑いを捧げるリリン。
彼は最初から狂っているのかそれとも、彼が表に立つ時代ではこれが正常で、今の悪魔の方が異常と認定されるのか。
それは当時の悪魔のみぞ知るところ。
まぁ、人間から見ればどちらとも異常なのだが。
瓦礫から腰を下ろし、ソロモンが小脇に抱えていた少女をつかみ、そのまま持ち上げる。
勿論ただの少女では無い。
神滅具、或いは聖遺物が一つ。
『幽世の聖杯』所持者である少女。
名をヴァレリー・ツェペシュ。
彼女の持つ聖杯は生命の理を覆しかねないほどの力を秘めており、禁術の領域である「再生」を可能とするが、その莫大な命の情報量を扱う特性上、使うたびに生命のあり方を強制的に見せられることとなり、精神を代償とする。
彼女がいる限り、彼の計画はある程度持ち直しが効いてしまう。聖杯は再び悪辣な演算に使用されてしまう。 彼女の持つ命は代替品として維持され続ける。
ギャスパー・ヴラディはそれが許せない。
悪魔の腕に掴まれている少女が、突如として傷だらけな闇の獣に攫われる。
それは獰猛に息を吐く大狼。
狼の四肢は見るも無惨にボロボロで、じくじくと疼く傷は満遍なく刻まれている。
維持が不可能なのか、大狼の闇が晴れる。
大狼の正体は言うまでもなくギャスパー。
彼はうつ伏せのまま腕中にヴァレリーをかばう様に横たわっており、視線で射殺さんとばかりに悪魔を睨みつける。
「ヴァレリーに…触るな…!」
「ごめんねー、今時間ねーの」
だが無意味。矮小な体躯はサッカーボールの様に蹴り飛ばされる。跳ね飛んだ体は無情にも鉄くれの海に落ちる。
どぽり、と赤い塊が全身の傷という傷。穴という穴から染み出す様に広がっていく。
「いやぁあのフリードとかいう野郎も良くやった方だぜ。こんなんだったらあいつ勧誘しとくべきだったかなー。
ま、どうせだしこのまま此処に来てもらおっかな!丁度此処にソロモンが持って来てくれた聖杯があるからね!うっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
少年は霞む視界で大切な存在が食い物にされていくのを見る。奪われるばかりの少女がどうしても網膜に焼き付いてしまう。
いやだ、ふざけるな、やめろ、声だけはいくらでも出せる。だが止める手段がなかった。力がなかった。
「こんな…っ!……こんなっ……!」
ああ、
「お前がぁ…!お前達がぁ…!」
誰も助けてくれなかった。
誰も手を伸ばしてくれなかった。
その中で救ってくれた子がいた。
だから、そんな子が、こんな単純に踏み躙られるのは、どう考えても間違いなんだ。
「嫌いだ!!!!」
叫びと共に大地がうねる。否、蠢くのは大地では無い。それほどの規模を持つ莫大にして広大な闇の領域。
これこそがギャスパー・ヴラディの持つ神器の内包する魔神バロール。その断片と融合し新たに生まれた神滅具『時空を支配する邪眼王』。
それより生まれ出ずる闇は全てを喰らい尽くす。彼はそれを応用し自らの姿を変化させていたが、それを起こす力などもう無い。だから、恐らくはこれが最後の悪あがき。
黒がリゼヴィムを拘束しようと、喰らい尽くそうと、迫る。だがそれは霧散する。何も無い。たった一人の少年があがいてもがいた結果は、何も無い。無駄だった。最初から最後までこの少年の足掻きと
奔走は無駄だったのだ………『本来ならば』。
ガラスの砕ける音が鳴り響く。
リゼヴィムの真正面に穴が開く。それは小さくも位置は確実に心臓を狙う物だった。
咄嗟にその場を離れようとした悪魔の腕を白く脆い、あどけない手が掴み、引き寄せる。
空間が裂ける。開いた穴から身を乗り出したの者は、その場にいる生命全員に巨大なショックを与える。つまりはそれほどの力を内包した存在。
誇らしく広げられた六枚の翼。
天を指す十の角。白く光る肉体。
迷いの無い瞳。揺るぎのない芯。
トライヘキサは、少年は戻って来たのだ。
その微かな時間を、ギャスパーは勝ち取った!
「………おやすみ」
そうして、少年は服を掴む己の左手を巻き込む形で、ためらいも逡巡も見せることなく、悪魔の心臓を貫いた。
白い光が一つの肉体より突き出す。それは確かに血を纏う。少年の左手首から先は消失している。だがそれも直ぐに治ってしまう。
「あー、…ははは…なんだ、つまんないなぁ」
血を垂れ流しながら悪魔は嗤う。遊びに飽きた子供のように。おもちゃを取られてしまった幼子のように目尻を歪ませながらも不遜に笑い続ける。命乞いをしなかったのは最後の意地か。
「…………」
その身は大火へと焚べられる。やはりその火は少年の体も諸共に焼き焦がしていく。
少年の灰は空に舞う。それはきっと、多くの命の眠る地に落ちて行く。
少年が守れなかった命。少年が殺した命。大きな命がここには眠っている。目には見えていないけれど、多くの死が埋まっている。
少年は瓦礫を掘り起こしていく。
今やれる事を精一杯やり尽くす。一つでも行方が途絶した『死』がない様に、遺体を一人でも多く見つけ、安置する。自分が出来ることはこのくらいだ。
少年は瓦礫を掘り起こす。
獣特有の嗅覚と感は働いている。一人、また一人と見つけていけば周辺の瓦礫をどかし、積み上げ即興の台座を作りそこに安置していく。少年はそれを、ずっと繰り返していた。
そして、長い時間をかけて、全ての遺体は安置された。
ソロモン「どっこい生きてる」
リゼヴィム(死)「えっ」
ソロモン「だって死んだとかその命は終わったとかないじゃん」
魔力で命を繋いでる感じです。(減り行く寿命)
曹操の戦闘シーン書いてるときが一番それっぽく書けてるんだよなぁ…なんかこう…書いてて楽しくなる。
さて、トライヘキサは彼なりの出来ることをやりました。人間に憧れていても化物だからこそどうしたらいいか分からない。それでも彼はちゃんと自分でやれる事を見つけた。まずは一歩めです。
次回「離別と出発」
龍殺しフリードの小さな葬式と、バビロニア待機組の話。