この小屋に来て2日が経った。
「なーるーほーどー」
誠は武蔵に世界の状況を説明している最中だった。
「ここは
これからの作戦を誠に問う新たな仲間―――宮本武蔵。
「敵の戦力を確認するっていう大雑把な理由で行こうとしているだけだからな」
―――まぁなんとかなるだろう、なんとかならなかったらその時はその時だ。
「随分と大雑把じゃのう」
そしてもう一人の新たな仲間―――岡田以蔵。
「それはそうと、村の前のでかい大蛇みたいなやつは武蔵ちゃん達が倒したのか?」
「以蔵が一人で倒したようなもんだけどね」
「やるな、以蔵」
「馴れ馴れしく人の名前呼びなや!」
岡田以蔵、こいつ扱いやすいと思った誠であった。
4時間くらい作戦会議、もとい、駄弁っていると外の吹雪も穏やかになってきた。
「そろそろ出発するか」
そう言って誠は床に降ろしてあった銃などの荷物を肩にかける。
「マスター、カルデアとの通信はどう?」
エレちゃんに言われ、誠は腕についてある通信機で連絡を試みるが、うんともすんともいわない。どうやらブリザードの中での長時間移動によって調子が悪くなったらしい。最悪、これから一切連絡をとることが出来ないかもしれない。
「ここまで何も聞こえないと通信回復は期待しない方がいいかもしれないな」
「取り敢えず、出発しましょう」
武蔵ちゃんの一言で4人全員が立ち上がる。
「では、ヤガモスクワに向けて出発する!」
そして誠が掛け声と共に扉を開けようとするが―――開かない。
「雪か」
ここヤガのロシアでも扉は押し扉のため、雪が降り積もると開かない。
「武蔵ちゃんお願いします」
「任せて」
「ほどほどにお願いしますね」
誠の声は聞こえていないだろう、宮本武蔵は背中に二本の日本刀を引き抜く。
「五輪の真髄、お見せしましょう!」
そう告げる彼女の背には修羅の化身が見えた。
「剣豪抜刀……!」
そして、その魔神と一体化したかのような宮本武蔵から勢いよく剣が振り下ろされる。
「伊舎那大天象!」
ドアが吹き飛ぶどころか、家が半壊し魔神に道を開けるかのように雪がない部分が一直線に続いていた。ドアをこじ開けるために宝具を使った最初で終わりの剣豪ではないだろうか。
「「「やりすぎだ!(じゃ!)(なのだわ!)」」」
「ごっめーん!久しぶりだから加減がわからなくて……。えへへ……」
そう舌を出して笑う姿は先ほど身に修羅を宿した人物とは別人のように思えた。
「(オンオフの切り替えが凄いな……)」
「気を取り直して行きましょ!」
「「「お、おー」」」
――――――――――――――――――
森を抜け、直線の道に差し掛かったときに武蔵が口を開いた。
「半分くらいきたんじゃない?」
「エレちゃん、地図で確認してくれ」
「分かったわ。えーーと」
地図を表示して確認するエレシュキガル。
「もう3分の2くらい来ているわよ」
「すんなり着きそうだな」
その時、目的地の方角からヤガの悲鳴が聞こえてきた。
「どけ!そこをどけええええええ!どかねぇなら殺してやる!」
必死に
「(デジャブだ……)」
「どうするの、マスター?」
「殺―――」
誠が殺せと指示しようとした瞬間、そのヤガの首が吹き飛んだ。
「
その
「オプリチニキだ!」
誠がそう叫ぶと同時に1人の魔術師と3人の英霊が一歩後ろに下がる。
「
そして、無機質な声で物騒なことを呟きながら誠たちに明確な敵意を向ける。
「お前たちも
「(おいおい、飛んだとばっちりだな)」
素早く相手と距離を取り敵の数を瞬時に確認する。
「(なんだ、たった3体じゃないか、一時は20体くらい相手にしたんだぜ)」
その油断がまずかった。
誠は腰のMP7手に取り的確にオプリチニキの頭に撃ち込む。
「な!?」
それもそのはず、打ち込んだ弾丸の6割はカンッという甲高い音をたて弾かれたのだ。
弾薬にはちゃんと『強化』の魔術をかけたはず、だが弾かれた。
「こいつら今までの奴らとは違うぞ!」
明らかに今まで倒してきた奴とは違う。
「頼む、武蔵ちゃん、以蔵、エレちゃん!」
「応とも!」
「いちいち命令しなや!」
「任されたのだわ!」
そして相手もこっちに一斉に向かって来ると同時にこちらも一斉に突っ込む。
「ちぇすとおお!」
初めに斬りかかったのは以蔵だ。刀を大きく構えそのままオプリチニキを斬り込んでいく。そのまま切り伏せたかと思いきや、オプリチニキは手に持った斧のような武器でガードする。そこにすかさず武蔵が斬り込もうとするも、後ろにいたオプリチニキが突っ込んでくる。刃物と刃物がぶつかり合った時に鳴る、特有の音が周囲に響く。
「ちっ!鬱陶しいわね!」
そこから武蔵は態勢を立て直すと、力ずくで先ほど突っ込んできたオプリチニキを吹き飛ばす。
「なんの!」
オプリチニキがそこでよろけるのは見逃さす以蔵ではない。すかさず対峙していたオプリチニキの足を払い蹴り飛ばす。そしてすぐ後ろのよろけている相手の心臓を見据えて一刺し。
そして、
「天っ誅!」
刃の向きを逆さにし、そのまま思い切りアッパーカットのように刀を思い切り斬りあげる。流石のオプリチニキも縦に真っ二つだ。
次に以蔵に先ほど蹴り飛ばされたオプリチニキが態勢を整え再び以蔵に突撃するモーションに入るも、横から武蔵の一太刀が入る。こちらも胴体の上と下、横に真っ二つだ。
一方、誠とエレシュキガルside
「こちらは1体、突っ込んで来るぞエレちゃん。援護する」
「了解よ!」
近づいて来るオプリチニキにエレシュキガルはメスラムタエアで応戦する。
「(エレちゃんは接近戦が得意ではない)」
誠がMP7でエレシュキガルと対峙しているオプリチニキの頭に残りマガジン全てぶち込む。半分以上は弾かれたいるが、確実に効いてはいるようだ。
オプリチニキが攻撃対象を誠の方に移し、斧を振りかぶりながら走る動きに入る。
その隙にエレシュキガルがナニカの魂の入った檻を掲げる。それと同時に地面の中から恐竜が現れてオプリチニキに襲いかかる。為す術もなく、オプリチニキは地の中に引き摺り込まれた行った。某デッドスパイクに似ているのは言わないお約束。
「お疲れ、マスター」
「ああ、お疲れエレちゃん」
「こっちは終わったわ、そっちも終わったのね。お疲れ」
武蔵ちゃんと以蔵が納刀しながら、こちらに歩みよって来る。
「おお、お疲れ武蔵ちゃん、以蔵」
「儂は、はよう人じゃのうてもえいき血が通った生き物を斬りたいぜよ」
「その内斬らせてやるから安心しろ」
難なく倒せはしたが、次もこう上手く行くとは限らない。こんな雑魚、いわゆるモブ敵に使う時間も魔力はない。
「モスクワに行くにつれてオプリチニキが強くなっている可能性もある。気を引き締めて行くぞ」
――――――――――――――――――
そこからモスクワに着くまで、2回オプリチニキと戦闘になったが苦戦することなく突破することができた。
「着いたー!」
時刻は体感午後7時くらいだろうか。
達成感により、おもわず大きな声を出してしまう誠。
「静かにしなさい!マスター!今は潜入中なのよ」
「分かってるよ、エレちゃん」
今は極力、人目につかない方がいいだろう。武蔵ちゃんと以蔵には霊体化してもらっている。エレちゃんは神霊であるため出来ないのが痛いところだ。
「いつまでもこの路地裏にいるわけにはいかない、二手に分かれて空き家を探すぞ」
「ここは首都よ?ヤガも村とは比べならない程住んでいるし、空き家なんてそうそう見つかるかしら……」
エレシュキガルの疑問も最もだろう。
「大丈夫だ、首都から逃げて来たっていう叛逆軍のやつもいた、可能性はある」
これは事実だ。だがそう簡単には見つけることは出来ないだろう。だから――――――――――――――
「ペアは俺と以蔵、武蔵ちゃんとエレちゃんだ」
「なんで儂がおまんと組まないかんがじゃ!?」
「いいじゃないか、男同士の話をしようぜ。それにこれは
「……ちっ、分かったぜよ」
誠の本気の声音にしぶしぶ了承する以蔵。
「じゃあ、1時間後にここで」
4人は夜のモスクワに駆け出した。
主人公の起源弾の設定は消えました。