大量生産大量消費がこの世界では是とされていない──出来ていない以上、兄弟姉妹の服はどうしても上の子のお下がりが多くなってしまう。
もちろんこれは大学の制服も例に漏れず。
「結構な数になったもんだな」
六人の子供達が成長期を無事に通り抜けてきた証なのだから当然か。
「捨てちゃうのもなんだかもったいない気がするねえ」
周りに新しく大学に入学する子が居れば譲ったり出来るのだが、あいにくそういう知り合いには心当たりがない。
アルスの制服なんかは悪い意味で欲しがるヤツが出てきそうではあるが、ウチはそういう事をしてまで懐を温めたいというような事情もない。
アイシャあたりが居ればただ端切れにする以外に上手いアレンジ方法を打ち出してくれるだろうが、現在不在である。
さてどうしたもんか。
「せっかくだからさ、ルディ久々に制服着てみない?」
「うぇ、俺?」
「久しぶりに制服着たルディが見たいな、と思って」
ダメ? と上目遣いをするシルフィみたいに見た目がほとんど変わってなければいいけれど、俺は相応にオッサンになっている気がしてならない。
「じゃあ俺も一つお願いしていい?」
●
俺も昔着ていたハズの制服だけれど、肩周りやら腕の辺りがキツい気がするのは、どうか体を鍛え続けている結果であってほしい。
筋肉は脂肪より重いというのは覚えているけど体積はどうだっただろうか。相変わらず摘まめるお肉は無いと思うが、体格的に大差ない息子達の制服がキツく感じるということはトレーニング不足なのかもしれない。この体をまだまだ可愛がってやる必要があるという事か……。
「シルフィ、一応着てみたけど……?」
シルフィの姿が見えない。
二人して制服姿になった後は周囲の目なんか気にせず街へ繰り出して制服デートだ! と一人で勝手に意気込んでいたのだが。
女性の支度が長いのはよくある事だし、腰を据えて待とう。この程度の事でせっつくような男ではないよぼかぁ。
「ル、ルディ……」
自信の無さそうな声と共にシルフィが顔だけを扉の隙間から覗かせた。
「もしかしてサイズが合わなかったりした?」
「そういう訳じゃないんだけど……」
シルフィの華奢な体型ではあり得ないだろうが、一応聞いてみる。
三日に一度のボディチェックに抜けがあったかもしれないし。俺だって当然完璧な人間では無いわけだし。
「ボクって学校行ってた頃は男物の制服着てた訳じゃない?」
「そうだね」
サングラスで目元を隠し、マントで体の線を隠していた頃。男装故にズボンをはき、肌を出すことすら控えていた。
フィッツが偽りの姿であると見抜くように誘導され、思いを告げあった後も髪を伸ばしたくらいで劇的な変化はしなかった。
今でこそ昔のように短いパンツをはいたり、柔らかな雰囲気の服を好んで着るようになったが……。
「もしかして久々にスカートはくんだっけ」
「…………そうだよ」
思い出してみればシルフィがスカート姿になるなんて、パーティー用のドレスを着た時くらいしかすぐに浮かんでこない。
日頃から綺麗なおみ足を見せてくれているがスカートは本人的に何か違うのだろうか。
「気にするなシルフィ。どんな服でも君が着ればそれはその日世界最高の装いさ」
「まーたルディは調子のいいこと言って……」
赤面はしているけれど、昔ほどシルフィに照れた様子はない。いいのさ、これがお互い年を取るって事だし。
「緊張は取れた?」
「すっかりね」
そうは言いつつもまだ躊躇いがちに姿を表すシルフィ。臭いセリフに耐性が出来てしまったせいで、勢いに乗り切れないようだ。これは付き合いの長さの弊害か。
「……どう?」
「もちろん最高」
「……ありがと」
●
制服デートはご近所さんの目があるし恥ずかし過ぎるからと、NGを食らってしまった。
だが制服姿の俺達を見かけたロキシーとエリスの興味を引き、二人にも制服を着せる事に成功した。夜の運動会に制服で集合するという新たな道が開けたというわけだ。
これで青春時代の夢がまた一つ叶う。
子供達よ、自分に素直なパパを許しておくれ。
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「……だからもう誰も着てないハズの制服が干してあったんですか」
「ルーシーとかには言っちゃダメだぞ」
「いやあ、女性はそういうトコ鋭いですから気付いてるかもしれませんよ」
「……かなあ」
「少なくともララ姉は既に一回は覗いてると思います」
「遺伝した覗き癖は治らないな……」