昼下がり。
夜と同じか、それ以上に人が眠たくなる時間帯。
俺も例に漏れず、開けた窓から入り込んでくるそよ風と鳥の鳴き声に身を委ねて、意識を簡単に手放そうとしていた。
一番油断している状況。
驚かすには最適だ。
そこに驚かしてやろう、という意思は無かったかもしれないけれど、肩口から手を回されおぶさる様に身を預けられて、思わず体をビクリと跳ねさせてしまった。
「……何そんなに驚いてるのよ」
「もう少しで眠る所だったんだよ。そこで急にエリスが後ろから抱きついてきたらビックリするだろ?」
「……ルーデウスがそう言うのなら、そうかもね」
俺がエリスに同じ事をやったら、寝ぼけているせいで殴られたりするだろうか。
子供の頃でもあるまいし、思い切り抱き締め返されるかもしれない。
「どうかしたの?」
「別になんでもないわ」
今のは本当になんでもない時の『なんでもないわ』だと思う。
ただ単純に甘えにきているのだろうか。
エリスが。
頭が引っ付いているせいで、お互いの髪が擦れあう音がする。
エリスがスンスンと、俺の匂いを嗅いでいる音も。
甘えかたがなんというか、大きい犬のようだ。
ベロベロと無遠慮に舐められたりはしないけれど。
そういえばギレーヌは猫だった。
エリスも大型の猫…………狂犬なのに?
どっちでもいいけど、相手は大型の獣。
この後アタシは美味しくいただかれちゃうのかしら。
どうどう、となだめるように頭でも撫でてみようか。
……だがしかしそれは無防備な片手をエリスに差し出すということだ。
俺の右手はエリスの頭にたどり着く前に首根っこを掴まれるだろう。
そしてずい、と腕を引っ張られて強引に唇を奪われるのだ。
エリスが一度流れにのったら、乙女デウスが泣いて嫌がりでもしない限り止まる事はない。
今日はもう息子が立たないのなら全身をねぶればいいじゃない。骨までしゃぶりつくせばいいじゃない。
…………なんだか俺が期待してしまっているみたいだ。
寝ぼけて薄まった意識がエリスのいい匂いに釣られておかしくなっているだけさ。
平常心。平常心。
「…………?」
エリスの動きが止まっている。
俺にもたれながら器用に寝た訳ではないようだ。おめめはパッチリ開いている。
視線は下に向いている。
そこには元気な息子デウスが。
「待てエリス。男の体ってのは不思議なもんで、眠くなるだけで血が勝手にそこに集まったりする訳で──」
目と目が合う。
にへら、と口元が緩み、イタズラを仕掛けたララがよくするようなしたり顔。
「今、家には誰も居なかったわよね」
こりゃ逃げられないな。