冥界の女神は元Aチームマスターの夢をみるか   作:Reji

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ギル祭お疲れ様でした。僕は一般人なので100箱で終わりました。皆さん何箱開けましたか?


16.迷宮からの脱出

「ちょっと、私のマスターにちょっかいかけてるんじゃないわよ!」

 

「暫く、暫くぅ!年端もいかない青少年に銃口を向ける悪漢ども!私好みの青少年を襲うのなら、こちらもそちら斬り伏せよう!」

 

好戦的な笑みを浮かべた二人の女神と剣豪の登場により、残りのオプリチニキは数秒のうちに一層された。雨のよう魔力の槍と魔神の一太刀がオプリチニキを襲ったのだ。オプリチニキもたまったもんじゃないだろう。

 

「うわお、マスターってばまた物騒な人斬り包丁とも知り合いなんだ」

 

「……サーヴァントってなあ、寒さを感じないのか?」

 

ビリーとパツシィが少し呆れたようにそれぞれの感想を述べる。

 

「おっとヤガの人か」

 

武蔵が興味ありげにそう呟くと、音もなくパツシィに近付きいきなり耳を手で掴みもふもふし始めた。

 

「うんうん、いつものことながらたまらぬモフモフ感……!」

 

「それいつもやってるのか!?」

 

「ああ、誠君、数時間振り!」

 

武蔵の相変わらずの切り替えの速さに誠もすっかり武蔵のペースに乗せられてしまう。

 

「武蔵ちゃん!」

 

それまで黙っていた、立香が感極まってその剣豪の名叫ぶ。

 

「ええ、ええ。武蔵ですとも。きみも随分と逞しくなっちゃって」

 

武蔵も昔を懐かしむように誠が聞いたことのないような優しい声音で話しかける。

 

「元気そうで何よりです。そしてやっぱり、君は戦っているのね。ならば私が出来ることもあるでしょう!なーに、皆まで言わない、事情はなんとく察したわ!新免武蔵、これから君のボディガードを務めましょう、はい、そういうわけで契約、契約♪」

 

先程までのしんみりした空気をどこへいったのか、武蔵は立香にささっと近付き慣れた手付きで魔力のパスをを繋げてしまうではないか。

 

『お、驚きの契約速度です。マスターと手を繋いで、あっという間に簡易契約をなされました』

 

立香のサーヴァントのマシュもこれには驚きを隠せない。

 

契約を果たした武蔵の顔は満足げだったが、次は赤面に変わっていた。どうやら成長した立香の手を見て萌えているようだ。

 

「以蔵も数時間振り!」

 

調子を取り戻す様に武蔵は以蔵の方を向く。

 

「何するがじゃ!やめ――」

 

武蔵は以蔵に近寄ると頭をわしゃわしゃと撫で始めた。

 

「以蔵、なんか聞いた話によると私に憧れて剣道始めたそうじゃない!」

 

「誰が言うたがじゃ!?」

 

その様子をニマニマ笑いながら誠は見ていた。そして、それに気付かぬ以蔵ではない。

 

「おまんかぁ!」

 

「さぁ?」

 

「でもそれだと納得がいくのよ、以蔵。あの時二天一流使ってたわよね?しかも、ほとんど完璧だったじゃない!今度手合わせしましょ!」

 

「そもそも儂の知っちゅう武蔵は男じゃったき、本当の武蔵かどうかもわからんじゃろ!」

 

「もういいよ、以蔵君。潔く認めたまえ」

 

「誠、おまんには絶対言わんいうき教えちゃったが、もう知らん叩き斬っちゃる!」

 

武蔵の拘束から解放された以蔵が刀を構えて煽る誠に飛びかかる。

 

「出来るもんならな!」

 

「ちょっと危ないのだわ二人とも!?」

 

そんな二人のじゃれ合いをあたふたと慌てた様子のエレシュキガルが止めに入る。

 

テンションの上がった武蔵は次にビリーの方を向き直る。

 

「あなたがビリー・ザ・キッドね!ビリーって呼ばれてたから、そうじゃないかと期待してたんだけど、ばっちりそうだった!うんうん実にいいわねー……」

 

そう言って武蔵はビリーの方をじっと見つめている。その理由をいち早く察知した誠が以蔵の剣戟を交わしながらツッコんだ。

 

「鯉口切るのは禁止だよ」

 

「いやぁ、ついね。つい。早撃ちと居合いって犬と猿っていうか。"どちらが早いか?"を競う以上、どうしても試したくなるっていうか。ガンマンのクイックドロウは何度も斬り伏せてきたけど、早撃ちキッドは別格よ」

 

「そんなこと言っても駄目だよ、武蔵ちゃん」

 

立香も露骨にテンションを上げた武蔵を釘をさす。

 

「ちぇー」

 

武蔵は唇をとんがらせて、拗ねたような顔つきでビリーの方を見やる。

 

「僕もちょっと嫌かなぁ」

 

ビリーが武蔵の二振りを刀を見て厄介な獲物を見たような表情をする。

 

「距離が近すぎる。キミ、まず眉毛をガードした後で僕を斬るつもりだろ?"早撃ちは見たいと言ったが速さを競うとは言ってない。御免"とか言ってさ」

 

「あはは、分かっちゃうかー。お互い、根っからの卑怯者(アウトロー)ね、私達!」

 

「「はははは」」

 

 

 

「何はともあれ、これも私の普段のおこないが良いからね!私、女神だし」

 

いきなりそんなことを言い出したイシュタルに誠とエレシュキガルと立香が白い視線を送る。

 

「――――って何よ、アンタ達!」

 

横暴(おこない)

 

と誠。

 

「我が事ながら、恥ずかしいのだわ……」

 

とエレシュキガル。

 

「あははは……」

 

立香までもが弁解できないといった感じで乾いた笑いを漏らす。

 

「立香まで何よ!」

 

「バビロニアでは作戦の要となろうとしていたグガランナを無くし、夏の水着イベントではレースと称して他のサーヴァントを駒代わりに使い、挙げ句の果てにはカルデアの大勢に人に迷惑を……」

 

「なんであなたがそれを知っているのよ!」

 

「カルデアの記録で少々……。俺達は次、イシュタル神が何をしでかすか心配です……」

 

「何かする前からいろいろ言うのはやめてくれないかしら!」

 

そうこの女神、基本善かれと思ってやっているため余計にタチが悪いのだ。

 

「そんなイシュタル神にお願いがあります。これをすれば俺達だけじゃなくボーダーの皆までがイシュタル神を讃えるでしょう」

 

「……な、何よ?」

 

残酷な事実を突きつけられてすっかり弱々しくなったイシュタルが反応する。

 

誠が迷宮の一部分の壁を指差す。

 

「俺謎解きゲームって製作者の裏をかいてクリアしたいんですよね」

 

某ゼルダを思い出しながら誠は言った。

 

「……ああ、そういうこと」

 

始めは頭の上にクエスチョンマークを浮かべていやイシュタルだったがどうやら理解したようだ。

 

その場でそれを理解したのは誠とイシュタルだけのようで他の者は何言ってんだこいつらという表情で二人を見つめている。いや、とある名探偵は気付いているようだ。

 

「どうなっても知らないわよ?」

 

「方角も方向もそのまま()()でやっちゃってください」

 

そう言われイシュタルはマアンナに魔力を込め始める。

 

「ちょっ!イシュタル何してんさ!」

 

「マスター止めなくていいの!?」

 

慌てる立香とエレシュキガルを他所にイシュタルはその場で目を瞑り意識を集中させる。

 

 

それは遠近法を利用した置換魔術。無造作に金星の概念を掴み取り、弾として弓に込め、地球に向けて放つトンデモ宝具。地をも砕くアースインパクトである。直撃すると何であろうと傍迷惑な破壊によって死ぬ。嗚呼、エビフ山。

 

 

「撃ち砕けっ!山脈震撼す明星の薪(アンガルタ・キガルシュ)!」

 

 

イシュタルが真名を解放すると同時に高濃度の魔力を宿した光の矢が勢いよく放たれる。

 

矢が壁に到達すると同時に凄まじい衝撃が誠達を襲う。その場で構えていなかった誠とイシュタル以外が後ろに吹き飛ばされる。

 

そのまま矢は轟音を伴って壁を貫通し、そのまた次の壁も次の壁もぶち壊して凄まじい勢いで直進していく。その矢は勢いを弱めるということを知らないのか、逆に強くなっているのではないだろうかと思わせる速さで直進していく。

 

そして矢が遠ざかっているのだろう。音も衝撃も徐々に弱まっていく。

 

そのまま少し上向き放った矢は放った時と同じ威力のまま迷宮を突き破ってキラーンという効果音と共に空の彼方へと消えてしまった。

 

 

「流石、イシュタル神。馬鹿でアホみたいな威力です。これはエビフ山が吹き飛ばされたのも理解できます」

 

「それ褒めてるのよね!?」

 

「ええ、見てください。スーパーショートカットです」

 

 

誠が指差した先は壁や階段、柱などお構いなしに一直線のドリルでぶち抜いたかのような通路ができていた。そして数百メートル先に開いた穴からはこちらに向かって光が僅かながら差し込んできている。

 

「これで頭を使わずここから抜け出せます」

 

「誠、あんたも大概脳筋よね……」

 

「イシュタル神に言われたくないです」

 

そこで今の今まで口をポカンと開いて唖然とした内の一人のエレシュキガルが口を開いた。

 

「それやる前に言って欲しかったのだわ!?」

 

その発言に残り全員、モニター越しのマシュまでもが頷いていた。

 

「ああ、ごめんごめん」

 

 

誠は残りをなんとか宥めて、一行はここが迷宮だと忘れて、直線の道を歩き始めた。

 

『こんな強引な方法で脱出するとは思いませんでした……』

 

モニター越しに綺麗にくり抜かれた迷宮を見てマシュが呟いた。

 

「力こそ正義だ、マシュちゃん。覚えておくいい」

 

『はい!メモしておきます!』

 

「そんなことメモしなくていいからね!?マシュ!誠君も余計なこと吹き込まないでくれる!?」

 

立香のツッコミも虚しくマシュは既にメモをとっていた。

 

 

 

『脱出――成功です!』

 

なんと誠達が出た場所は叛逆軍の砦()だった。砦は見るも無残に内側から破壊されており、見た所生存者は誰一人いない。

 

『ふう、ようやく脱出したのか。全く油断しおって馬鹿者が!』

 

不満たっぷりな様子のゴルドルフが投影される。

 

「無茶言わないでくださいよ、新所長」

 

『ぬっ、貴様は誠・エルトナム!よくぬけぬけと私の前に顔を出したな!』

 

「そこはほら、新たな戦力も2人も確保したしチャラってことで」

 

誠は後ろに立つ武蔵と以蔵を見やる。

 

『ミズ・宮本。君もしかして()()()()()()?』

 

それまで黙っていたホームズが何か違和感に気がついたのか声を上げた。

 

「ええ、浮いてる、浮いてる。流石伊達な名探偵。指摘、お見事です」

 

『浮いている……?』

 

それがどういうことか分からずマシュが首をかしげる。

 

『彼女はこの異聞帯(ロストベルト)にしっかりと根を下ろしたサーヴァントではない――――』

 

ホームズが言うには武蔵は『世界にいてはいけない仲間はずれ』という認識でいわば半霊状態らしい。吹けば飛ぶような状態らしい。

 

その説明を聞き武蔵は一瞬顔を曇らせたが、数秒後には笑顔が戻っていた。

 

「ま、そういうコト!立香君や以蔵の歴史にはいない、女武蔵が私だし!元々帰る場所のない根無し草、剣の高みを目指すだけの私でしたが今はその"目的"すらなくなっちゃったしね!」

 

でもそう笑う武蔵の顔は少し悲しみが混じっているようだった。

 

「武蔵ちゃん……」

 

思わず立香が名前を呼ぶ。

 

「いえいえ、心配ご無用。ぜーんぜん気にしてないから!あやふやでも私は私。美少年と美少女と、うどんとお金と強敵がいればそれで毎日楽しいのです」

 

 

 

『話は終わったか?それよりそこのヤガはもう用済みだ、蹴り飛ばしてやれ!』

 

「まぁ、そうなるわな……」

 

ゴルドルフの言うことがわかっていたのかパツシィはため息交じりに呟いた。

 

「待った!」

 

それを許す立香ではなくゴルドルフに直談判する。

 

『何だね』

 

不機嫌そうにゴルドルフが返事をする。

 

『密告については責めはしない。叛逆軍がどう考えるかは別としてね』

 

そこにホームズが割って入った。

 

『だが、情報が欲しい。――イヴァン雷帝について』

 

「……倒す気か?無理だ!」

 

『ほほう、無理とは?何故、どうして無理なのかな?』

 

「それは……。言えねぇ」

 

「それについては俺が言う、名探偵」

 

パツシィの態度にまたしても腹が立った誠が不機嫌そうに言う。

 

「あれを生物と言っていいのか分からないが、強いて言うなら――」

 

誠が説明を聞きながら一行は途中合流したベオウルフと含めボーダーへの帰路に着いた。

 

 

 

 




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