冥界の女神は元Aチームマスターの夢をみるか   作:Reji

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BO4楽しすぎるから投稿遅れました


それはそうと僕はワルキューレを交換しましたがみなさん何を交換しましたか?




(恋愛描写書いたことなかったからうんこだけど許して)


18.決戦前2

誠は上機嫌でようやく懐いてきたフォウ君を肩に乗せて、ボーダーの廊下を足取りも軽やかに歩いていた。

ダヴィンチに預けていたスナイパーが、帰ってきたのだが謝罪ついでに原型を留めた程度に威力向上の改造が施されていたのだ。初めは複雑な感情を抱いた誠だったが、ダヴィンチちゃんは天才だし英雄だし勝てる訳がないという考えに落ち着いた。

 

「マスター、早く操縦室に行かないとみんな集まっているのだわ」

 

傍を歩くエレシュキガルは悠々と歩く誠は急かす。実はもうこの異聞帯での最後の作戦は決行中。今はアタランテとサリエリを助けるべく収容所なるところに向かっている最中である。

 

「えぇ……、俺達どうせボーダーに待機だし行っても意味がないだろ?」

 

心底怠そうに答える誠。皆が収容所に救出に向かっている間はボーダー警備の為、誠とエレシュキガルはボーダーの外で待機なのだ。

 

「それでも来いと命令されているから行くのだわ!」

 

エレシュキガルは逆走を始めようとした誠の首根っこを掴んで、引き摺りながらも操縦室に向かうのだった。

 

「痛いって!分かった!自分で歩くから!」

 

 

 

 

 

誠達が操縦室に着いた頃には案の定、ダヴィンチ覗く全員が集まっていた。

 

「遅いよ、誠・エルトナム・シリウス君。時間はきっちり守りたまえ」

 

「俺は時間にルーズなんだ、名探偵。覚えておいてくれ。それと何故フルネームで呼ぶ」

 

「それ全然偉そうに言うことじゃないの気がするのだわ……」

 

「やかましいぞお前達!緊張感を持てお前達!人類の歴史が掛かっているんだぞ!」

 

自分の乗るこの人類最後の砦ことシャドウ・ボーダーが完全に修復されて、駄々をこねながらも待機もとい隠れていた場所から移動する決意をようやく固めたゴルドルフが叫んだ。

 

「今の今まで駄々こねてた奴はどこの誰なんだか」

 

「何か言ったか?誠・エルトナム」

 

「いえ、なにも?」

 

誠とゴルドルフが無言で火花を散らしながら睨み合う。

 

「まぁまぁ2人ともそれくらいにしておいたらどうかな?」

 

制御室で雪原を走るボーダーの制御をしながら、操縦室の様子をチラっと見たダヴィンチが仲裁に入る。

 

「そろそろ目的地に着く」

 

ボーダーを操縦していた、ホームズも振り返って告げた。その言葉に緊張しているのか立香とマシュが顔を強張らせた。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「久しぶり外だな」

 

腕の中でフォウ君を撫で、極寒の空気を肺に取り寄せながら誠が呟いた。

 

「私達はここで留守番ね」

 

誠とエレシュキガルはボーダーの警護だ。

 

「じゃあ、行ってくるよ。誠君」

 

「ちゃっちゃと帰ってきてくれよ、立香」

 

二人は立香達を見送るとボーダーの甲板の座ることのできそうな場所で、背中合わせにして腰を下ろした。

 

「不思議なくらい静かね」

 

エレシュキガルが違和感に気が付いたのか声を上げた。

 

「エレちゃんも気がついたか?」

 

「やっぱり首都に二人ともいるのかしら?」

 

「それしかないけど、何故こんな回りくどいことをするのか分からない。まぁ楽が出来るのはいいことだ」

 

「今、楽になってもそれが後回しになっただけよ?」

 

「俺は夏休みの宿題は最終日にやるタイプの人間だ。嫌なことは後で纏めてやるに限る」

 

「こんなこと聞いた私が馬鹿だったわね……」

 

辺りを静けさと雪の銀色だけが支配する。そこでは二人の会話だけが響く。

 

「マスター寒くない?」

 

「礼装のお陰でなんとか」

 

生身の人間がこの極寒の地で呼吸一つでもすれば内臓から肌まで一瞬で凍傷になるだろう。

 

「わ、私は少し寒いのだわ」

 

エレシュキガルは顔を紅潮させ、銀色の空を眺めながら言った。

サーヴァントだから寒さは感じないだろうなんて、野暮なことは言わず誠もそれに応えるように無言で手を出して、エレシュキガルの手を上から握りこんんだ。それは前後の配慮を忘れた行動だった。初めは少し驚いたエレシュキガルも自分から握り返すように誠の指に自分の指を絡め始めた。二人は任務中ということも忘れ、しばらくぶりに会う恋人達のように互いに温もりを求めるように激しく指をこすり合せた。

 

二人の間に言葉はない。指先と通して気持ちを伝えているのだ。

 

決して、今その気持ちを口に出すことはないだろう。少なくても今は違うと彼と彼女は分かっている。

 

二人はしばらく互いに背中と両手で体温を感じながら、1分が1秒かと思われる程に心地よい時間を過ごしたようだ。

 

作戦中の二人がこれでいいのか。いや良くないだろう。

 

そして、この状況を見ている者が二人いた。

一人は制御室でいつ声を掛けようかと悩んでいるダヴィンチである。遠くの方で魔物の反応があったので一応警戒するように言おうとしたが完全にタイミングを見失ってしまったようだ。まぁ、その魔物も空気を読んだのか近付いてくることはなかったのだが。

 

そして、もう一人は

 

「フォウ、フォーーーーウ!!!(堂々といちゃつくな!!!)」

 

「きゃっ!」

 

誠のフードにずっと隠れていたフォウ君である。いきなり飛び出たことでエレシュキガルが悲鳴を上げる。

 

「なんだ時間を知らせてくれたのか?」

 

誠が生物の気配すらロクに感じない砦を見ると、立香達が少し浮かない顔をして出てきた所だった。それを遠目で確認した誠とエレシュキガルが名残惜しそうに絡めた指を解いていく。

 

「収穫なしだったか、立香?」

 

スイッチを切り替えた誠が立香に声をかける。

 

「うん……。でも二人共首都にいるから早く行かなきゃ!」

 

だが、人間そう簡単にスイッチを切り変えられるわけもなく、金髪の少女は乙女思考から抜けきっていないでいた。

 

それに気が付かぬイシュタルではない。

 

「エレシュキガル、顔が少し赤いようだけど何かあったのかしら?」

 

「ななななな、なんでもないのだわ!?」

 

アドリブに弱いその少女は慌てふためく。

 

「何でもないですよ、イシュタル神」

 

「エレシュキガルの慌てようからしてかなりの怪しいのだけれど」

 

「ええ、()()ありませんでしたよ。冥界の女神に誓います」

 

エレシュキガルに何か喋らせると瞬時に理解した誠はエレシュキガルに発言させることなく、話を上手く丸め込んで一行をボーダー内に押し入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイシフト適正を持つ選ばれた魔術師たち。

Aチームはその中でも特別な存在だった。

 

アニムスフィアの後継者と囁かれた天才――――キリシュタリア・ヴォーダイム

 

エルトナム家出身の天才錬金術師――――誠・エルトナム・シリウス

 

現代の戦乙女――――オフェリア・ファルムソローネ

 

陽気で、人気者で正体不明の男――――スカンジナビア・ペペロンチーノ

 

魔術師というよりギャングのような伊達男――――ベリル・ガット

 

無口で人間嫌いの癖に、付き合いは良かった技術者――――芥ヒナコ

 

現実に空いた『孔』のような人物――――デイビット・ゼム・ヴォイド

 

 

 

――――僕は多分8番目だ。

 

僕は僕の実力不足を理解している。魔術の腕は平凡で、一族の刻んだ時は薄く短い。せいぜいが200年。とても誇れる血統じゃない。

 

それでも、マスター適正によって選ばれた。血統でも術式でもなく、生まれ持った力で。半生を無駄にしたかのような苦しみがあって、その上で必要だと言われた喜び。

 

カルデアに来て、Aチームに加わってからその誇りと劣等感は一際強まったように思う。

 

誰もが掛け値なしの才人で、一流だった。

 

マシュ・キリエライトはカルデアで生まれ育ったデザインベビーで、備品のようなものだった。

 

彼女はそこに在ればいい、と正当な魔術師であるヴォーダイムは考えただろう。無論、僕も同じだ。デイビットも芥も必要以上の接触はしなかった。ぺぺとオフェリアは女の子同士なんて言って彼女を誘い、誠はたまにウザ絡みしてぺぺとオフェリアに怒られてたっけ。

 

他のメンバーはレイシフト適正以外にも様々な拠り所を持っている。僕にはそれがない。コレ以外何もない。優れたサーヴァントを使役できるという偶然にしがみ付くしかない。

 

 

 

「もう、そんな偶然じゃないわよ?能力の優劣と人理修復の適性は分けて考えないとね?」

 

カルデアの一室でカドックはペペロンチーノに諭されていた。

 

「個人の能力は劣っていようと関係ない。誠もそう思うでしょ?」

 

「何故、俺に振る。そもそもお前達なんで俺の部屋でそんな真剣な話するんだ」

 

そうここは誠のカルデアの部屋なのだ。そして、誠が不貞腐れたように答えた。

 

「だってあなた暇そうだし、一緒にお茶でもしながらどうかと思って」

 

「ぺぺ、毎度毎度俺を巻き込むのはやめろ」

 

「あなた、放っておくとまたマシュちゃんにウザ絡みするかもしれないでしょ?」

 

「だから、あれは違うと言っているだろう。キリシュタリアが俺に説教してくるからその場の雰囲気でマシュちゃんが巻き込まれに来たんだ」

 

「言い訳無用よ。話が逸れたわね、コレは必然よカドック。だからまずこの運命をものにしちゃいなさいよ。そこからが本当のスタートよ、カドック」

 

「まぁ、頑張れよカドック」

 

「何言ってるの、あなたも頑張るのよ誠」

 

「程々程度にな」

 

 

 

しっかりしろ、言うようにぺぺと誠は僕の肩を叩いた。彼らの言う通り、運命を我が物にしなければ。

 

屈辱も、侮辱も。侮りも、噛み砕いて。

 

だが、そんな思いも無駄に終わったのだ。何もかもが無意味だった。有用性の証明はなされず、一歩も踏み出すことすら出来ずに僕の生命は薙ぎ払われた。

 

それでも。コレで終わるはずだったのに。僕が生前抱き続けた劣等感も消えてなくなるはずだったのに――――

 

 

救ったのだ、という。

ただ一人残った、オマケのオマケの補欠が、

それもただの素人が。

舞台に上がることさえなかった僕達の代わりに、誰もが認める偉業を成し遂げたのだ。

 

――――他人事だ。どうあれ他人事と流せるものだ。

 

普通なら。普通なら!

 

なのに胸の飛来したのは激しい妬みだった。

 

……悔しい。

 

悔しい!悔しい!悔しい!悔しい!悔しい!

 

ああ、たまらなく惨めで悔しい!出来るはずだった、僕にだって!

 

僕にも世界を救うことが出来るって!

 

 

 

 

 

カドックは胸に様々な思いを秘め、意識を覚醒させていく。

 

 

そうして、決戦の日の朝を迎えた。

 

 

 


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