(FGOイベントのモチベが)ないです
世界の理は二つに一つ。
正義などないか、正義しかないか。
答えを得た少女は今、容赦無く自分の正義を振りかざす。
「消え失せろ、音楽家!」
雷帝の天高くあげられた鼻から放たれる必殺の一撃。それが宮殿に直撃するかどうか、そんな時だった。その一撃が何かに防がれたような凄まじい轟音がモスクワを震撼させた。
「せんぱーーーーいっっっっ!!」
それは今の体に合うように装備を一新させたマシュだった。頭にはバイザーを、体には身体能力を補強するために装着されたアーマー。それに加えて盾にはバンカーボルトが増強され若干近代仕様になっている。
「———来たんだな!マシュ!」
立香が最愛の後輩の名を呼ぶ。
「はい!ま、間に会いました!お待たせ申し訳ありません!」
「新たなサーヴァントだと……!?くだらぬ。諸共吹き飛ばしてくれる!!」
だが、感傷に浸っている時間は今はないようだ。再び、雷帝が天に届くばかりの長さのある鼻を天に掲げる。
「真名、凍結展開」
その場の誰もがマシュ・キリエライトを信じている。
だが彼女の中にはギャラハッドはもう存在しない。それ故、これは彼の円卓の白亜の壁ではない。マシュ自身の、デミ・サーヴァントとして今の今まで培ってきた全て、ありったけを目一杯に楯に込めた彼女の宝具だ。
「これは多くの道、多くの願いを受けた幻想の城」
『——永遠に続く城砦はないんだよ、マシュ』
『あるとすれば、それは再起する心の在り方。朽ちてもなお立ち上げる、その姿が永遠に見えるんだ』
ふとそんな言葉がマシュの脳内に響いた気がした。
「呼応せよ!『
彼女の前にかつて白亜の壁だったものが展開される。
直後、轟く轟音と雷鳴、捲き上る吹雪。
「————お、おおおおおおおおお!その光はまさしく!安寧を施す御使いの光!」
雷帝が発狂する。なんとマシュは二度も雷帝の宝具を防ぎきったのだ。
「マカリー、おお!師よ!ご覧になられたなられたか!聖なるかな!我が目前に御使いは降臨せり!」
正気を失った雷帝はマシュの盾以外は何も見えていないのか、マシュに目掛けて猛進する。
「手に入れなければ!手に入れなければ!その光こそ、我がロシアに礎になるだろう!」
だが、それを許すグガランナではない。
巨体と巨体が再び激突する。
その時だった。雷帝はグガランナの存在を完全に忘れてたいたのか、それとも気にしてなかったのか。グガランナの全身全霊のタックル攻撃に不意を突かれ、頭にある本体を覆っていた雷撃を一瞬、ほんの一瞬解いてしまった。
「————勝機。稲妻の守りを失ったな、デカブツ天狗」
時間にして1秒にも満たないだろう。だが、その機を始めからずっと狙っていた者からするとその時間は十分すぎた。
「いくぞ、剣轟抜刀!」
「ぬうっ!」
「伊舎那、大天象!」
気づいた時にはもう遅い。雷帝の視界が二つに裂ける。今こそ最大にして最期の勝機。
「イシュタル神!」
「分かってるわよ! これが私の、全力全霊……! 打ち砕け!『
イシュタルが全霊を込めて宝具を雷帝の本体目掛けて放つ。そして容赦無く金星ブラスターが雷帝の本体と皮膚の間に突き刺さる。
「う、おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
雷帝が悲鳴にも似た咆哮をあげる。
山をも崩壊させるアースインパクトは雷帝を貫いたのだ。
「山岳型魔獣、完全停止!それと同時にグガランナの崩壊を確認!」
本体とそれが操っていた巨体が分離されたため、巨体の方はこの世界を見渡すようにその場で立ち尽くしている。グガランナは方は役目を果たし終えたかのようにいくつかのパーツに別れて崩れ落ちている。そのパーツをイシュタルが急いで回収している。
「やったわね、マスター」
「だが、本体は生きている。あれでサーヴァントというのだからおそロシア」
「…………」
「その冷たい目はやめてくれないか、エレちゃん」
雷帝本体の方はというと3メートル程ある巨体を動かしながらアナスタシアと対峙している。
「……やるべきことはまだ残っている。行くぞエレちゃん」
そう、この異聞帯でやることは雷帝の撃破ではない。空想樹。カルデアにとって最大の排除対象である。
「カドックの方は立香に任せるとして……」
そう呟いて誠は辺りを見回す。
————武蔵ちゃんはもういないか。
「ちょっと誠、どこ行くのよ」
「イシュタル神もついて来てください」
「はぁ?立香達はどうするのよ」
イシュタルが怪訝そうな顔を浮かべるのも無理はない。少し離れた場所では立香とカドックが対峙している。
「あっちは最悪なんとかなるでしょう」
仮に立香達が負けてもカドックは殺しはしないだろうと、誠の中には確信めいたものがあった。
「問題はこっちです」
そう言って誠は空想樹を見上げる。
「今のうちに倒しとかないと邪魔が入るかもしれませんし」
それを聞いてイシュタルは渋々納得したようだった。
そして誠はエレシュキガルとイシュタルを連れて、未だ吹き荒れる雪嵐の中、空想樹の根本へと向かった。
「でけぇ」
根本に着いた誠は感嘆の声を上げた。空想樹はこのロシア全土を見渡しているかのようにそこにそびえ立っていた。
どう戦おうか試行錯誤している時だった。
「……待て……貴様ら」
後ろから声が掛かった。
「後は死にゆくだけのお前が何用だ?」
「……不敬極まる輩どもめ……名を名乗れ」
なんとそこに立っていたのはイヴァン雷帝だった。
「我が名はエレシュキガルよ」
「神代の冥界の女主人か、ではそちらは?」
「我が名はイシュタル」
「豊穣と破壊の女神か、そして男よ。貴様の名は何という」
一呼吸空けて誠が答える。
「俺の名は誠・エルトナム・シリウスだ」
「では貴様に問う、何故世界を滅ぼそうとする?貴様の世界に、その価値が本当にあるのか?ここで苦しむ民達を一人残らず殺戮するほどに!!」
「当たり前だ」
誠はその質問に物怖じするわけでもなく、昨日の夕食は何かという問いに答えるのと同じくらいのノリで。
ここに遍く全ての正義に、今問いかけるその覚悟を。
「既に俺達の世界の住民のほとんどがお前達サイドよって死に絶えている。今更、そんなことをお前に言われる筋合いなどない」
「なら余は覚悟を問う。お前の世界をお前が救うということはこの異聞史を破壊することになるぞ。故に問う!故に訊す!貴様のその権利があるのか!?この大地に住むヤガ達に”死ね”とお前は命じるのか!」
雷帝に怒りは収まるどころかどんどんヒートアップしていく。
「質問を質問を返すようで悪いが、先ほどまでお前が操っていたあの巨体。アレを維持するために何百人何千人のいや何万人のヤガを犠牲にしてきたか知っているか?それにこれはあらゆる世界の生存競争。こちらにも意地があるし、それにそちらの言う覚悟は出来ている」
「余は……余はまだ敗北しておらぬ……!」
「分かったらそこをどけ死に損ない」
「……くくっ、体はまだ動く」
雷帝が右手の杖を掲げ、雷を纏う。
「——いや、お前は終わりだ」
————こい
誠が右手に力を込める。
右手の甲が赤い閃光が放つ。
「お初にお目にかかります」
突如、雷帝の後ろにサーヴァントが現れる。
「じゃあ、死にや!」
刀が雷帝の心臓部を綺麗に貫いたかと思えば、止めを刺さんばかりにそこから思いきり刀が振り上げられた。
「……おお……おおお……ここまで……ここまでか……。その心の……強さ……余は認めよう……貴様の勝利を……」
———すまないな、正しさだけじゃこの世界は誰も生きていけない。
そこまで言うと雷帝は粒子となって消滅した。
「こちら雷帝の消滅を確認」
誠がシャドウボーダーに連絡するが返事がない。あっちはあっちで大変なようだ。
「以蔵が生き残ってるのは予想外だった」
「まだ、仕事が残っちゅうきのう。まだ死ぬわけにはいかんぜよ」
「なら後はこいつだけだな」
4人はこちらを悠々とこちら見下ろす大きな大樹を見上げた。
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