感想が…本当に嬉しい…筆が…進む(感涙を拭いながら)
さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、勝てなかった。そして、もはや天には彼らの居場所がなくなった。この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔。つまりは赤い竜と呼ばれるもの、即ち全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた。
████の黙示録 共同訳12:7−9より。
黙示録の獣が落ちた後の天界は慌ただしい事この上なかったであろう。最悪の伝説の実在、神の力の再臨、黙示録の獣の崩壊。皆それぞれ起きた事象を頭で噛み砕きながら仕事に当たる。
皆、獣が存命とは考えなかった。
何故なら神の力をその一身に彼は浴びたのだ。
生きている、と言われたら信じる方が難しい。
彼らの間で持ちきりなのは獣についてではなく神の力ばかりであった。やはり神は偉大な存在、我々は神に変わりこの世界を救う、などなど…奢りとも取れる物ばかり。
その中で一人、異分子が存在した。
異分子の名はガブリエル。
天界一の美貌を持つ天使。
彼女の中には幾つも疑問があった。
第1の疑問。
私達は正しいのか?
彼女には聞こえていた。
落ちる前の獣が囁いた言葉を。
「命の自由を想う…それを愚かと下すのか…
歪んでいるよ、神も、貴様らも、この世界も…ぁ」
この言葉が、彼女の中でしこりと残る。
天使長や他の熾天使に相談をした。
もちろん返答は「正しい」の一点張り。
第2の疑問。
何故神は獣の存在を我々に知らせなかった?
これが後に生まれた最大の疑問。
他の熾天使の回答はこうだ。
「神にも考えがあったのでしょう」「あの封印を見るに万全を期していたのは明白だ、それ故だろう」「悪魔や堕天使との交戦でそれどころではなかっただろう」
誰も彼女の中では解答にならなかった。
そして、第3の疑問。
これはまだ、誰にも打ち明けていない。
誰もいない空、彼女は小さくこぼす。
「今にして思えば───。
何故、神は■■■■の乱心に、
───
地よりその孤独な問いかけを嗤う者がいた。距離的にも決して聞こえない筈なのに、問いを嗤う者がいた。
それはスーツを粋に着こなし、さらに無精髭に目元までを乱雑にを覆う程よい長さの髪を持つ男。
「変わらないねぇ…いつも」
■ ■
柔らかな日差しが瞼の裏を刺激する。
意識は鉛の海から上がる様にゆっくりと浮き上がり始めた。
しかし身体は動かない。否、動かせない。
まるで何かに固められているかの様に。
瞼も開かない。どうやらこの体はまだ休息を必要としているらしいが、それどころではない。このままでは天使共に消されかねない。だから起きなければならない。
動け、動け、動いてくれ。
そんな願いも虚しく一つの気配が入ってきた。歯をくいしばる。悔しさが心を満たした。終われない、このままでは終われな──
そこで僕を包む感覚に気づいた。
まるで子羊の様に柔らかく、暖かなもの。
貫かれた箇所には布?を巻かれている。
…誰かに拾ってもらったのか?
……違うな、多分あいつらが僕を拾った。
尋問か、見せしめの処刑か、両方か。
耳が聞こえるのは幸運と呼ぶべきか、不幸と呼ぶべきか。
「…まだ目は覚めぬか…のどと腹の傷は癒えたし、そろそろ目覚めても良いと思うのじゃが…」
聞こえてくる声は幼い、鈴音の様に可愛らしい。普段なら少しはやさぐれた心が癒されるだろうが、今の僕の気分では一切合切全くなまでに癒されない。ただただ自分の無力さに死にたくなるばかりだ。
ちゃぽ、と水に肥えた布地が桶から立つ音。
そのまま水が滴り落ちる音。
額に柔らかながらも冷たい感触。
…再思考だ。
…と言っても判断材料が少なすぎて明確な決定が出せない。この錆びた瞼が開ければ、確実とは言えないけれど、でも見てもいない判断よりはずっと優れているはず…。
意地で瞼を開こう。気合いだ、気合い。元々住んでいたあの集落の人たちも病とか骨折とかしてても大概のことは気合いでなんとかしてたし、僕でもなんとかなるだろう。
「…魘されておるのか……」
だから頼む、開け、開いてくれ僕の瞼。
ひ、ら、け!
ぽふ、と柔らかな感覚が頭を走った。
不意に懐かしさがこみ上げる。思い出す。否、知っている。この髪を撫ぜる手のひらの温かみを僕は知っている。…この手の平を持つ人に悪い人がいないことも知っている。
なんでか、無性に泣きたくなる。
理由なんてわからない。胸を走る温かみに鼻と目の奥がくしゃくしゃになって、…何、これ。
「おお! 目が覚めた…か、…?」
そこまで思い出して、視界がはっきりしているけどぼやけていてよくわからない。油断しちゃいけない状況が変わっていないことなんてわかってる。だけど、だけど今は、今だけは。
「…泣いて、おるのか?」
■ ■
さて、少年の落ちた地は裏京都。言うなれば有名観光地京都の影、例えればコインの裏側であろうか。
ここ裏京都には多種多様な妖が暮らしており、それらを収める総大将もいる。総大将の名は『八坂』その正体は恐らく妖の中でも最もポピュラーな『九尾の狐』である。
現在人間の姿に化けている彼女の眼光は己の娘『九重』が撫ぜる少年『
トライヘキサは現在心臓の位置に水晶の杭が立ち、そこから伸びる光の鎖と枷が手足や翼にはめられ封じられてはいるが、それでも油断はできない。確かに彼は万全では無いが、確かな強さがあると直感的に彼女は察知していた。
ただ───。
「ま、まだ傷が痛むのか?大丈夫なのか?」
「ごめん…もうちょっと撫でてくれないかな…だめ?」
眼に映る幼子の戯れに、毒気を抜かれたのかそれと多少は信を置いたのか、世を嗤うかの如くカラカラと笑声を小さく零せば一言だけ、母に相応しい声色でただ一言。
「なんじゃ、ただの仔狼ではないか」
少なくとも彼女の眼にはそう見えた。
『母として』の彼女には。
では『妖の元締め』としての彼女には?
「……油断は出来んがの」
それは問うまでもない事だ。
…トライヘキサが裏京都に落ちてから既に約半年が経過してしまっている。
彼のことが裏京都中に知れ渡るには十分過ぎた時間であり、事実彼に関することはほとんど漏れている。いや、そもそも『妖の前では』彼の事を隠してなどいなかったのだが。
杭や鎖の力からして『聖書』が加わっていることは明らかであり、彼らがこの地に赴くのもそう遠い話でも無いだろう。
それを確かに高天原へ告げた。
…天津神、ひいては国津神の決定は。
『要観察』、それのみであった。
■ ■
「では、オーディン殿もハーデス殿も、会談の日程は次の満月の刻で宜しいか?」
《ああ、問題ない》
「予定も特にないしのぉ」
「有難うございます。 では最後に不遜ながら繰り返させていただきますが、この会談は極秘です。御二方には出来るだけ身を隠しこの高天原へ来て頂きたく存じます」
「相変わらず腰が低いのぅ、『月詠』」
《ファファファ、まぁ、それ故に厄介だがな。食えん奴よ》
「いえいえ、御二方に比べれば私など…ね?」
現状
獣「助けられた…」
京都の妖「なんだこいつヤバそう。でも八坂さまが特に何もしてないから安全なのかなー?でも警戒はしておこう」
日本神話「取り敢えず極秘会談終わるまで獣は要観察でいいよね、今弱ってるから八坂と京都の妖怪でなんとかなるし」
ちなみにスーツの男の正体は皆様の思い浮かべる人物とは違うんじゃないかなーとか思ってたり。彼の正体は六話あたりで明かそうかと。
あ、声のイメージは藤原啓治さんだったり。
トライヘキサ?…中田譲治さん(冗談)(多分朴璐美さん辺り)
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