日本神話「アザゼル子供の世話しっかりしろよ…」
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「こいつは許されない(使命感)」
こんな流れです。
では、どうぞー。
神々の悪戯
ヴァーリ・ルシファーは強さを求めた。だから今日に至るまでずっとずっと戦って来た。だが彼は何度も何度も打ちのめされた。彼は所詮、井の中の蛙にしか過ぎなかった。
最初の無謀はトライヘキサ。十全な力を失った彼に挑み、完膚無きまで敗北した。
次の無謀は須佐之男命。かの大神が幾瀬 鳶雄を屠る現場を見た白龍皇は彼に挑んだ。鍛錬も積んだ。力だって増していた。
だからなんだ?
神を前にした白が、朱色に染まるまでかかった時間は一秒でも遅すぎる。
大蛇を刈り取る英雄神は”甘え方を知らぬ赤子に構う時間はない,,と眼を合わせて明確に言い放った。
それ以降、ヴァーリ・ルシファーは現在進行形で日本神話のもとに捕縛されている。
「───そういうことだ、羽虫。この件に一体どのような形で責任を取るつもりなのか、我々八百万の前にして宣え。如何なる発言も認めよう、私は貴様らの誠意が分かればそれで良い」
ヴァーリの犯した行動は、当然と言うべきか、養父を務めたアザゼルの責任問題となる。故に彼は出雲大社に召喚された。
再開する白龍皇と堕天使総督。彼等を取り囲むのは八百万の神々。それは付喪神から天津神に至るまで。
濃密が過ぎる荒れた神気が、なみなみと社を満たす。それは意識の無いヴァーリや、天照と相対するアザゼルの身をジリジリと焼くが、神々はその気を全くもって緩めない。
「……ッ……ハッ…ァ…!」
息を吸う事さえ重労働。それでもアザゼルは確かに口を開いた。
「…俺の監督不行き届きと、対処に遅れた事が招いた事態なのは認める。……この場で、正式に謝罪しよう…っ 責任も取る。俺は、お前達に協力を惜しまない…」
下手に逆らう、などとはしなかった。彼は己に非があるのは理解しているし、此処で相手を怒らせた場合、被る被害も尋常では無いと心得ている。
何より、此処で日本神話と亀裂を作って仕舞えば、来るべきトライヘキサ討伐戦線に協力が得られなくなってしまう。
「ほう? 協力を惜しまないと言ったな?」
「ああ、言ったぜ。俺が招いた問題だからな」
日輪の神、天照は笑う。まるで蟻を潰して遊ぶ童のように。その笑みに悪寒を覚える堕天使総督。
彼は見誤っている。神がなんたるかを履き違えている。だからこそ、こんな事になるのだ。
「では日の本に巣食う蝙蝠と白羽を鏖殺に行ってこい。さすれば、今回の不敬は不問とする。期待しているぞ? アザゼル」
お前一人で日本にいる悪魔と天使を皆殺しにしてこい。そうしたら許してやる。彼女はコロコロと無邪気に笑いながらそう言った。
「な、ぁ?はぁあ⁉︎何言ってんだ⁉︎」
「貴様の処罰だが?」
「ふざけやがれ!そんなもん認められるか!」
ガン! と床を拳が叩く。それに全く怯みを見せない神々。それどころか付喪神や木霊でさえクスクスと小馬鹿にした様に笑い始める始末。
「おお、
「っ、…クソっ!」
「まぁ、そう気を荒立てるな。まだ本決定では無いのだからな。だが可能性の一つとしてその空洞な頭に入れておけ」
「んな可能性認められるか!」
「ふふふ…まぁ、よく吠える『餓鬼』だ」
ここまで来て、神は『冗談だ』などとは一言も言っていない。
話は続く。だがそれは処罰に関したものではない。堕天使が放置して来た問題であり、神々は指をくわえてみることしかできなかったもの。
過去の所業が、黒い羽根を毟る。
「ではそうさな、貴様ら黒羽が、今まで殺して来た我が子孫達についてだ。これは如何にして責任をとる?協力を惜しまない程度では不足だぞ?さぁ、教えておくれ、アザゼル」
「神器の回収は、世界を保つ為に必要だった。…昔は安全に神器を摘出するほどの技術がなかった。…だがそれでも、そうせざるを得なかった物だってあった。お前達だって分かるはずだろ?」
もっともらしい理由。
なるほど、それなら仕方がないかもしれない。
ああ、死んだ人達は無駄では無かったのか。
ああ、これは誤解していた。
「……なるほど、これに関しては、我々が見誤っていたな、いや失礼だったな、謝罪しよう」
なんて、
「とでも、言うと思ったか?」
言う訳が無い。
「貴様は我々の怒りを侮っている。堕天使よ、貴様は我が子を殺された時の気持ちを知っているか?
それでも手を下せない歯痒さを知っているか?
死にたく無いと願う御霊を
…はるか昔信仰によって生まれた神々は、長い時を得て人と交わる事となる。そうして生まれた子は人や神と交わり、子を成していく。
それは脈々と受け継がれた確かな
つまり、日の本の人間の血を延々と遡ればそれは必ず、八百万の神々へと繋がる。彼等は恐らく最大規模の血族、否、家族だ。
「貴様は、貴様らは、己の『娯楽』の為に何人殺した?平穏のためなどと笑わせるな。不要だ。人間を、我が子らを舐めるのも大概しろ。
そもそも貴様ら程度に世界を任せた覚えは無い。私は三千年前に人間へ世界を任せたのだ。断じて貴様らでは無い」
「なっ─────⁉︎」
今より遥かな太古、三千年前に全ての神話が終わった。
それは終末や衰退などでは無く、決断の上での乖離。
北欧で例えるのならば、本来ならば神々の黄昏があり、その後に人類史が正式に始まる筈だった。だが神々の死に場所は、訪れる事が
数多の神々は自ら地を去った。そうする事でしか、人類に世界を明け渡せなかったのだ。当然正式な終わりでは無い。
だからこそ、その弊害は今も続いている。
「しかるべき責任を取らず滞納を続ける愚鈍な者共が、貴様らの面と家屋に糞を投げつけてやりたいと須佐男が言っているぞ」
「さらりと儂の黒歴史掘り返すのやめて?」
日輪は席を立つ。それと同時に、月詠と須佐男を除いては、その場にいる全ての神々が跪く。
その歩みは緩やかでいながらも、迫り来る死の想像を堕天使に強制させた。
「貴様なりの誠意はよく分かった。では我等八百万は決を下す。白龍皇の死を、贖いの対価としよう」
「⁉︎」
須佐男、と姉が弟の名を呼ぶ。すると彼の腕からヴァーリが放り出され、わざわざアザゼルの眼前に置かれる。
意識はまだ無いのか、ただ横たわったまま何も言わない。彼の持つ『白龍皇の光翼』は完膚無きまでにぼろぼろだ。
そして絹糸で編まれたように白い、美しい太陽の手が悪魔の首へとゆっくりと、それでいて優しく当てられた。
アザゼルは駆けた。だが無意味。その身体は風に囚われ、自由動く事ができない。そして木の檻が彼を取り囲む。そこで見ていろと暗に語っていた。
「待て!!頼む!待ってくれ!何だってやる…!首を欠いて晒したって良い…!何度だって殺されても構わねぇ!だから…ヴァーリは…ヴァーリだけは……!」
「もう遅い」
次の瞬間ヴァーリ・ルシファーの肉体は、彼の持つ神器諸共骨すら残らずに焼失した。
放心する堕天使総督。養子とはいえ、己の子が確かに今殺された。だのに実感がわかない。だって仕方がないだろう。
まるで最初から誰もいなかったかのように、ヴァーリ・ルシファーという男は燃え尽きたのだから。
父は放心する。それはまるで、糸の切れたマリオネットの様。無様に膝をつく男。
天照はそんな彼の胸ぐらを掴み、檻の格子をへし折りながら手繰り寄せては額をぶつけた。
ゴギン、と真っ当な人間なら頭蓋が砕けるだろう。そう思えるほどの衝撃と音が響き渡る。
「なぁ、アザゼル。なぜ我等が貴様らを今滅ばさないか分かるか……?それに相応しい者がいるからだ。それを担うべき者がいるからだ。我々に手を下す資格が無いからだ…。理解したか?ならば立ち去れ。そして二度とその薄ら寒い顔を見せるな。殺したくなる」
その顔は怒りだった。この程度で済ませたくない。そう瞳に溜められた女の涙が語っている。
精神的にも物理的にもショックを受け、揺さぶられたアザゼルは、呆けた頭でこんなことを考えていた。
───この女は何故、泣いているのだろう?
ゆっくりと身体が落ちていく。痛む頭を抑えながらようやく立ち上がったアザゼルが、月詠に取り抑えられる。
『お引き取を。見送りますので』そう鳴けば、ふらふらと社の外へと足が進んでいく。まるでそう入力された機械のように。
■
中でも苦労したのはゲオルグだろう。偽装書類のために数日間にわたり徹夜だったのだから。
その証拠に彼は今朝方「いいか?俺は面倒が嫌いなんだ!」と虚空に向かって話していた。
しかしそんな中でも英雄派は鍛錬を怠らない。
「だー!何でいなすの!自信なくすじゃないかぁ!」
「はっはは、冗談がキツイ」
訓練用の木槍を振るうのは『黄昏の聖槍』所持者である曹操。
それと相対するのは『魔獣創造』所持者レオナルドが作り出した魔獣だ。
レオナルドが『ファラン』と呼ぶその魔獣の姿は遥か昔の騎士のようなもの。そして尖ったシルクハットのような兜を目深に被っていて、その双眸の色は分からない。
翻る外套は劣化して綻んで見えるが、それはまるで燃え盛る炎のようにも見える。
かの者の右手に持たれたのは大剣。左手の逆手に持たれるのは短剣。ファランはその二振りを狼のように振るい、曹操を翻弄していく。
「……それなりの膂力もあり、それに見合った俊敏性と技能。で、竜よりも低コストで負担もかからないか」
曹操は冷静に分析をしながらファランの剣戟に対処するが、彼自身、徐々に勢いに押され始める。
何度も続く剣と槍の打ち合いの果てに木槍はへし折られ、彼の喉に大剣の切っ先が当てられた事により、戦いを制したのはファランだということが証明された。
「……俺の負けだな。まだまだ学ぶことは多い」
ほぅ、と息を吐きながら大人しく両手を上げる。それと同時に騎士の持つ大剣は静かに降ろされ、短剣もまた無事に鞘へと収まった。
組手が終わったなと見計らえば、水筒をタオルを持ちながら駆け寄る少年ことレオナルド。
「ファラン、どうだった?一応試作品だけど」
口元を甲で拭う曹操に少年は問いかけた。対して、問いを投げられた男の返答は一切の贔屓がない、彼なりの正当な評価だ。
「悪くない、学習能力を高めたのは正解だな。途中から俺の攻撃はほとんど対処されて驚いたぞ?」
「…そっかぁ……ふふん」
年相応の笑みを見せる少年。なかなかの評価をもらえて上機嫌なのか、足はぷらぷらと揺れている。
「うん、これなら竜の代わりに量産して大丈夫だろう。襲撃日までに何体作れそうだ?」
「そうだね、一個大隊くらいかな。足りない?」
「いや、十分だ。冥界と天界を同時に落とす算段はもう着いたわけだしな」
『第二次侵攻作戦』と書かれた紙の束を懐から取り出し、手早くページを開いて確認しながら曹操は頷く。
本来ならば天界への襲撃が予定されていたが、それは変更され冥界に対する襲撃も加えられた。つまりは同時襲撃だ。
理由としては二つ。
一つはトライヘキサの封印がほぼ外れた事。
もう一つはとある『協力者』ができた事。
「…すごい怒ってたよね、あの人」
「いや人かなあれ…?まぁ、何にしても、少々過剰戦力となってしまったな。だからと言って勝てる確信はないが、自信はある」
折れた木槍でトントンと肩を叩きながら不敵に笑う。その発言に奢りなどない。そこにあるのは揺るぎのない己と、同志達に対する信頼だ。
「本当に勝てると思う?」
「勝てるように、頑張るのさ」
この世界での日本人は誰でも己の家系をずうーーーっと遡れば、最終的に日本の神の誰かへとたどり着く様になってます。
ん?幾瀬 鳶雄?今頃平穏に暮らしてると思いますよ?堕天使とかのことなんて忘れて。
さて、レオナルドですが対超越者用の最高傑作はもう完成していたりします。あとは使うだけ…!
次回「無限と虚無」
「だから僕はグレートレッドを倒せないって!」
「我と組めば、きっと出来る」
「愚かな存在……しかし、…一考の価値はあるのかもしれません」
「ギャハハ!いーじゃん、盛り上がってきたねぇ!」
聖書の終了開始まで、あと僅か。