冥界の女神は元Aチームマスターの夢をみるか   作:Reji

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ドラクエ5初見でビアンカと選ばなかった人とは分かり合える気がしません


5.女神2人

そこにいたのはエレシュキガルと瓜二つの少女だった。唯一違う点を挙げるのであれば髪の色が黒で露出が多いということだろうか。

 

 そしてすぐさま女神イシュタルを名乗る少女はエレシュキガルの存在に気がつく。

 

「な、なんであなたがここにいるのよエレシュキガル!」

 

「そ、それはこっちのセリフなのだわ!イシュタル!よりにもよってあなたが召喚されるなんて⋯⋯完全に想定外だったわ⋯⋯」

 

「くー!何よ!最悪なのはこっちもなんだから!立香たちのピンチに颯爽と現れてかっこよく救って女神ポイントをがっぽり稼ぐチャンスだったのに!」

 

 初めはいきなり人が現れてパニック状態に陥っていたパツシィだったが今では一緒にこの光景を傍観している。

 

少女達の口論は10分にも及んだ。 

 

「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯さすがに疲れてきたのだわ⋯⋯」

 

「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯奇遇ね、私もよ。今日のところはここまでにしおくわ」

 

 今日のところってまだこれ続くのだろうか。最終的に宝具ぶっ放しはじめそうである。

 

「しばらくぶりね、立香にマシュ。召喚に応じて参上してあげたのはいいけど、またあなた達厄介ごとに巻き込まれているのね。契約した以上は助けてあげる。感謝なさい!」

 

「こっちこそよろしくイシュタル!また力を貸してくれて嬉しいよ」

 

「はい!イシュタルさんがきてくれるとこちらとしても心強いです!」

 

立香とマシュの反応からするに相当信頼している英霊なのだろうと誠は推測した。

 

「そしてあなたがあのエレシュキガルのマスターね。ふーん」

 

 そう言って誠を品定めするように見つめるイシュタル。

 

「いいんじゃない。度胸もありそうだし数々の修羅場をくぐってきたようね」

 

――すげぇよ女神、なんで見ただけでそんなの分かるんだよ。

 

「お褒めに預かり光栄です、イシュタル神」

 

「それに女神に対する姿勢も完璧」

 

「なんか私の時と態度が違うのではなくて!?」

 

自分との態度の違いに、声を荒げるエレシュキガル

 

「それはあれよエレシュキガル、身から漂う女神オーラが違うのよ。辛気臭い冥界に籠っていたあなたにはないものね」

 

そう言って勝ち誇ったように笑うイシュタル。しかし、事実なのでエレシュキガルも言い返すことが出来ない。

 

「ぐぬぬぬ⋯⋯」

 

「まぁ、ほらあれだエレちゃん。これまでの付き合いが長いってのもあるし、仲がいいに越したことはないでしょ?エレちゃんが態度を改めろっというならこれまで見たいに気軽に訓練や食事に誘えなくなるけど⋯⋯」

 

「わーやっぱりマスターはそのままでいいにだわ!そ、それに今の関係私もそ、その気に入ってるし⋯⋯」

 

――ふ、ちょろい。

 

「あなた完全にエレシュキガルの扱い方に慣れているわね⋯⋯」

 

「生半可な気持ちでこのポンコツ女神と契約してないったことですよイシュタル神」

 

「別にそんなにポンコツじゃないわよ!」

どの口がそれを言うか。

 

『コホン!そろそろ今後の方針を決めていこう』

そして自己紹介が一段落終わったところを見計らってホームズが話しを切り出す。

 

『ゴルドルフ新所長、よろしいかな?』

 

『う、うむ。決定権は私にあるよな?』

 

『もちろんですとも』

 

日に日にホームズのゴルドルフの扱いが上手くなってきているのは気のせいではないだろう。

 

『話を統合すると、我々はここにくると途中パツシィ君が話していた叛逆軍の下に向かうべきだと考える』

 

「名探偵に意見に賛成だ。話によると軍のリーダーはサーヴァントらしいしな」

それに今はできるだけ戦力が欲しい。協力してもらえるといいんだが。

 

「そんな回りくどいことせずに私とエレシュキガルで敵の本拠地に殴り込みに行くのは駄目なの?一応私たち神霊よ?」

 

「敵の戦力が分かっていて尚且つそれで行けそうなら良かったんですけど、敵の戦力は未知数です。イヴァン雷帝と敵対している以上自分達に協力してしてくれる確率が高いです。それにここは異聞帯(ロストベルト)。あの世界と勝手が違います」

 

――RPGとかでもそうだ、徐々に仲間を増やしていって最後にボスだ。ボスに喧嘩を売るのはまだ早い。

 

しかし、そうするとこの物語の主人公は間違いなく立香だろう。ヒロインはマシュだ。しかしそうすると自分はドラクエ5でいうところのパパス枠の気し、誠は考えるのを辞めた。

 

「そうよ、イシュタル。ここでは慎重に行動するべきよ。いつものような自分勝手な行動は控えなさい」

 

「あなたに言われると無性に腹がたつわね!」

 

――お前達はいちいち喧嘩しないと気が済まないのか。

 

「いやー、それにしても叛逆軍はどこにいるんだろうね!」

 

露骨に話題を変える立香。

 

「パツシィが知ってるんじゃいか?」

 

誠は立香に便乗して、話題を上手いこと叛逆軍関係に戻した。

 

「叛逆軍に協力してるって噂されてる村が幾つかあるのは知ってる」

 

話を聞くところによると叛逆軍に食料を提供したり匿ったりしているところがあるらしく、そこに向かうということになっていたのだが、その中間地点にある村をどう通り抜けるか話し合っていた。

 

しかも村の手前で。

 

 

「やっぱりここは走り抜けるのがいいんじゃないでしょうか?」

 

マシュが案を一つ出した時、案の定と言うべきか、村の警備のヤガに見つかってしまった。

 

「いやここはバレないようにコソコソーーー」

 

「待て!お前達そこで何している!」

 

見つかったら答えは一つだろう。

幸いにも相手は一人。誠は初めてパツシィと会った時と同じように反射的に腰に備えつけている銃を抜く。そして両足に身体強化の魔術を使い素早く相手の懐に飛び込み弾が避けられないようそのまま相手を押し倒し、頭に銃口を突きつける。ヤガは力だけは強いため身体強化しないと逆に押し倒されてしまう。

 

「ま、待ってくれ!お、お前達叛逆軍になりに行くんだろ?」

 

「なんだ、お前達にそれが何か関係があるのか?」

 

誠はいつもの陽気な雰囲気とは裏腹に、非情な声でヤガを追い詰める。

 

「こっちは今大きな声で叫んで巡回に来ているオプリチニキに知らせてもいいんだぞ」

 

「そんなことをすれば分かっているだろうな?」

 

そう言って数回トリガーを引く。何発か顔をかすめヤガが呻き声をあげる。サプレッサーを装着しているため銃声は響かない。

 

「誠君!」

 

立香がその様子をみて思わず声を荒げる。

 

「分かってる」

 

もとより、誠は殺しはあまり好きじゃない。

 

「おい、俺達は魔術師(コルドゥーン)だ。このことを言いふらせばお前を呪い殺す。分かったな?」

 

「は、はいぃぃ!!」

 

相手の返答を聞き失神しかけている相手にさらに追い討ちをかけるように峰を銃のグリップで強打させ気絶させる。

 

「オプチチニキの巡回も来ているらしい。走るぞ!」

 

 

 

 

「流石にここまでくれば大丈夫でしょうか」

走ったせいかマシュちゃんがかなり疲労していた。早く休める場所を見つけないとな。

 

「しかし誠、あなた中々エグいことするわね」

 

「この切羽詰まった状況で相手にあげるものなんて何もありませんからね。見つかれば脅すなりするのが一番だと判断しましたイシュタル神」

 

「でも、あれは流石にやりすぎなんじゃないかな?」

 

『いや、脅しとはああいうものだよ立香君』

とホームズ。

『そうだぞ、貴様は甘すぎるのだ』

とゴルドルフ。

 

「まぁ絶対殺しはしないから安心してくれ立香」

立香は渋々納得したようだがその顔には不満しか残っていないようだった。

 

「しかし叛逆軍とはどうコンタクトを取るんでしょうか?サーヴァント、マスター、異聞帯⋯⋯そう言った単語をそれとなく告げるとか、どうでしょう!」

 

マシュの疑問ももっともだがここはシンプルに行くべきだろう。

 

「いや、ここは叛逆軍に加わりたい、という意思を見せるんだ」

なるほどと頷くマシュ。

 

「というわけでパツシィ、叛逆軍に加わるつもりはあるか?」

 

「⋯⋯雷帝がオプリチニキを率いてこの大地を支配してから、もう四百五十年になる。不死身の雷帝、偉大なる皇帝。あの御方の執政に俺たちは震えながら生きてきたが」

 

パツシィが神妙な面持ちで告げる。

 

「このまま縮こまって死ぬのは嫌だし、それにもう覚悟は決めてある」

 

「いい返事だ」

 

「ところでシャドウ・ボーダーの復旧はまだ時間かかりそう?ホームズ」

と立香がホームズに質問する。

 

『ああ、しばらくは動かせそうにない』

動かせたら楽だったんだけどなぁ。

 

そこから歩くこと10分到着した。

「オプリチニキがいるかもしれないから、まず俺が確認してくる」 

そう言ってパツシィが一人で行ったきり帰ってこない。 

 

「⋯⋯日が暮れて来ましたね。流石にもう村に入っていいんでは⋯⋯」

マシュが痺れを切らした時、村から大勢のヤガが出て来た。

 

「あー、パツシィって奴の連れはあんた達だよな⋯⋯?」

「そうだが?」

 

「全員頭にかぶってあるフードとってくれねぇか?」

それを聞き俺たちは全員フードをとり顔をさらけ出す。

そもそもイシュタルは私の美が隠されるのは嫌とかなんとか言って元からフードをかぶっていないのだが。

 

「⋯⋯驚いた。あの野郎が言ってたことはマジだったんだな」

ヤガ達は初めは動揺していたが、落ち着きを取り戻し全員が全員、戦闘態勢に入った。

こうなることは経験上なんとなく分かっていたが⋯⋯。

 

「あら、あなた達どうして私たちに向かって銃を向けているのかしら?女神に銃を向けるなんて感心しないわね」

 

「そりゃ、簡単な話さ。ここ最近の話だがーーーーイヴァン雷帝の傍に人間の魔術師がいるそうだ。人間体のサーヴァントもな!悪いが容赦はしねえ!」

 

「エレちゃんは大丈夫だろうけどイシュタル神、うっかり殺しちゃった☆とか無しですからね」

 

「分かってるわよ!」

ここまで信用できない『分かってる』は他にあるだろうか。

 

 

それはまさに戦闘ではなく蹂躙だった。

ヤガの攻撃は全く意味をなさず。エレシュキガルとイシュタルの魔力を使った遠距離攻撃に、ヤガ達はことごとくその場に倒れていく。隙を見て誠がエーテライトを鞭のように使いヤガ達をその場で動けぬよう縛り付けていく。

その様子を見るに耐えなくなったのか敵の親玉が顔を出した。

 

 

「待て!!!!」

 

 

頭にはケモ耳、肩に猪の頭を乗っけている銀髪碧眼の少女だった。

「あなたがリーダーかしら?全く女神に攻撃を仕掛けるなんて其れ相応の覚悟があってのことでしょうね?」

 

「そうだ。⋯⋯それに関しては申し訳ないと思っている。だが汝らが皇帝(ツァーリ)の手の者かどうか確認する必要があった。それは強者でありながら、慈愛を持つことなき非道の所業を行うかどうかによる。だが汝らはこれだけの数の者を全て峰打ちで済ませた。感服だ」

 

ケモ耳少女はそこで区切って、先程とは違う優しい声音で告げた。

 

「叛逆軍へ歓迎しよう」

 

 




ちなみに僕の一番好きなキャラはフローラです

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