冥界の女神は元Aチームマスターの夢をみるか   作:Reji

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土佐生まれです
立香のことずっとリッカと読んでたので初投稿です


9.新たな仲間

誠とエレシュキガルがシャドウボーダーを出発して2時間ほどたっただろうか。いきなり天候が荒れ出した。

 

「前が見えにくくなってきたわね……」

 

「これはまずいな……」

 

雪が宙を舞い散り吹雪となり、誠達を襲う。

 

―――シャドウ・ボーダーに連絡するか。こっちと連絡を取ると立香の方と連絡が取れなくなるがしょうがないだろう。

 

こういう場合豪雪地帯でこういう場合は簡易イグルーを作るのがいいのだが、ここら一帯の雪は硬いため作れそうにない。だが前が見えないまま移動して輪形彷徨にでもなったら大変だと誠は考えたのだ。

 

『こちら誠、ブリザードに見舞われた。何でもいいから近くで身を置けそうな場所を教えてくれ』

すぐに移動をやめシャドウ・ボーダーに連絡する。

 

『こちらダヴィンチちゃんだよー、えーとね……そこから一番近くで身を休めそうな場所はねー、途中、山を越えることになるけど叛逆軍の檄文を届ける過程で通った潰れた村が最短だね』

 

『そこまでナビゲートをお願いする』

 

風が強いと言ってもまだ歩けない程ではない為、強くなる前に早めに移動しておきたいのだ。

 

『そこを右に曲がって〜』

 

時間が経てば経つほど風は一向に強くなる。

 

「少しペースアップしよう!」

 

声を大きくしないと吹雪で声が掻き消されるほどに。

 

早く着きたい、その一心で足を一歩また一歩と前に出す。

 

「マスター?大丈夫?大分疲れてない?」

 

「まだ、全然歩ける。それに何だかんだ大分歩いた」

登山の心得が生きたようだった。

 

「それで後、どれくらいだい?ダヴィンチちゃん!」

声が聞き取れるよう声を大にして喋る。

 

『後、その山を駆け下りて5分と言ったところかな』

「了解」

 

それから勢いよく山の斜面を駆け下りた。道無き道を出てようやくこの世界のヤガ達が利用している道路に出た。

 

「あれは何かしら?」

ふと数メートル先にある()()にエレシュキガルが気がつき声を上げる。

 

誠は遠見の術で警戒しつつソレを観察する。そこには大きな大蛇のような巨大な生物が血まみれで横たわっていた。

 

「どうやら死んでいるようだな…」

 

―――おそらくパツシィの言っていたジャヴォル・ドローンという魔獣だろう。

 

近づいて確認すると三つある首の内二つが切り落とされており、体にはいくつも斬り傷が見受けられる。

死んでいるのは分かっているが、誠は恐る恐る体に手を触れる。

 

「微かに温かいな」

 

「まだ、じゃあ近くにいるかも知れないわね……。これを殺した人物が」

 

―――まぁ要警戒ということでいいだろう。

 

「それはそうとこいつ食えるのか?」

 

「流石に辞めたほうがいいんじゃないかしら?このグロテスクな色、いかにも毒がありそうなのだわ」

 

しかし永久凍土の極寒の地、常に食料不足なわけだ。誠達がいつかこいつを食べる日が来るかも知れない。

 

こいつから酒が作られることを知って誠が騒いでエレシュキガルに怒られるのは、また別の話。

 

「そういえばマスター、ダヴィンチちゃんとの通信は?」

 

「ああ、この吹雪だ。通信機の調子が悪いのか知らんが途中で切れた」

 

「それ結構まずいのでは!?」

 

「何とかなる、気がする!」

 

「駄目な人は皆そういうのだわ……」

 

エレシュキガルが落胆するが、アクシデントなんぞ誠の計算の内だ。逆に起きない方がおかしいのだ。

 

「まぁ目標地点は目と鼻の先だ。これ以上、風が強くなる前に走るぞ」

 

3分くらい走ると村に到着した。

 

「何回見てもひでぇな」

かつて栄えたヤガの営みすら感じさせない。

 

「マスター、かろうじて壊されていない家を発見したわ!」

 

「ナイスだ、エレちゃん!」

俺たちは警戒しつつその家に入った。

その家は決して大きいとはいえないこじんまりとした家だった。だから一回目に来た時気がつかなかったのかも知れない。

 

外も誰かの足跡もなかったし、この家もしばらく誰かが来た痕跡もない。暖炉もまだ使えそうだし、少しの間休むにはバッチリだ。

 

「少し仮眠するから、起こしてくれエレちゃん」

 

その時、誠達は外から近づいて来る何者かの気配に気がつかなかった。

 

「ええ、分かっ―――」

 

その瞬間ドアが勢いよく開かれ、三度笠を深く被った怪しげな男が侵入して来た。三度笠の破れた隙間からこちらを凝視している。

 

「何じゃあおまんら?」

 

その気配はサーヴァントのモノだった。

 

すぐさま戦闘態勢に入る。

 

くそ!気配遮断―――アサシンか!

 

「おまんら人か、まぁ死ねや」

 

そう言うといきなり三度笠の男はエレちゃんに斬りかかった。

 

「ちぇりゃあああ!」

 

「くっ!」

 

間一髪でエレシュキガルがメスラムタエアを顕現させ振り下ろさせる刀を防ぐ。

 

「ちったぁやるようじゃのう」

 

この狭い部屋では部が悪い、それに援護もしにくい……。いっそここで宝具を……。

 

「以蔵ー、大きな音したけど大丈夫――って何やってんのよ!?」

 

またサーヴァント!?

そこには同じく三度笠を被ったサーヴァントが立っていた。声から察するに女性だろうか。

 

「怪しいやつらがいたからっていきなり斬りかかるのは駄目って()()()()言ったでしょう!」

 

「じゃが人なんて久しぶりに見たき、血が騒いで……」

男がバツの悪そうに答える。

 

「言い訳無用!刀もしまう!」

 

その気迫の押されたのか男は無言で納刀した。

完全に尻に敷かれているようだ。

 

「それであなた達何者なの?」

 

「俺たちはカルデアのマスターとそのサーヴァントだ」

 

相手を挑発しないように慎重に答える。

 

「立香君以外のカルデアのマスターなんて見たことも聞いたこともないのだけれど……。証拠はあるかしら?」

 

「ああ、その証拠に君の真名とプロフィールなら知っているよ、うどん好きの宮本武蔵さん。そして、そっちは三度笠してた時は分からなかったけど、岡田以蔵だろう?2人ともカルデアの資料で見たから覚えているよ。人の顔と名前を覚えるのは得意でね。詳しいことは立香に聞いてくれ」

 

記憶力に感謝する誠であった。

 

宮本武蔵、日本人で知らない人はまずいないであろう江戸時代初期の剣術家で二刀流の代名詞だ。そして、岡田以蔵。こちらも宮本武蔵には知名度では劣るが江戸時代の有名な人斬りで都では人斬り以蔵の名で恐れられていたらしい。

 

「分かったわ。立香君の仲間みたいだし信用してあげる!」

 

「こんなどこの馬の骨ともしれん奴を信用するがか!?」

 

武蔵の返答が予想外だったのか以蔵が驚いたような声をあげる。

 

「大丈夫よ、人を見る目だけはある自身があるから!」

 

立香の顔が広いのは知ってはいたがここまでとは。何とか穏便に済ませそうだ。

 

「改めて自己紹介しておこう、俺の名前は誠・エルトナム・シリウス、カルデアのマスターの一人だ」

「私はエレシュキガル、ランサーのサーヴァントよ」

 

「サーヴァント、セイバー。宮本武蔵よ。そんでこっちがアサシンのサーヴァントの岡田以蔵よ」

「な、わしのクラスは『人斬り』じゃあ!」

 

「それで立香君達は?」

 

「立香もいるぞ、今は別行動だがな」

 

「あなた達この荒れ果てた村で何してたの?」

 

「ここからヤガ・モスクワに敵城視察だ。吹雪が強すぎたからここで少し休憩してたとこだ。そっちは?」

 

「私たち二人は行くあてもなく彷徨っていたのよ、そうだ!私たちあなた達ついて言っていい?戦力は多いに越したことはないでしょう?」

 

「まぁ、それは願ったり叶ったりだけど」

 

誠達、カルデアからすれば戦力増えるのは大歓迎だ。

 

「それにあなた達について言ったら立香くん達に会えそうだし!」

 

「何でわしまで着いて行くことになっちゅうがじゃ!?」

 

「別にいいでしょ?以蔵も暇だし行く当てがあるわけじゃないし、それに早く立香くんに会いたいでしょ?」

 

「何でそこで立香の名前が出てくるがじゃ!」

 

「だって心配してたじゃない」

 

「別に心配しちゃあせんわ!」

 

――ツンデレボイスいただきました。しかし土佐弁は所々何を言っているか分からないな……。

 

「これからよろしく頼む、宮本武蔵」

「よろしくお願いするのだわ」

 

「ええ、よろしく誠くんとエレシュキガルさん。後、私のことは武蔵ちゃんとでも呼んで、堅苦しいのはあまり好きじゃないの」

 

「分かったよ、武蔵ちゃん。それに以蔵もよろしく頼むぞ、以蔵」

 

「人の名前勝手に呼びなや!」

 

しばらくは愉快な旅が出来そうだ。

 

 




立香sideの話いる?書くならダイジェストか回想風ですね

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