体の成長速度に個人差があるというのは、家族を見ているだけで言葉以上に実感できる。
父親が一人でも母親が三人もいれば当然その子供達も多種多様。体つきから髪の色に至るまで皆バラバラだ。
そうなってくるとこう、とある部位の大きさを下から数えた方が早いわたしとしては少し思うところもあるわけで。
キャラじゃないとか言われるかもしれないし、救世主呼ばわりされたって乙女の端くれだもの。
「ルー姉は希望の星だから」
「ママよりちょっとお肉付いただけでそこまで言う……?」
「だってどう考えてもパパの血の力じゃん」
お婆ちゃんも叔母さ……お姉ちゃん達も非常にメリハリのある体型をしている。赤ママほど下地となる筋肉はないけれど、ただ脂肪を集めただけの体とは全く違うのが分かる。何より柔らかい。
「わたしも柔らかさを求めてはいかんのか?」
「ボク、ララがここまで追い詰められてるの初めて見たかな……」
ママと妹とすっかり横並びになってしまったフラットボディ、通称スットン共和国はあまりにもミグルド族の血の影響が出ている。
パパのほめ殺しに満足したママと魔道具に心を奪われた妹。そして残されたわたしと言う最後の希望。
「救世主とはこういう意味だった……?」
「オルステッド様が聞いたら泣くんじゃないかな……」
「いいじゃん。あの人が泣いた所なんてパパでも見たことないかもよ」
「ええ……?」
パパとレオには少し悪い気がするけれど、乙女の意思をたまには優先させたっていいじゃない。
●
「という訳で助言を求めに来ました」
「……そう」
つまらなそうに見えて、真剣に話を聞いてくれてるのは分かる。でもこう、赤ママと一対一で話していると稽古を思い出してあらぬ緊張がわいてくるというか。
「こんな物あっても邪魔なだけよ」
「パパは喜んでるのに?」
「ルーデウスは無くても喜ぶわ」
そういう割には色々思い出してしまったのか普段より顔が赤いし満更でもなさそうだ。パパ相手の時は押して押して押し倒すのに、娘やら他のママに押されるのは弱いらしい。パパはこういう事も分かっていて赤ママが好きなんだろうな。
「そもそもアンタの相手がどういう体型が好きかとか分からないんでしょ?」
「うん、全く」
「だったらいいじゃないの」
「いや、どうせなら個人的には欲しいといいますか……」
すくすく育った末っ子と従姉妹がお姉ちゃんちっちゃくて可愛いとかなんとか言いながらわたしの事を膝に抱えた時はやるせない気持ちになったのだ。だからといって寿命の差から来る成長期の違いだけを信じて生きていては、努力を怠るという我が家の思想からは大きく外れた人間になってしまう。
「という訳で何か……」
「そうねえ……」
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「それで剣を?」
「私は剣に打ち込んで来た結果こうなったからアンタも試してみたら、って」
「効きそう?」
「無理でしょ」
日課以上に剣を振るったらただでさえ数少ない胸の肉が全て筋肉になりかねない。わたしが目指しているのはパパみたいな何もかもを削ぎ落とした体ではない。
「リーリャさんは元剣士なんだから結果になってるじゃん」
「前例が赤ママと合わせてまだ二つしかないけど」
「ボクもいるよ。はい三つ」
白ママよりほんのり大きく育った胸を自慢気に誇りやがって……。しかしルー姉を勘定に入れない場合、自らの希望も否定する事になってしまう。
「元冒険者と元王女の護衛の場合は……?」
「青ママは純粋なミグルド族なんだから仕方ないでしょ。白ママは長耳族の血が濃く出た結果だね」
ならばと自分を振り返れば、母には使えぬ種族特有の念話能力。更にこれまた種族特有の特徴的な髪色。
あれ、これ……。
「じゃあわたしもう詰んでない……?」
「……やってみなきゃ分かんない事もあるよ」
「おい、目を見て話してくれ姉上よ」
ノルン姉さんは剣を振る。アイシャ姉さんは剣を振らない。でも二人とも大きい。恐らく秘密はお爺ちゃんにある。でもそれを知る術はない。パパがどんなにお墓に話しかけても答えが帰ってきた試しはない。
「お婆ちゃんにも聞いてみたらいいじゃん。ララじゃなきゃ聞けないんだし」
「……姉上はわたしがお婆様にお伺いをたててないと?」
「あ、もう聞いたの?」
「普段通りのお婆ちゃんというか『ララちゃんもそういう事考えるようになったのねえ』って」
「有益な情報は得られなかった、と」
「お婆ちゃんもひいお婆ちゃんから順当に受け継いで来た人だからね……」
知識を得ることは出来なかった。後は自分の中にも受け継がれているパパの血を信じてみるくらいしかない。
「他にやることが無いから剣に打ち込んでみる、くらいの考えでもいいんじゃない? 体に悪い事をしてる訳じゃないんだしさ」
「……ダルいけど、まあそうだね」
「ちょっとはお腹のお肉減らさないとね?」
「そんなのついてないし」
「はいはい」
「摘まむなし!」