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『実数空間にアンカー固定。実数証明完了。シャドウ・ボーダーの存在確立。ゼロセイルによる帰港に成功しました』
いきなりの虚数空間からの浮上でみんな放心状態の中、アナウンスが船内にこだまする。
――生きているという実感が湧いてくる。
――それと同時に体に一気に負荷が掛かるのを感じる。
無重力空間にいた人が久しぶりに地球に足をつけた瞬間はこんな感じなのだろうか。
『報告。境界突入の際に一部装甲が剥離しました。再度の虚数潜行は、現状では不可能です。今後の安全な巡行のため、資源補充、乗組員の食料調達、シャドウ・ボーダーのメンテナンスを提案します』
「そうか、いや。ぶっつけ本番でよくここまで保ってくれ――む?」
ホームズが何か言いかけるが、何人かのスタッフはもうコックピットの非常口に駆け寄り開けようとしている。
「やった、地上だ!外だ!やっと新鮮な空気が吸えるぞ!」
「うんうん、外はどうなっているのかしらね!車は揺れてないから海上ではないと思うけど!」
「押すな、気持ちは分かるが落ち着け、押すな!ロックが外せないだろう!」
みんな久しぶりの外に浮かれているのだろう、気持ちテンションが高いような気がする。
「いやはや。まぁそうだろうとも。誰だって地上の様子が知りたいんだ。何しろ自分の家であり守るべき世界だ」
「みなさん、コックピットの非常口に殺到していますね。先輩はいいんですか?」
マシュも少しウキウキした様子で立香に話しかける。
「もちろん!今すぐ行く!」
それに元気よく答えマシュと一緒に非常口へ向かう立香。
「エレちゃん、俺たちも行こう」
頷くエレちゃんと共に誠も非常口へ向かう。
「えーとボルトも外したしこれで開くぞ!」
「非常口、開きます!先輩、外からの光が――――」
非常口が開く。あたり一面銀世界の光景が目に飛び込んでくると同時に尋常じゃない冷気が車内に流れ込んでくる。
「「「「「「「「さーーーー」」」」」」」」
「「「「「「「「むーーーーーい!?(のだわ!?)」」」」」」」」
「ここ、こいつはきつい!私のコートに霜が付くとは!諸君、急いでドアを閉めるんだ!」
これにはホームズもびっくりの寒さのようだ。
「は、はい・・・!」
やってしまった様な顔でスタッフが急いで非常口を閉める。
「いやー、どうなる事かと思った。咄嗟に空調を上げておいて良かったよ」
奥から苦笑しながらダヴィンチが出てくる。
「もーみんな無事かい?私が止める間も無くドアを開けてしまうんだから。でもいい教訓になったかな?これから外の調査が終わる前に外へ出るのはNGだ」
そこから状況整理してカルデア一行のいるロシア全体を謎の嵐がまるで外界と隔てる様に『世界の壁』のように覆っているらしいということが分かった。
「我々が未知の世界に閉じ込められた、ということになるのだ」
ホームズを筆頭にこれからの方針を決めて行く。
「現地の調査と修正を行う、という方向で問題ないかな、ゴルドルフ新所長?」
「新所長……う、うむ」
新所長と呼ばれるのに慣れていないのだろう。ゴルドルフが歯切れが悪く答える。
「そして現在、シャドウ・ボーダー装甲に損傷があり、スタッフが直すまでは動くことができない。」
そして、誠、エレシュキガル、立香、マシュが現地調査員として派遣されることになった。
マシュは皆が声をそろえて反対したのだが、本人の強い希望で同行することになった。勿論、武装は極力しないという条件付きだが。
「よしよし。では、こんな事もあろうかと調整しておいた極地用の魔術礼装をプレゼントしよう!」
今は、ダヴィンチちゃんからもらった魔術礼装を着用し、4人は非常口前で用意していた。
今回はフル装備で臨む。腰に愛銃のマシンガンを下げ、肩にスナイパーライフルを担いで準備完了だ。
「立香、これ」
誠はあの時預かった物を立香に手渡しする。
「これは……」
それは誠がダヴィンチちゃん(大人ver)から預かったトランクだった。
「霊脈を確保できればサーヴァントの召喚も可能になるらしい。電力に関してはダヴィンチちゃんとホームズがなんとかしてくれるだろう。お前には特異点での歴史がある。その中には召喚に応じてくれる英霊がいるだろう。エレちゃんがいるから縁で女神イシュタルなんかが召喚されちまうかもな」
誠は自身の魔力だけでエレちゃんの現界を維持しているため、召喚するサーヴァントは立香が契約するのだが、もしイシュタルが来たら大変そうだと誠は心底思う。
「イシュタルが来たら旅が賑やかになるよ」
立香も反射的に苦笑する。
「それは冗談でも言わないで欲しいのだわ……」
エレシュキガルもそう言って憂鬱そうな顔をする。まぁ、イシュタルとはお世辞にも仲がいいとは言えない訳だが。
「先輩、こちらも調整がすみました。出発しましょう!」
非常口を開けるやはり凄い吹雪だった。
「フォウ……」
するとフォウ君がマシュの胸から顔を出した。大方、盾の聖杯スペースに隠れていたのだろう。
「フォウさん!こんな気温で大丈夫ですか!?」
「コートに潜り込んでいるから大丈夫だと思うよ」
誠はエレシュキガルにアレには余り関わらない方が身のためと忠告されているが、気になるものは気になるのだ。今度、接近してみようと思う誠であった。
『はーい、テステス。どうかな、聞こえてるー?』
そんなことを考えているとアナウンスからダヴィンチちゃんの声が響いた。
「こちら誠、聞こえている」
『よし、通信はなんとかいけそうだ。遠く離れるとどうなるか分からないけど。それじゃあまず、4人には霊脈調査を行なってもらいたいと思う』
一行はダヴィンチの指示で移動していると興味深いものを見かけた。
「……特異点にあった光帯ではなさそうです」
遠く離れた場所に、天に向かって樹木のようなものがそびえ立っているのは見つけたのだ。
その樹木らしきモノを観察していると周りから呻き声が響いた。
『低ランクの幻想種かな?敵は六体。エレシュキガルちゃん頼むよ?』
無言で誠は腰のマシンガンに手に取った。
短いけど眠いからここまで