無職転生の幕間   作:綴りの違うウサギ

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お土産

 「ルーデウスパパのお土産タ~イム」

 

 どう考えても3分で作る事が出来ないクッキングの軽快な音楽を自分で歌ってノリノリでブツが乗った皿を机の上に置く。

 皿には俺の作ったクロッシュが被せてあるため、中身の分からないビックリ箱状態だ。

 

 そのせいか、家族の俺を見る目は戦々恐々としている。

 

 「……俺ちゃんと食べれる物持ってきたよ?」

 「絶対そういう問題じゃないよね……」

 

 シルフィの言葉に皆がそうだそうだ、と頷く。

 何さ何さ皆して!

 絶対ギャフンと言わせてやるんだからね!

 

 「はい御開帳~」

 

 ロキシーとエリスは予想通り大丈夫。

 シルフィも口元に手を当てているが何とかこらえた。

 子供達は悲鳴を上げてしまった。

 

 ●

 

 「何ですか、何ですか、何なんですか!!」

 

 アイシャに抱きついたノルンがちょっと涙目になりながら怒ってくる。

 二人とも大きくなったせいか、母さん達が抱きしめあってる様にも見える。

 ブエナ村での日々を思い出しちゃうじゃないか。

 

 「お前ら今日は仲良いじゃないか」

 「そんな事どうでもいいんですっ!」

 

 そんな事とか言うなよ……。

 可愛い妹達が仲良くしてくれないとお兄ちゃん悲しいぞ?

 

 「お兄ちゃんそれって……」

 「見ての通り芋虫です」

 

 アイシャがうえーと舌をだす。

 悲鳴をあげなかったのは流石と言うべきだけど、見た目の不快感は当然あるらしい。

 

 まあそうだろうな。

 俺だってカブトムシの幼虫にしか見えないもん。

 

 「ルディそれ……食べられるの……?」

 「調理済みでございます」

 

 うわあ、と言って覗きこんでくるが、手をつける勇気はまだシルフィにもないようだ。

 わざわざこんな物を食べなきゃならないサバイバルな生活はして来なかっただろうし。

 

 ならば、とロキシー様子を伺った瞬間、もの凄い勢いで顔をそらされた。

 こらこら先生、好き嫌いはいけませんよ。

 なんて言って涙目で嫌がるロキシーに食べさせてもいいが、機嫌が悪くなるのは間違いない。

 

 ロキシーに嫌われるなど、俺にとっては死にも等しい事だ。

 耐える事など出来ないだろう。

 

 子供達はどうだろうか。

 ルーシーは勿論、ララまで怯えた表情を見せている。

 リリとクリスも当然だとは思っていたけれど、ララまでとは……。

 こりゃよっぽどだぞ。

 

 アルスとジークは「パパが食べろと言うなら食べます!」って表情だが、いきなり息子達をいじめる訳にもいきますまいて。

 

 何故か母さんはリーリャに目を覆われていた。

 そこまでかね?

 

 「……じゃあエリス」

 

 俺に呼ばれてエリスがビクンと体を跳ねさせた。

 呼んでくれるな、という雰囲気は出ていたが、それでも表情を見れば、覚悟は出来ているのが分かる。

 やっぱりエリスは格好いいな。

 

 「一番乗り、してみるか?」

 「……ルーデウスが食べるならやるわ」

 

 死地に赴くなら共に、というわけか。

 もちろん応えよう。

 ここで応えられないようじゃ、エリスの女房は務まらない。

 

 「それじゃ、先に頂くぞ」

 

 指で摘まんで一口で食べきる。

 見た目も食感も最悪だが、味は以前食べたとおり、ほぼアーモンドだ。

 グッバイキャタピラー。

 

 「エリス」

 

 食べやすいように、あーんをしてやる。

 食べさせる物も相まって餌付けにしか見えなくなってきた。

 そう思うとなんだか興奮してきたぞう!

 

 大きく開けた口に芋虫を放り込む。

 ワニでもあるまいし、噛まないだろうが、芋虫を放り込むついでにエリスの唇をなぶるつもりはない。

 それこそ噛まれる元だ。

 

 そういう時に噛まれたとか、歯が当たったとかいう記憶もない。

 歯形を残すような癖もない。

 キスマークくらいはお互い残すけどな。

 見える位置にあざが残っても、治癒魔術で消してしまえるし。

 

 食事中に思い出すような事ではないな。

 

 エリスは一口目で口内に存在するものが確かに芋虫であると認識したのか、動きを止めていた。

 口の端から、芋虫の体液であろう琥珀色がにじみ出したので、すわ吐き出すかと思ったが、ゆっくり食べても不快感が続くだけという事に気付いたらしく、早めに飲み込んで水を要求する事を選んだ。

 

 「……不味くはないわね!」

 

 ●

 

 その後も「食わず嫌いはいけませんね」とロキシーが続き、涙目で咀嚼する彼女を見届けた後「じゃあボクも」とシルフィが続いた。

 

 母親達が「味は悪くない」と後押ししたのが効いたのか子供達が挑戦し、ゼニス、リーリャ、アイシャと続き、ノルンが最後だった。

 ルイジェルドが虫を食べるように勧めてきたらどうする気だよお前。

 

 「兄さん」

 

 これ以上はないというほど顔をしかめたノルンが俺を呼ぶ。

 

 「今後一切虫のお土産は無しでお願いします」

 

 えー?

 随分つまんない事言うじゃないのよさ。

 

 「それならもっと凄いもの買ってきちゃおうかな」

 

 うええ、と皆がどよめく。

 

 「えっと……ルディ」

 

 反対派代表のノルンにシルフィが助け船を漕いできた。

 

 「食べ物で遊ぶのはやめよう?」

 「失礼な。ちゃんと綺麗に完食してるだろ?」

 「言い方が少し違いますよシルフィ。この場合、食べ物を使って家族で遊ぶのを止めると言うべきです」

 

 残念ながらロキシーまで敵に回ってしまった。

 エリスもそっぽを向いてしまった。

 皆つれないのね。

 

 当然子供達とアイシャも反対する。

 リーリャは何も言わなかったが、どうみても俺に勝ち目はない。

 

 「……分かった。もう変なお土産はやめるよ」

 

 家族の安堵のため息が家中に響き渡った瞬間であった。

 

 ●

 

 後日、子供達の反対票を避ける為、蛇の漬け込まれた酒を持って帰ってきて、ロキシーに脇腹をグリグリされた。

 

 なお蛇酒には強壮効果があったらしく、三日三晩こってり搾り取られた。 

 

 二度と食べ物で遊ぶことはしないと誓った。

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