皆さんはエレシュキガル引けましたか?
「もう間も無く、首都付近に差し掛かる」
一行はもう間も無くモスクワに到着する。この異聞帯の最後の戦いを迎えるだろう。
「ここがオプリチニキの探知に引っ掛からないギリギリの領域だろう」
ボーダーの運転をムニエルに任せたホームズがいつになく真剣な面持ちで指示を出す。だが、左手にはいつも通りパイプが握られている。
「停車次第、ベオウルフとビリー、それとパツシィはバイコーンを調達してきて欲しい。夜明けまでには揃えてもらわないとね。その間、我らが二人のマスターには仮眠してもらおう。ん……?誠君はまた遅刻か……」
ホームズが大きな溜め息を吐く。そして、彼にはいささかマスターとしての自覚が足りないのではないかとぼやく。これが操縦室でのいつもの光景になりつつあった。
―――その頃の誠の部屋にて
「おい、誠!はよう起きんか!」
どうやら今日の起し当番は以蔵のようだ。だが、怒鳴られた程度で起きる誠ではない。
「……眠い。……おやすみ……」
この所、誠は働きすぎたと言う理由で隙あれば部屋のベッドでゴロゴロしているのだ。
「しょうがないのう……」
以蔵も誠の態度に腹がたったのか、いつも戻り刀を抜き誠の顔面に当たるか当らないかのスレスレの部分で突き立てる。
「はよう起きんかァァ!!!ボケェェェ!!!!」
その時、ボーダー内に以蔵の叫びが木霊したのだった。
「起きなかったら何してもいいとは言ったが刀を突きつける奴がどこのいるんだ……」
コレには流石の誠も起きずにはいられなかったようだ。だが、それでもまだ眠いようだった。
「そういや以蔵、うっかり忘れる所だった」
「なんじゃ?」
以蔵が訝しげに誠を睨む。
「そう睨むなって。手を出せ――――」
それとこの出来事と同時に武蔵がマシュを連れ出したのだが、二人にマスターそれを知る由もないだろう。
そうして様々なイベントがいろんな所で発生しながらも、シャドウ・ボーダーは朝を迎えた。
その日は誠も珍しく二度寝を決め込まないどころか、早起きしていた。
ベッドに座り何か考え事をしている誠。その傍らにはエレシュキガルが見守るように座ってる。
「エレちゃん今日は頼む」
誠がエレシュキガルに向かってそう告げ、顔を引き締める。
「マスターこそしっかりしなさいよね」
エレシュキガルも優しく笑いながら返事をする。その笑顔には
「ああ、今日の俺はいつもの2倍くらいにはやる気に満ち溢れている」
「0に何をかけても0だって習わなかったかしら?」
いつからそこに立っていたのか、エレシュキガルと全く同じ声の殆ど同じ容姿の人物が割って入る。僅かに違うとしたら髪の色が黒髪だというところだろうか。
「人がせっかくのカッコつける時に邪魔しないでくれますか、イシュタル神」
イシュタルはニマニマと笑いながら二人を見ている。
「イシュタル神こそ下手な真似して失敗しないでくださいよ?」
「ふふ、その言葉そっくりそのまま返してあげるわ。あなた達は大船に乗ったつもりでいるといいわ!」
イシュタルがテンションを上げながら高笑いした。その様は悪魔と言っても差し支えないだろう。
「誰が悪魔よ!」
「誰もそんなこと言ってませんけど」
そしてそんないつもより明らかにテンションの高いイシュタルを見て二人は声を合わせた。
「「いつになく心配だ(わ)……」」
――――――――――――
「さてと僕と以蔵はこの辺りでお別れだね」
ボーダーから降りて、バイコーンに跨ったのはビリーと以蔵だ。首都を撹乱させるために彼らとはここからは別行動となる。陽動作戦ため彼らとは二度と会うことが出来ないかもしれない。
「おう、大暴れを頼むぞビリー」
ベオウルフが拳を突き出し、エールを送る。ソレに応えるようにビリーも拳を突き出しコツンと合わせた。
「可能な限り努力するよ」
「その刀でモスクワを恐怖に陥れてこい、以蔵」
誠も一応以蔵に最後の一言になるかもしれないので声をかけておく。
「任せちょきや、一人で多く切り殺してきちゃるわ」
「殺すのはオプリチニキだからな?」
一緒にヤガまで殺しそうだな……。なんて思う誠を余所にバイコーンは二人を乗せて駆け出してしまった。
「立香あまり動じてないようだな」
先ほどから決戦前だというのに立香は少し笑っていた。
「頼れる仲間がたくさんいる何も心配してないよ」
「……ちっ。おう武蔵殿。あれだな。なんか照れるな」
そんなことを真顔で平然と言いのける立香にベオウルフが恥ずかしいと言った顔で武蔵の方を見る。
「信頼には応じないとねー?」
「立香に言われたからには私も本気を出すしかなさそうね!」
「イシュタル神はもうちょいテンション下げてくれませんかね……」
誠の思いは虚しくイシュタルはそのままのテンションを維持したままモスクワに突入したのだった。
モスクワ中心部にて
ビリーの銃が幾度となく火を吹く。
「チッ……再装填!」
「ちぇりゃあああ!」
ビリーがリロードしている最中のオプリチニキに以蔵が斬りかかる。
「センキュー以蔵。それはそうと何人倒したかな?」
「知らん。百人を境に数えるのらあ辞めちゅうわ」
絶え間なく二人に襲いかかるオプリチニキ達。倒しても倒しても押し寄せるソレの数は無限と称してもいいだろう。
「僕の弾丸は無限だけど、そっちも心底無限らしいや。ゲリラ戦は割と得意だけど、流石にきついや!」
「ゴチャゴチャ言わんでええ気、もっと暴れや!」
以蔵が二刀の刀を使用し、オプリチニキを斬り伏せながら叫ぶ。魔力で最大限にブーストしているのか、一振りするだけでオプリチニキが霧散する。
「なんか以蔵、ヤケにテンション高いね。ってかそんな魔力どっから持って来てんのさ!」
なんとかビリーも応戦しながら叫ぶ。明らかに以蔵はどこからどう見ても魔力を外から持って来ている。
そう以蔵はあの夜、誠と仮契約し魔力のパスを繋げたのだ。おかげでシャドウ・ボーダーから魔力を引っ張ってくることで出来る。
「まだまだぁ!」
その時、以蔵の体を魔力が包む。
以蔵の纏う魔力が一気に濃くなったかと思えば以蔵が魔力を解き放り、オプリチニキが風圧に吹き飛ばさる。
紅い月に雲がかかる。
どこからともなく現れた、霧が路地の一角に蔓延する。
そして、モスクワに闇が訪れる。
「お初にお目に掛かります」
そこに立つのは京の都にて恐れられた一人の人斬り。
「今宵は異国の摩天楼に巣食う怪人――――」
空気が変わる。
僅かな月明かりがその場で彼だけを照らす。
三度笠の裂け目から赤い不気味な目を覗かせオプリチニキを捉えて逃さない。
「『人斬り以蔵』じゃあああああ!!!!!命がおしゅうないもんから掛かって来いや!!!」
モスクワの路地裏の一角にて、以蔵の咆哮が轟いた。
オプリチニキの戦術、動きの全てを完璧に覚え、この場で『霊基再臨』を果たした彼を止められるものはいるのだろうか。
「僕も負けていられないなぁ」
以蔵の姿を見て触発されたビリーが銃を構えて呟く。
「
ビリーが手に持つ相棒に集中する。
「……起動方法はただ一つ。集中し、克服し、踏破せよ」
ビリーの体が以蔵の時と同じように魔力を纏う。ビリーもこの場で霊基再臨を成し遂げようとしているのだ。以蔵はその場のノリと勢いだけで簡単に霊基再臨に成功したが霊基を再臨させるという行為は本来そう簡単に行くものではない。
―――限界の限界のその向こう。
―――彼方に輝く雷光。
―――そこに向けていざ走らん。
―――愛馬にまたがり、栄光と破滅に向けてまっしぐら。
ビリーの体を吹雪が覆う。
「勝負だ、オプリチニキ」
吹雪が過ぎ去り、姿を露わにしたビリーは先程までとは明らかに違っていた。
いかにもガンマンといった黒服に身を包み、カウボーイハットをかぶり、首に巻いた赤いスカーフをなびかせる。
左手に握るは、ダヴィンチに魔術的に強化された相棒サンダラー。
「このビリー・ザ・キッド、」
ビリーが不敵な笑みを浮かべる。
その瞬間、オプリチニキ3体が同時に霧散した。意思のない、ある一定のプログラムを施された彼等では理解するのは難しいだろう。
それは「この拳銃を手にしたビリー・ザ・キッドの射撃」自体が逸話として昇華された宝具。
なんとビリーはその一瞬のウチに3度その引き金を引いたのだ。
目にも留まらぬ速度の射撃にオプリチニキは追いつかない。
「お前達が今まで嬲ってきた連中たぁ、次元が違うぞ?」
銀から金でアナ3体出てマジでキレた
それはそうと青ブタの二次創作近々投稿するからよろしく