戦いの約束。
フェニックスが戦いを終えている頃、IS学園では一人の女子生徒が箒と話し込んでいる将宗のもとへとやってきた。
その佇まいは上流階級の出身である事を伺わせているが、見下している様子はない。
「もし、お二方?少し宜しいでしょうか」
「ん?」
「誰だ?」
「失礼、自己紹介でも申しましたが改めて名乗りますわ。わたくし・・・セシリア・オルコットと申します。もう一つの名をライディーンアウル・・・」
「「!!?」」
箒と将宗は一瞬だけ驚くがすぐに持ち直し、小声で話をする。ライディーンに関しては大きな声で話す事は出来ない為だ。
「君がもう一人のライディーンだったのか、このクラスには二人いた感じがしていたからもしやと思ってたんだ」
「私は一人居るな、とだけしか」
「おーい、三人とも何を話してるんだ?」
一夏が話しかけてきたのが聞こえてきた三人はすぐに会話を切った。ライディーンの事を聞かれると色々とまずくなってしまう為だ。
「申し訳ありません。今は此処までに致しましょう。席に戻りますわ。お昼休みか放課後にまた」
「ああ、そうだな」
「私も席に戻る」
「なんの話をしてたんだ?黒葉」
「小説の内容さ。天使のな」
「そっか」
二人が席に戻ると同時に担任である千冬と副担任の真耶が教室へと入ってくる。ホームルームを始める合図のの呼び鈴が鳴り、千冬が教壇に立つ。
「それではホームルームを始める。とその前に織斑、お前には専用機が支給される事になった事と二週間後にあるクラス代表戦の代表を決めねばならない。推薦や立候補、どちらでも構わんぞ」
「はい、織斑くんを推薦します!」
「私も!」
「え?俺!?」
なんだこれは?ミーハーな気持ちで選んでいるのか?借りにもクラス代表だぞ。そう思わずにはいられない。
「うーん、私は黒葉くんかな?」
「私も、リーダーシップ取れそうだし」
「俺は別に構わないけど?」
「だったら私はセシリアを推薦する」
意外な事に箒はセシリアを推薦してきた。今の己が出来る最大限の事がセシリアの推薦だったのだろう。
「ふむ、三人か・・・ではどうやって決めるか」
「模擬戦が良いんじゃないんですか?データも取れるし、ISを体感できますし」
「お、おい!黒葉!?いきなり過ぎるだろ!それ!?」
「経験は何事にも得難し、ってな。ISの戦闘経験を得ようぜ?織斑」
「うっ・・!」
もっともな言葉に一夏は言葉に詰まる。確かにIS初心者である自分にとって、貴重な経験になる。それだけでも受けるべきなのが最善だ。
「では、その意見を取り入れるとしよう。一週間後、アリーナで模擬戦をする。それまでに推薦された三人は各自、準備しておくように」
◇
同時刻、束の研究室では彼女がその場で立っており、そのまま目を閉じると宇宙に似た異空間に変わった。
「右手に闇、左手に静寂、我が前に破壊、後ろには死・・・汝とその後方に封ぜられし魔よ。今こそ召喚す、いでよ・・・!超魔、ミズチ!」
自らの手首を切り、血を異空間の地面へと滴らせる。すると真っ黒な影が形を成していき、肉体を得て実体化した。
『お呼びでございますか?ルーシュ様』
「うむ。この世界に散らばった私の力の欠片、デモンズ・ルビーを集めるのだ、超魔ミズチよ。その後はゾディアック・オーブを再び回収せよ。斥候も送り込んでいる」
『はっ、仰せのままに』
ミズチと呼ばれた超魔は姿を消し、ルーシュと呼ばれた束は静かに笑みを浮かべた。
「たかが200年程度で、傷は回復せぬ。その時に戦いで私の力もルビーとなって飛散してしまった。力を復活させ、再びゴッドライディーンを我が手に」
ルーシュ・デ・モン。それは箒達の先代である鷲崎飛翔達によって倒されたはずの超魔の首領だ。今現在は僅かな力と意識だけが復活し、束の肉体と精神を乗っ取っている。
200年という人間にとっては長い年月、超魔にとっては瞬き程度の年数によってルーシュは復活の機会を伺っていた。
鷲崎飛翔達はその年月の中で、託せるものを残して全員がこの世を去ってしまっている。だが、ライディーンとしての使命は次代の人間が受け継いだのだ。
◇
クラス代表を決める試合当日。箒はアリーナの観客席におり、推薦された三人はピットの中で待機していた。
一夏は届けられた自身の専用機、白式を身に付けて慣らしを行っている。セシリアと将宗は空き時間を利用してピットを抜け出し、話し合いをしていた。
「将宗さん。いえ・・・ライディーンクロウ、お願いがあります」
「ん?なんだ?」
「このクラス代表を決める試合を終えたら、わたくしと手合わせして欲しいのです。ライディーンの姿で」
「何故だ?」
「スピード、攻撃、防御のバランスが取れている貴方と手合わせが出来れば、わたくしの弱点が見つかると思いまして」
「分かった。だが、あくまで試合としてだ。超魔が現れた時には」
「無論、協力を惜しみませんわ」
短い会話を終わらせ、セシリアはピットへと戻っていく。将宗も一夏が待機しているピットへと戻った。
そこにはISの慣らしを終えた一夏が小休止をとっている様子だ。
「あ、黒葉!何処に行ってたんだよ!?」
「トイレだよ。用足しにな」
「ふーん、緊張してるのか?」
「そんなところだ」
将宗のISは打鉄だ。理由は単純で刀が装備されているから、という理由で使っている。試合の時間となって一夏はアリーナへと飛んでいった。
アリーナの戦いでは一夏が一次移行し、白式だけの特性「零落白夜」を発現させたが本人の油断とセシリアの技量差で敗北してしまった。
油断は本人が悪いが、技量差だけは直ぐに埋まるものではない。IS乗りたての初心者と国の代表候補生とでは月とスッポンとも言えるレベル差だ。
続く将宗とセシリアの試合だが、やはり技量差が出て将宗の敗北であった。将宗自身もISに触れられる機会など今回が初めてなのは一夏と変わりはない、出来るだけの準備はしたがそれでも負けてしまったのだ。
そして、一夏と将宗の試合が始まろうとしていた矢先であった。
「きゃああ!?天井が勝手に崩れてきたわ!」
『キーヒッヒッ!この学園は粒揃いでイイ女がいるなぁ』
アリーナの天井を壊しながら超魔の一体がIS学園に現れ、破壊活動を始めたのだ。
「な、何だよ!?あの化物!?」
『ん~?俺の姿が見えてるようだが、ははぁ?その身に付けてる機械のせいか。だが、俺には勝てねえ、よ!』
問答無用で超魔は一夏に巨大な手で蚊を潰すかのように振り下ろしてくる。なんとか走って逃げ出すが、楽しんでいるかのように次々と手を振り下ろしてくる。
「今だ!行くぞ!篠ノ之!オルコット!」
「ああ!」
「はい!」
将宗、箒、セシリアの三人はジャンプで飛び上がると同時に叫ぶような形で声を上げた。
「「「超者ッ!!降臨!!!」」」
「うおおおおおおっ!」
「うああああああっ!」
「はああああああっ!」
三人それぞれの左手の甲から浮かび上がったゴッドフェザーの目が始点となり、三人の身体に筋が伸びていった。
「うわああああっーー!」
「あああああーーっ!」
「ぐうああああーーっ!」
箒は銀色の光、セシリアは深い青の光、将宗は灰色の光に包まれていく。全身が包まれ切った瞬間に三人は鋼鉄の翼を持つ天使、ライディーンへと姿を変えた。
「アウル激流波!!」
「イーグルフレアー!」
「クロウツイスター!」
『ちょこまかと逃げ回りやがってええ!?いってえ!?ラ、ライディーン共かよ!』
「俺達が相手だ!超魔!!」
『準備運動もして身体が暖まった所だ!おらあああ!』
「うわあああ!?」
「クロウ!」
「我が剣に斬れぬものなし!イーグルソード!」
炎を形にし剣に変えると超魔の爪を一刀両断するイーグル。爪を斬られた超魔は悲鳴を上げて暴れだした。
『あぎゃあああ!いてえええええ!ライディーン共があああああ!』
「アウルブレード!行きますわよ!」
大鎌を出現させ、アウル自身が持つ鋼の力で刃を大きくし接近戦を挑んでいく。だが、相手が暴れているため決定打を与える事が出来ない。
「ぐ・・・う!まだ、逃げていなかったのか!早く逃げろ!」
「あ、あ・・あ・・・」
ライディーンクロウは避難が遅れていた一夏をアリーナの外へと追いやり、避難が遅れていた生徒もアリーナの外へと避難させた。
「これで気にせず戦える!」
『たかが三匹集まったところで!』
「一瞬でいい、隙を作り出せれば!」
「ええ、ゴッドバードチェンジが出来ますわ!」
「なら、俺がその役目を担う!クロウカッター!」
クロウは自ら囮役を引き受け、超魔の注意を自身に向け続ける。挑発行為に等しいもので超魔はクロウに攻撃を仕掛け続ける。
『があああああ!うざってええええ!』
「イーグル!アウル!!今だ!!」
「ああ!」
「解りましたわ!」
「「ゴッドバァァァァド!!チェェェンジ!照準セェェット!」」
鷲と梟をモチーフにした二匹の鳥が光に包まれ、超魔へと突撃していく。炎と鋼、二つの属性が合体した光の鳥は超魔の身体を突き破り、その体内を進んでいく。心臓へと到達するとそれを貫き、超魔の身体から飛び出した。
『な、なんで!俺様が女のライディーンごときにいいいいい!』
「わたくし達は負けない・・・!」
「鋼鉄の翼にかけて!」
「う・・・囮役は流石に応えた」
クロウは片膝を立てて座り込んでしまった。この場で変身を解除する訳にもいかないため、その場で休んでいる。
「クロウ、とりあえず服をとってくるからな?」
「わたくしもです」
「俺のも頼む」
「分かった、少し待っててくれ」
◇
戦いをしていた時刻、とある芸能事務所では女性二人と男性三人の顔写真が社長の机の上に置かれていた。
「篠ノ之箒、セシリア・オルコット、それに黒葉将宗、御手洗 数馬、五反田 弾か・・・」
写真を見ている社長は女性らしく、IS学園にも出資している芸能プロダクション【天使更生組合】であった。
「我が社の立ち上げ当初に結成された伝説の五人グループ『ANGEL』を超えられるかしら?それに業務提携しているダニーズ事務所でも伝説と言われたロックバンド『THE HEARTS』の復活が出来る可能性があるって・・・」
考え事をしながらも業務や、スカウトの事を忘れていないのは流石である。
「よし、スカウトしてきましょ!行動しなきゃ始まらないわ!」
女性はスーツを着込み、社長室を後にするとスカウトするためにIS学園へと向かうのであった。
久々に書きました。
不定期ですが、いつの間にか一年過ぎていました申し訳ないです。
超者ライディーン、見直さなきゃ。