無職転生の幕間   作:綴りの違うウサギ

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告白

 「シルフィって告白された事ある?」

 「なくはないけど……女の子からだったよ」

 

 流石ですフィッツ先輩。

 モテモテですね!

 

 「でも、あの頃はアリエル様や自分の事で忙しかったからそれどころじゃ無かったよ」

 

 わりとどうでもいいと思ってたし、と。

 それにさ、と続ける。

 

 「あの時も言ったけど、ボクはずっとルディの事が好きだったからね」

 

 視線が真っ直ぐに俺を貫く。

 話を聞きだした癖に、文字通り顔が燃えそうなほどに熱い。

 

 そっか、と何とか口にしたけれど、これ以上は無理だ。

 顔の筋肉が緩むのを耐えられる自信がない。

 

 「ボクが『好きです』って告白したのはルディだけだから、安心してよ」

 「……うん」

 「でもなんでこんな話を?」

 

 俺はそんな事なかったけれど、やたらとモテるのだ。俺の子供達が。

 皆成績もいいし、嫁のお陰で顔もいいし、そうなるのは当然だとも思う。

 

 ただ、パパもそうだったでしょ? そういう時にどうしてたの? と言われても力になれない。

 

 エリスは全てを拳で打ち払ってきた。

 俺の知る限りルークはノックアウトしてしまったし、何より彼女の青春時代は帰還の旅と修行に捧げられている。

 流石のエリスも子供達に「殴ってどうにかなさい!」なんて事はもう言わない……と思う。

 

 ロキシーもそういった経験は当然ない。

 強い結婚願望がありつつも、俺以外と結ばれることはなかったようだし、神は俺と結ばれる運命にあったのだ。

 モテてもらっては困る。

 

 「という訳で学園でも人気者だったフィッツ先輩のお力を借りようと思いまして」

 「なるほどね」

 

 でもさ、と言葉を跳ね返す。

 

 「ルディだって自分が気付いてなかっただけでモテてたじゃない」

 

 泥沼の冒険者時代や世界を飛び回ったり貴族とも付き合いがある今だってどうなのさ、と聞かれる。

 

 「今はシルフィ達がいてくれるし……冒険者の頃は……ホラ」

 「あっ! そうだったね……」

 

 ゴメンね、と謝られるけれど何も気にする事はない。

 俺がスタンダップしてビクトリー出来ないのを治してくれたのはシルフィではないか。

 傷をほじくり返された程度で怒るような男ではない。

 

 「じゃあボクがモテ男の先輩として皆にアドバイスしてあげないとね」

 

 そうなるな。

 自分の預かり知らぬ所でモテてもなんの意味もないし。

 あしらい方の実践経験を話してもらおう。

 

 ●

 

 「他に好きな人がいるんだ、なんて言っておけばいいよ」

 

 相手は誰なんだ、って問題が次に出てくるかもしれないけどね。と注意するのも忘れずにシルフィが話す。

 

 クリスは「パパよりカッコよくないとダメ」とか言っているらしい。

 嬉しいこって。

 

 「ルーデウスは告白とかされた事ないの?」

 「なくはないけど……」

 

 チラリとシルフィの方を見て目が合う。

 頭の中が真っ白に痺れるような告白だった。

 エリスの時は家族になろうとして、色々あって、俺がプロポーズした形になる。

 ロキシーの時は傷心の俺が先生に慰められる形になって、エリナリーゼに上手いこと誘導された。

 甘い告白って感じじゃない。

 人生そんなもんだ。

 

 ふうん、と鼻を鳴らしエリスが立ち上がる。

 夕食後のまったりとした今の時間は皆が1つの部屋に集まっているせいで、視線が彼女に集中するのだが。

 

 「好きよルーデウス。愛してるわ」

 

 家族の前で堂々と。

 恥ずかしがる理由などないと言わんばかりにエリスが言い放つ。

 そうなれば今度は視線が俺に向く訳で。

 

 「────俺もだよ。エリス」

 

 オルステッドコーポレーションで鍛え上げた胆力が役にたった。

 一家の長がいつまでもノミの心臓ではいられない。

 

 白ママと青ママはいいのか、という空気になっているような気がする。

 

 「…………ボクは結婚する前に告白したもん」

 

 あの時はお互い『好き』だった。

 

 「愛してるよ、シルフィ」

 「ボクもだよ、ルディ」

 

 真っ赤な顔でもしっかり返事をしてくれるあたりがシルフィである。

 さて。

 

 「……そういうのは二人っきりでいい雰囲気の時に言うものです。いくら家族の前だからってわたしは嫌ですよ」

 

 えー、と非難の声が子供達からあがる。

 一番声が大きかったのはクリスだ。

 王子様とお姫様に憧れている所といい、どうにもロマンチストな部分が末娘にはある。

 

 「何故ですかロキシー! 俺はこんなにも貴女を愛しているというのに!」

 

 娘達の期待に応える為にわざとらしい演技を足す。

 なっ……!? とロキシーが慌てているので成功だ。

 

 「全くもう……しょうがないですね」

 

 めんどくさいという雰囲気を隠すこともなく、椅子から降りて俺の方へロキシーが歩いてくる。

 俺が座っているせいで身長差を気にする事なく、耳元に顔を近づけ。

 

 「わたしも愛してますよ」

 

 と、俺にだけ聞こえる様に囁いた。

 

 ●

 

 「っていう事があったんだって!」

 「全く兄さんは……」

 

 子供達の前で何をやってるんですか、と娘の前で私は言わない。

 ちょっとふざけて、でも本気で、普段みたいに何気なく兄さんと姉さん達は告白大会を始めたんだと思う。

 多分深い意味があった訳じゃない。

 

 「ノルン」

 「あっ、お帰りなさいルイジェルドさ──」

 「愛してるぞ」

 「ふぇっ!?」

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