「ルーデウス!」
ドアが勢いよく開く音と、エリスが俺を呼ぶ声に驚いて、思わずソファから飛び起きた。
エリスの雰囲気からして怒っている感じではないと思うのだけれど。
「ど、どうしたの……?」
どちらかといえば珍しくうろたえているような……何かあったのだろうか。
「無事みたいね」
「うん」
さっきまでソファに体を預けて意識を手放そうとしてた所だ。
エリスも子供達と庭で素振りをしていたはず。
剣を振る音が聞こえてたし間違いないと思う。
お互い心配し合うような事は無かったと思うけど。
「さっき地震があったからシルフィ達が家の外に出てきたんだけど、ルーデウスだけ来ないから何かあったのかと思ったのよ」
「地震?」
寝ぼけた頭で『なんかカタカタ揺れてるけど地震かなあ』くらいには思ってたけど、皆がそんなに大騒ぎしてたとは気付かなかった。
日本人は地震慣れしてるけど外国人は小さな揺れでも大騒ぎするってのを、俺は今体感しているのかもしれない。
「また揺れるかもしれないし、早く外に出るわよ!」
「いやあれくらい大丈夫だって……うわ!」
出ましたよ伝家の宝刀お姫様抱っこ。
今のところ我が家で俺をこうやって持ち上げられるのはエリスだけだからなんだか新鮮……でもないか。
時々こうやってベッドに連れてかれるし。
多分アルスやジークが大きくなったら俺くらい簡単に持ち上がっちゃうんだろうな、とか考えているうちに庭に到着した。
「ルディ!」
シルフィをはじめとして家族全員が庭に集合していた。
グレイラット家は避難訓練の様相を呈している。
本気になってないのは俺だけかもしれないが。
「二階のソファで寝てたわ」
「ええ……?」
皆の視線が痛い。
俺に地震耐性が刷り込まれている事をどう説明したもんか。
「あれくらいなら大丈夫かと思いまして」
子供達からの視線に若干称賛が含まれたような気がしたが、大人組はそうはいかない。
「いいですかルディ。地震というのはですね……」
ロキシー先生の授業が始まってしまった。
もちろん地震についての知識はありますとも。
生まれと育ちは地震大国でしたので、義務教育でも学ばさせられましたとも。
でもそれがロキシーの言葉を適当に聞き流す理由になろうはずがない。
一言一句逃さず拝聴させていただきます。
「ルディなら仮に寝ぼけている状態で家が崩れて来ても無事かもしれませんが、それとこれとは別なのです」
要はいらぬ心配をさせるなという事だ。
一家の長なら尚更。
父親として守るべきは家よりも家族と自分自身でしょう、とロキシーは言う。
「そうですね。少し油断しすぎていたかもしれません」
「いえ、ルディが家族の為に普段から頑張ってくれている事は分かっていますし、わたしも言い過ぎました」
家でくらい気を抜いていたいでしょうしね、と続ける。
やはりロキシーはいつだって俺を導いてくれるのだ。
「エリスもありがとうな。わざわざ様子を見に来てくれて」
「ルーデウスが無事だったんだから気にしなくていいわ!」
そりゃどうも。
「もしかしたら細かい地震が続くかもしれないので、数日の間は皆気を付けるようにしましょう」
とはいうものの、俺の反応も間違っちゃいないと思うので聞きにいってみようと思う。
●
「日本人なら普通の反応だよなあ?」
「まあ……そうね」
ナナホシは共感してくれたが、後でペルギウスには「貴様らがおかしい」と言われた。
そもそもケイオスブレイカーが飛んでるんだから地震なんか関係ないくせによ。
……小さい地震にビビるペルギウスか。
死ぬまでに一度くらいは拝んでおきたいね。