冥界の女神は元Aチームマスターの夢をみるか   作:Reji

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一話何文字くらいがいいんすかね

初めの方は原作に沿ってますので、12話くらいまでは適当に流し見してください
2章からは初めからオリジナルでいきます


永久凍土帝国アナスタシア
1.日常からの浮上


ーーーその歴史は、魔獣と共に歩みしモノ。絶え間ない雪嵐、産み落とされる魔獣に対抗するため、人は独自の進化を遂げた。脆弱さは邪悪であり、死は敗北であり、強靭こそが讃えられる。弱肉強食の理論を突き止めた永久凍土の世界。カルデア一行は今、その異なる歴史へと足を踏み出そうしているーーーー

 

 

 

虚数潜航を始めてから早くも一週間が経つ。

 

ボーダーの一室では、マスターを起床させるべく一人のサーヴァントが戦っていた。

 

「マスター、早く起きなさい!もう、7時よ!」

 

「起きても銃の整備くらいしかすることないし別に寝ててもいいだろ……」

 

朝に弱い誠は布団を潜り込み二度寝を決め込む。

 

「昨日も一昨日もそのまた前の日もそのまた前の日もこの時間に起きたじゃん……」

 

気怠げな様子で文句を言う誠。ここでは毎朝7時前に起きる生活が強いられているのだ。

 

それはそうとこの虚数空間に時間という概念はあるのだろうか。

 

「早起きは続けることが大事なの…だ…わ!」

2度寝を許すエレシュキガルではない。誠から強引に布団を奪い取る。

 

「寒い!鬼!悪魔!エレちゃん!」

 

「何でも言うのだわ。あなたが私のマスターである限りグータラ生活は許さないわ」

 

「えー。ならエレちゃんと契約解除しようかなー。魔術使いとしてなら俺そこそこ強いからなんとかなるかもなー」

 

「え、流石に冗談よね?ねぇマスター?ねぇってば!マスターなら本当にやりかねそうで怖いのだわ!?」

 

「流石に冗談だ」

苦笑しながら、誠は一安心したような顔をしたエレちゃんを横目におもむろにベットから起き上がる。

 

エレシュキガルが用意した机の上に朝ごはんが用意されている。ご飯といっても軍用糧食だ。

誠はそれを食べながら今日の予定を決める。

 

――今日は立香と一緒に筋トレでもするか。いやでもあいつのメニューバカキツイしなぁ。2日目立香の筋トレに付き合ったのだが死ぬかと思った。俺は終わった頃には息を切らしていたが、あいつはまだまだ余裕そうな表情でお疲れなんて言ってきた。軽々、片手の人差し指と中指だけで指立てしておいてなーにが一般人じゃ。

 

――取り敢えず、操縦室に顔を出すか。

 

誠とエレシュキガルは操縦室に行くため部屋の扉を開けると立香とマシュちゃんと鉢合わせする。

「おはようございます。誠さんとエレシュキガルさん」

 

「おう、おはようマシュちゃん、立香」

 

それから4人全員それぞれ挨拶を交わし操縦室へ向かう。

 

「ええい、いい加減にせんかヘボ探偵!なぜ浮上しない!もうとっくに安全圏に脱しただろう!」

朝からゴルドルフの野郎が叫んでいる。元気なこった。

 

「それは難しい。『安全圏』とは何を示すか、その定義から始めないといけない。虚数空間に敵がいないから安全という考えは浅はかだ。そう、即ち。我々は”いつ浮上しよう?”ではなく”どうやって浮上しよう”と頭を悩ませるべきなのさ。」

 

「浮上そのものが出来ないというのか・・・!?ほほほ、ホームズ君!どうして君はそう、とても怖ろしい事をソラでほざけるのかね!?」

これがここでのいつも通りの光景だ。少なくとも同じようなやり取りを最低5回は見ているような気がする

 

「(いつも通りホームズと新所長が口喧嘩しているのだわ……。)」

 

「(違うぞエレちゃん、あれは親睦を深めているのさ。)」

 

「(とても親睦を深めているようには見えないけど……。)」

 

「(先輩に同意見です。それに喧嘩というよりあれは新所長が一方的に……)」

 

「ええい、そこ喧しいぞ!全部聞こえておるわ!」

 

耳打ちで話していたのにゴルドルフはどれだけ地獄耳なのだろうか。

 

「おはよう名探偵、おはようございます新所長。それにしても新所長は朝から元気ですね」

 

誠が嫌味ったらしく挨拶をする。

 

「おや、おはよう4人とも」

 

「おはようなのだわ」

 

「おはようございます」

 

「おはようございます、みなさん。状況確認に参りました」

 

一通り挨拶を済ませるとゴルドルフが再び騒ぎ出した。

 

「ええい、ホームズ君。先ほどの話の続きだ!貴様は『浮上しない』ではなく『浮上出来ない』と言ったな。それはどういう事なのかね。せっかく君を新カルデアの経営顧問に任命したのだ。私の采配に恩を感じつつ、この新所長にきちんと説明しなさいよ、ほんと」

 

「ふむーーー肩書きに惹かれる私ではないが、経営顧問、というのはこれまでにない役職だ。正直、胸が躍っている私がいる」

ホームズを経営顧問なんかにしたのか?今まで以上に好き放題やらせてしまうことになるぞ。

 

「ゴルドルフには破滅願望でもあるのか?」

おっと心の声が漏れてしまった。

 

「ええい!お前はいい加減、私のことを新所長と呼べ!」

「はいはい新所長。新所長バンザーイ。」

 

「ぐぬぬ…ふざけた態度をとりおって。あの時私を迎えに来てくれたことを免罪符として先の態度は見逃してやろう!まぁ、私は一向に迎えに来てもらわぬてもよかったのだがな!」

 

「しかしあの時途中から記憶がーーーー」

 

「新所長、ホームズの先ほどの話はどうなったのです?」

 

都合が悪くなったので強引に話を元に戻す。

 

「おおう、そうだったな。どうなのだホームズ!率直に言って我々は助かるのかね?」

 

「助かるのか、という質問は広義的すぎて何とも。ですが浮上の可能性については説明しましょう。我々は浮上できないのではありません。より正確には、浮上できる場所がない。我々が潜航している虚数空間ーーーーーーー マイナス世界から現実へと戻るには現実との『縁』が必要なのです。言うなればアンカー。現実に存在するものがあれば、本来は何であれ『縁』となるはずです。しかし、それが出来ない。つまりーーーーーー」

 

「地球は今クリプターに乗っ取られてまっさらの状態、つまり漂白状態に陥っているということだろ?名探偵」

 

誠は少しドヤ顔でホームズより先に結論を出す。

 

「ご名答。流石にAチームに選ばれたことだけあって鋭い」

 

「ははは、何を馬鹿な。漂白?何もない?確かに、我々は南極で怖ろしいものを見た。七つの隕石・・・のようなもの。巨大な落下物だ。だがあの程度で地球上で地球上全ての国家が消えるものか。何よりーーーーそう、なにより!西暦元年より存在する時計塔が滅びるわけなかろう!」

 

「お言葉ですがMrゴルドルフ。ロンドンの魔術協会もまた、滅びました。地球上の全ての国家は消え去った。人類は我々を残していずこかへ洗い流された」

 

ホームズの言うことが信じられないのか、ゴルドルフは驚愕の表情をする。

 

「バ、馬鹿げたことを言うな。そんな簡単に世界が滅びる筈がない、ないのだ!」

 

ゴルドルフは顔に驚愕の表情を貼り付けたまま叫ぶ。

 

――この間まで人理焼却されようとしてたんですがそれは。

 

「……ないのだよな?、お、お前たちもそう思うだろう?」

 

何故、人類悪に素手で殴りかかるよな人間に常識を問うのか、誠はいいたかったが我慢した。

 

このままでは一向に話が進まないと思ったので、誠が口を開いた。

 

「失礼を承知でお聞きしますが、新所長は次のカルデアのトップです。まだカルデアの特異点記録を見ていないなんてことはありませんよね?第4特異点 死界魔霧都市ロンドンにて時計塔も滅びていましたが……。」

 

それを聞きゴルドルフは目を泳がせる。

 

――こいつ一度脳みそ銃で撃ち抜いた方がいいんじゃないか?

 

「ごほん!こ、これから読もうとしたところであの事件が起こったのだ!仕方ないだろう!」

 

「そういうことにしておきます。」

 

ホームズが何事もなかったかのように説明を続ける。

 

「地上には我々と関係を持つものが一つ、存在する余地がある筈だ」

 

殺戮猟兵(オプリチニキ)か。そうすると俺たちは今浮上すると敵地のど真ん中に浮上できるというわけか」

 

誠が結論を出し、その場にいた皆が暗い顔をする。

 

「シャドウ・ボーダー内の備蓄も残りわずか。いつまでもこうしているわけにはいかないだろう」

 

「そうだ。どのみち我々は浮上するしかない。だがそのタイミングも最善のものを選びたい。幸い、我々にはペーパームーンがある。これを基に何処に出るにしろ比較的安全な場所――――周囲に敵性反応のないエリアを探していた。そうだろう、ダ・ヴィンチ?」

 

『はーい。呼ばれておはようダ・ヴィンチちゃ〜ん!』

アナウンスからダヴィンチちゃんの声が船内に響く。

 

『というか、話は聞かせてもらっていたよ〜。電算室で生体ユニットになっている間、シャドウ・ボーダーの内部の情報は手に取るように分かるのさ☆』

 

――なんだと!?なら俺とエレちゃんのイチャついているところも見られたということか!?

 

『誠くんとエレシュキガルちゃんはみんなの前でイチャつかないでおくれよ?胸焼けしちゃいそうだ。』

 

「べ、別にイ、イチャついてなんてないのだわ!?」

 

『そうかい ?なら音声データをみんなに聞いてもらってーーーー』

 

「わーー!わーー!それを流すのは駄目なのだわ!?」

 

「ダヴィンチちゃん、今日はここら辺で勘弁してやってくれないか?」

 

『そうだね。誠くんの顔に免じて今日はこのくらいにしておこう』

 

「もう、冥界に帰りたくなってきたのだわ……」

 

よほど恥ずかしいのか顔を赤面させその場でうずくまるエレシュキガル。

 

『さて。殺戮猟兵(オプリチニキ)が存在する領域はもう目星をつけてある。そちらに向かって浮上するコースも計算済み。ちょうどいい流れが来ている。今なら5分後にコースに乗れるだろう。次の波がくる頃にはシャドウ・ボーダー内の電力はほぼ落ちている』

 

浮上するなら今が好機だと言わんばかりにホームズが口を開く。

 

「さてどうする諸君?浮上には絶好の波が来ているようだが、覚悟の程は?」

 

すると誠は自然と立香と目が会った。

 

そして、お互い笑いながら叫んだ。

 

 

 

「「やるしかないでしょ!!」

 

 

 

「ふむ、いいだろう」

 

「待て待て!私のいうことは無視か!?」

 

ホームズとダヴィンチはゴルドルフの言う事を無視して浮上の為の準備に取り掛かる。

 

『ペーパームーン惑星航海図プラスマイナス収束開始。シャドウ・ボーダー、間も無く実数境域へ入港します。実数空間における存在証明、投錨。対象を殺戮猟兵(オプリチニキ)に固定』

 

 

『虚数潜航、終了。これより実数空間へ浮上します』

 

 

 

Lostbelt No.1 異聞深度 D

 

A.D 1570? 永久凍土帝国 アナスタシア

 

獣国の皇女

 




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ありがとうございます 

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