なんかハッピーエンドしか許されない主人公に転生したようです。 作:あぽくりふ
どんな人物であれ、物語となり得る。
どんな物語であれ、結末は存在する。
どんな結末であれ、私は歓迎しよう。
それこそが、創造主としての責務だろう。
──『黒の剣聖』キリト。またもやラストアタックを奪取、そのレベルはいよいよカンストか。
「なんだこれ」
「今朝発行されてたやつよ」
溜息を吐いた。だが、まあいい。アルゴにはいくつも借りがある。加えて、多少俺にヘイトが向こうが何も問題はない。シノンに朝刊を投げ返す。
「今日はどうするつもり?」
「昼過ぎにフィールドボスの攻略会議に出る。その後はレベリングだが、一度こっちに戻るつもりだ。そこからは二日は帰らない」
「……ふーん。そ。精々死なないように頑張んなさい」
「お前もな。留守は頼んだ、
「了解、
剣を手に取り腰に佩く。黒い
銀の縁をした黒い剣。螺旋を描くように赤い鎖が纏わりつき、刃は逆十字の如く天を刺し貫いている。
──
俺を首魁とし、新たに発足したギルド。ギルドハウスとなった、かつて月夜の黒猫団の拠点だった建物へ振り返り、俺は口元を歪めるのだった。
「遅い」
「時間通りだと思うが」
「伝えてあるのは集合時刻ではなく開始時刻です。五分前行動くらいは当然だと思いますけど? “黒の騎士団”の団長さん」
初っ端から噛み付かれ、肩を竦めた。ただ言っていることは至極尤もであるため軽く頭を下げて謝意を示す。憤懣やるかたない、といった様子で“血盟騎士団”の副団長様は矛を収めた。というよりは、収めさせられた。
「まあアスナくん、そこまでにしておきたまえ。彼も反省しているようだし──加えて言えば、我々はそこまで規則に縛られるべき集団というわけでもない。重要なのは迅速にゲームをクリアすることだ。必要なのは弾劾ではなく会議を進めることだと思うが、違うかな?」
「……その通りですね。ええ、会議を始めましょう」
血盟騎士団団長、【聖騎士】ヒースクリフ。その隣に座す【閃光】のアスナ。
アインクラッド解放軍団長【蒼元帥】ディアベル。そして【牙大将】キバオウ。
風林火山団長、【荒武者】クライン。
……そして、黒の騎士団団長──【剣聖】キリト。自分で名乗るのは少々キツいが、しかしアルゴによって半ば公式的に
それはともかくとして、圧巻の面子だ。アインクラッドにおける上位数パーセントを争う猛者達。今の俺でも、この全てを──ヒースクリフは除き──斬り捨てるのは、相応に手こずるに違いない。
そんな事をのほほんと考えている間にも会議は進む。まずは血盟騎士団から提示された情報──各クエストから得られたフィールドボス、ダンジョン、フロアボスに該当する情報の羅列が配られる。それを補足するようにディアベルやクラインが各自で得た情報付け足していき、見る見るうちに精度が上がっていく。恐らくこのタイプは十五層で見たあれに近いだのなんだのといった話になり、欠伸を噛み殺しているうちに話は既に纏まりつつあった。
「ところで、黒の騎士団からの情報はないのかな」
目線を上げる。突然水を向けられた形になるが、俺は無表情で堂々と返した。
「何も無い。ウチはレベリングにしか興味が無いからな」
「それはあなただけでしょう」
「73層の時点でレベルがカンスト寸前な奴が言うと説得力が違うな……」
「レベリング専門のギルドってなんだ」
散々な言われようだった。無言で返せば、キバオウが皮肉るように告げる。
「は──ラストアタックをちまちま掠めとってレベル上げてりゃ、そら差もつくわな。今回のフィールドボスもどうせラストアタック狙いやろ?」
早速紙面でヘイトを買っているらしい。ただ、苦笑交じりに俺は返した。
「いや。今回のフィールドボスは譲るつもりだ。戦力的には血盟騎士団と解放軍で十分事足りるだろう。俺はクエストの解放と迷宮の未踏破地帯のマッピングを主軸に活動するつもりだ」
その言葉にキバオウが目を白黒させ、アスナが唖然とし、ヒースクリフが感心したようにほう、と声を漏らした。
「……おい」
「いや、彼らの反応も無理はない。それが意味することはつまり、今回のフィールドボスのドロップ及び経験値の分配には関与するつもりがないということかな?」
「ああ、その認識で合っている」
「ふむ……いやはや、随分と丸くなったものだな。何が君を変えたのかは知らないが、歓迎すべき事ではあるかもしれないな」
ヒースクリフが微笑む。俺は鼻を鳴らし──机の下で握り締めた拳を解くのに尽力する。殺意は完璧に抑えている。問題は無い。悟られるな。憤怒を気取られるな。
「ギルドを持って自覚が芽生えたんだよ」
「ふ。それは良い事だ。一人は皆の為に、皆は一人の為に。三銃士ではないが、我々は一丸となってクリアのために尽力すべきだからね」
よく言うよ、茅場晶彦。瞑目して頷く。頷きながらその首を引き裂く演算を何度も行う。ありとあらゆる角度からシミュレーションを試行する。
「
その言葉にもまた、頷くのだった。
ユニークスキルの使い手。その単語が意味する通り、俺は既にユニークスキル持ちとして名が通っている。開示したのは65層時点。《神聖剣》保有者のヒースクリフと《暗黒剣》保有者の俺、この二人を軸にしてフロアボスの攻略は行われるようになった。
何せ、火力が違う。《暗黒剣》は体力を変換し特殊なバフを生成するが、その向上率は凡そ300%以上。気が狂っている数字だ。これを真っ向から凌げるのはそれこそ《神聖剣》程度しか存在しない。
……そんな戦力を
当初は色々と文句を言われた。特にあの【閃光】様にはキレられた。お陰で関係が拗れたのは誤算だったが、しかしそれ以外の声は実力と結果で捩じ伏せた。
“黒の騎士団”の異名は様々だが、大抵は蔑称だ。『レベリング専門ギルド』『チーター集団』そして──『ユニークスキルコレクター』。
《弓術》を所有するシノンを含めて、
「ん……ぁ、おはよう
くしくしと目元を擦りながら、昼過ぎで起き出した少女に。黒髪と灼眼が特徴的な、いっそ幼すぎるといって差し支えない少女に向かって俺は告げた。
「おはよう
「はーい」
「ちょっとユウキ、何時だと思ってんの──」
そんなシノンの叱責と文句をBGMに、“黒の騎士団”としての活動がようやく始まった。
「ユウキ。《
「今……八割くらいかなぁ。師匠が戻る頃には多分マスターしてると思うよ」
「そうか」
そうとだけ返して昼食を口元に運ぶ。エプロンを畳みながらシノンが呆れたように言った。
「あんたも曲がりなりにもその娘の師匠ならなんか言ってやんなさいよ、キリト。口数が少ないにも程度があるってもんよ」
「……例えば?」
「褒めるでも文句でもいーわよ別に。多少柔らかくなってもそういうとこは変わんないのね、ほんと……」
そう言って夢中でパスタを頬張るユウキの口元を拭うと、その頬をむにむにとつまみながら溜息を吐いた。当人であるユウキは目を白黒させている。
「ほら見なさいよ。構って欲しそうにしてるじゃないの」
「ぅえ!? いやボクはその、そんなんじゃないっていうか」
「頑張っているとは思う。最近は十本に一本は取られるしな。その調子で励め」
「……ぁー、ぅー、ふへ……」
ほにゃりと表情を崩す様を見て後頭部を掻く。……こういう所は相変わらずわからない。ストレートに甘えられればわかるが、こういう独特の“察しろ”という空気は苦手だ。ただ半年を共にしたことでシノンもそこら辺はもう理解しているのか、こうして師弟のコミュニケーションをサポートしてくれるのは有難い。
俺としても、この小学生程度──よくて中学に上がり立ての少女の顔を曇らせることはしたくはないのだ。ただ、俺だけではきっとまた間違える。故にシノンには感謝していた。
ご馳走様と告げ、剣を片手に立ち上がる。必要なものは既にストレージに放り込んでいる。
「じゃあ、そろそろ行ってくる。留守は──」
「頼まれとくわよ。いってらっしゃい」
「師匠! マスターしとくから、帰ってきたらまた
苦笑する。そのままギルドハウスを出て転移門へ進み、そして74層へと跳ぶ。独特の浮遊感。そして転移門を出た俺は、数メートル先で佇む人影にその足を止めた。
「少し、付き合ってくれない? キリトくん」
「……アスナ」
僅かに眉間に皺を寄せた彼女の要求に、俺は応じた。
「上手く、いってるみたいね」
「そう見えるか?」
「ええ。ユニークスキル所有者を三人も抱えながら、その不満を上手く誤魔化した。アルゴさんには頭が上がらないわね」
……それは、そうだ。アルゴの助力が無ければ俺は途方もない数のバッシングを受けていたに違いない。明らかに戦力が他のギルドと違い過ぎる。数は少ないがそんなことは言い訳にもならない。
力あるものには責務が伴う。そんな言葉と共に、俺は血盟騎士団のような巨大ギルドに所属し、そして先導することを求められたことだろう。
「あなたは変わった。かつてのあなたなら、懐に誰かを入れることなんてしなかった。ましてや弟子なんて認めなかった。自分のギルドを作って、あの“月夜の黒猫団”のギルドハウスを転用する──なんて真似、絶対にしなかったでしょう」
「……そう、だな」
認めよう。俺は誰かと親しくなることを拒んでいた。失って、喪って、そしてあの絶望を抱くくらいならと拒絶してきた。ただ、サチとの邂逅を経て。俺は、きっと──。
「
さらりと。
【閃光】のアスナは、冷徹に告げた。
「あなたの本質は何も変わっていない。他者を寄せ付けず、孤高で在ろうとする。ひたすらに自身は邁進するだけ。むしろ表面化しないだけ悪化してる。あなたは誰にも頼らない。誰も信じない」
淡々と、彼女は続ける。
「あなたは手段を選ばなくなっただけよ、キリトくん。ユウキちゃんを弟子に取ったのも、万が一の保険のつもりかしら。
違うかしら。
そう宣った──宣いやがったアスナの胸倉を掴みあげる。透明なその瞳に写り込む俺は、相も変わらずドブのように腐った瞳をしていた。
「……ぺらぺらと御託を並べて。人間観察が趣味か、【閃光】」
「怒ったフリ? 冷たい
掴みあげる俺の手を包むように触れ、アスナが微笑む。ちらほらと見られる衆人の目線がこちらに集まるのを自覚して手を離す。
変わらない。第1層の頃から、何も。俺とアスナが決別した原因のひとつはこれだ。あまりにも察しが良すぎる。察しが良く、頭が異常に回り、そして──何故か俺を護ろうとする。余計なお世話にも程があるというのに。
「やっぱり……私は信じられない? キリトくん」
「信じるも何もあるか。必要ないんだよ」
「……そっか。あなたの計画に、私は要らないか」
俯く。瞬間。弾けるような音と共に俺は仰け反った。痛みはない。ただ──涙を湛えた瞳に、吸い込まれそうになる。叩かれた頬を反射的になぞる。
「何もわからないまま、何も知らないまま、あなたに付いていけるくらい馬鹿な女なら……良かったのに」
駆け出した背中を某として見つめる。何も変わらない。何もわからない。きっと今の俺は能面のような顔をしていることだろう。
サチ。俺は──間違っているのだろうか?
答えはない。あの影は既に消えている。一時の夢。
「──雨か」
曇天の空を見上げる。降り出した雨が、硝子玉のような眼球の上で弾けた。
終章、開幕。
>>ユウキ
なんでいるかは誰にもわからない。通称絶剣のロリ。剣理を剣聖オリトから学ぶことで成長ブーストがかかっている。現在《二刀流》の所有者。《二刀流》くんも目が死んだヤベぇやつよりロリに宿った方が嬉しいでしょ。
割と女とロリに優しくない世界だけど目は死んでない。正統派主人公やれるくらいには見た目も精神もキラキラしてる。要は
>>二刀流
ロリコン。
>>創造主
なんだァ? てめェ……