冥界の女神は元Aチームマスターの夢をみるか   作:Reji

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最近頑張ってるから見込み点として評価7以上くれ、いやください


12.激励

「寒い、交代まだかなぁ」

 

『まだ1時間しか経っちゃあせんわ!』

 

通信機越しの突っ込みに誠は思わず苦笑する。

 

24時間、6時間交代のシステムだ。しかし、以蔵は地図作成のために特別に駆り出されている。今は外側を誠、内側を以蔵が担当している。

 

「こっち未だ異常なし、そっちは?」

 

街の大きな時計塔の鐘が町中に鳴り響き、それで任務を思い出したかのように誠は真面目な雰囲気を醸し出す。

 

『特になしじゃ』

 

「暇」

 

『知るか!』

 

家の屋根を駆けながら二人は1時間ずっとそんなくだらないやり取りを繰り返している。見張りという任務は案外に暇なもので話し相手がいないと務まりそうになかったのだ。

 

それから4時間くらいたっただろうか。

 

「車の出入りもなければ、魔物一匹出入りもな〜い。平和だな〜。ラーメン食べたいな〜。チャーシュー麺に味噌ラーメン♩豚骨ラーメンに」

 

誠は町の入り口付近の一番高い建物の屋上に座り毛布に身を包み即席で何とも形容しがたい妙な歌を歌っていた時だ。その時通信を切っていた以蔵から連絡が入った。

 

『街中を歩きゆう()()を見つけたぜよ』

 

「本当か!?容姿は?」

 

先ほどまで少しうとうとしていたのが嘘のような真剣な声音で話しかける。

 

『銀色の髪の毛の奴じゃ、なんかブツブツ言いもってひっとりで街中徘徊しゆうわ』

 

誠は心の中でその人物がカドックと確信した。どうせ、また自分の悪口でも一人でつぶやいているのだろう。

 

「以蔵、場所を教えろ。そいつと話しがしたい」

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

カドック・ゼムルプスは少し複雑な感情を抱いていた。一人で王宮の自室を抜け出して、街に散歩に来るくらいには。周りのヤガからの奇異の目で見られる感覚も最初は不快に思っていたが今ではもうすっかり慣れてしまった。

 

「はぁ……」

 

カドックは何度目かも分からないため息をついた。ため息を吐くと幸せが逃げるというけれど、今現在の幸福度を数値化すると0と思っているカドックにとってはどうでも良かった。

 

「今更あんな奴……」

 

コヤンスカヤから存在が告げられた人物――誠・エルトナム・シリウス――かつての友人、いやこっちが一方的に思っているだけかもしれないので知り合いということにしておこう。

 

かつての知り合いが敵サイドに現れただけで気持ちがぐらつくほど、自分の決意は緩いものだったのだろうか――否、そうではない。

 

カドックの中でその存在が大きすぎるのだ。カドックの目に映る誠・エルトナム・シリウスという人物は頭が良く、人当たりが良くて、才能にも溢れ、自分にないものを全て持っていた。自分とは対極の位置にある人物だ。今思えば自分は彼に憧れに近い感情を持っていたのかもしれない。彼は自分がこんなことを思っているなんてこれっぽっちも思っていないだろう。他のAチームの奴とも距離を縮めることができたのも彼のお陰だった。才能がないことをコンプレックスを感じて距離をとっていた自分にしつこく絡んできたも今となってはいい思い出だ。ヒナコにも同じようにしつこく絡んでいたがことごとくいなされいたのも懐かしい。

 

 

 

 

「やっぱ、お前は才能あっていいよな」

 

ふとカドックはいつかした会話を思い出す。

 

「何言ってんだ、俺は何もかも中途半端な男だぞ」

 

カルデアの自室前の廊下のガラス前で二人は話していた。

 

「Aチームに選ばれたのも親父のコネだ、そんなこと言うんだったらお前のが才能あるよ」

 

「…………」

 

カドックは男の語りを黙って聞いていた。

 

「俺は努力が嫌いだしさ、魔術に対して何も崇高な考えがあるわけでもない。魔術なんて生きる上での手札でしかない。俺はそれが初めからちょっとばかし強かったから、ダラダラ魔術師続けてるだけだ。その点お前は真面目に魔術の研究してるし、それを人一倍に努力している。天才ってのは自分と他人との違いを明確に把握しているもんだってどっかの誰かも言ってたしよ」

 

「そんなこと言うのはお前だけだ、所詮は結果だ。結果を示さなければ意味がないんだよこの世の中」

 

「そんなことないだろう、俺みたいにその過程を見る奴だっている。まぁ、お前がやりたいようにやればいいんじゃないの」

 

「……僕は何をするべきなんだろうな……」

 

「んなもん俺が知るわけないだろ。はいもう疲れた難しい話やめー。そういえばヒナコがさー」

 

そこから先の会話は覚えていないが、他愛ない話をした気がする。それがカドックと男との最後の会話だった。

 

 

 

願わくば交える前にもう一度話しを―――――――

 

「浮かない顔してんな、便秘か?」

 

「無礼者、僕が宮廷魔術師と知っ―――」

 

叱責しようとカドックが声の聞こえた方が振り向くと路地裏通りの入り口にコートのフードを深く被り如何にも不審者と言った格好の男が経っていた。フードの隙間から金髪の髪を見え隠れさせながら笑う男の声にカドックは懐かしいものを感じた。

 

「久しぶりだな」

 

そう言って男はフードを脱ぎ、顔をさらけ出す。久しぶりに見る友達を顔は前よりも一層にたくましくなっているように思えた。

 

カドックは内心動揺しながらも、それを取り繕うように冷静なふりをして声をかける。しかしそれがバレたのか男はおどけた調子で笑った。

 

「そう、緊張するなって、俺とお前の仲だろ?()()()()

 

それで調子を取り戻したのかいたって冷静にカドックは質問を質問で返す。

 

「それで何ようだ?僕とお前は敵同士だろう?()

 

「敵味方以前に友達に街で話しかけて何が悪い?」

 

「今はそんな状況じゃないだろう。僕が令呪でサーヴァントを呼んでお前を殺したっていいんだぞ。いくらお前が強くても僕のサーヴァントには絶対に勝てない」

 

「いや、お前はそんなことしないだろう、したくても出来ない。友達を殺すことなんかな、お前は優しいからな」

 

「……!」

 

図星なのだろう、見透かされていると言った感じでカドックは言葉を詰まらせる。カドックは本当は今すぐ()()()()()として頼ってしまいたいが、今の関係性がそれを許さない。

 

「説得しに来たけど今のお前なんか弱っちいから興が覚めたわ」

 

誠は先ほどのおどけた口調から素の口調に移行する。

 

「…………」

 

どこまで見透かされているのだろうか。実物を目の前にしては決意はろうそくの残り火のように弱々しくなる。

 

「……僕は何をするべきなんだろうな……」

 

ふといつかした質問がぽろっと無意識のうちにカドックは口から溢してしまう。

 

「んなもん俺が知るわけないだろ。強いて言うなら」

 

誠はそこで区切って、カドックの方を向きなおって再び口を開く。

 

 

 

「お前が使命とか立場とか関係なしに()()()()()があるならそれをすればいいんじゃね」

 

 

 

誠は最後に"知らんけど"と付け加える。

 

誠の口からふと出たその一言で再び決意の炎が燃え上がる。カドックは口元を緩ませながら言った。

 

「最後の一言は余計だ」

 

「自分の言葉に責任を持ちたくないもんでね、後で上のやつに怒られても知らんぞ」

 

「もう十分影響されてるよ」

 

そう言って笑うカドックの顔は珍しく自身に満ち溢れていた。

 

「証明するんだ、僕でも世界が救えるってね」

 

誠はカドックの意気込みを黙って聞いている。本人は無意識だろうが、誠の口元もまた少し緩んでいた。

 

「僕はこの異聞録における唯一のマスターとして、勝利をもたらす。 汎人類史のマスターにはできないことを、僕は絶対に成し遂げる! 」

 

カドックは自分自身を鼓舞するかのように、声高らかに宣言した。

 

「暑くなってるところ悪いが、お前の彼女が迎えに来てるぞ?」

 

背から感じる冷気によってカドックも自分と誠の存在以外にようやく気がついたのか、驚きの声をあげる。

 

「いつから!?」

 

「みっともなく敵に頭を垂れているところくらいからかしら?」

 

「ほとんど初めからじゃないか……!」

 

カドックは赤面しながらその場で悶えそうになるのを我慢する。

 

「あなたも私のマスターを誑かすのはやめてくださる?」

 

「いやぁ、道端でたまたま会ったもんだからついついね。アナスタシアちゃん」

 

アナスタシアは誠の方を向き今にも戦闘態勢に入ろうとしている。

 

「お前カドックにめっちゃ信用されてんのな、()()の俺から見ても妬けちゃうぜ」

 

「当然よ、マスターとサーヴァントですもの。信頼するということと強さは直結すると言っても過言ではないわ」

 

「なら俺と俺のサーヴァントは向かう所敵なしってことか?」

 

誠も挑戦的な笑みをうかべてマシンガンを片手に構え、前傾姿勢で戦闘態勢に入る。

 

「アナスタシア、奴を捕らえろ」

 

マスターの命によりアナスタシアが攻撃を開始する。

 

「『思考分割』『高速思考』展開」

 

誠はそう呟くとアナスタシアの指先から無数の氷塊をいとも簡単に躱してしまう。

 

「分割思考による未来予測か……!」

 

カドックは悔しそう顔で分析する。『思考分割』と『高速思考』の二つの魔術を使えば擬似的な未来視が可能になるのだ。

 

それからも誠はアナスタシアの手先から無数に放たれる氷塊を鼠のようにすばしっこく躱していく。誠もアナスタシア目がけて隙をみて発泡するが全て氷の壁でことごとく防がれてしまう。しかし今すぐ退かないのは相手の攻撃パターンを見て覚えるためだ。残念ながらこっちから向こうに損害を与える手札は今現在のち合わせていない。

 

「(宝具を使われても厄介だ、取り敢えずこれくらいで退くか)」

 

誠は腰からスモークグレネードを取り出すと思い切り地面に叩きつけた。それと同時に誠は地面を思い切り蹴り逃走を始めた。

 

「マスター追った方がいいかしら?私としてはあの男は早く潰したいのだけど」

 

アナスタシアにしては珍しく不機嫌そうに自分の要望を告げるが却下されてしまう。

 

「今はいい、それより早く城に戻るぞ」

 

戦闘が終わった頃には野次馬大勢が集まって来ていた。路地裏で人通りが少ないとはいえ氷塊が飛び散る音などの戦闘音を聞いて駆けつけて来たのだろう。氷の破片が家の壁に刺さり、煙幕がもくもくと立ち込めるその光景は街で普通に暮らしているヤガにとっては物珍しいものだった。

 

「それもそうね、これ以上ここにいるとめんどうな事が起きかねないもの」

 

アナスタシアはすぐさま実体化をとき霊体化する。

 

そうして二人は足早に路地裏を後にした。

 

後に新聞で宮廷魔術師vs凶悪犯罪者として報道されることになるのはまた別のお話。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「なんか嫌な予感がするのだわ……」

 

誠が寝ていたソファーに座りエレシュキガルは呟いた。

 

「どうしたの?エレシュキガルさん」

 

その様子を見ていた武蔵が声をかける。

 

「また、マスターが無茶しているような気がするのだわ」

 

「サーヴァントってやっぱそういうの分かるものなの?」

 

「そういうの?」

 

それが何かわからず、エレシュキガルは質問を質問で返す。

 

「マスターの今の状況というか以心伝心的な?」

 

「どうなのかしら、私がマスターの性格を理解してるっていうのもあるかもしれないわね」

 

「ふ〜ん、何か恋人みたいね。マスターとサーヴァントの関係って」

 

その言葉にエレシュキガルは一気に顔を赤らめる。

 

「わ、私とマスターは、こ、こ、恋人とかそういんじゃないだわ!」

 

武蔵は美少女の赤面はいいなぁと思ってエレシュキガルを観察していた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

逃走中の誰か

「今エレちゃんが誰かにいじられている気がする」

 

 

 

 

 

 

 

 




カドックの扱いが難しいです
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