マクロスΔ 漆黒の救世主   作:セメント暮し

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ACT.14

 イオニデス衛星軌道上の戦いから早5日が経ち、惑星ヴォルドールへの潜入命令がレディ・Mから通達された。

 

「で、そのヴォルドールでウィンダミアが何をしているかを調べてこい、と?」

 マクロス・エリシオンの研究ブロックにあるウロボロス研で、シノブはアイシャ・ブランシェット特務少佐兼技術主任と応接テーブルを挟んで話をしていた。

 

 ホットパンツから伸びるスラリとした形の良い脚を組み換え、アイシャはカフェオレの入ったカップを口に運んだ。

 

「……簡単に言えばそうよ。それにしても、リオンと違ってまんざら飛行機バカってわけでもないのね」

 

「結構辛辣なこと言いますね」

 アイシャの言葉にシノブは肩を竦める。途端、シノブの携帯が音を立てた。

 

「ちょっと失礼」

 シノブが廊下へと出た。

 

「もしもし、風谷ですが」

 

「おう、シノブか。情報上がってきたぞ。今からファイルをそっちに送る」

 

「オズマ隊長、ありがとうございます」

 

「ああ。それで、その礼といっては何だが、ランカの事で相談に――」

 

「あ、すいません隊長。俺も仕事が立て込んでるので、そういう話はミシェルにお願いします!! それではっ」

 通話を切り、ホッと息をつく。

 

「あァ、危なかった」

 胸を撫で下ろしたシノブは再び研究室へと入っていった。

 

 1日の業務を終えたシノブは、『裸喰娘娘』の自室でオズマから送信されてきたデータを開いた。

 

「……ノーラ・ガブリエル ――2063年、マクロス・オリンピア船団新統合軍に入隊。2064年、SVF-522 スタンピードサンダースからSVF-502 エレクトリックドラゴンズに異動。2065年、惑星カラム2において要人輸送艦撃墜事件に関与し、不名誉除隊。その後は傭兵として反統合勢力に加担」

 

「……不名誉除隊を貰って傭兵に鞍替えか。ウィンダミアに関わってる可能性も大ありだな」

 新統合軍特殊部隊『VF-X』の直接指揮権を持つ『バンローズ機関』から上がってきたデータとイオニデス衛星軌道上で戦ったVF-27 ルシファーの写真と映像を空中に投影させる。

 

「VF-27のパイロットが誰かは知らないが、ランドールの時に戦ったSv-262はノーラだろう……」

 窓から差し込む月の光に照らされた部屋で、シノブはひとり呟いた。

 

 

 惑星ヴォルドール

 

 陸地の大半が湿原で埋め尽くされ、主要産物は水と材木、果物という戦略的価値が薄い惑星にシノブ達デルタ小隊とワルキューレは降下していた。

 

「私とマキナ、レイナはメッサー中尉とシノブ中尉と南側から首都に潜入。美雲とフレイアはミラージュ少尉とハヤテ少尉と北側から」

 チームのまとめ役であるカナメがタブレット端末片手に、説明をした。

 

「了解だ~ニャン!!」

 

「ニャンはいりません、ニャンは」

 ミラージュが拳銃のスライドを引き、薬室に弾薬を送り込んだ。その動作にフレイアが固まった。

 

「キャワワ~!! レイレイのニャンニャンキャワキャワ~!!」

 

「マキナも似合ってるぞ」

 5.45㎜特殊高速徹甲弾を20発も装填できる軍用のシングルアクション拳銃を懐に仕舞いながら、シノブはマキナの可憐な扮装をほめる。

 

「えへへ。ありがとう」

 シノブにほめられたマキナが愛らしい笑みを浮かべた。

 

「シャー!!」

 その様子にイラっときたのか、レイナは鋭い爪をシノブの眼前に突き出す。

 

「うぉっ!!」

 迫ってきた爪をバルキリー譲りの反射神経でシノブは回避する。

 

「う~~……俺、猫アレルギーなんだけど……」

 

「ヴォルドール人は猫型哺乳類から作られた種族だから」

 嫌そうな顔で被り物を掴むハヤテにカナメが補足で説明をした。

 

「文句があるなら来るな」

 

「ホント、なんでアイシャはハヤテを下に寄越したんだろうな」

 

「う……」

 隊のエース二人から浴びせられる言葉に、ぐうの音も出ないハヤテであった。

 

「さて、もう時間だな。状況開始」

 それぞれが街に潜入するために散っていく。

 

 

 ヴォルドールの街中は現地住民たちで賑わっていた。市庁舎や軍基地といった一部建物は被害を受けていたが、さして変わりなし、といった状況である。

 

「うわ~いろんな猫耳! たまりませんなぁ~!」

 

「そんなに目立った混乱は無し……か」

 

「生体フォールド波の数値がこんなに……」

 マキナがゴーグル越しに呟く。近くにいたヴォルドール陸軍の軍人は顔の血管が浮き上がり、目が血走っている。

 

「カナメさん」

 

「……了解っ」

 にっ、と唇の端を吊り上げたカナメが、猫のように鋭い爪を立て、兵士に近づいていく。

 

「あのぉ、水上バス乗り場って何処に行け―――」

 

「気を付けろ!」

 

「そっちこそ!! でっかい体でボケっと歩いちゃって!! あ、ごめんなさーい」

 メッサーとカナメの芝居を少し先の路地裏で観ていたシノブは、二人の演技の上手さに舌を巻いた。

 

「即席であんなものまでやるとは……」

 

「わたしたちって何でもするんだよ~」

 マキナが豊満な胸を強調するかのように体を反らせる。

 

「っと、戻ってきた」

 カナメとメッサーが路地裏に入ってきた。

 

 レイナの端末に、カナメが爪をとん、と立てる。爪の裏に付着していた血液が零れ落ち、端末が淡く輝く。

 

「分析完了」

 

「やっぱり出たわね。セイズノール」

 

「ヴァール化の誘発物質……」

 

「軍も警察機構も、完全にマインドコントロール化されているわね」 

 空を通り過ぎて行った軍艦を目で追いながらカナメが言った。

 

 数時間後

 

 マキナ達と別れ、単独行動をしていたシノブはフレイア達と合流し、古風なピックアップトラックの荷台で揺られていた。

 

「なぁ……さっき言ってた次元兵器ってなんね?」

 

「……時空間を歪ませ、対象物を破壊する大量破壊兵器だ。出来たのは2059年……バジュラ戦役の最中で、その後から銀河条約で使用は禁止されている。だが、7年前ウィンダミアはそれを使った」

 フレイアの質問にシノブは丁寧に答える。その目はいつもより暗かった。

 

「7年前……もしかしてあの時の……?」

 

「でも、あれは地球人がやったって……」

 

「いいえ。ウィンダミアが新統合軍に対して使用したの……数百万の自国民を巻き添えにして」

 

「でも村長さんは……!」

 

「私たちの任務は歴史について言い争うことじゃない。そんな被害を二度と出さないようにすることよ。地球もウィンダミアも関係ない……ただ目の前のステージとパフォーマンスに集中しなさい」

 

「あなたは――何?」

 美雲の不思議な目がフレイアを見据えた。

 

「……ワルキューレです……!」

 

「なら行くわよ」

 

 

 それから程なくしてシノブ達は遺跡に到着した。

 

「クモクモお疲れ!」

 

「お疲れ」

 マキナと美雲がWのサインを交わす。その後ろでシノブは懐から取り出した拳銃を太腿のホルスターに仕舞いこみ、アサルトライフルにマガジンを叩き込んだ。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

 

「レイナ、セキュリティは?」

 

「全部ゴミ。カス。こんなんじゃ全然チクチクしない」

 レイナの辛辣な言葉にカナメやシノブが苦笑する。

 

 

 マキナとレイナの息の合った絶妙なコンビネーションによってドンドンと遺跡の内部に侵入していく。物理と電子の掌握によってあっと言う間に遺跡の最深部に着いてしまった。

 

「息ぴったりだな」

 

「そうなったんですよ。やっとね。前はそりが合わなくて顔を合わせれば喧嘩ばかり、LIVEだって中止になったことが……。水と油、混ぜるな危険」

 

「へえ~……」

 今の二人からじゃ想像も出来ない事を知らされシノブが感嘆の声を上げた。

 

「タンクだらけだな。中身は……水?」

 大仰な設備類を目にしてハヤテが言う。

 

「もしかして次元兵器の冷却水?」

 

「いや、ボトルがコンテナの中にあった。一般的な飲料水のようだ。軍で見たことがある」

 何処からか持ってきたボトリングされたペットボトルをミラージュとハヤテに投げ渡しながらメッサーが言う。

 

「外れれ~、骨折り損の水だらけ~」

 

「それにしては大掛かりすぎる」

 

「軍に納入されている水……あっ!」

 声を上げたレイナは手近にいたシノブの手からペットボトルをひったくると、蓋を開けてセンサーカプセルを放り込む。

 

「これまでのヴァール化の発症軍関係者が61.4%」

 

「ブーーーッ……まさかこの水がヴァールを!?」

 レイナの話を聞きながら水を飲んでいたハヤテが盛大に噴き出した。表示される成分値を読み上げていると、フレイアが、これまた何処からかリンゴの入った果実箱を手にしてやってくる。

 

「美味しそうなのがこんなに!」

 

「銀河リンゴ……ウィンダミアが原産のリンゴか。確か……これも軍や民間軍事会社に卸されていたはずだ」

 一つだけ取り出したリンゴを、サバイバルナイフで簡単に切ったシノブはそれを口に運んだ。

 

「普通のリンゴだな」

 そう言ってシノブはそのリンゴをレイナやマキナに差し出した。マキナは差し出されたリンゴに何かを刺し、サンプルを取ってから食べる。

 

「普通のリンゴだね」

 それを横目にレイナがリンゴの成分値を同じように読み上げた。

 

「ん……ウィンダミアはいったい何を企んでいるの?」

 

 警報が鳴り、遺跡全体が騒がしくなる。戦いがまた始まろうとしていた。

 

 




どうもセメント暮らしです。
約3500文字をキープするがだんだん難しくなってまいりました。
それから、6月26日火曜日から、6月27日水曜日にかけて週間ランキング54位にランクインすることが出来ました!!
これもひとえに皆様が私の拙作をお読みいただいているおかげです!!
これからもどうぞ『マクロスΔ 漆黒の救世主』を宜しくお願い致します!!
感想や質問待ってます!!
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