「見てくださいパパ」
そう言ってウチの三女──リリ・グレイラットが俺にシャワーヘッドのような見た目の魔導具を差し出す。
「リリが作ったのか?」
「そうです。暑さにやられているパパへのプレゼントです」
グリップの部分をもって魔力を流して下さい、という指示に従い握った手に集中する。
何が出てくるか分からないので、当然口先は外へと向ける。
ちょぼちょぼと水が染みでるように出てきたので、もう少し流す魔力を増やすと、見た目に違わずシャワーとして水を吐き出し始めた。
「雪解け水みたいに綺麗な水だな」
「触ってみても大丈夫ですよ。ちょっとビックリするかもですけど」
言葉に導かれるままにそろそろと空いた手の指先を伸ばす。
水の見た目からして熱湯ではないだろうけども、ビックリするかもと言われたら警戒せざるを得ない。
リリは姉のララのようにイタズラっ子ではないけども、もしかしたら寿司屋のお湯だしボタンで手を洗わせようとしているような事を俺に仕掛けて……ないか。
リリはちょっと魔導具にお熱なだけの良い子だ。
火傷したって治癒魔術でどうにかなるからいいじゃん、みたいな考えをする子じゃない。
流石のララもそんな事しないけど。
「つめたっ!?」
俺の飛び上がる程の反攻を見ても「おー」と静かに佇むリリの泰然ぶりはロキシーの娘といった所か。
…………いや。
ロキシーだったらこういう時「大丈夫ですか!?」とか言って想像以上の結果に大慌てするだろう。
リリのはボーッとしているだけかもしれない。
「気持ちいいくらい冷たかったですよね? ほら、見てください地面に落ちた水を」
一瞬で熱を奪われた左手を振りながら、言われた通りに足元を見る。
「凍りついてる……?」
「そうなんです! ただ冷たい水が出るだけじゃなくて、ちょっとすると凍る水なんです!」
暑い季節にピッタリじゃないですか? というリリの目は夏の太陽もかくやと輝いている。
「そうだな。料理とかにも応用出来るだろうし、単純に涼むのにも使えそうだ。ありがとな、リリ」
ロキシーに習って丁度いい位置に頭があるので、わしわしと撫でてやる。
力が強いですよーと目をつぶりながら言いつつも受け入れているのが可愛い
やっぱりウチの娘は最高だぜ!
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魔導具は面白い。
私はザノバ店長みたいに饒舌じゃないから、上手く説明できないけど、とにかく面白いのだ。
パパの義手や鎧を見せてもらったり、なんだかよく分からないけれど欲しいと思って買ってもらった魔導具を自分でどうにかこうにかしている内に好きになったんだと思う。
好きなことを仕事に出来た私は幸せなんだと思う。
それともう一つ。
姉さん達は魔術で。
兄さん達は剣術で。
クリスはどうしてるのか興味ないけれど、私は魔導具でパパに褒めてもらうのだ。
パパと話す時はちょっと緊張するけれど、手に持った魔導具が勇気をくれる。
ララ姉が救世主なら、私は妹らしく魔導具でそれを手助けしようと思う。
そしたらきっと、パパは今までにないくらいに私を褒めてくれると思うのだ。